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この物語は嫌いと答えるひとのが多いと思う。けど、わたしは始めから吸い込まれ、終わった時には好きだなって思った。
なにもかもがスッキリしない物語。曖昧な。肝心な描写を避けていて、で、結局どうなったの? の連鎖的な。5歳のときに駿は母親に連れられ線路を超えた先にある夏の家を度々訪れることになる。駿の母は夏の父に猛烈に恋をしていた。夏の母は他界しており、駿の父は外科医だった。
それから場面は小学生中学年になり、夏はすでに不良と呼ばれ大学生の彼氏がいた。駿はガリ勉的な子。
さらに中学年になり、高校、大学、結婚…と進んで行くのだけど、どうもすべてが釈然としないのだ。それが嫌な感じではなく妙な心地よさがあるからまた厄介で。断言的なことがない。
たとえば夏が小学生のときから付き合っていて、愛し合う行為をしていた相手の大学生との別れまでの詳細とか、処女喪失を捧げ愛しくてしかたなかった千秋に他ならぬ駿とセックスをしたと嘘を吐いてわざと恨まれるような別れ方をしたくせに、偶然、や、必然かもしれない再開時に婚約者を棄てて千秋にアプローチしたところ、そこから場面は一気に飛び結婚までこぎつけたその空白。さらには結婚生活を飛ばして娘がいてさらには千秋には他の女がいること、とか。
その微妙に曖昧で、けど計算しつくされた完璧な曖昧加減が実にわたし好み。
駿と夏の決して愛ではない、むしろ怯むくらいの繋がりが物悲しかったな。
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母と父が愛人関係にあったことで、奇妙な幼なじみとなった駿と夏。
本当の愛は、いったいどこにあったんだろう?
たぶん、どこにもなかったんだろう。
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交わるようで、交わらない。
だけど、ほんのちょっとのかかわりが続いていく。
昔の記憶、それが
「あなたにだけわかること」となって
二人をつないでいく。
それは、わずらわしかったり、奇妙だったり、
心の支えなんかじゃないのに、
細々と繋がっている。
現実的には、人のつながりってこんな程度かもしれない、
華々しいドラマなんてなくて…
淡々とただ過ぎていく昔の記憶なのかも。
速読系ですが、じんわりと響いてくる設定です。
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駿と夏。
ごめんなさい。・・・誰に?
期待値が大きかったという事もあるのだろうけれど、好きになれず。
ただ、最近、読み終わって表紙を見た時に、
「あゝ、この題名しかないよな。」という感動がある。
この本もそうだった。救いだわ。
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五歳の時、親同士の不倫で出会う駿と夏。それぞれの恋愛を重ねつつ、大人になっていく2人の愚かな恋愛遍歴を描く
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きれいな表紙にひかれて借りてきたけど……。
残念ながらあたしにはわからなかった。
ときどき、誰が語っているのかわからなくなるんだもん。
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著者らしい気持ちの悪さ(褒め言葉)を漂わせつつも、なんとなく(意外にも)江國さんの作品を思わせもし、過去、川上弘美さんの『夜の公園』を読んだ時に「(えーなんでー?)江國さんっぽい...」と思ったのと同じような気持ちになった。
著者も、川上さんも、江國さんもそれぞれに好きだけれど、実はものすごく狭い世界しか見ていないのかな、と、こういうことがあると思う。
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お得意の不倫ものだけれど、今回はちょっと趣向が違った。
主役は不倫をしている男女それぞれの子供、駿と夏。
大人が秘密の時間を持つ間一緒に過ごした二人。
ほんの小さな子供だった二人は人生の時折ふと交わる。
それは愛なんかじゃない、情でもない。
共犯者に近いと思う。
そんな二人の関係性が妙にリアルだった。
親のしていたことが何だったのか理解する年頃になっても、親を責めたり反抗したりしない二人の姿が痛々しかった。
どうしようもない親をじっと見てきた二人は、どうしようもない大人になる。
人生の道々で時折交わる二人は因縁から抜け出せないようにも見えるし、それが必然のようにも思える。
いい人ばかり出てくる小説はどうも好きになれない。
空々しくて。
