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よねかと言う女性に翻弄されていく周りの男性の話(自殺した友人)を中心に展開されていくかと思いきや、残された妻とよねかの生い立ちがメインだったように思える。作中に出てくる精神科医の先生とのやりとりが、人生の教訓になるような示唆に富んだ言葉が多かった。
また若いよねかに溺れた初老の男性が、妻の死亡を機に行き場のない気持ちになる。浮気は何も残りません笑
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★2.8ぐらい。
宮本輝作品にしてはイマイチ。
自殺した友人の足跡をめぐる中年の技術者と、その友人の妻とが交互に自己語りする形式。友人の死に絡む、宿命の女の過去が明らかになっていく。
肝心の友人の死の真相がうやむやのまま終わってしまいミステリーとしては不発。美しいタイトルだが、作中のモチーフとしては弱い。ただし、夫に先立たれて精神錯乱に陥った母親の再生物語として読めば感動できるかも知れない。
後書きで著者の家庭の事情を知った後だったら、なぜこれを書いたのか理解できるんだが…そういう裏事情を知らないといけないものは、どうなんだろう。
筆者は自分と同じ背景を持つ人を励ましたかったのかもしれない。あと、この人、女の心情を描くのは上手いよね。
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ところどころことばの遣い方がはっとさせられるほど綺麗だった。
もっと綺麗な日本語を知りたいな、と思わされた。
ただ、話の内容は正直いまいち分からなかった。
他の方が書かれたレビューを見ても、宮本さんの作品の中ではいまいちと書かれていたものもあった。
これで宮本輝さんの作品に限りをつけるのではなく、もう少し別の作品も読んでみたいと思う。
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解説をよんでいて、宮本輝の小説には、自殺というテーマがよくでてくることを知った。
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ほかの小説にもよく出てくる自殺のモチーフである。
自殺といっても、自殺した当人よりむしろ、すぐそばで誰かに自殺されたものは
どうするかという問題である。
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読んでいると、死よりも、生きるためのすべをかいてあるように思えた。
死なないで、生きるためにこうして!って生きることへのヒントがちりばめられている
ような気がした。
最近樋口裕一先生の本で、知的な思考は訓練で身につく。と学んだが、
自分を好きになること、これも訓練で身につくのか!と思った
自分を好きでいる訓練は、生きるために必要。
生きることは、自殺しないことではないと思う。
アドラーでいう、他者からの承認欲求を求めて他者の人生を生きることも、
自分自身を生きることではないと思う。
自分の人生を生きるためには、自分のことを大好きでいる訓練が必要。
失敗しても大好き!ということは大事だけど、自然と大好き!っていえるような
行動を増やしていきたいと思った。
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よねかの思い出を探る旅は、そのままよねかに引き寄せられた男たちを振り返る旅であった。美しくかつ強い女性であったよねかはまた、人間の業を強烈に意識した女性であった。傍目からみるよねか像とは異なり、付き合った男たちは結局その心の美しさに思いを馳せ、卒業していくのだ。
杉井と加古がそれぞれの立場で過去を振り返っている。それぞれ独り語りや日記の記述でその振り返りを綴るわけだが、国内は北海道から糸魚川、大町、岡山、海外ではヒマラヤ、パキスタン・カラチ、パリとそのスケールは非常に大きい。スケールの大きさと登場人物それぞれの、繊細に変化する心の動きが合わさりきわめて立体的、重層的な物語構成を感じた。
しかし、登場人物はいずれも極めてオリジナルな人物が揃っている。独りで語る杉井が最もシンプルな人物像である。そのほかは、競走馬牧場関係者であったり、骨とう品屋主人であったり、バーのオーナーであったり、美術商であったり。だからこそ非日常の物語が次々と紡ぎだされるのかしれない。
物語としては最後はかなり宙ぶらりんな感じで読者の思考にいろいろと委ねられているが、それはそれで小説なんだろうと。
