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この本を好きになる人はいないんじゃないかと思う。
意図的に不愉快な人物ばかりを集めたような小説。
でもその筆力で読ませるのはすごい。
人間のどうしようもなく矮小な部分を詰め込んだ作品だけど、その中でまたたくような優しさが最後に光る。
多分二度と読み返さないけど、読んだことを後悔しているわけでもない。謎の読後感。
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何という苦しい小説だろう。愛の本質---織田作之助が書いた恋のやり切れなさとも、吉行淳之介が描いた熱病のような恋愛とも違う、震え上がるような感情。
まるで、最も身近に位置し当たり前のように安心しきっていたものに裏切られたような苦しさを、感じました。
自分の後ろをぴたっと寸分離れることなく付いている『影』に、いつもは自分がしているように踏みにじられたような感覚。
主人公の十和子は8年前に別れた恋人・黒崎のことを忘れられないでいる。しかし、その一方で15歳年上の恋人・陣治と同棲をし、彼と一緒に生活をするも、陣治のことを生理的に嫌悪している十和子。彼女は、8年の沈黙を破り今にも黒崎から連絡が来るのではないか…と、かつての恋人を待ち続けているのです。
そして、ある日。彼女は、時計の修理の件で連絡を取り合っていた販売店の男性・水島と寝てしまう。
物語が進むにつれて、十和子と水島の仲は離れられないものとなり、陣治との間には一緒にいる意味すらも失われていくのです。
十和子に詰られ虐められながらも、彼女の側を離れられない陣治。
奔放なうえに、幸せに向かって自分を貫くことで、知らず知らず堕ちていく十和子。
黒崎という人間の過去。
本作を読み進めていくうちに、物語の中盤で徐々に明らかになるいくつかの事実によって、耐えがたいような苦しさと虚無感を味わいました。
こんなにも苦しく、孤独な感情を『恋』と呼ぶなら。
自分は確かに、まだ『恋』を知らないのだ。
とても的確な言葉です。
物語の衝撃のラスト。
あんなに嫌っていた陣治との2人きりのマンション。十和子が、そこに帰れたなら『どんなにいいだろう』と思ったことは、せめてもの救いでした。
読了後にして思う。これは畢竟、陣治と十和子の2人の恋の話だったのだ、と。
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読中も読後も続く、蛇の腹のようなザラザラ感、じりじりしたなにか。
十和子の柔い肌を揉む陣治のささくれた指や油分のない手の感触だろうか。
人を蹴飛ばした後に残る生ぬるい余韻は一度味わってしまうと、なかなか歯止めが聞かなくなるのだろう。
人として、とてもいけないことをしているのに、なぜだろうか、どこからか快感が湧いてくる。どす黒い快感。人に見られてはならない類の。
気怠く昔の情事に懐古と美しい脚色を重ねては、薄汚い年上の下卑た笑みを浮かべる男と生活し、また自分から破滅の道へと突き進んで行く。
だれも、幸せにならない。
3000円の腕時計とワイフ。
水島が出てきてから、十和子の心の乱れが加速して行く。
映画のDVDをひたすら見続ける彼女の生活に彩りが添えられるのだが、それは同時に必要もなかった扉をたくさん開けて行くことになる。
大阪が舞台で、普段馴染みのある場所で物語が始まると、よりリアルに感じられる。東京の人は、こんな感覚を、当たり前のように過ごしているのかと思うと少し羨ましい。
みんな、こんなにも身体ばかり重ねあっているのだろうか。
自分の身の周りも、あたしが見ていないだけで、こんなことが日常的に行われているのだろうか。
と、ふと思うことがある。
十和子の姉も、みんな、愛されていなかった。愛してもいなかったと思う。陣治以外は誰も愛していなかっただろう。
人の不幸は蜜の味
とは、よく言い得たものである。
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共感できる登場人物が少ない上、最初から最後まで不快感が纏わりつく。
どんなに尽くしてくれても好きになれない相手っているよなー…
気持の悪い切なさが残りました。
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前半の陣治の印象は、十和子が言うままの印象で、けどだからって、十和子の事も好きにはなれなかった。
自分が軽蔑している陣治におんぶにダッコの生活だから。
最後の最後で今までの陣治の評価が一転してしまった。
そんな思い(引用の部分)で毎日を過ごした陣治は、きっと私には分からないような幸せを過ごしてたんだろうな、と思うと羨ましい。
人を本当に愛すると、そんな事ができてしまうのだろうか。
ちょっと、陣治にグッときた。
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これを読んでる間中、不快でしかなかった。