むしろこの作品のように欠陥を抱えているけれどなんだか憎めない人達にどうしても共感してしまう。
よくよく考えてみるとまともな人が誰一人出てこない。
それぞれの親も、恋人も、その子供たちも。
だめな人間だからこそ愛おしいんだと思う。
井上さんの作品は好き嫌いが分かれそうであまり勧められないが、この小説はよかった。お勧めできるかも。
独特のざらざらした感覚を残しつつ、サラッと読める。
そして何といっても最後の最後が切なくて。
余韻がじわーっと残る作品だった。
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オトナの恋愛に振り回される子供たち…残酷で汚い世界なのだけれど、美しい文章の荒野ワールドに引き込まれました。駿と夏の戦友みたいな友情が愛おしく感じられました。
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図書館にて。
出だしから不穏な空気が漂う。
もしかして、という悪い予感通りの、気持ちの悪い人間関係からのスタートだ。
完璧な人など1人もおらず、いいところも悪いところも影響しあいつつ年を重ねていく。
さまざまなことがあるけれど、結局は時間とは同じに流れていくのだなと思う。
行き死にすら淡々と流れていくようにみえる。
その中で、この題名のように、それぞれの関係の二人の中でしかわからないことがあるだろう。
主人公である峻と夏の関係だけではない。
二人の父と母の関係も、それぞれも夫婦の関係も、親子の関係もそうだろう。
1人1人、それぞれに「あなた」とその人とだけわかることを共有しながら、いいことも悪いことも全部一緒に時間が過ぎていく。
もう少し年を経て振り返った時、人生はこんな風に見えるのだろうか。
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この人の作品にありがちなのだけど、ぼんやりとしてつかみにくいのと、登場人物に感情移入が全くできませんでした。
登場人物が、みな不倫や浮気をしていて、人間不信になりそうなお話。
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読後感が妙な物語だった。
母とその息子の駿と母の恋人とその娘の夏。
その二人の幼少期から中年までの物語。
語り手が駿と夏に交互にかわる。
二人が恋愛関係になるかと言えば、ならない。
でも人生の節目節目に思い出したように
連絡をとり、何かを確認しあう。
その微妙な空気感が題名である恋人でも妻でも夫でもない
その相手、駿と夏の間だけでわかることなのかな。
でもふあーっとした内容で、何が一番伝えたいことなのか
あまり伝わってこなかった。
夫に隠そうともせず恋人に夢中になり
恋人と別れた後は恋人相手に何かしら問題点を
みつけてからみつこうとする
ちょっとエキセントリックな駿の母親が病気になり
死に近づいて、駿の成人後離婚した父がいう、お母さんの
こういう感情も死ねばなくなるんだな、不思議だな
という言葉が心に残った。
極端な話、尼崎の殺人事件で自殺した犯人の
ものすごいどす黒い感情だって自殺してしまった後は
突然消えてしまうんだ。それが自分も子供の頃から
死んだら感情はどこへいってしまうんだろうって考えていた
その怖い気持ちと一致してなんかはっとした。
読み返しなし、読後感はうーん可もなく不可もなく。
読んで良かったどうかもわからない作品だった。
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表紙にひかれて手に取ってみたけれど、登場人物にいまいち感情移入できなかったのが残念。ラストも余韻が残ると言えばそうなんだけど、投げっぱなしって言った方が正しいように思う。
最初から最後まで、すっきりしないまま終わってしまった。
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小さい頃から大人になる過程を書いてました。
鬱々としていて、両親と子供の複雑な関係の話です。
斜め読みでしたが、途中で不倫や浮気で面白くなったので、また読み返したいです。
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鬱々としたものを抱えて屈折しながら成長してゆく過程が生々しい。
過去のトラウマが、長い年月をかけていつしか身体の一部のような暗い穴になっている。
ふたりの間に好意はなかっただろうけど、そこに空虚なものを感じている者同士、愛情に似た親近感があったのかなと思う。
むしろそこが似ていたからこそ、恋にはならないのか。求めるものを、自分と同じように相手は絶対に持っていないと確信してるから。