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一つのお屋敷で起きた話を、時間を超えて、そこにいた人たちを語り手に、時にはおどろおどろしく、時にはファンタジックに、時にはノスタルジックに物語は進行する。あー、あの話は実はこんなだったのかー、なんて別の話でわかる仕掛け。良くできた一連の物語だ。
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恩田陸が「お屋敷もの」の集大成と自ら語るホラー連作短編。
タイトルも表紙もちょっと不気味でとても魅力的で即買い。
おとぎ話のようでいてばっちり鳥肌の立つホラー。とても面白かった。
「ようこそお入り下さい。最も恐ろしい幽霊屋敷へ」
という帯の煽り文句に導かれるように、ギィーーー…とお屋敷の扉を開ける様な気持ちでペラリとページをめくる。
丘の上に立つ、古いけれどよく手入れをされたこじんまりとした家、穏やかな情景。そこに住む女流作家のもとに、本物の幽霊屋敷を探しているという男が訪ねてきているところから物語は始まる。
過去には何やら凄惨な事件がいくつも起こったいわくつきの家らしい。
男が語る数々の事件を聞き流しながら、女流作家は冬のカーテンを縫うことや、夕食にタラのシチューを作ること、甘い果物を煮詰めてジャムを作る楽しさなんかに思いを馳せている。
男も不気味だが、のんびりとそんな事ばかり考えている作家も少しおかしい。そして男は退場する。
物語は一旦女流作家の視点から離れ、その家に関わった人たちの視点に移る。
主人に食べさせるために料理女に殺された少女、屋敷に囚われた幽霊屋敷マニアたち、アップルパイを焼きながら殺し合う姉妹、老人をオーブンで焼き殺す美しい少年、這うもの、ここに家を建て死んだ夫婦。
随所で見られる、おぞましい事件の描写と、細やかで愛おしい日常風景の描写の対比がなんとも不気味。
じわりと恐怖が忍び寄るような描写はさすが。
家の修理のために呼ばれた大工と幽霊たちとの交流は、ほっこりした。
なんだ、興味本位だったり悪意を持っていたりしなければ、悪さはしないのね。
そう思ったのも束の間で、再び女流作家の視点になる「私の家へようこそ」の章ではこの日一番の鳥肌がたつ恐怖。特に最後の5行。
お屋敷、殺人、ミステリ、お料理、思い出、郷愁、デジャ・ビュ。
これでもかと詰め込まれた恩田陸節で大満足でした。お邪魔しました。
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長女に貸そうと思ったが一人暮らしなのでやめた。三女に貸そうと思ったが一人暮らし予定だからやめた(笑)
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こういうホラー系は決して嫌いではないです。「俺と彼らと彼女たち」は痛快な味わいがあって、今までの気味悪さが晴れました。そして「ようこそ私の家へ」に繋がっていくのもいいですね。ただ、「我々は失敗しつつある」は、どういう話なのか理解できなかったです・・・。
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お化け屋敷を舞台に展開される短編群。
それぞれは透明で不思議な雰囲気を醸し出している。
と、同時に他の物語としっかりと繋がっており、読者のページをめくる手を進めさせる。
幽霊に対する仄かな主張も読者の日常のふとした瞬間に影響を与えそう。
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アップルパイを焼きながらジャガイモの皮をむいているうちに、お互いを刺しあって殺してしまった姉妹の住んでいた屋敷。幽霊屋敷だという噂の屋敷を核とした連作ホラー短編集。
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恩田陸ワールド全開。
恩田陸の話は基本的にオチがちょっと雑に感じるものが多い(扱っている題材に対し結末が現実的すぎる気がしてしまう)のだが、今回の幽霊屋敷では「今」と「昔」の伝聞と真実がうまく混じり合い絶妙なテイストで仕上がっていた。
個人的には、幽霊屋敷が舞台なのに、そっちよりも親方の仕事に対する考え方にとても感銘を受けてしまった。
親方の言っていた「生きている人間が1番怖い」というのはとても納得。
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昼下がりのキッチンのような雰囲気が全体的に漂う童話のようなホラー。
でもきっちりヒヤッ、ぞぞぞとさせられます。
時系列をたくみに操った短編集になっており、読み終わった後に時間の流れを整理するためにもう一度読みたくなりました。
恩田ワールドをいっぱいにつめこんだ作品だと思います。
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おもしろかった・・・