解説に書かれてあった、「愛せない男と共感できない女」という表現がぴったり。
そんな二人の恋愛描写が、ずーっと続いていて、正直、気持ちがすさんでしまった。
読んでいるうちに、リアルな現実って案外こんなもんなのかって思えてきて、現実の友人に対してすら、何だか、裏の顔を想像して、気持ち悪くなったくらい。
中盤ぐらいまで「愛せない男と共感できない女」の関係の描写が続いてうんざりし、読み終わっても読後感は良くない。
こんなの愛じゃないって思ってしまう。
でも、この作者の本を読むのは2冊目で、1冊目も「胸くそ悪い。」との感想を書いたが、二度までも同じ気分にさせてくれる作者は、ある意味、凄いんじゃないかって思えてきて、むしろ評価が上がってしまったよ(笑)
ラストは、途中から想像ついちゃったので、ミステリという点ではいまひとつだけどね。
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購入 人間的に好感も共感もできない主人公。イライラする話の展開で、先は読めたんですが、でも面白かったです。レビューを読むと批判も多いですが個人的には好きな系統の話です。ちっとも共感できないですが。デビュー間もない作者ということで、若干描写不足・描写過多が見受けられ、(かなり)気になりますが他の作品も読んでみたいと思います。
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この手の話は、大抵途中で誰が殺したかわかってしまっても、登場する人物像を見ているだけで楽しめる。
主人公が疎み、蔑めばそれだけ執着がひしひしと伝わってくるし、主人公が聞き流せばその会話はナナメ読みしてしまう。
主人公はちっとも魅力的じゃなくどちらかと言えば読者に嫌悪されやすい人物なのに、彼女の視野で見る世界は、嫌悪しながらもその執着心に引きずられ続きを見ずにはいられなくなる。
つまり、引きずられたヶ所の執着は、読者側にもある執着であるところになお一層の嫌悪感をつのらせる仕掛けが面白い。
そして、こんな愛し方は、やはり未成熟がなせるわざだからこそストーリー性がある。
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本屋さんの手作りpopがすごくうまいこと言ってて、買ってみた
結末としては、あぁーていう感じだけど最後の十数行がとにかく驚いた、というかなにがおこったかわからず、戻り読みした(笑)
興味深い作品
作者の経歴がすごいとおもう
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こう醜くなりたくないな~と顔しかめたくなる感じ。
なのに、心が壊れていく過程は
こういうことあるだろうな~と思える。
全編通して、キレイじゃない....ヽ(´o`;
だからこそなのかな?
ラストの衝撃、愛ってこういうこと!?って感動した。
「すべて受けとめる」っていうことを
とてもわかりやすく、そのまんまに表現してるってことかな。
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文章のリズムが合わなくて、この上なく読みづらかったんだけど、猛烈な傑作。
焦点の定まらない純愛の終点は、帯にあった「不愉快」というよりもむしろ、「愛おしさ」を感じるものでありました。
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読み始めはちょっとダレますが、途中からどんどん引き込まれます。不快感+リアリティ+怖いもの見たさみたいな。ラスト、こういうのはありか。。。究極の愛か。。
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「それでも恋と呼びたかった。」の帯がすべてを語る。エグさ抜群。不快に思いながらも読まされる快感。まほかる。力あります。
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十和子と陣治。
働かない十和子にただただ嫌悪感を抱いていた。
それでいて、陣治に文句をいう、ダメ人間の典型的だ。
いつ、心をいれかえるのだろうと思っていたら、
また既婚者にうつつをぬかし、「その人が好きだ」という。。。
飽きないなー。と思った。
勝手に陣治が、黒崎を殺した、と思い込んでいたなんて、
幸せな十和子・・・。
実は、お金の為にもてあそばれた黒崎を殺したのは十和子なのに・・・
陣治はそれをかばって、心から消してくれたのに・・・
誰が一番大切かなんて、わからないな。
自分を大切にしてくれる人を大切にしたい。
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読み始めてすぐ「これは最後まで読めないかも…」と思うくらいに不快でしたが、中盤から後半はそれなりに興味深く読めました。
ラストは陣治の愛に心打たれましたが、十和子に関しては最後まで共感できないままだったなぁ、と思います。