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ガウディの建築に対しての接し方・その変遷を知り、かつての巨人の思考・視線を感じることができる。
また、それを語ることができるのは、30年に渡ってサグラダ・ファミリアで彫刻を続けてきたスペシャリストの著者ならでは。
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壮大な構想のゆえに百年以上も建設が続いており、いつ完成するか分からない・・・ということぐらいはサグラダ・ファミリアについて知っていたけれど、これを読んでサグラダ・ファミリア、そして建築家アントニオ・ガウディに今までの数十倍?数百倍?興味を持つことになった。有名な建築家ということもあって、ガウディの作品のいくつかは今までにも写真で見る機会があった。どれもかなり奇抜でおもしろいものばかりだとは思っていた。でも、読み進めていくと、流線型を多用したフォルムは実は構造的に理に適っていたり、装飾過多とも思える装飾の数々は構造を補強するもの(というか、構造とデザインの問題を同時に解決している)であったり・・・・。数え上げるときりはないけど、とにかく単なる思い付きのデザインではなく、すごく深いところまで考え抜かれた構造ばかりで、江戸時代の末期に生まれた人とはとうてい思えない。ガウディのすごさは衝撃。あと、構造的に・デザイン的に・技術的に優れているとかいうことの他に、ガウディの目指していたもの、精神性などについても触れられており、どちらかというとこちらのほうに魂をゆさぶられた。本書を読んでいる途中で何度も身震いしたり、目頭がアツくなったり・・・。通勤電車で読むにはちょっと不向きだったかも。著者がスペインに渡ったのはガウディが他界したあとの話なので、当然直接会ったことはないわけですが、伝えられているエピソードや、直弟子の言動にガウディの人柄や考え方が反映されているように思います。
ガウディは生前、サグラダ・ファミリアがいつ完成するのかとの問いに対して「神はお急ぎになりません」と答えていたそうです。また、著者がガウディの直弟子のひとりに「芸術とは何ですか?」と聞いたところ、迷わず「芸術とは、人を幸せにするものだよ」と答えられたそうです。ガウディが物質より心を大切にし、自然と調和する思想を持っていたこと。サグラダ・ファミリアの建築を通して愛というメッセージを伝えようとしたこと。このようなことがバックボーンにあって、今でも彼の建築が枯れることなく輝き続け、愛され続け、現代においても時代の一歩先を行っているような気にさせるのかもしれない。とにかくスペインに行って、この目で確かめたいと思った。
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ガウディの思想は心地いい。
都市にある現代建築は、自然に抗って偉そうに聳え立つ印象がある。
ガウディはそんな、自然の秩序を乱すことは「合理的ではない」と考えた。彼は、神が創造した自然に付け加えるように建物を設計したのだ。
例えばサグラダファミリアは天から「宙づり」にされているように建っている。それなのにサグラダファミリアには梁や柱がない。
それは、彼が重力に逆らわない建築を行ったからである。
彼が設計に使ったのは、カテナリーという懸垂曲線。カテナリーは鎖を垂らしたときに出来る曲線で、この曲線を反転させることで「重力」をレンガとレンガをくっつける「圧縮力」へと転換することができるのである。
つまり「カテナリーを反転させたアーチは、自らの重みを自らの形だけで支えるのに最も無駄のない構造」になる。彼はカテナリーによって力学的に安定した設計を行い、自然の摂理に反しない建築物を作った。
サグラダファミリアは建物自体が「楽器」になるように設計されている。鐘が聖堂内に響き渡り、その鐘の音がバルセロナの町中に響き渡る。
自然を作った神様への信仰心と生命を育む自然への感謝の気持ち。
そういった心地のいい哲学を建築物に昇華させたのがガウディであり、その哲学を深く理解して引き継いでいるのが著者の外尾悦郎氏である。良書。
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筆者は、サグラダファミリアの既存部分やガウディーが残した言葉・作品・模型・スケッチ等からガウディーの気持ちを読み取り、設計にない部分を創造し、創造していく。それは、一体化するほどにガウディーの中に入り込まないとなしえないものであろう。そこを理解しないと、思いの強さが目立ちすぎると感じるかもしれない。それでも本物のサグラダファミリアで、石に込められた数々の智恵を確かめたくてたまらなくなるだろう。
更に、プロとして働くことや、幸せとは何か、という視点にまで内容は広がる。
人間の幸せについて筆者は言う。
「どれだけ何かを愛し、その自分でないもののために生きられるかということではないかと思います」