いわゆる幽霊屋敷が題材ですが、ホラーも目線を変えるとこんな物語になるなんて。
恩田陸さんらしいスッと背中が冷えるような怖さと、それと同じくらいの愛を感じるお話集。
おきにいりです。
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恩田陸の私の家では何も起こらないを読みました。
丘の上の幽霊屋敷をテーマにしたホラー小説でした。
プロットはそこそこ面白いと思いましたが、イマイチ物語に入り込めませんでした。
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ユージニアと同じで基本的には、章ごと一人の人間の語りによって構成されていた。
あらすじに出てきたキッチンで殺された姉妹の話以外ではそういう構成がされていて、非常に単純で読み進めやすいです。
時系列はバラバラですが恩田さん特有の煙に巻いたような終わり方ではなく、答えを導き出すのに必要な模範解答用の文言は出てきているので、この家で何が起こり、現在はどうなっているのかが分かりやすい。
反面、恩田さんらしい濁した作風に惹かれて読んでいる人には余韻が少なくつまらないのかもしれない。
個人的に大工の話は面白かったですね。気味が悪いだけだった作中の幽霊が好意的に思えてしまった。
幽霊も怖いばかりじゃないって事でしょうか。
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ある丘の上の家にまつわる短編集、怪奇譚です。
最初はどのような本かよく分からなかったので戸惑いました。
萩尾望都の「ポーの一族」に形式が少し似ているなーと思いつつ読んでいたら、あとがきに萩尾望都の作品が取り上げられていたのでなんだか嬉しかったです。
ただ私はこういう怖い話?はあまり興味が無いので残念ながら楽しめなかったですね。
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基本的に一章を一人の語り手で物語が進んでいきます。夜ベッドの上で読むには少しだけ肌寒い準ホラー小説。恩田陸ワールドで進んでいくので取り残されちゃうと分かりにくい内容かもしれない。先入観なしにさくさく読み進めると良いと思う
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『私の家では何も起こらない』
伯母の住んでいた家を購入した女性。その女性の家を幽霊屋敷として話を聞く男。女性の伯母が書いた屋敷の絵に描かれた女性。男の告白。
『私は風の音に耳を澄ます』
食料庫から旦那様と家政婦の生活を覗き見る少女。悲惨な生活から逃げてきた少女を受け入れた家政婦と旦那様。少女の弟や少年も食料庫に。ある日やって来た母親。
『我々は失敗しつつある』
飲み屋で知り合った3人の男女と子供のころ自分が発見した殺人事件の現場に連れていく男。お互いに包丁で刺し殺しあった姉妹。オーブンで焼けるアップルパイ。
『あたしたちは互いの影を踏む』
屋敷を購入した姉妹。自分達以外の何かの気配に気がつく姉妹。うたた寝をしている間にかけられるハンカチ。虐待してきた父親に対する復讐を果たした姉妹の秘密。台所に振り撒かれたリンネ。顔にかかる白いハンカチ。
『僕の可愛いお気に入り』
屋敷の床下に少女を見つけた少年。少年に少女の存在を証明させようとして逃げ出した3人の少年の自殺。少年が犯した犯罪の秘密。
『奴らは夜に這ってくる』
這う奴らの話を話す老人。3人の学生の自殺と屋敷の前で首を切り死んでいた少年。少年が重要参考人とされていた連続する老人をねらった強盗殺人事件。近所の人が聞くようになった何かが這う音。老人の叔父が殺した妻子の遺体を引きずる音。老人の孫の秘密。
『素敵なあなた』
少年少女を解体し瓶詰めにする事件、姉妹が殺しあった事件、3人の学生の自殺後死んだ少年の事件など立て続けに事件が起きる屋敷を案内する女。窓に見える幽霊の正体は?ウサギの穴に足をとられ死んだ人間の話。
『俺と彼らと彼女たち』
屋敷に新しい買い手が見つかり修理のために雇われた大工。若い大工は幽霊屋敷の恐ろしさに逃げ出してしまう。大工の修理に協力する幽霊たち。不動産屋の卑怯な取引に対する報復。新しい屋敷を気に入った女性。
『私の家にようこそ』
新しく屋敷を買った小説家の元へやって来た人。歓迎する小説家。
『附記・我らの時代』
小説家Oの書いたメモを読む男。
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再読。幽霊屋敷の連作短編集。それぞれのつながり方と配置が絶妙。どれもコワサは最大級なのだが、なぜだか幽霊そのものにはコワサを感じない。やっぱり幽霊になる前の人間のほうがコワイんだな。そんな中で「俺と彼らと彼女たち」の、幽霊オールスター総出演で悪徳不動産業者をやっつけちゃうユーモアたっぷりなお話が、全体によいアクセントを与えていて好き。恩田さんが自身の読書歴をたっぷり注ぎ込んでいるらしいのだが、このジャンルをほとんど読まないので、その仕掛けに気づけないのがザンネン。