紙の本
明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち
2013/04/29 21:59
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投稿者:Asyl - この投稿者のレビュー一覧を見る
考えさせられた。
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最初、書名を目にしたとき、つまらなそうだなって思った。山田詠美さんらしくない、と。さらに梨木香歩さんの(個人的に面白くなさすぎて困った)「僕は、そして僕たちはどう生きるか」を彷彿させるタイトルで全く期待していなかった。
でもさすが、詠美さん。素晴らしい。以下ネタバレあり。
最初の一文からぐいぐい物語に入り込めた。
ーー人生よ、私を楽しませてくれてありがとう。
という母方の曾祖母の遺言から始まる、かつて美しくあろうとした家族たちの物語。
それぞれの形で相手を失った再婚同志の両親。頼れる人気者の長男の澄夫、そんな澄夫のすぐそばで育った長女真澄。母と血のつながりのない創太、唯一どちらとも繋がっている千絵。
ある日雷に打たれ母の宝だった澄夫が死んだ。死に選ばれ澄夫が死んだ。それから美しかった家族は次第に壊れ、美しかった母はアル中廃人に、というドラマとか映画とかその架空的な物語によくあるストーリー。
でも、さすがだなって思うのは詠美さんの使う言葉たち、言い回し、名言の多さ。
性愛を描くのがうまい詠美さん。「学問」という本は詠美さん的学問で感嘆したが、これは山田詠美が書いた道徳、という感じ。
真澄、創太、千絵、それぞれの一人称で章は進み、ラストの章では三人称に変わる。そしてそして一番最後の頁に思わず鳥肌が立つ。勘の良い人ならわかったのかもしれないけれど、わたしは全く気づかなかった。三人称から一人称の「ぼく」になったとき、その人称使いの見事なカラクリに深く吐息をこぼすこと、間違いなし。
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長男の事故死で変わってしまった家族の物語。
うーん、あんまり好きではない・・・
家族のつながりって強くもあり、脆くもあり、難しいな。
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突然の長男の死から立ち直ろうとする家族の話。偶然にも先週読んだ桜庭一樹の「無花果とムーン」も同じ題材で、どちらも3・11で家族を失った人たちに捧げた作品のような気がする。エイミー姐さんの視線は冷静だけど優しく、人肌の温もりに包まれて癒されていくような感じ。桜庭さんのほうは主人公のとんがった部分が転がってるうちに傷付きながらも丸くなっていくイメージ。
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内容はかなり深刻で重く哀しいのに、軽く爽やかな印象の小説だった。とても読みやすく、心に残るけれど、変に持ち重りしなくて、とても良かった。
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息子と娘を持つ母親としては美加の言動には心当たりがあちこちにありなんというか、チクチクと胸に刺さることが多かった。
どうしようもなく愚かで、限りなく優しいこの物語は、多様化している「家族」の在り方について一つの可能性を示しているようで。
かけがえのない、最愛の息子をある日突然失ったら…それはもう想像しただけでも全身に鳥肌が立つほど恐ろしく苦しい。
そこからどうやって立ち直るか、もしくは新しい一歩を踏み出すか、それは人それぞれなのだろうけど、やはり、自分を必要としている身近な家族によって支えられ埋められるものなのかもしれない。決して『身代わり』という形ではなく。
血のつながらない母親に向かって必死で手を伸ばして愛を求め続ける次男、創太がけなげでいじらしく、切ない。
一番身近な長女、真澄のクールな割り切りも、唯一家族全てと血のつながっている末娘、千絵の毅然とした決意も、本当は母親への愛と母親からの愛に基づいていたのだと気づき胸が熱くなる。
悲しい予感に包まれた最終章の、鮮やかなラストがこの一冊を新しい幸せへのプロローグへと導いてくれる。
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「今ある自分を形作ってきた、切実な愛する人の死」に、何年も悲しみから立ち直れない家族。創太の「ママ、ぼくの大事大事」胸を衝かれる。最終章、失うかもしれない人へのいとおしさに怖気づきながらも、それぞれが一歩を踏み出す。それを見守る目線、大切な人もともにある。うーん、いいお話だった!
