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この作品に登場する人達は皆、強い虚無感を感じていて誰一人、幸せそうではない。矢木、妻の波子、娘の品子、息子の高男の一家は今にも崩壊しそうな家族であり、彼等を結び付けているのは嫌悪という情だけ。波子の愛人である竹原も何処か虚ろだ。惰性で繋がっている関係であるのに積極的にそれを断ち切れない悲しさや弱さが人間らしいとも言える。全体的に陰鬱な、索漠とした作品。川端康成の骨董趣味が垣間見得るのも面白い。三島由紀夫の解説も良かった。
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何をどう間違えたか雪国と誤って読みました。バレエのお話かと思いきや、崩壊していく家族のお話。
一人一人にほの暗い所があるなか、矢木の陰湿さは異常でした。解説をみるまで、本編に1度も香山が出てこないことに気づかなかったし、松坂の美しさの描写も少ないにも関わず余すことなく伝わってきた。登場人物像を描くのがとても上手だなと思いました。波子や品子の過去にはあまり言及されていないが、それでいて奥行きのある作品でありました。
戦時中の方が家族の絆が固く、敗戦してからはそれは脆くなってしまったというのは、倫理で勉強した自由からの逃走が思い返されました。
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解説が三島由紀夫で、思わず解説に飛びついて一気読みしてしまった。
淡々と現象を書いている小説で、登場人物の心理を推し量ることが必要だが、それが想像力を刺激し魅力となっているのだと思った。
川端康成の美とは、解説まで読んで欲しい。
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森鴎外と間違えて図書館で借りた。
文章や登場する女性たちの言葉が綺麗。
戦後間もなくでバレエが流行していたのかと、時代の描写が印象的。
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敬愛する川端康成、唯一この作品だけは自分にハマらなかった。
説明を省いたシンプルな文体は相変わらずだが、この作品からはテンポも省かれているのか掴み所が無い。
古風な日本人家族、そしてそこから広がらない閉塞的な舞台が要因なのかと推察。
景色や人の機微の美しさをもう少し感じたかった。
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森鴎外ではない「舞姫」
実は川端康成は「雪国」を読みたかったのだけど、貸し出し中でした。
ふと視線をずらしたら「舞姫」の文字が飛び込み、衝動的に手に取ったものの、「舞姫」は森鴎外じゃないか。と気づいたのはその帰り道でした。
そんなオトボケエピソードから借りた川端氏版「舞姫」なんですが、可も無く不可もない感じでした。
一つの「家族」を主軸にはしているものの、登場人物たちが強固な線で結ばれるでもなく、かと思えば点として孤立しすぎず。
ただただ皆が微かな糸を目の端に追いながら孤独でいるような、そんな話。
敗戦後の日本の、どこか鬱々とした空気を描いてる、って話だったから主題に対してなんら間違っては無い。
自分を「第三者」として置いた時の、妙なリアルさがあったように思えます。
お隣さんちの内部事情を垣間見てるような、淡々とした描写。
全体的に決して明るい雰囲気ではないんだけども、嫌気ささずに読み切れたのはそういった描写の仕方なんだろうか、と思う話でした。
内容自体は「何も解決していない」ので、おすすめはしにくい。
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まず最初に感じたのは、主人公である波子が自分の夫を「矢木」と苗字で呼ぶのに違和感があった。
読み進めて行くうちに登場人物の熱量は感じるものの、どこか用意された展開のような不思議な感覚がつきまとう。
直前に読んだのが「金色夜叉」だったからとみにそう感じたのかもしれない。
他の感想にも書いてあるけれど、是非最後の解説まで読んで頂きたいと思う。
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主人公波子、その夫・矢木がそれぞれ自己中過ぎて感情移入しづらかった。モヤモヤするな…と思いながらも、ラストを知りたくて意地で読了。
三島由紀夫の解説が分かりやすくて「なるほど、そういうキャラ設定だったのね…!」と納得。
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戦後日本の家庭の物語。登場人物それぞれが無力感を抱え、悩みながら生きている。最終的に各人の苦しみが解消される場面は描かれず、この先どうなったのか気になる終わり方。戦後日本の価値観、男女の葛藤、経済的転落が描かれる。
波子さんは綺麗な人なんだろうな。矢木は嫌な感じのする男だが、その背景には結婚生活での彼なりの葛藤があったのだろう。
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矢木の気持ち悪さがよかった。
矢木状況不利かのように描かれていると思いきや、矢木の内的苦労もわからなくもない。波子の危うさ・弱さがそれを一層引き立てる。
よくわからないけど面白かった