投稿元:
レビューを見る
刑務所の中で「君」に宛てて綴る少年の回顧録。少年は幼少時に遭遇した事件以来、声が出せなくなっている。手先が器用で絵描きとピッキングが得意。ある夏休み、心惹かれた少女の気を引くために彼が選んだ方法は、コミック風のメッセージだった。少女との出会いがコマ割りで描かれ、言えなかった言葉を吹き出しに載せて。漫画がボーイ・ミーツ・ガールの小道具に、またそれ以上の表現方法として選ばれたことが無性に嬉しい。
「調香師」のように専門職のディティールを楽しむ作品。
投稿元:
レビューを見る
解錠師とはつまり金庫破りのこと。10代にして天才的な解錠師(ロックアーティスト)としての才能を見出されたマイク。しかし、彼は幼い時の出来事が原因で一言も口を利くことができない。
彼が解錠師となる経緯と、彼が今の状況に陥った顛末が交差しながら話は進む。
出だしがすこしまどろっこしいところはあるが、そこを超えると話は一気に面白くなっていく。
そして、ちょっと切ない。
投稿元:
レビューを見る
(No.12-55) ミステリというよりサスペンスかな?
内容紹介を、表紙裏から転載します。
『決して動かないよう考え抜かれた金属の部品の数々。でも、力加減さえ間違えなければ、全てが正しい位置に並んだ瞬間に、ドアは開く。そのとき、どんな気分か想像できるかい?
8歳の時に言葉を失ったマイク(マイクル)。だが彼には才能があった。絵を描くことと、どんな錠も開くことが出来る才能だ。やがて高校生となったマイクは、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり、芸術的な腕前を持つ解錠師になる。
MWA賞最優秀長篇賞、CWA賞スティール・ダガー賞をダブル受賞した話題作。』
(紹介では「言葉を失った」とありますが、正確には「声を出して話せなくなった」ので、聞くこと、読むこと、書くことは出来ます。)
一番最初に、ここは刑務所で、マイクがこの物語を書いていることが明かされます。
そして時間はあちこちに飛び、ここにいたるマイクの人生がだんだんに分かってくるという構成。
時間が飛び飛びでも、章の始めに場所と何年何月かが書かれているので話が分かりやすくて、読んでいて混乱することはありませんでした。
なぜマイクが話さなく(話せなく)なったのかはなかなか語られなかったので、いろいろ想像しました。真相が分かった時は、やっぱりそこまでのことが起こったからだったのか、と納得しました。
マイクは話さないだけでなく、積極的に自分の考えを伝えようとしません。書いて伝えることも出来るのにほとんどせず、手話もあまり上手くない上使わず、どうしても必要があればわずかな身振りだけで伝えます。このことで、マイクの強い自我と孤独が際立って感じられます。
マイクに対する人々の反応が興味深いです。しゃべりまくる人、無視する人、相手が聞こえていることが分かっていても一方通行だと、会話をすることは難しいのだなと思いました。
最近テレビドラマの「鍵のかかった部屋」を見ていたので、解錠するシーンの映像が記憶に新しくて、この小説で臨場感を味わうのに役立ちました。文章に被る感じで映像を思い浮かべました。
解錠に対するあこがれのようなものと、大切な存在を守りたい気持ちが、犯罪者への道を進み始めるきっかけになってしまったマイク。犯罪小説なのに、犯罪者になってしまったマイクを見守りたい気持ちになりました。これは少年の成長小説としても読めます。
あとがきに「ヤングアダルト世代に読ませたい一般書に与えられる、全米図書館協会のアレックス賞も受賞した」と書いてありました。
そして、読後感がとても良かったの!だから、ラストの方ちょっとだけ都合よすぎじゃない?というところは無視です。
すごく面白かったです。読んで良かったわ。
投稿元:
レビューを見る
