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私がかつて読んだ本の中で、最も泣けた本。今でも読むたび泣かずにいられません。新装版が発売されたということで、今回は二度目になります。
幸薄な運命に弄ばれながらも人を信じ、愛し、純粋に生きた女ミツ。そしてミツの短い生涯の生き様は、我々が忘れかけている真実の人間愛を教えてくれます。
本意でない信仰と自我の狭間で、長年苦しんできた遠藤さんならではの作品です。星5つでも足りません。
これからも深くじっくり味わっていきたい作品です。
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どうして、こんなにも恵まれず不幸なミツが、人の不幸を悲しむことができるであろうか。痛いほど、この世の中は、幸せである人と、不幸せである人がいることを、生きていくうちに知らされる。棄てられても、恨むことなく、その男のことを生涯想い続けた、どうしてそんなことができようか。
遠藤周作の作品は人間の底しれぬ強さや、寂しさを優しく語りかけてくれる。
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こっちに書きました( ´ ▽ ` )ノ
http://asacocoluca.jugem.cc/?eid=65
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痕跡を残すということ、棄てるということ。棄て去る事の叶わぬものは、時空的な位置を持たない、只々私へと現象し続け。痕跡は顔として、いわばその被-棄性を私へと向ける。
それが傷つきやすさとして、柔らかさとして、優しさとして、現れると捉えるのはエゴイスティックかもしれない。
けれど、まるで駆け出すかのように、言葉を語らずにはいられなくなる。地平に無い何かが、私の日常のその広がりへと、圧倒的な高みから啓示される。会って抱くのか。死を悼み墓参りをするか。修道院に寄付をするか。
何れでも良い。語る言葉に、唯一解はあり得ない。それが、痕跡に向けて語られるものである限り。発話されることのない言葉を、いかに気の利いたものにできるか、人は頭を抱えながら生きる。こうして人は、現れることのないものを視る。
嗚呼、頭でっかちの童貞臭い文学部生でなくなった暁には、「気の利いた一言」が言える様に、なれるのかしら…(笑)
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目先の生に執着し、周囲を見渡す事が出来ぬ大学生吉岡。
もう、冒頭からうんざり感満載(笑)
それとは逆に貧しいながらもただただ純粋にダメンズ吉岡を思うみつ。
信仰などだれも教えないのに彼女の芯の部分には何かを信じる思いがある。
果たして吉岡は棄てた女を思い懺悔するのかしないのか・・・
そしてそんな男を読み手の私は赦せるのか。
わかりやすいストーリーなだけに考えさせられましたわ。
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物凄く読みやすくて、オモシロくて、痛くて辛くて、大変に満足でした。
この小説を映画化したモノが面白そうでいずれ見たかったのと、遠藤周作さんの作品は多分、子供の頃に「海と毒薬」を読んだだけだったので、読んでみようかな、と電子書籍で。薄かったし、するすると読了。
粗筋を書くと、ほぼ戦後すぐ。朝鮮戦争以前のまだ貧しかった時代から話ははじまります。ざっと足掛け5~6年の物語。
主人公は、二流大学生の「吉岡努」と、無教養な女子工員の「森田ミツ」。
貧しく鬱々と暮らす吉岡は、女性と遊びたいばかりに映画ファン雑誌から森田ミツと知り合い、一度だけHをする。けれども田舎くさく純朴すぎるミツとは遊びのつもりだったから、Hをすると醒めてしまって、棄ててしまう。
その後、吉岡はなんとか就職、就職先の社長の娘と恋愛、そして結婚まで至る。
森田ミツは、吉岡のことを思いながら、純粋で同情的すぎるゆえに、転落の人生を歩む。
とまあ、そういう物語。
それが、7割は吉岡の一人称で。3割は森田ミツの側で、三人称で、描かれています。
でまあ、粗筋以上に、それぞれの心理描写が秀逸で、結構えぐくて、たまりません。面白いです。これは小説という手法でしか表現できないことをちゃんとやっていますね。
無論、遠藤周作さんなんで、最終的にややカトリック的なことが出てきます。出てきますけど、別にそれでドウということはなく、僕は全く鼻につきませんでした。
なんていいますかね。原罪小説とでも言いますか(笑)、僕たちの日常生活の中にある、不条理だったり不公平だったり理不尽だったりっていうトコロを、描き尽くして、秀逸にして痛烈ですね。
なんだかコレはコレで、ドストエフスキーを日本版にして読みやすくして、心理劇をエンターテイメントにして全体を簡略にハードボイルドにするとこうなるかも、という感じです。遠藤周作さんというのは、小説を書くのが上手かったんだなあ、と今更に思いました。またご縁があれば読んでみよう、と思いました。