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深いなあ、深すぎる。。。
この本にはたくさんの大切なことがつまりすぎていて、
1ページ1ページが心に刺さる。
愛すること、愛されること、
愛する人を失うこと。。。
人は必ず死ぬことは頭では分かってはいるけど
その1人の人の死はとてつもなく重いだろう。。。
そして、その受け止め方、受け入れるのにかかる時間は
ひとそれぞれだよなと本当に思う。。。
そして、それを自己治癒しなければならないのか
誰か助けてくれる人がいるのかも、千差万別だ。。。
でも、人は全てをひっくるめて、
抱えて生きていかないといけないんだろうな。。。
「失う」 ことは「新しいもの」を獲得するスタートになると
この作品について山田詠美はインタビューで答えていたけど
確かに自分の中でそうなったものもあるけど
人の死に関しては、まだまだ私はその域には達することはできない。
この作品は何度も読み直したい。
ラストがすごくよかった。
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図書館にて。
この人の描く家族の物語って、ものすごく新鮮だと思った。
突然主要な登場人物が亡くなるシチュエーションは、西加奈子の「さくら」や、桜庭一樹の「無花果とムーン」などにもあり珍しいものではなかったけれど、同様に家族が崩壊寸前まで追い込まれる状況なのにラストは軽やかだった。
血がつながっているかどうか、家族内での立ち位置、そして母親の言葉というものはやはりとても重く、でもどうしたって逃げられないものだからこそもう気にしないで生きていけないだろうか。
生きているのに死んでいるような母親と、死んでいるのに大きな在感がある兄から独立して、それぞれ軽やかに歩んでいく兄弟たちとそれをずっと見守ってきた兄。
最後の最後で兄の目線が出てきて、急に世界が開けていくような気がした。
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特に自分は今、毎日平和に生きていて、死についてなんて考えもしないけれど、人間は必ず死ぬ。大切な人が明日もずっと側にいてくれる保証なんてないと思った。幸せな理想の家族を演じていた面のある人たちにとって、この場合は母にとって澄生の死が大きすぎて、一気に理想は崩れ落ちる。年月をかけて少しずつ前に進む姿は、家族がいかに心の面でも支えとなるものか、実感させられた。でも、この母の憔悴ぶりには正直モヤモヤした。
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「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう。」...えっ!?エイミーどうしたん?!と思わせる最初の一文。でも、読み進めて行くうちに、いつものエイミー節があちこちに散りばめられていて安堵する。
ユーモアたっぷりに、死について、家族について、愛について、生きるということについて、たくさんの疑問を投げかけられ、同時にヒントを受け取った、そんな感じ、かな。
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夫・妻を失った家族同士が1つになって、絵に描いたような幸せを目指す澄川家。形になってきたと思ったら、長男を亡くして母親がアル中になり、家族が不安定になっていく。
兄弟の視点で、それぞれの方法で家族の死を乗り越えようとする様子が描かれている。
家族とは、血のつながりとは、死とは。テーマが多いかもしれないけれど、人生ってそういうものと思うと、全てが濃厚に見えてくる。
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母に溺愛されてた長男の死による家族の崩壊と再生を描いたお話。残された子供達が自分と家族と死に向き合い各々の道を踏み出していく過程は生々しく瑞々しい。久しぶりに小説でいい親父に会う。この物語や文章が好き、出会えて良かった。
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再婚同士新しく家族になった途端の長男の死から、それぞれのドラマへ。死を受け入れられずアルコール依存症になった母だけど、どこか憎めない魅力がある。ラスト、長男の命日ではなく誕生日を祝う再生へのシーンが良かったな。
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詠美さん作品ではよく取り上げられるテーマだと思いますが、深かったです。心に残るフレーズ、名言がたくさんありました。線を引きたいくらいです。ラストに感動です。詠美さんの文章、優しく、温かいです。