自分の名誉や財産のために生きる人は精神が痩せ細り、それを失うかも知れないという不安の中に生きていれば不幸であり、逆に希望で胸を温めている人は満たされている。最晩年のガウディは、サグラダファミリアに全て捧げていた為ほとんど無一文であったが、人類の誰も考えたことのない、壮大な聖堂の構想を思い描き、それが自分の死後もつくり続けられ、生き続けることを信じていた。
「同じものを作る人間として言わせていただければ、晩年のガウディーは大きな希望の中に生き、満たされていたと思います。幸せだったと、私は思います」
ガウディーの伝言以外にも、筆者の誠実さや人柄の良さも伝わり、何度でも読み返したい本である。
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。ガウディやっぱすごい。
あと外尾さんもすごい。
バルセロナに行く前に読んでおけば良かった…
奇抜に見える形の中に込められた意味、合理性。
人類が向かうべき方向性を、サグラダファミリアを通して示したガウディ。
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[ 内容 ]
形、数字、謎の部屋…サグラダ・ファミリアの彫刻家が読み解く天才建築家のメッセージ。
[ 目次 ]
ガウディと職人たちとの対話
石に込められた知恵
天国に引っ張られている聖堂
人間は何も創造しない
ガウディの遺言―「ロザリオの間」を彫る
言の葉が伝えるもの―「石の聖書」を読む
ガウディを生んだ地中海
ライバルとパトロン
ガウディと共に育つ森―十九世紀末のバルセロナ
神に仕える建築家の誕生
孤独の塔、サグラダ・ファミリア
永遠に満たされていくもの
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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サグラダファミリアの現場で仕事を続ける日本人の職人、外尾悦郎さんがガウディの生涯と聖堂に込められた知恵について綴っている。
建物の問題を、機能とデザインと象徴性のそれぞれを、トレードオフではなくて同時に解決しながらより品質を高めていく考え方や手法が感動的だった。
また外尾さんのガウディの意図や思いを追求していく姿勢がすごい。覚悟とか自分への厳しさといった印象より、それを超えた偉大なものに向き合う謙虚さを感じ取れる文章だった。
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旅行でバルセロナに行くということで、サクラダファミリアを始めとしたガウディの建築物について勉強するために本書を手に取ったが、奇しくも人生観や仕事に対する姿勢についてまで勉強になってしまった。著者はサクラダファミリアの彫刻に携わり、生誕の門を始めとしたサクラダファミリアの彫刻物の完成に寄与している今ではベテランの1人。その著者が、ガウディが作った彫刻、建築物に関する解説とサクラダファミリア建築に至るまでの経緯、果てはガウディや著者の彫刻に対する思想についてを語っている。良書と言える理由は、ガウディの彫刻家としての凄さのみならず、その人間性を分かりやすく、熱意をもって伝えている点だ。ガウディが職人や市民から愛されていたからこそ今のサクラダファミリアがあるということが実によく分かった。ガウディが交通事故で亡くなる前日に職人に対して言った「諸君、明日は今日よりいいものを作ろう」という言葉は、彼のひたむきで真摯な姿勢が表れている。よりよい物を作ろうとするガウディの姿勢を忠実に貫こうとする著書の信念が全体を通じてにじみ出ている。こういう人だからこそ、日本人にして信頼あるメンバーとしてサクラダファミリアの彫刻に携わっているのだろう。妥協せずに取り組もうとする姿勢は、日々の生活の中でも言える。色々なことが参考になった本だった。
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技法(オーダー、シェル、カテナリーアーチ、装飾と構造・機能の一体化等)については基本的な事なのでいいとして、これ読んで思うのは、やっぱり極めるとそこ(信仰)に行きつくのかーってこと。ガウディも、外尾さんも。
「芸術とは、人を幸せにするものだよ」
うむ。
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私がはじめてサグラダファミリアを知ったのはアニメルパン三世のTVスペシャル。
サグラダファミリアに秘密が隠されていて、隕石の欠片を塔の上に取り付けると隕石の不思議な力でサグラダファミリア全体が輝き始める。
塔が楽器の役割を果たし音楽が響き渡る。その幻想的な音楽は当時TV局に電話が殺到したくらいである。そして隕石の光でサグラダファミリアの未完成部分が浮かび上がっていく。完成版の光るサグラダファミリアができあがるのだ。その幻想的なシーンが忘れられず私はずっとサグラダファミリアに興味があった。
