ITナビゲーター2014年版 みんなのレビュー
- 野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部 (著)
- 税込価格:1,936円(17pt)
- 出版社:東洋経済新報社
- ブラウザ
- iOS
- Android
- Win
- Mac
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
3 件中 1 件~ 3 件を表示 |
2014/01/03 05:57
投稿元:
『ITナビゲーター』は、野村総合研究所(NRI)が10年以上IT関連市場の分析を行ってきたもので、毎年年末に刊行される。本書では、5年後の2018年までの市場規模の予測を行なわれる。外れる予測も多数あろうが、その予測ロジックを理解することは非常に重要である。
2011年度版までは、タイトルが『これから情報・通信市場で何が起こるのか ―IT市場ナビゲーター』であったが、2年前の2012年度版からはそれまで副題であった『ITナビゲーター』にタイトルが変更となっている。その代わり、2014年度版でいうと、第1章に「これからICT・メディア市場で何が起こるのか」という章を充てて先端技術の予測を行っている。
第2章以降は、「第2章 デバイス市場」、「第3章 ネットワーク市場」、「第4章 プラットフォーム市場」、「第5章 コンテンツ配信市場」というカテゴリーでの市場分析を行っている。(※2012年度版は表現は違うがほぼ同じカテゴリーでの章立てになっている)
以下、2013年度版との比較も含めて各章を見ていく。
■ 第1章 これからICT・メディア市場で何が起こるのか
2013年度版では、「ビッグデータ」、「位置情報活用」、「HEMS」、「購買情報活用」、「プライバシー」が、2012年度版では、「ビッグデータ」、「医療情報活用」、「スマートグリッド」が取上げられていたが、この2014年度版では、「3Dプリンタ」、「ホームロボット」、「日本コンテンツの海外展開」、「クレイジーセンサー」、「データジャーナリズム」、「番号制度」が取上げられている。昨年までと比べて、視点がかなり広くなっているのがわかる。純粋な情報通信の世界は成熟を迎えており、今後は上位レイヤでの発展や競争が重要になってくるだろうという宣言なのかもしれない。これまでまず最初に取上げられていた「ビッグデータ」についてはその概念の浸透とともに実務への導入が開始されているということなのだろう。第2章以降の中で扱われている。
第1章で最初に取上げられた「3Dプリンタ」は、IT本のベストセラー『MAKERS』などで取り上げられ、有力技術としての認識は十分あったが、想定していたよりも近い将来により大規模に使われるのだろうか。プロトタイプや医療用など、少量で多様なものを素早く作る必要がある場面での利用が盛んになるというのが本書での予測だ。
少し前までは、家庭内にプリンタがあるというのも想像しがたかったことを考えると、あながちありえないことではない。ただし本書でも、急速に一般家庭に浸透するとは想定されておらず、まずは3Dデータ流通やDPEのようなビジネスの可能性を検討するように言及されている。また、同時に3DデータのDRMの問題が大きな課題として想定されている。
技術面からは、プリンタにインクジェットやレーザーや感熱方式があるように、モニターにブラウン管、液晶、プラズマ、LED、有機ELがあるように、3Dプリンタにも、光造形法、熱溶解積層法、粉末焼結式積層法、粉末固着式積層法といったタイプがきちんと紹介されている。それらの長所短所を理解して適切に選択していかないといけないということをわかったのは収穫だ。この分野に直接かかわっている人には当たり前のことだと思うが、そういうことを知ることがお���らく必要なのだ。
また「ホームロボット」が第1章で取り上げられるのも、過去のITナビゲータの傾向から大きな変化を感じる。現状のホームロボット市場の大部分を占めるロボット掃除機が世帯普及率が15%まで行くと想定しているが、個人的にはやや楽観的だと感じる。しかし、食器洗浄機(現時点での市場普及率は知らないがそのくらいはある?)と同じなのだろうか。ただ、食器洗浄機と異なり、ロボット掃除機は通信機能を備えて何らかのデータを蓄積して他の用途にも活用される可能性があるのが大きな違いとして考えるべきかもしれない。
また、高齢者をターゲットとしたコミュニケーションロボットにも言及されているが、高齢化社会において真剣に考えるべきものであるのだろうか。ピップエレキバンのピップが開発した「うなずきかぼちゃん」の例(2万1千円で1年間で約3万台の販売実績)が挙げられているが、例えばケーブルの市場には合致するところがあるのかもしれない。どうだろう。