もし遠藤周作さんを読んだことがなかったり、面白いと思ったことがなかったら、コレはお勧めです。圧倒的に、オーソドックスに、面白かったです。
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久しぶりの遠藤周作。
私はけっこう彼の書く文章が好きだ。
まぁ遠藤周作の言うとおり。
男なんてそんなもんだよね。
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昔のエリート――というほどではないが、二流三流とはいえ大学出の――男が、過去に残酷にやり棄てた女に対する懺悔や言い訳の入り混じった告白をする話かな・・・と思いきや、まあそうといえばそうだけど(いや懺悔はしてないな)、やはり遠藤周作だし、神の愛まで話は至った。
田舎出の、愛情にも運にも恵まれなかった森田ミツという女性が、タイトルでいう「棄てられた」女なのだが、彼女が、人の苦しみを自分の苦しみと思い人のために尽くさずにはいられない人間で、ある価値観ではこれを「お人よしで損ばかりしている愚鈍なやつ」ととらえることもできるが、この本のテーマとしては彼女こそが神のいうところの「幼子のように素直に愛の行為ができる人」。
いっぽう「棄てた」側の男=吉岡努は、少なくとも現代の感覚でいえば色々許せないところはあるし、「最後に真実の愛に気づき彼女を迎えに行き絶景ポイントで抱擁」みたいな泣かせドラマでもないのでそういう英雄的な見せ場は一切ないが、彼が得たひとつの学び、「ぼくらの人生をたった一度でも横切るものは、そこに消すことのできぬ痕跡を残すということ」は、全くその通りだなあと。そしてさざ波のように静かに周囲にも変化を及ぼすものだ。
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井深八重をモチーフとした小説ということで手に取る。
ハンセン病という社会的なテーマへの気づきと主人公の吉岡とミツを通じて生きる上での価値観を如何に持つべきか、について考えさせられる。
ある意味では通俗的なストーリーがテンポよく展開し読み易いが、読了後は心に重く余韻が残る。
以下引用~
・不幸な人の間にはお互いが不幸という結びつきができるわ。みんなはここでたがいの苦しさと悲しさとを分け合っているの。
・・・・ここにだって、考えようによっては別の幸福が見つけられるのよ。
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こ、こんなすごい本だとは思わなかったのう。勿論、男に対してどっちの存在になりたいかと言われるとマリ子なんですけど、でも、なんか、ミツみたいになるのが、生涯の目標のような気もする。
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この話の中に登場したミツ
純真で邪気がなく崇高といえる程の
精神的な美しさをもっていて
聖母をイメージしてしまいました。
最後は、何とも言えない
淋しい感情に覆われてしまいました。。、
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友達が出演したRカンパニーの「負けないで」を見て、読了。
何だかんだ遠藤周作さんの本は、3冊目。
吉岡さんが特別だとは思わない。けど、自分がしたことは無くなったりはしないんだろうね。
むしろ、みっちゃんが聖母のようだった。
キリスト教的な価値観(無償の愛)も大切なんだけど、なんだかんだ、我慢せずにできる人と、そうでない人は、生まれつきとか、環境の部分が多い気もする。
あのスールさんの話もそうだけども。
これから考えたい部分でもある。
難しいこと考えなくても、言葉にできない部分で感じるところはたくさんあると思う。
良作です。
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高度経済成長期の都会の暗い男女の話・・・という印象であったが、最後の結末で、その印象は払拭された。章末の解説によって、遠藤周作の凄さを改めて実感した。
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途中イライラした。要領悪い人出てくるとイライラしてしまうので…。でも最後まで読んでよかった。男女関係なく弱い人間がテーマなんだな、遠藤しゅうさくって。
地元図書館Bエ
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大学生の吉岡が一夜かぎりで遊び棄てた娘ミツは、後にハンセン病の診断を受け、御殿場の療養所に送られる。数週間後、診断は誤りだったとわかるのだが、一度は自由を得て外に出た彼女が選んだのは、療養所にもどり、患者たちのために尽くすことだった。内心の声にしたがい他人に奉仕することを選んだミツの魂の清浄と、社長令嬢を射止めて世間並みの幸せを得たものの、かつて棄てた女への悔恨を抱えつづけた吉岡の心の寂漠のコントラストが鮮やかな、遠藤周作中期の名篇。