今年の夏海に外旅行へいくことが決まった際に、スペインが候補にあがった。そこスペインの観光地を調べている内にガウディ自身にも興味が湧いた。そこでガウディについての本を読もうとして、この本が一番手に入れやすかった。
この本を読んで驚いたのは、あのアニメの幻想的なシーンがあながち間違いではないことだ。勿論隕石の欠片なんて一切関係ない。だがサグラダファミリアは塔が楽器として音を響かせる役割を持っているし、光を上手く取り込むように設計されている。
その辺の仕組みは本を読んでもらえば分かるが、そのガウディの天才的な発想にはとても驚かされる。
この本はガウディ初心者には分かりやすい良い本だ思う。しかし、実際にサグラダファミリアの建設に携わった人が書いた本で、当然その人の思いいれや考え方が大きく反映されていて客観的な事実のみの説明ではない。
この本を読んで思ったのはやはり古き良き時代の職人は良いものだということである。
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著者のガウディへの愛が伝わる。物語ではないのに、随所でこみ上げるものがある。
最終ページのガウディの写真が最後の一撃。
(2011.6)
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サグラダ・ファミリアの建設に携わっている主任彫刻家外尾 悦郎から見たガウディについて書かれています。僕がサグラダ・ファミリアを見たのは2年前。あの時の感動は忘れられません。当時の感動を思い出しつつ読みました。ガウディの建築に対する考え方、どんなにサグラダ・ファミリアを愛し、情熱をそそいでたかがわかります。建設に携わる彫刻家からガウディを語るので、言葉一つ一つに説得力があり、とてもガウディを知る上で参考になりました。サグラダ・ファミリアだけでなくカサ・ミラやグエル公園などガウディの他の作品も書かれているので、バルセロナに行く前には読むのをおすすめします。サグラダ・ファミリアは是非、実物を見て欲しいと思います。ほんとに感動する作品を見ると言葉で言い表せないものですね。僕が生きているうちに完成すれば、必ず見に行きます。
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ガウディの伝記でもあるし、解説本でもあるし、ガウディの秘密を解いていく本でもあります。ガウディという人も、サグラダ・ファミリアもジブリの世界によくマッチしそうだなというのが僕の印象です。そのうち、ジブリ初の伝記映画としてガウディを取り上げたりしないでしょうか。
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サグラダ・ファミリアの日本人彫刻家が読み解いたガウディが建築に込めたメッセージ。いや、すごい充実感です。僕はガウ ディ建築を全然分かっていなかった。一人のアーティストが自分のセンスでつくったグニャグニャした奇妙で反合理的なものだと思っていた。そこに込められた 様々な先進的な試み、常識を覆すような構造、コスト削減やリサイクル工法、職人の力を最大限に引き出すマネジメントなど、現代に通じる思想を100年前に 持っていたという...。
たとえば「彼の建築は曲面はあるが実は曲線ではない」という事例。直線を少しずらしながら組んでいくことで双曲線 面や放物線面をつくる。石という素材の特性を活かしながら職人が組みやすい方法で、かつ頑丈で軽く、コストも抑えられる。実に合理的な考え方をしていたそ うです。
本書にはそんな A-HA体験的な発見が満載。新書では勿体ないくらいの充実度だった。なんかあんまりみんなが「ガウディはいい」っていうもんだからガウディに偏見を持ってました、スミマセン。
ガウディという人は、構造と装飾と機能と手法を分けて考えずに全てを解決する方法を常に追求していたんですね。職人肌のクリエイティブ・ディレクターであったと思う。よい広告キャンペーンもそういうものだと思いました。
19歳の夏に、ヨーロッパ美術研修旅行に参加した折、マドリッドまで行ったんですがそこからバルセロナへ行くお金がなくて断念したんですが、なんとしてでも行っておくべきだったなぁ。バルセロナ。いつか行くとこリストがまた増えました。
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ガウディって孤高の天才かと思っていたんだけど、コレを読むとイメージが違った。
もちろんガウディの発想は誰も思いつかないものだし、すばらしいんだけど。
建築という共通の目標を共有してチームを作り、各職人に目的意識を持たせ、生き生きと仕事をさせる。
ああ、人がまだ部品じゃなくて仕事をする時代のことなんだなぁ……と。
ガウディの思想の豊かさを感じると共に、それを見てみたいと思わせる一冊でした。面白かった!