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死人が生き返る世界では殺人事件はどうなるのか。
ミステリーは通常、生きている人間の心理しか考えないが、ここでは死人の心理も重要になってくるのだ。翻訳めいた文体や軽いノリを織り交ぜつつ、この世界観の中で見事に論理が構成されている。
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人が死んでも生き返る、という特殊な世界で、それも条件に含めたうえで、ミステリ的な解決をつけたという点が評価されているのだと思う。
でも、読んでて面白くなかった。
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再読。名作と呼ばれるにふさわしいボリュームと内容。
えっと、昔の覚書を漁りまして、初読が2003年8月であることを突き止めました。約12年の間を空けて再読。干支が一周してる……。
ちなみにそのときの感想メモ。
↓
面白かった。舞台がアメリカで、登場人物が一人を除いてアメリカ人で。
名前が全部片仮名で、しかも二十人ぐらい名前が並んでて。
読む前はヤバイな、これはと思ってたけど、読み始めたらあっさり読破。
面白かったからだろうね。
うん、地味に面白い。綾辻とかみたいにあっと驚いて「これはいい!」じゃないけど、
「んー、これ、いいねぇ」って感じ。
改めて、山口雅也の実力を痛感。この人、凄いね。
↑
この印象が今でもずっと続いていて、再読しても改めてそう思いました。すごいわ、このひと。
文庫で、結構な厚さがあって、ほんとずっしり。葬儀屋をメインにしたお話で、「死」というものについての薀蓄がいたるところに。ひとによってはそれらが少し冗長と感じられるかもしれないけど、最終的に真犯人を説明しようと思えば、予め読者に知識を与えておかなければ「納得」というレベルに持っていけないんだよな。そこばかり書いてしまうと読者の目が真犯人に向かってしまうから、ヒース博士やグリンの薀蓄は「散らし」の意味もあったんだろうねって今なら思う。
まず前提として「死者が生き返ることがある」っていう世界での出来事で、その点については明確な説明はないままなんだよな。どうして生き返るのか、生き返ったものになんらかの共通点があったのか。分からないけれど、とにかく「生き返るものがある」っていう。
だからこそ登場人物たちも混乱しているし困惑しているし。
いやでもそこから、「生き返るなら殺しても仕方ない」って発展させて、「それでも殺そうとする動機を持つ人物は誰か」という方向へ持って行くのはすごく面白い。それを「推理小説」の中でやったってのが、やっぱ天才だなぁって思うわ。
抜粋。
えーっと、何番目かの被害者のセリフ。
「すまん、ちょっと、死んでたんでな、全然聞いていなかった。悪いがもう一度最初から繰り返してくれないか?」
トレイシー警部の心に平穏が訪れることを祈っております。
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異色のミステリー。
舞台やキャラクターなどの設定が面白かった。
あり得ない状況のなかでの殺人事件は一体誰が犯人で動機は何なのか?
先が気になるストーリーだった。
しかし、中盤はストーリー展開が遅く、少し間延びした印象。
派手な展開になるまでがたいくつだった。
でも、問題解決には実はその中盤もかなり重要だったり。
本格推理の新たな可能性を提示した作品らしい。
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結構読了まで時間がかかりました
なかなか進まなかった理由に自分のカタカナの名前に対する苦手意識があります。
誰だっけ?この人?みたいな
死人がよみがえる、主人公も死んでよみがえる(笑)
そんな設定がばかばかしいようで、
読み進めると納得の結末
とんでもではなく、いろんな要素がまじったミステリの王道に近いかな。謎解きの気持ちよさがあります。
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設定がどんなに嘘っぽくても、その世界のロジックが正しく展開されていればそれが「リアル」ということ。解決編における、前代未聞のロジックに胸踊らせない人がいるだろうか。ミステリーの未来がここにある。
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いや~この本は読んでも読んでも先に進まなくて、読み疲れました。
表現とかが冗長でちょっと厳しかったっす。
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2011年12月29日読了。「このミステリーがすごい!」1989年度版の第8位、総合でも第2位の作品。アメリカ中南部にて広大な霊園を経営するバーリイコーン一族。突然発生した説明不能の「死体が甦る」現象が頻発する中、不可思議な殺人事件が発生し・・・。物言わぬ死者がなぜ・どうやって殺されたか?を探偵が解き明かすのが一般的なミステリのスタイルだが、「甦った死者の言い分を、生者に向かって甦った死者が説明する」というこの小説の形式は、単にアイデアだけの馬鹿ミステリに終わっておらず首尾一貫しているあたり驚異的で、面白い。薀蓄の多さと古きよき欧米ミステリのようなかび臭いすじ運びに中盤はだれるが、終盤の謎解きの面白さは抜群。「ミステリの暗黙的なルール」を了解した上で、それを超えるルールを提示し、なおかつそれに則って話を進めるミステリ。そーいうのが一番面白いミステリなのかもなあ。
