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紙の本
小さい美少女と学生運動
2010/05/21 08:34
11人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:四十空 - この投稿者のレビュー一覧を見る
Q かわいい女子学生が自己批判し続けたらどうなるでしょうか?
A 自殺します。
1960年代学生運動が盛んだった。後の世代は学生運動をしていた世代のなかの一部の種類の人たちを「理屈っぽく、批判精神ばかりあり、自分の責任は棚上げして、後輩を引きずり下ろす、困った人たち」と受け止める。
一方、その批判されている人たちは、いまだに「全共闘はすばらしい」と言ってはばからない場合も多く、私にとってこの時代の「手法」は謎なのである。どの位価値があるのか、或いは無かったのか。
あの時代の「自己批判せよ!」と教授たちの胸ぐらを掴み罵倒する学生たちの中、もし一学生として過ごしていたら一体どんな気持ちだったのだろうと考える。そのヒントとして、高野悦子さんの「二十歳の原点」はひとつの答えである。美しく、愛されて育ち、動物好きで、心優しく、スポーツ好きで活発、頭も程よくいい彼女が、なぜ自殺までするほどに追い詰められたのか。
「未熟である己を他者の前に出すことを恐れてはならない。
マルキシズムのマの字も知らないからといって、帝国主義の経済構造を知らないからといって、現在の支配階級に対する闘いができないという理屈にはならない。私の闘争は人間であること、人間を取り戻すと言う闘いである。(中略)己が己自身となるために、そして未熟であるが故に、私はその全存在をさらけ出さなければいけない」
・・・(失礼ながら)こんな面倒くさい、歯の浮いた台詞を日記に書き、彼女は自らを鼓舞しなければならなかったか。全くバカバカしい。また彼女はわざと露悪的に性の話も書く。彼女は男ではなく、かわいい弱い若い女性なのに。
恐らくこの時代はあらゆる「美徳」も自己批判の対象になっていたのだろう。彼女は自分の美貌をも「批判」されるから、伊達メガネをかける。なんという下らない時代だろう。まるで一風変った新興宗教の中の世界のようである。そして、この手の「批判」は現在の日本でもそこらじゅうで起きている。この時代の影響を考え直す時期であるかもしれない。
紙の本
闘っているもの
2008/08/20 14:40
11人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一時期よく読まれた本だと聞いている。僕も25年ほど前に読んだ。そのころは僕自身が まだ高校生であり この本に基本的に共感しながら読んだことを憶えている。作者が自殺したという点に共感したのだろうか。高校時代とは ある意味で死が甘美に見える時期だったのかもしれない。
今振り返ると作者の高野さんの痛ましさが分かる。何が痛ましいかというと 結局彼女は「自分が闘っているもの」がよく分からなかったのだと思う。
彼女が 学生運動であるとか マルクスの本を読む事であるとか 当時の時代の風潮に素直に応じて 素直に努力している姿が浮かび上がってくる。彼女はそれに疲弊して自分で死を選んだと 自分で思っていたのに違いない。
但し 本当に彼女の上にのしかかっていたものは そんな大上段な「思想」であるとか「信条」であったのだろうか。僕には疑問だ。
彼女が闘っていたものは 僕には見えない。但し いずれにせよ それは「思想」や「革命」では無かったのだと思う。彼女自身はそうだと思っていたにせよ。
そうして 僕は そんな彼女は不毛な戦いに疲れ果てて死を選んだとしたら 本当にそれは痛ましいと思うのだ。
不毛とは自分が闘っているものが分からないことをいうとは 村上春樹の言葉だったと記憶しているが 正しくそれだ。
最後に飾る彼女の詩は美しい。彼女の詩人としての才能を伺わせるものがある。これも惜しい話だ
紙の本
家を出る。
2008/07/18 19:22
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
二十歳の原点(にじゅっさい) 高野悦子(たかの) 新潮文庫
作品は自ら命を絶たれた作者の言魂(ことだま)です。17歳のときにこの本を読みました。私が家を出るきっかけになった1冊でもあります。
49歳の今、再びページをめくり始めました。日記です。1月から6月までの… 作者は6月に、通っていた大学があった京都にて、鉄道へ飛び込み自殺を図り亡くなりました。
読み進むごとに作者の死が近づいてきます。日記の中では強気で明るい彼女です。しかし現実世界ではおとなしいお嬢さんだったと思います。
記述の日記は自問自答を繰り返しています。未熟であること、ひとりであること、それが二十歳の原点と記されています。
人間が生きていくうえで必要なもの。空気、水、食べ物。そして、コミュニケーションです。人は他者との関わりが無くなると死にます。本の前半、作者はカミソリで手を切ります。淋しげです。そして死の1か月前に、家族や友人と決別します。
人間は生き続けていくために、わずらわしいと思いながらも、なにがしかの人間集団に属していかざるをえないのです。
著書は他に「20歳の原点序章」「20歳の原点ノート」があります。中学・高校の頃の日記だったと思います。17歳のときに全部読みましたが、もう内容を覚えていません。
紙の本
こんなにも淡く切ない青春とは何ぞや。
2002/03/22 01:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:20代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校3年生の終わり頃、ふと目にした雑誌の図書紹介。この書名がなぜか忘れられなくて、でも、著者の名を思い出せなくて、散々探し回りました。やっと見つけたとき、私は二十歳になっていました。子どもは卒業、しかし大人の世界はわからないことだらけ。世の中の嵐にのみ込まれそうになりながら、二十歳という時間は過ぎていくのかもしれません。著者は、この時代を懸命に生き、懸命に答えを見いだそうとしてもがき苦しみます。学園闘争華やかな時代に青春を歩んできた人、また彼らの次世代にも読んで欲しい一冊です。