ミステリの設定と作りは面白いとおもう。衝撃的な過去を背負って以来喋れない美少年、絵と金庫破りの才能、恋、身勝手な悪人ども、そしてちょっとレトロで別の世界感を出している“ポケベル”と“ダイヤル錠”。1999年や2000年にポケベルなんてあったっけ。もうちょっと昔だった気がするけど。1996とかそのあたりじゃない?あと1999年の出来事と2000年の出来事が交差して徐々に疾走感がでてくる構成も、ちょっとほかにありそうでないかんじで○。未来が先に出てきて、そこを知っているからこそ、いまこれから起こる出来事がせつない、そういう気持ちで読めるというのは作者の手腕なんだろう。少年が犯罪に走る理由も、えてしてこういう、自分にとって大事なもの、大切なもの、辛いことを薄めてくれる居心地のいい場所、それを守りたい手放したくない、と思うささいな欲がきっかけなかんじも、リアリティはある。けどなぁ。マイクルの過去やゴーストのことや、ちらちらこれみよがしに出てくるからいっそのこと全貌を知りたい気持ちで読むけれど、知ったところで心は重くなってたりするのよね。あーそうなんだ謎はとけてすっきり!悪は滅びてばんばんざい!な展開ではなくってさ。そこまでちらつかされたから最後まで、って思うけど、知ってしまえば何を心に思えばいいのか自分でもわからなくなる。これたぶん原文で読んだほうがもっと、なんか、クールなんだろうなぁ。385ページの台詞がなんかぐっときた。どうしようもない泥沼から抜け出せなくなったあの瞬間に、“寝ぼけまなこ”から言われる「本物の人生にようこそ」個人的にはここがクライマックスだったな。バイオレンス多めだけどグロくはない。総合的に読みやすいよくできた1作。
投稿元:
レビューを見る
ミステリというより、クライム・サスペンス+ジュブナイル小説。
主人公のマイクルは幼い頃の大事件により言葉を失う。しかし彼には絵と解錠の才能を持っていた。その才能を持っていたがために周囲の思惑に巻き込まれて行く。
2つの時間軸があり、解錠師になるまでの日々と解錠師の仕事を提供して過ごす日々。その中にはロマンスもあり冒険もある。特に解錠師の仕事ぶりの描写は面白い。(ダイヤル錠という事に古さを感じるが、電子錠では味気ないためか?)
主人公が少年のため、犯罪行為が冒険のように感じられダークな感じはしない。それどころかスリルに満ちた冒険のようで楽しく読むことができた。
他の作品も読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
オススメの一冊。 主人公マイクルは、子どもの頃にあった事件のショックで声が出ない。 絵が描くことと、鍵を開けることに芸術的なセンスをもっている。内省的な性格でビジュアルもいい。 そのマイクルは愛するアリシアのために犯罪に手を染めていく。 若者の若々しさと危うさが全編を通して描かれる。 マイクルが解錠することは、マイクルにとって特別な意味があることが最後にわかる。この小説の最期は素晴らしく上手い。そして美しい。
投稿元:
レビューを見る
アメリカ探偵作家クラブ賞他を受賞した作品ということで読んでみた。ポケミスといえばミステリーの王道。正統派の推理小説を扱うイメージだったが、解説に書かれていたように青春小説として読むことができた。以前、同様にポケミスで「卵をめぐる祖父の戦争」を読んだ際にも、良い意味で裏切られた。ポケミス、奥が深いですなー。さすが早川書房。
投稿元:
レビューを見る
CL 2012.9.16-2012.9.25
心に迫ってくるものがある。
久々の大ヒット。
あと、翻訳とは思えない素直な文章。
訳者は誰だ?と思ったら、
越前敏弥。さすが。
投稿元:
レビューを見る
話すことができない少年が
一人称で綴る少年のこれまでの人生。
現在の少年が
二つの過去を同時に語っていくので
ぐいぐい読めました。
なぜ少年が鍵を開けつづけてきたのか
わかった時には驚きました。
面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
2013このミス海外1位。
MWA、CWAダブル受賞。
まあ一言で言ってしまえば、クライムノベル。
8歳の時に遭遇した陰惨な事件のせいで声を失ってしまったマイクルが、あるきっかけで金庫破りの才能を開花させてしまい、転落していく様を描いています。
解錠の世界って奥が深いわー。
が、この作品の面白さはそこだけではなく、繊細な青春物でもあるし、なにより甘酸っぱいボーイミーツガールの恋愛物でもあるのですよ!
