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非常にわかりやすく戦略について網羅的に解説されている。原題が、Competition Demystified。たしかにDemiystifiedでした。
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読後感はあまりよくないです。
原因は、談合をすすめるかの如く、企業(業界全体)の利得を最大化する内容のオンパレード、つまり顧客目線の話(マーケティングなど)がないからのような気がします。
また、帯にもあるように、本編中フォーカスされているのが参入障壁についてであり、それすらもほとんど存在しない。あるいは消滅するとされており、最終的にはほとんどが完全競争市場となり、そのなかでは効率化こそが重要となっており、(え?戦略はどうしたの?)って気持ちになるからかもしれません。
それを踏まえたうえでも考えさせられることは多い。
例えば、幻想で市場を選んではいけないという感じはします。また、経営のプロはこういったことを考えているんだということ、つまり物事を分けて考えジャッジしているということはショックでした。
なお、読むにあたっては、経済学の基礎的な知識がないと辛いかもしれません。
独占・寡占・完全競争市場・ゲーム理論・規模の経済あたりは予習して読まれると、経済学って経営につながる!って納得できるでしょう。わかってる人からすればあたり前ですかもしれませんが。
【付箋ポイント】
IBMは、これらの市場では競争しないことを選択したのである。我々の定義に従えば、事業領域の選択は戦略的意思決定である。なぜなら、それによって自社の将来的な収益に影響を及ぼす外部のプレーヤーの顔ぶれが決まるからだ。 P6
市場の参入障壁が存在するのであれば、新しい企業が市場に参入したり、既存企業が事業規模を拡大したりすることは困難になる。(これは本質的に同じことを意味している。)突き詰めれば、ある特定の市場には二つの可能性しかぞんざいしない。業界内の既存企業が参入障壁(または事業規模拡大障壁)によって守られているか、そうでないかの二つである。競争領域における参入障壁の有無ほど、企業の成功に大きな影響を与える要因はない。 P8
真の競争優位といえるものは次の三つのタイプしか存在しないので、この分析は簡単に行うことができる。
・供給面の競争優位
より厳密にいえば、競合より安く製品を製造できる、サービスを提供できるといったコスト優位を指す。(中略)また、特許やノウハウで保護されている独占的な技術を持っていることで、コスト優位を築くケースもよくある。
・需要面の競争優位
他の競合では満たせない市場の需要を獲得するおとによって競争優位を築いてる企業が存在する。これは単に製品の差別化やブランドイメージによる問題ではない。なぜなら、強豪も同様に製品を差別化したり、ブランドを作ったりすることができるかもしれないからだ。需要面の競争優位は、
顧客の週間、スイッチング・コスト、代替先をみつける難しさやそれにかかる費用などの要因に基づいて、企業が顧客を囲い込んでいることから生じるものである。
・規模の経済
総費用に対して固定費の占める割合が大きい業界では、売上数量が増加するにつれて、製品単位あたりのコストが減少する。このような場合には、たとえ企業間の技術水準がかわらないとしても、生産規模���大きい既存企業が他社に比べてコスト競争力を持つことになる。
P14
業務効率の重要性
第一の示唆は、参入障壁が存在しない市場では、企業の存続は業務活動の効率性にかかっているということである。(中略)これらコモディティの市場価格は。長期的には生産効率がもっともよい企業のコスト水準によって決められるので、これに匹敵する効率性を達成できない企業は生き残ることができない。しかし、汎用品に限らず製品が差別化されている市場でも、ほんしつてきにはこれと同じ条件が当てはまる。
