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「吉野葛」は大好きな作品です。主人公の男が吉野に旅をする、というだけの話なんですけど。「盲目物語」は少し読みにくい文章になっています。これは語り手の教養の低さを表すためにわざと平仮名を多用しているせいなのですが、漢字と平仮名が両方あっての日本語なんだなあ、と思わせてくれます。日本語の表記をローマ字だけにするなんて却下です!
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盲目物語を読んでみたくて借りた。4歳のときに両目の視力を失った語り手が、信長の妹で、浅井長政の妻お市の方の悲劇的生涯を中心に、戦国時代を生きた人間を書き出している。この文章はひらがなが多いが、それは語り手の教養の低さをあらわしているのかなと思う。だけど、ひらがなが多くて若干読みにくい。
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盲目物語が面白かった。
春琴抄はちょっとまた別だけれど、谷崎の時代物と言っていいのか分からないけれど、江戸以前を舞台にした小説が特に好き。
2002年7月19日読了
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あらすじは、お市の方に長年仕えた盲目の男の独白。浅井家に奉公し、お市の近くに仕え、やがて浅井が滅亡し、お市が柴田勝家に再縁して、その柴田も滅び、豊臣も滅び……といった歴史が男の視点から語られる。私の脳内では長政が完全に無双のサラサラ金髪でトンガリのアレなのでニヤニヤしながら楽しめた。
「吉野葛」での時間遡行や追想が伝説や創作の域を出なかったのに対し、「盲目」は、作者(谷崎)が資料で知ったことが、作中では男の体験として語られる。「蘆刈」のようにある女性を貴びながら物語るのだけれど夢幻の彼方には行かず、男は現世にとどまり続ける。
というよりは取り残される。
男にとってはお市に仕えることが何よりの幸せだったのに、勝家とお市が自害する段になって欲を出してしまったために、お市には取り残され、第二のお市である茶々には遠ざけられ、俗世に埋もれることになる。「蘆刈」の男は夢幻に消えたが、「盲目」の男にそれは許されなかった。
男は自分で「お市の方の傍にいられればそれでいい」と言っているけど、読めばわかるが男はお市を好きだったのよね。それはお市をどうにかしたいという愛情ではなくて、愛する貴人の傍にいつまでも仕えて、時に得意の唄や三味線で慰めて差し上げたい、という愛。
だから男はお市を生きながらえさせようと間者の策に手を貸したわけだし、お市の死が定まって、それに従って果てようとしたその時、茶々の救出を任せられて、生きている第二のお市である茶々に仕えたいと願って生き延びてしまった。
その時にお市と共に死んでいればあるいは死後も傍に仕えられたかもしれないが、逆臣の罪を背負って生き延びたために、今更死んでもお市の傍には寄れず、生きていても茶々ら娘たちに憎まれて居場所がない。
そうして俗世を漂いながら年老いていく。豊臣も滅亡し、家康も死に、時代は徳川の世である。男と同じ時間を生きた人間は殆ど亡くなり、あるいは遠いところに行ってしまった。
男は独り、在りし日を懐かしむのみである。
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作者が必死に練りこんで書いたというよりも、長年温めてきた題材をたまたまこの時にふと思いついて作品にしてみたのでは、と思えるような、心にじんわりと刻み込まれるような2つの中編。『盲目物語』は織田信長の妹であり淀君と徳川秀忠御代所の母であるお市の方の半生を描いた作品です。
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「吉野葛」は、なんということはないのに、なぜか読み返したり、内容を思い返したりしたくなるという、自分でも不思議な位置づけの小説。
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「吉野葛」は深い歴史に包まれた吉野の旅を綴った随筆風小説。同行する友人、津村の生い立ちとそれにつながる恋の話を吉野の風景に重ねている。情緒を解する心が乏しい私には、前半はちょっとしんどかった。後半盛り上がってくる津村の話には、谷崎お得意の“母への思慕”がいい感じで醸し出されている。
「盲目物語」は、織田信長の妹で浅井長政に嫁した戦国時代の女性お市の方の生涯を、彼女に仕える盲人の語りを通して描く。いわゆる美しい文体なのだろうけど、登場人物は多いし平仮名だらけだし読みにくいのは事実。雰囲気的には結構好きだ。
「春琴抄」