精神科の先生の至言が身に染みた。
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塔屋米花という一人の女性をめぐって、現在から過去、北海道、糸魚川、東京、カラチと辿る足取りが交錯する。その根源の謎が解けぬままエピソードやつながりが見えてくるのが面白く感じた。
会う男性全てを惹きつける謎めいた美貌の女。誠実で努力を続ける経歴を知るにつれ、彼女が破滅の運命の女だったのだなと思う。
艶を持つ少女、転校、謎の浮気と死、『錦繍』とモチーフがよく似てる。
加古の「あの日」が明かされなかったのが残念。
ずいぶん皆様お上品な言葉を使っている。
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著者の作品として複雑な内容だった。主人公の女性をめぐる男達の出逢いと葛藤。加古の死は謎は?読者に想像を委ねる、そういう手法なのだろう。2017.11.8
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夢中で一気に読める本を求めて、宮本輝を手に取った。カーテンで仕切られた病室で2.5日位で読んだ。夜の日本海側の村、古美術展、バーなど、薄暗い場面が多くシンクロしてぐんぐん読めた。
2人がそれぞれよねかを調べ、神視点の読者が全てを知る奇妙な面白さ。
杉井はよねかを一目も見られず、津田が作る美味しいクリーム・コロッケを知らない。
美須寿はよねかの女の子らしい一面や男との接し方は知らない。
それでいいんだと思う。
初恋の中学生の少女を買った中年の男なんかに会わない方がいいし、浮気相手の異性との話し方や交わり方は知らなくて良い。
自殺を乗り越えこのさき生きていくのに必要な情報が、2人にうまく行き渡った。
加古の死因は最後まで謎のままだが、恐らく柏木の話のようなことだろう。
「月光の東」も謎のまま。解説は死後の世界というふうに書かれていたが、私は本の描写のまま、シルクロードか山岳に輝く月の、もっと向こう側を想像する。生命はあるのに闇に隠れてしまって出てきてくれない。寂寞として、強い夜風しか聞こえなくて、しーんと冷たくて、、暗闇と隣り合わせのよねかの乾いた、信念ある心を思う。
よねかは女の嫉妬からか魅力的、とは思えなかったが、強かで行動力があり尊敬はする。弱い心を見つめながら立ち直っていく加古美須寿が、読者の等身大の人物だろう。自殺に傷つく家族と共に、毎日は続き、親切な周りの人に支えられて、夫の自殺に、よねかに打ち勝った。
30歳を過ぎてから、年相応を思うと器量不足で自信がなくなり、急に根暗になった。よねかほどではないが、今まで出会った人を傷つけてきたなぁなんてことも思う。私も罰が当たるだろうか。もう当たっただろうか。そんな自分が好きだと言えるだろうか。少しずつ立ち直ろう。そして自分も頼られる側に回れるよう、手を温めておかなくては。
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再読。
日を置かず、直ぐ他の本を読むと ストーリーが浅くしか残らないかな
でも、印象深い 本は 何年経っても覚えてるよね。
6.21.読了。
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あるエリートサラリーマンがパキスタンのカラチのホテルで自殺することからこの物語は始まる。この小説の秀悦なのは、この自殺した背後にいる米花という女性を全く異なる2人の人物に語らせていることだろう。
推理小説的な側面もあって、一気に読めるとても良い本だと思う。
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宮本輝さんは最近気に入りつつある、丁寧語で統一された文体、丁寧で細やかな人たち
舞台はまた裏日本、暗い怪しい影のあるような雰囲気
ある女を追いかけてという筋だが、結局出会えないままに話が終わる。真相が明かされるのも探偵の結果ではなく1人の人間にたどり着いたためという。中々ない幕切ではなかろうか、その方がロマンチックでもありまたリアルでもある、切符1枚が記憶の拠り所なんて夢のある話
また話の途中でそれとはわからぬままに何度もすれ違っているという点も僕には新鮮でその不確かさなどにリアルな魅力を感じる
再読する
かしわぎでの最後の夜はないままの終焉でも良かったのではという印象もすこし。月光の東が朧げなように米花も掴みきれない存在のままでも良かった。最後の解説のような怒涛の文章はやや負担
糸魚川
信濃大町
親不知駅前のヒマワリ
門別