製品の差別化は外で食べるランチのようなもので、ただでは入手できない。自社の製品を競合品と差別化するためには、広告宣伝、開発、販売、カスタマー・サービス、購買、流通チャンネル、そのほか多くの機能分野に投資しなければならない。これらの機能を効率的に遂行出来なければ、自分たちよりもうまくそれをおこなう競合の後塵を拝し、販売価格と市場シェアのいずれか、または両方が低下する。 P30
本当の意味での独占的技術は、自社の内部で開発されたものでなければならない。製品や生産工程の技術革新が外部のコンサルタントや開発業者によって主導されているような業界では、独占的な技術に基づく強力なコスト優位は存在しえない。なぜなら、技術をもっている外部の業者に対して金銭を支払えば、だれでもその技術を手にいれることができるからである。 P39
製品やサービスが複雑であったり、顧客用にカスタマイズ化されたものであったり、生活や事業活動に重大な影響を与えるものの場合は、探索コストが高くなる。 P47
もしこの町に二つ目の店舗が回転されれば、顧客は分散され、どちらの店も十分な利益を上げられない状態に陥ることが予想される。経済的な諸条件が同じだと仮定すれば、後発企業が先発企業を市場から追い出すことは期待できないので、後発企業にとっては、先発企業の独占体制をそのままにして、市場から立ち去ることが最善の選択肢となる。 P52
規模の経済に基づく競争優位を持っている企業にとっての最善の戦略は模倣、すなわち攻勢を仕掛けてくる競合と同じ行動をとることである。(中略)そうすれば、囲い込み顧客には慣性の力が働いて既存企業のシェアは守られるし、その競争段階でも平均コストは新規参入企業の方が既存企業よりたかくなる。確かに、この行動をとることで既存企業の収益性は低下するかもしれないが、新規企業の方が痛手は大きく、利益が完全になくなってしまうことも多い。 P53
固定費は、各主要都市や一定の地域圏内で大きくうごくことがない。しかし、この範囲を超えて営業活動を行おうとすれば、新たな固定費が発生して、規模の経済の効果も弱まる。 P56
市場の成長は規模の経済を弱める
規模の経済に起因する優位性の強さは、固定費の重要度の高さと直接的に関係する。市場規模が拡大しても、固定費の金額は一定で変わらないが、その反面、変動費の金額は、市場が成長する速度に比例して増加するため、総コストに占める固定費の割合は必然的に減少することとなる。 P58
インターネット・サービスやオンライン販売のように非常に大きな成長が��込まれている市場では、固定費の重要性が高まることは考えにくい。新規参入企業がひとたび、事業活動に必要なインフラを維持するために十分なシェアを獲得してしまえば、アマゾンのような既存企業が彼らを追い出すことは非常に難しくなる。
直感にはんすることかもしれないが、規模の経済に基づく競争優位は、地理的もしくは製品種別の範囲が限定されており、固定費が相対的に大きな割合を占め続ける、ローカルかつニッチな市場で見られることがほとんどである。 P60
真に魅力的なニッチ市場は、①顧客の囲い込みが可能である、②必要となる固定費の水準に比べて市場の規模が小さい、③用心深い支配的企業が存在しない、という3つの特徴を備えていなければならない。理想をいえば、その周辺領域に事業を広げていきやすい市場であれば、なおさら良い。いずれにせよ「ローカルに考える」ことが成功の秘訣である。 P66
競争優位の源泉を特定するステップ
・業界内で支配的な地位をしめている企業は、独占的な技術やコスト優位から恩恵を受けているか。
・支配的企業が、習慣、スイッチング・コスト、探索コストに基づく顧客の囲い込みを行っているか。
・ある程度の顧客の囲い込みと組み合わされた規模の経済が存在するか?
・以上3つのどの条件にも当てはまらない場合、既存の有力企業が、事業許認可、助成金、法的規制、特別分配などの政府の介入による恩恵を受けているか?
