紙の本
なんだこれ
2016/09/28 15:51
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投稿者:ポージー - この投稿者のレビュー一覧を見る
「インディヴィジュアル・プロジェクション」と「ニッポニア・ニッポン」の2つの中編が収録されている。阿部和重の作品は初めて読んだけど特に前者がおもしろかった。
小説は「現実よりもちょっと浮いたもの、ズレたものがおもしろい」とよく言われるが、インディヴィジュアル・プロジェクションを読んでいるときは「小説にはこんな変なズレ方があるのか」と思った。
物語の奇妙で混乱していく空気感やストーリー自体もおもしろいが、その中に自然に散らばっている暗示によって統一感もある。読後は納得とはぐらかされたような気持ちの両方が残って不思議な感覚だった。
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本書は、もともと新潮文庫で刊行された「インディヴィジュアル・プロジェクション」と「ニッポニアニッポン」を纏めたもの。
「インディヴィジュアル・プロジェクション」は、スパイ養成学校出身である主人公オヌマの日記を通して、プルトニウム爆弾やそれにまつわる撮影フィルムを巡るヤクザとの攻防が書かれている。
日記は人の主観によって書かれているもの。それは、オヌマであっても同じことで、なんとも後味の悪い結末だった。
「ニッポニアニッポン」は、主人公である17歳の引きこもりの童貞、鴇谷春生が自分の苗字に含まれるトキを自分のエゴにより救済しようとする。
救済のために佐渡のトキ保護センターにいるトキを飼育・解放・密殺の3種類を考えそれぞれの可能性を検討する序盤。その中からある一つを選ぶに至った中盤。実際に佐渡に行き実行する終盤からなる。
中盤から終盤にかけての勢いには惹きこまれた。
この鴇谷春生の妹は芥川賞の「グランド・フィナーレ」や谷崎賞の「ピストルズ」で結構重要なキャラクターだったような。この2作を読み返したいな。
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ニッポニアニッポンがめちゃくちゃ面白かった。インディヴィジュアル・プロジェクションはいまいち掴めないというか・・・。あのラストあたりからの急激な展開はかなり読む者をソワソワさせるけど笑。
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自分が特別だと思いこみたいがために特別なことをしようとするんだけど所詮は平凡な青年。
なんだろうな。この鼻持ちならない感じが身に覚えがあるだけに余計に嫌悪感を覚える。
好きか嫌いか未だによくわからないけど、間違いなくこの人の本が一番ぞわぞわっとさせられる
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「ぼく」という幻想。
この本は『インディヴィジュアル・ブロジェクション』と
『ニッポニアニッポン』という
阿部の代表作を1冊にまとめたものである。
感じたのは人称の問題だ。
それは「ぼく」という幻想のありかを
突き詰めていくことになる。
1作目のは主人公は自分をスパイだと思う映写技師だ。
「ぼく」という一人称で書かれることで、
本当にスパイなのか、
身の回りに危機が迫っているのかどうかが
曖昧なままで物語は進んでいく。
「ぼく」の実は平凡な日常が
Гスパイ行為」というフィルターを通すと、
非日常へ様変わりしていく。
本当の「ぼく」は何なのか?
存在自体が揺らいでいく。
これは今を生きる「ぼくたち」の
不在証明のようにも思えてくる。
もう1作は、トキを逃がそうとする「春生」の物語だ。
トキは学名ニッポニアニッポンであり、
まさに日本を解放するという比喩である。
その物語が3人称で書かれることで、
行動の滑稽さが立ち上がってくる。
これもまた「ぼくたち」のもうひとつの姿に思える。
日本の今という現実に閉じ込められて、
「ぼくたち」は歪んでいないだろうか?
「ぼく」という存在の
幻想を暴く1冊だ。
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個人的にIPが星3つ、NNが星4つ半ぐらいかな。やー面白かったです、ニッポニアニッポン。主人公のぶっとび具合がもう、一周回ってアホ可愛く思えてしまいます。勝手にトキを守ろうと決めたくせに、トキの交尾に逆ギレしてるあたりが笑える。
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なんだか不思議な読後感。体調が悪かったのもあるかもしれんが、特にIPの方は読んだあと暫く現実感を失った。しかし、最後まで意味わからんかった。
IPもNNもスタイリッシュ?といえばそうだが、壮大な中二病とも言える。
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読むと不安になる。
オヌマも春生も自分の考えや行動に絶対の自信を持っていて、ここではこれ以外の選択肢はなかった、これが最善だ、と断言するかのように進んでいく。でもそれって本当に正しいの?他の立ち位置から見たらかなり変じゃない??そう思いながらも途中でやめられず、最後まで読み進めて呆然としてしまった。
2度目を読む気力はしばらく出ない気がする。
考え方も、生き方も、自分以外が見えていない感じも、全部恐い。