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この著者の本は2冊目。『パンダの死体はよみがえる』(ちくま新書)と比較して、より読みやすくなってはいるが、著者の「熱さ」はなお温度を上げている印象。年間500体もの動物遺体を解剖する著者が、人間の体を俎上に載せたということで、迷わず購入。期待に違わぬおもしろさだった。
人間は、もとからあるものをつぎはぎしながら、急速に「二足歩行」へ体の設計図を作り替えた。ということは終章あたりで書いてあるし、今回のウリはそこだと思うのだが、そこへ至るまでの前段階もモチロンおもしろい。骨というのは最初から構造体として生まれたモノではなく、たんに体内にミネラルをため込んでおくためのものだったとか。ほ乳類の内耳の骨はアゴからの借り物で、アゴのほうは頭骨や歯の骨を細工してやりくりしたとか。「亀にもへそがある」というあたりはトリビア的にもおもしろかった。あれ、じゃあ蛇にも蛙にもへそがあったりする……のかな。
人間の体は「動物としては明らかな失敗作」と著者は言い切る。納得する向きもしない向きも、そこへ至る道程についてハリセンバシバシで解説してくれる熱血ガイドの解説っぷりは、いっぺん聞いておいて損はないと思う。
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遺体科学者の熱い本。ヒトをヒトたらしめるデザインと、ヒトらしい暮らしから逸脱した現代人の苦悩。「せめて日本人が飛行機の座席をつれば、ベルト付きの畳や茣蓙でも用意して、二足歩行の動物にとってはずっと安楽な客席を作るだろうに。」期待に応えなきゃ!
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動物の遺体を解剖し、精細に調査することによって進化の歴史を解き明かして行きます。そして、進化の多くはエレガントなものではなく、行き当たりばったりでその場しのぎ的な設計変更であることを解説して行きます。
進化、というと考古学なものを思い浮かべてしまい、どうしても化石の調査によるものと思ってしまいます。
しかし、今生きている動物たちの体を調べ、進化の道筋のヒントを得ることはとても大切なことだという著者の言葉は、ちょっと目からウロコでした。
そうですよね、骨だけになってしまった化石よりも、ちにくのある遺体の方が雄弁に語ってくれそうです。
また、人の体、特に二足歩行はかなり強引な変化であった、という解説もおもしろいです。
文章もわかりやすく、動物の体の仕組みにつて興味を持つきっかけになる本だとおもいます。^_^
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【2015/4/15】
紹介者:河森さん
レビュー:米山
人類は4足歩行から2足歩行になりましたが、それがあまりにも短期間の変化だったため、遺伝子が追いつかず、様々な弊害が出ている、、、!?
ちょっと怖いけど、なんか気になる。
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軽快な文章ですいすい読める。でも中身は濃厚。
なるほど~っと唸る箇所はたくさんあるし、ミステリを読むような知的興奮も味わえる。
でもまあ、生理の話は無理やりすぎるやろ~、と思う。
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動物は基本的な「設計図」を持つ祖先がおり、次の段階では「設計変更」によって、新たな動物を創り出すとする。
その変遷を見ると、結果オーライの行き当たりばったりなものだと著者は言う。
ほ乳類の内耳の骨はアゴからの借り物で、アゴのほうは頭骨や歯の骨を細工してやりくりしたとかの話は面白く読めた。
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2006年刊行。著者は京都大学霊長類研究所教授。◆六本の手足を持つ哺乳類がいないのはなぜ、指が五本なのはなぜ。現代に至るまでの動物の進化の過程、特に形態進化は前代の構造に規定される。そして、それは常に成功とは言い難い。例えば、確かに人類は二足歩行という武器を手にし、その結果、器用な手指と巨大な脳を獲得した。しかし、それは、心臓への多大な負荷、脊椎において椎間板ヘルニアや形態的冷え性という避けがたい疾病を生んだ。進化とはかくも多面的(退化とか問題発生の面もある)、前代は須らく後代に劣るというのが一面すぎ。
こういう「進化」の言葉に伏在する誤謬に気づかされる一書。社会制度・法制度において進化論の進化という言葉を使うことの危険も感得出来そう。