たいていの場合、最初に作成する業界マップは「単純さ・扱いやすさ」と、「包括性・完全性」という両極の間でバランスをとることが要求される。最初から詳細に立ち入りすぎてしまうと、マップがあまりにも多くのセグメントで埋め尽くされてしまうが、大雑把すぎるマップでは重要な個別セグメントを見落としてしまうおそれがあるからだ。 P76
シナジー効果の利点を強調する議論はほとんどの場合、疑わしいものである。(中略)しかし、自社の中核セグメントですら競争優位を享受していないような企業が、それ以外のセグメントで他社にできないことをできるはずがない。 P94
最初はできるだけシンプルな分析を心がけ、そのあと必要においじて複雑な分析を加えていくことだ。分析が行き詰まって頭が混乱したら、一旦立ち止まってもう一度単純化を行う。明快さは戦略分析を行ううえで極めて重要な要素である。
最後に「ロ^ーカルに考える」ということが肝要だ。アップルの歴史を振り返って、戦略的に有望な分野があったとすれば、それはDTPや画像を駆使するアプリケーションソフトのセグメントである。アップルが広大なパソコン業界お全領域を取り込める見込みなど過去になかったし、現在もない。P101
これよりも優れた反応は、攻撃を仕掛けてきた相手のシェアが大きく、自社のシェアが小さい市場を選びだして、そこで値下げを行うというものである。(中略)ただ覚えておかなければならないのは、こうした反応は競合を攻撃すること自体が目的なのではなく、価格の安定性を取り戻して、業界全体の強調体制を強化するのが目的だということである。 P126
強調体制を低コストで築くいくつかの方法(P141-144)
新規参入者が既存企業からの反撃を避けるためには、既存企業にとって抵抗するよりも強調するほうがずっと低いコストで済むような戦略を考える必要がある。
第一の方法は、囚人のジレンマ・ゲームと同様に、相手との直接的な競争を避けることである。(既存企業とターゲットなどを変える)
第二の方法は、小さな行動を一歩ずつ積み重ね、物事を静かにすすめていくことである。既存企業のシェアを大きく奪う計画を高らかに公表するといような強気の行動は、ほぼ間違いなく攻撃的な反応を招く。
第三の方法は、既存企業hが支配しているすべての市場に参入するのではなく、そのうちの一つにすぎないということ、そして自分たちは他の潜在的参入者とはタイプが異なる存在であることを、既存企業にできる限りわからせることである。
第四の方法は、複数の既存有力企業が存在している場合、新規参入によってかれらが受けるマイナスの影響を、できるだけ薄く広く分散するように努めることである。(1社にのみダメージを負わせない)
最後に、市場で必ず成功する、もしくはすくなくとも市場にとどまり続けるという強い意志を、事前に広く公表するという方法もある。(うまくしないと激しい消耗戦につながる恐れがある。)
未開拓の領域に他社よりも先に参入しようとするっ試みが、先発企業とそれよりわずかに遅れて参入した企業のどちらにとっても良い結果をもたらさないことが多いのは、かこの歴史を見ても明らかである。
参入・阻止ゲームにおける「大胆さよりも慎重な行動を優先せよ」という鉄則は、とりわけ無法地帯となりがちな未開拓の領域においてその重みをます。 P148
一方、強調戦略ではこの優先順位が逆となり、分析の主眼は結果に置かれる。つまり、ぎょうかいの最適化という観点から、全体の総利得をどこまで上げられるか、その利得を公平性の原則に従って、プレーヤー間でどのように分析するのかを先に考え、各プレーヤーの戦術的。戦略的な課題や強みは二次的な問題とする。 P157
したがって、威嚇点を超える余剰利得の創出に関しては両者が同等の役割を果たしており、その分け前にあずかる権利も双方が等しく持っている。 P173
うまくいった買収に見られる特徴
第一に、買収の標的とする企業は「魅力的な」(利益や成長率が高いなど)業界に属していなければならない。
第二に、買収者と被買収者の間にはシナジーが存在しなければならない。
第三に、買収プレミアムの金額は、シナジーの価値よりも小さくなければならない。 P183
世間一般では、ベンチャー投資の成功は二つの要因に依存すると考えられている、その一つは事業計画の質であり、もう一つは事業を推進する人材の能力である。しかし、実際には、このうち後者の要因のみが重要な意味を持つ。 P193
競争的な市場で成功する方法
持続可能な競争優位をもった企業は例外的な存在であり、一般的な原則にはなりえない。
業務効率の追求、原材料費、人件費、設備費ほか業績に影響する費用項目を管理することはもちろん、動じられた費用から生産性の高い収益を生むことも意味している。
効率性を生産性の向上に重���を置く優れた経営から得られる利益は、構造的な競争優位から生じる利益に匹敵するものとなりうる。
図9-1 参照 P205