クライムノベルなのにきゅんきゅんしちゃったわw
投稿元:
レビューを見る
この本を読んでて、2回も電車乗り過ごしました。
ま、それは私がボンヤリしてるだけかもしれないんだけど、読み手を夢中にさせる本であるのは間違いない。スリリングなクライムノベルにして、不安と情熱を抱いて疾走する青春小説だ。
主人公の少年マイクは、幼少期に起きたある事件をきっかけに口がきけなくなってしまうが、周囲に2つの才能を見いだされる。ひとつは絵を描くこと。そしてもうひとつは、どんな鍵でも開けられること。こうして、小さい体の内部に大きすぎるものを抱えこんでしまった少年は、プロの解錠師として、犯罪の世界へと足を踏み入れていく。
解錠師(ロック・アーティスト)という名の通り、洗練された技巧をもつタフなプロの犯罪者という外面と、内面にあふれる年齢相応の情熱と不安。ひとと話せないという主人公の特質ゆえに生じるギャップが、大きな魅力となっている。ここに、彼のもうひとつの特技である絵の才能という要素が組み合わさり、心のいちばん奥底に秘められたトラウマが解錠されるとき、ロマンチックなラブストーリーの様相まで生まれてくるのだ。思いがけずさわやかな読後感を残す青春小説。
投稿元:
レビューを見る
するすると読めてしまった。
鍵を開ける作業は一見地味でオタクっぽいのに、周りの人間が華やかだと、なんかとってもエレガントに思えるのが不思議。
本当に愛する人が出来てよかった。
あの事件の前までは、きちんと愛されていた少年だったんだね。
投稿元:
レビューを見る
おもしろかったー!少しサリンジャーっぽい!ただ、恋愛描写に関する部分だけ幼い気がするがな。というわけで、★ひとつマイナス。
投稿元:
レビューを見る
時系列が入り乱れ、ちょっと混乱したけれど
まあおもしろかった。
ミステリーというより青春小説みたい。
投稿元:
レビューを見る
錠を開く才能がある少年の進んだ道は。
切ない初恋に貫かれます。
8歳の時の事件以来、口を利くことが出来なくなったマイク。
「奇跡の少年」と報道され、カウンセラーにもかかりました。
酒店を経営する伯父に引き取られ、ミシガン州デトロイトの小さな町で育ちます。
高校の美術クラスで思いがけず才能を認められ、初めての友達が出来ました。
17歳半の時、上級生が卒業間近の夜の悪ふざけに、マイクが錠を開く才能を使うように求められ、事件に巻き込まれます。
奉仕活動のために被害者マーシュの家に通い、仲間の名を明かすよう求めるマーシュに、炎天下でプールを掘ることを命じられます。
その家の娘アメリアに恋をするマイク。
母を失っているアメリアのほうでも、どこか通じるものを感じたのです。
ほとんど表情も変わらない、話すことが出来ないマイクの中にあふれ出る感情。
気持ちをどう伝えたらいいか悩み、漫画的なイラストにして心の中の声を吹き出しに書いて、彼女の部屋に置いてくるのでした。
ここで漫画という形が出てくるのが、最近の作品ならでは?
今は服役中のマイクの手記という形で、犯罪に巻き込まれていくいきさつと、1年後の事件のなりゆきが交互に描かれます。
錠に魅せられたマイクの特技は、あまりにも危険な性質を持っていた。
大切な人を守るために特技を使うしかなくなり、ゴーストという解錠師に仕込まれ、依頼人を持つ立場になる。
心ならずも犯罪者となっていく中盤は重いですが、犯罪小説としてまずまずの読み応え。
利用されてしまうマイクがかわいそうで、どこか捨て身な態度にもはらはら。
そして、しだいに明らかになる子どもの頃の事件…
一筋の純愛が希望をつなぎます。
意外に心地良い結末へ。
著者は1961年デトロイト生まれ。
1998年のデビュー作「氷の闇を越えて」で高い評価を得る。
これは2010年発表の作品。
2011年アメリカ探偵作家クラブのエドガー賞最優秀長篇賞と英国推理作家協会のイアン・フレミング・スティール・ダガー賞をダブル受賞しています。
2011年12月翻訳発行。