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進化=設計という設定が面白かった。必ずしも最初から完璧な設計になるわけもなく、少しずつ淘汰されマイナーチェンジしていくもの。その進化のスピードを人間社会の近代化のスピードが凌駕してしまっているゆえに、肩こり、脳卒中などの現代病があるんですね。
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ヒトが二本の足で立ち上がり、自由になった前肢で道具を作り、使い、大きくなった脳で物を考え、文明を作る。
二足歩行がどれだけ画期的で、歪で、奇跡的なものなのか、全然理解していなかった私には、とても新鮮な本でした。
そしてまた、その二足歩行が起こす弊害。タイトルの「失敗」はそういうことかあ。腰痛も肩こりも、そもそも生き物が二足歩行すること自体に無理があったことと、現代人の“ありさま”を「進化」が想定していなかったことから起こった悲劇がもたらしたもの、っていうのもおもしろかった。
そして、筆者のこの先の「進化」についての見解が切ない。
終章で、先日読んだ「沈没船が教える世界史」の筆者と同じく、この本の筆者である遠藤先生もその研究環境の貧弱さを訴えておられることに考えさせられます。
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クレイジージャーニーを観て。遺体科学という中で明らかになった骨格の進化。必ずしもデザインされたものではなく、前適応としてたまたま役に立つという。進化とは面白いものだなと思った。自分の体、動物の体を改めて見つめなおして意味付けを考えると、その不恰好な進化の歴史が感じられるようになった。
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解剖学の視点から、進化の歴史に迫る。たとえば人類の耳の骨は、爬虫類の顎の骨であり、魚類のえらである。この変異を作者は「失敗の進化史」と位置づけて、このパターンをたくさん提示する。なかなか面白いが、魚や爬虫類、鳥類の解剖写真が載っているので、食事前には読まないほうがよい。
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「進化とは、新しい動物を白紙から創作することではなく、数々の設計変更が自然淘汰を受けて生き残っていく、継ぎ接ぎだらけのプロセスなのだ。」
生物の進化は面白い!
元々あったものを、別の役割・機能のために使い回す。設計変更を加えながら。必要のためなら生物はそんな離れ技をもやってのける。
本書は、様々な事例を紹介しながら、その面白さを伝えてくれる。
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人体や他の動植物の構造など、結構うまく出来ているという切り口の解説は多いように思うが、逆の、結構進化は行き当たりばったりで、良く適応出来た分、弊害もあって、実は失敗なんじゃないかという視点は新鮮で面白かったです。
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https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334033583
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面白く読んだ。
文章のノリがちょっと好みが分かれそうな感じ。私は別に嫌いじゃないけど、だるいなって思う時はあった。
本のテーマとはズレてしまうのだけど、何故ひどいつわりがあるのか不思議だった。生物の最優先事項は子孫を残すことだ。こんなに進化した生物が、何故生み育てるために体調を崩すのか?
元々、赤ちゃんは卵黄嚢で成長していたものを、ある程度大きくなるまで体内に留めておくことを決めたのが哺乳類だ。
「異なる遺伝子的基盤を持つ細胞が混ざり合い、片時も休まずに物質のやりとりをするのだから」体調を崩すのは当たり前なのかもしれない。
これからの進化の過程で、つわりがなくなれば良いな…と思った。人間は環境を変える生き物だから、つわりを軽くする薬を発明することで進化するのかもしれない。
生理についても不思議だったけど、触れていた。
人間は、数より質で育てることを選んだ。妊娠〜授乳中は生理は来ない。妊娠出来る年齢になったら妊娠して、30代で死んでいく。昔は生理が不利になるほど頻繁に起きるものじゃなかった。
だから生理がなくなるように進化してこなかった、ということらしい。なるほどなあ。