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谷崎潤一郎の中期の名作"吉野葛"と"盲目物語"を収録。"吉野葛"は谷崎らしい作品だと感じました。幼くして亡くした母への息子の追慕を扱う点で後期の"少将滋幹の母"を思い出した。本人ではなく、第三者の友人を主人公にしている点が面白かった。吉野の自然や人の暮らしの描写も紀行文的な雰囲気が良かった。一方、"盲目物語"は歴史小説です。織田信長の妹、お市の方の波乱の人生を仕えていためしいのあんまが感じたことや聞いたことを話すという形式で第三者を通して語らせています。やはり日本語の選び方が綺麗で、読んでて気持ちがいい。
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久々に谷崎読みたくなって読んでみました。
相変わらず文章が綺麗で世界には浸れますが、結構疲れました。
「盲目物語」のほぼ平仮名文体は参りました……そりゃ、語り手の思考は平仮名なので当たり前なのでしょうが、これを読むとなると……
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現代と戦国期を並べたのは、谷崎の意図だろうか?どちらも違った意味での郷愁を感じる。お市といえば、かつて光秀の娘・玉子が細川家に嫁ぐ際、戦国の世の女の定めを説いたと言われているが、その意味を深掘りしたくて、お市の生き様に興味を持っていた。それを盲目の尼僧が語るというのが斬新で、一層物悲しさを引き立てる。
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同じ時期に書かれているので文庫本ではドッキングされているが、片方は紀行随筆でもう片方は盲人による説話とまるでタッチが違います。井上靖の巻末解説のほうが出来が良かったように感じたというのがなんともはや。
さいわい盲人物語は登場人物を官職名も含めてほとんど知っていたので不思議と私はつっかえなかった。吉野葛はあのあたりに住んでいる人にはピンとくるのかも。 ある程度谷崎潤一郎に慣れた中級者向け
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吉野葛:伝承や伝説に満ちた大和国吉野を舞台に、母への思慕を美しく描く。
盲目物語:お市の方に仕えた盲目の法師の回顧談という形で、物語が展開される。哀しくも美しい。哀切が心に沁みる。
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吉野葛 良質の紀行文かしらと思いつつ読んでいくと
これから結婚を申し込みに行く娘を
恋しい母親、見た記憶すらも淡い母親のように
育てていこうと言うくだりがあって
あら源氏物語みたいなのね、と気づかされる。
盲目物語・大河ドラマに良く出てくる戦国時代
お市、茶々のことを知り語るあんまの弥一。
あんまですから触覚に頼る彼の語る
お市、茶々の肉感はなまめかしい。
両作とも「女のために」○○をする男と言う話し。
谷崎ならではで、ところどころセクシーで
かつ名文で、そのバランスが下品さをなくしていて
ほんと文章ってすごい。
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吉野葛・盲目物語
(和書)2010年02月14日 22:39
1951 新潮社 谷崎 潤一郎
思っていたより随分良作だった。
二作品ともとても良くオススメします。
吉野葛の取材日記というかなんと言ったら良いか分からないが不思議な感じに感動。
盲目物語の歴史小説もなかなか戦国の中での盲目である語り部の取り合わせが絶妙だと感じた。
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まあふつうなら読まない本だけれど、谷崎をまとめ買いしていて、たまたま他に読む本もなく、手を出してみた。読める。平成14年に改版になっており、たぶんそのときに字を大きくしたのか、そのせいもあってか読みやすかった。吉野へは行ったことがない。奈良は明日香村より奥に入ったことがないのだけれど、なんとなく全編光景が目に浮かんだ。静御前の伝説はいろいろな地方にあるのだろうか。学生時代に中静という姓の友人がいたが、彼の郷里である越路町でもそういう伝説があったそうだ。盲目物語の方は、ひらがながやたら多く、漢字で書いたりひらがなで書いたりで統一性もなく(何か意味があるのか)読みにくいと言えば読みにくいが、なんとなく流し読みをしてしまった。こちらは、たまたま観ていた大河ドラマ「真田丸」をイメージしながら読み進めた。まあたいがい退屈しながら読んでいたが、終盤、三味線にメッセージを込めている話でぐんと印象が盛り上がった。絶対音感がないと無理だな。ところで、本日、竹内結子の訃報が入った。茶々を演じていたが、とても好印象だっただけに、残念でならない。