企業間の生産性の差は驚く程大きく、そして持続的に存在し、それを生む最大のよういんとなっているのは、マネジメントの質の違いであるというものだ。 P212
しかしながら、戦略のみが全てを決めるわけではない。戦略の策定にのめり込んで業務活動の効率化をおろそかにすれば、不適切な戦略とおなじほどの大きな損害を被ることになる。 P218
戦略の策定においては三つの基本的な目的が存在する。第一の目的は、企業が従事する市場を特定し、競争優位と参入障壁の有無の観点からその位置づけを定めることである。もしその企業が競争優位をもっていれば第二の目的は、自社の業績に大きな影響を与える他社との居想的な相互作用を認識して、それをうまく管理することである。第三の目的は、競争優位を持っているか否かに関わらず、すべての企業に当てはまるものであり、企業が向かうべき方向性を示す単純明快なビジョンを策定することである。このビジョンは、事業活動に携わる全社員の関心を、目標到達へ向かわせるものでなければならない。 P219
利益率が低下した理由として唯一説得力のある説明は、ウォルマートが事業領域をアメリカ全土や海外まで拡大するにつれて、これらの新しい領域では全盛期に享受していた最も強力な競争優位-ローカルな規模の経済と、競合に奪い取られない程度の顧客の囲い込みの組み合わせ-を再現できなかったというものである。 P249
競争優位は適切に防御される必要がある。
ウォルマートの低価格政策は、ローカルな規模の経済を活用する戦略に本質的に備わっている要素であり、別個のものではない。
しかし、本拠地をおろそかにして拡大に走るという不適切な戦略を選択したことによって、その本拠地に競合がすんなりと入り込めるような状態をつくってしまい、拡大を図った進出先のみならず、みずからの本拠地でも敗者となった。 P253
クアーズのビールをなかなか手に入れられない東部在住者からの誘惑的な懇願をむしして、みずからが強力な地位を築いていた三地域での市場シェアを堅守していたなら、1985年度における販売数量は、四四の州に営業地域を拡大した現実の数量よりも多かったに違いない。 P267
インターネットは、規模の経済を築くどころか、望みさえすればだれもが入っていける無数の入口を提供した。結局のところ顧客にたいしてはこのうえない恩恵を与えたインターネットは、それを利用して顧客にサービスを売り込む企業にとってみれば、利益の破壊者だったのである。 P272
先発企業は、常に自社を協業よりも一歩先に立たせる経験曲線効果を得られる可能性はあるが、一方ではこれには問題点もある。他社よりも先に経験をつむことにより歩留まりが向上し、単位コストが下がっていくことは事実だが、この効果は、最新の製造ラインに一番先に投資しなければならないという不利な点によって相殺されてしまう。 P282
よくあることだが、一般的に広く共有されている問題を解決することが、富を築く道とな��うる。 P287
シスコの顧客はサポートとシステムの維持管理をシスコに大きく頼ならければ、機器を効果的に活用することができなかった。一般的のひとが家電製品をあつかうのと同じように、シスコのネットワーク機器を使いこなせるだけの技術力を持っていなかったためである。 (持続可能な競争優位) P298
効率的な戦略を策定するための必要不可欠な第一歩は、その企業が属する業界と、その競争構造の分析を行うことである。 図12-1 P305
(コカ・コーラとペプシは)両者はついにその戦略を変更した(表12-5)彼らは、強調する意思があることを相手にはっきり伝える行動をとるようになった。 P320
シナジーは希にしか生まれない
つまり、業界全体として番組コンテンツの供給が不足する状態にならない限り、フォックス放送が二十世紀フォックスと同じグループ関係にあることから得られる利益など何もないのである。 P347
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原書が書かれたのが2005年、日本で出版されたのが2012年なのでそのタイムラグのせいで、アップルやAMDなどの本書のケースでは否定的な結論を出された企業のその後の成功が扱われず、残念なことに納得感がやや薄れる内容となってしまっています
とはいえ、それら個別の企業のモデルを別にすれば、極めてオーソドックスな内容であり、理論的な面では納得のいく内容でした
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大きく分けると第一部・理論編と第二部・ケース・スタディ編に分かれ、参入障壁の構築、囚人のジレンマ、協調戦略等についてアメリカの企業(デル、ウォールマート、コカコーラ、コダック等)や日本の企業(任天堂、富士フィルム)がとった戦略を例に詳しく解説されています。入門レベルではないと思いますので、他の本である程度知識を身に着けてから読む事をお勧め致します。