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死者がゾンビと化す怪事件が発生。となるとホラーかFTかと言いたくなるが、これは物凄く本格的なミステリなのだ。奇想天外な前提条件のもと、厳密に構築されたロジックと、その間隙をつくトリック、どんでん返し。ミステリの本質を突きつけられた気がする。
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パラレル英国、リビングデッド、パンクな登場人物その他と、
これでもかとのトンデモ設定。
違和感ありきの小説なので何でもアリなのに、
主題が骨太のため、
大事なところは論理的。
かつ人間的。
上手い。
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ミステリー評論家の山口雅也の作家デビュー作。
死者が甦るのに、なぜ殺人が起きるのか? その上、主人公の探偵役のパンク少年も、早々に死んで甦るという設定だ!
しかし、パラレルな設定ではあるが、ご都合主義なところは、一切無い。文章も上手いし、謎の設定、動機、ペダンティックな知識、いわくありげな葬儀屋一族など、申し分なし!この本で、エンバーミングというものを、初めて知った。
ティム・バートン監督が、ジョニー・デップと組んで映画化したら、面白いだろうな、と思った。(ハリウッド映画はネタ不足みたいだし)
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読んだ本の中でもトップクラスの面白さと完成度を持った傑作。
舞台は米国の片田舎。ここ最近、米国内ではあちらこちらで、死んだばかりの死者が蘇るというオカルティックな現象が頻発していた。
私立探偵の主人公は、亡くなった親族の葬儀に出席するためにGFを連れて故郷に戻ってくる。
その夜の夕食の場での、不穏な空気。そして、読者の思惑通りに、殺人事件は起きた――。
死者が死んだ状態で蘇るという超自然的現象の中で行われる殺人。
誰が、なんのために、殺すのか?
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ホラー映画と違うのは、死者は生前の記憶を持ったまま蘇るので、最初は誰もが死者を死者だと気付かないことである。
おまけに途中で主人公が死んでしまい、蘇って自分が死者であることを隠した状態で事件の解決を図るのだ。
死者と生者の思惑が絡み合う舞台を論理的に解決する場面は秀逸。この本はあくまで本格推理小説なのだ。
あなたの常識は、ここでは通じない――。
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伏線とかはうまいんだけど・・・・
設定がどうも苦手な部類だ。
死人が生き返るって・・・・そりゃなんでもありだろ?
ってなっちゃうな。ちゃんと動機は、それなりのものがあるんだけど・・・・
600ページ超の大作だったけど、俺には合わない。
途中でやめればよかったかも(><)
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死者が蘇ることがあるという点を除けば、至って普通のストーリー。
最初の方は死に関する様々な話が語られていて、特にエンバーミングという技術については初めて知った。他にも、死というものについて深く考えさせられる内容だった。
中盤からはストーリーが動き出して、続きが気になってページをめくる手が止まらなかった。そして、驚愕の真実がわかって、とても面白かった。
(殺害の動機については京極夏彦さんの作品を読んでいたからか、意外にすんなりと納得できた)
いろいろなところに伏線がはられていて、まさかあのセリフが…みたいなのが多々ありました。グリンの死の事実はなかなか報われない気もするし、ラストは…。
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アメリカ中で、死者が甦る事件が相次いで発生。
原因不明の怪現象の続発に、生者たちは困惑していた。
パンク青年グリンは、パートナーのチェシャとともに、
ニューイングランドの片田舎にあるスマイル霊園へと向かっていた。
霊園の経営者であるバーリイコーン一族の者である二人は、
死期の近い一族の長、スマイリーの遺産相続のことで集められたのだ。
スマイリーの妻モニカ、そして彼の息子や娘たち、
スマイル霊園の顧問をしている衒学趣味のハース博士などが、
グリンたちと同様にバーリイコーン邸に集められていた。
到着の翌朝、「死」についてそれぞれの思いを語りあうという
風変わりなお茶会の直後、なんと、グリンは不慮の死を遂げる。
……だが、彼は甦った。
自分が死んだことに気づいて動揺し、困惑するが、
周りの者に自分が死んだことを悟られたくないという思いから、
彼は何事もなかったかのように振る舞うことを決めた。
自らの体に防腐処理を施し、エンバーミングによって、
死体であることを極力見破られないようにして――。
だがグリンには疑問があった。
自分は、誰に、なぜ殺されたのか?
