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目次
・お奉行さま
・不思議な手紙
・出雲の神さま
・泣かねえ紋蔵
・女敵(めがたき)持ち
・浮気の後始末
・浜爺の水茶屋
・おもかげ
シリーズの途中から読んでしまったので、第一作から読み直し。
最初なので、人間関係がよくわかる。
仲良さげに語らっているけれど大竹金吾は後輩(しかし紋蔵より役職が上)で、捨吉は羽振りのいい顔役だけど幼馴染みで紋蔵を慕っている。
上司の蜂谷鉄五郎は、上の娘の許嫁の父親でもある。
”窓際族”で、貧乏子だくさんとはいえ、紋蔵は周囲の人に恵まれていると思う。
時と所をかまわず居眠りしてしまうという奇病(私もだ!)のせいで、出世コースから外れてしまったというと、不条理で物悲しくほろ苦い感じがすると思いますが、紋蔵さんはすこぶる普通の人。
やっぱり出世できないのは残念だし、日々忙しく働いているのに「どうせ暇なんだろう?」的にみられるのは悔しいし、美人を見ると気になるし、気にしているように見られやしないかとさらに気にする小心者。
もらっちゃいけない袖の下も、もらえるものならもらいたい。
お菓子の箱の中に山吹色の何かを期待してみても、最後までお菓子だったのにがっくりしたり。
そんな紋蔵だからこそ、市井の人の暮らしぶりを見つめるまなざしが温かく、誰が見ていようと見ていまいと、職務に励み続けるのだ。
”筆とりて天窓(あたま)かく山二十五年
男なりゃこそ泣かねえ紋蔵”
泣くな紋蔵。きっと誰かは見ていてくれてる。