それを突き止めることをグリンは決意するが、
その後、スマイリーが亡くなっているのが発見される。
特にその死に不自然なところはなく、死期を悟ったスマイリーは、
かねてから自身で宣言していたように
「自らの死を司宰した」のだと皆が判断した――グリン以外は。
スマイリーも自分を殺したのと同じ者の手によって殺されたのでは――。
そう考えつつも、決定的なものをつかめないグリン。
そして、新たな殺人が起きる。
死者が甦るこの世界で、殺人を行う意味はどこにあるのか?
生と死の入り乱れた事件の真相は?
世間に名の知られている作家ではないが、
ミステリファンならば誰もが知っている作家、山口雅也。
彼の代表作であり、日本ミステリ界に残る記念碑的作品。
国内のミステリに関してのランキングをとると、
だいたい上位に食い込んでくる作品なので、
そちらの方面に明るい人にはおなじみの作品だと思う。
初出は21年前だそうだ。
綾辻行人の「十角館の殺人」とほぼ同時期ということになるが、
やはりあの時代はミステリにとって夜明けの時代だった、
ということなのだろう。
それはさておき、本作は確かに、まごうことなき大傑作である。
何が凄いかというと、一番凄い点は、
扉にて北村薫先生が簡潔に表わしていた。
山口雅也は≪死≫を考察しつつ、
本格推理を新しい器に盛り、
高らかにその≪不死≫を宣言したのである。
「死者の甦り」という現象をミステリの枠内に持ち込むことで、
本作は、従来のミステリの枠組みをいったんは否定してしまう。
ところがその「破壊をもたらした要素」について仔細に分析し、
それをきっちりと理論づけ、定義づけることによっ��、
その「破壊をもたらした要素」をも取り込んでしまう
新たなミステリの枠組みを構築することに、本作は成功しているのだ。
メタな視点からミステリを見つめることで、
ミステリをさらなる高みへと持っていってしまったのである。
いったんミステリを破壊し――つまりミステリに「死」をもたらし、
しかしそのあとでミステリを鮮やかに甦らせてみせる。
この「死」と「生」はまさに本作で描かれているテーマでもある。
本作は、作中で、人間の「生と死」について語るだけではなく、
ミステリの枠組みの「破壊」と「再構築」という、
小説の構造上でも、作中のテーマを表現してしまっているのである。
これを驚異と言わずしてなんと呼ぶのか?
こんな驚異的なアクロバットに成功した例を僕は他に知らない。
再構築された「新たな枠組み」は、
あくまで「ミステリであること」を頑なに守っている。
ちりばめられた伏線、探偵の推理、そして明らかになる意外な真相。
我々のよく知る、そして愛する「ミステリの形」がそこにはある。
そしてその「形」は、ため息が出るほどに端正で美しい。
文庫本としては厚めの650ページというボリュームも、
「斬新」でありながら「伝統的」でもあるという、
相反するふたつの性質を同時に獲得するという
離れ業を演じるためには必要不可欠なものなのである。
だから本作には無駄なところなど一切ない。
また、個性的なキャラクターや、散見されるコメディ風のシーンなど、
エンタテインメント性の点でも非常に優れている小説なので、
それだけのボリュームがほとんど気にならないということもある。
ミステリというジャンルを愛する人なら必読の書と言えよう。
これほどまでにミステリの魅力を伝えてくれる作品は滅多にない。
人生で数冊出会えるかどうかだ。
そのうちの一冊をみすみす逃す手はないだろう。
未読の方はぜひ。