「クレイジーセンサー」とはNRIの造語なのかもしれないが、安くなったセンサー素子を使って、これまで考えもしなかったところにセンサーを使う用途が広がることを言っている。その例として、「やせるフォーク」、「万能万歩計」、「Brain Disco」、「急ブレーキ多発地帯の検知」などが紹介されている。スマートフォンの普及と低消費電力技術(Bluetooth 4.0等)の実現により、CPUをスマートフォンに移すことができたことも大きい。確かにアイデア次第で何かできそうな分野である。
また、「番号制度」の施行を前にして、その影響を測ることも重要である。その際に①付番、②情報連携、③本人確認、といった機能を論理的に把握して考えることや、行政などで議論されている実態を知ることが必要だろう。そもそも新しい番号制度が2016年に開始される予定ということもきちんと意識できていなかった。その影響を真剣に考えるべきだろう。
■ 第2章 デバイス市場
デバイス市場は、「携帯電話市場」、「タブレット市場」、「スマートテレビ」、「撮影機器市場」、「車載情報端末市場」、「ウェアラブル端末市場」に分けて分析させる。2013年度版とほぼ同じである。また、2012年度版ではデバイス市場を独立させていないが、移動体市場やメディア市場の分析の中でカバーをしており、2013年度版とほぼ同じ範囲はカバーされている。2014年度版では「ウェアラブル端末市場」が新しく追加されているのは、いよいよウェアラブル端末が来るという確信ができたということだろうか。
日本市場では主要諸外国に遅れを取りながらも2013年度に「スマートフォン」の普及率が5割を超えたことがひとつのマイルストーンとなろう。それはスマートフォンがシニア層まで浸透が進んだということを意味する。その意味で、すべてのことをスマートフォン・ファーストで考えることが要求されている。その影響は本書の分析対象にもなっている、撮影機器市場(カメラ、ビデカメ)や車載情報端末市場(カーナビ)にも直接的に負の影響を与えている。一方、ウェアラブル端末市場には、その効果なCPUパワーやネット接続機能を代替するということでメリットを享受することになる。スマートテレビもセカンドスクリーンとしてのスマートフォンがあるおかげで異な��次元のサービスを提供することが可能になる。
フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が思ったよりも進んだことは、多くの日本企業に影響を与えた。今後もこのような市場の地殻変動(業界構造変化)が起きることがあるという教訓になったと言える。喉元過ぎて熱さを忘れるようなことになってはいけないだろう。
「タブレット市場」は中国の模倣スマートフォンを作っていた企業が格安のものを作ることができるようになっているとのこと。また、米国ではクリスマス商戦でAppleやAmazon、Google Nexusを押さえてSamsungが最も売れたと伝えられている。
PCの代替という用途(高額製品)と、特定の用途に特化した端末(低額~高額)として普及が想定される。スマートテレビのセカンドスクリーンや車載端末の代替としての用途も有望だろう。
「スマートテレビ」は、インターネット接続可能なテレビという定義では2012年度の1800万世帯から2018年度には3900万世帯まで拡大すると見込まれている。なお、ここでのスマートテレビはインターネット接続機能を持ったいわゆるテレビで、STBなどは含まれない。
また本書内では「次世代スマートテレビ」を総務省に従いハイブリッドキャスト機能を有するものと定義している。誤るのかもしれない。
ただ、セカンドスクリーンの活用などは、その普及を待たずに取り進める必要があることにも触れられている。
本書では、2014年度からスマートウォッチなどの「ウェアラブル端末」が立ち上がると想定している。スマートグラスとスマートウォッチは用途開発と開発環境の整備が必要であるとされている。ユーザが使いたいという用途に向けた開発が鍵であり、今後想定されるシナリオはあるが、将来伸びしろのある市場である。
またデバイス市場では、安価なセンサーによって新しい100億台×1000円台のデバイス市場ができるのではと予測している。
■ 第3章 ネットワーク市場
ネットワーク市場は、「固定ブロードバンド回線市場」、「法人ネットワーク・データセンター・SaaS/ASP市場」、「モバイルキャリア・ワイヤレスブロードバンド市場」、「M2M市場」、「情報セキュリティ市場」に分類される。2013年度版からは新しく「情報セキュリティ市場」が追加されている。
ネットワーク市場は、しばらく前はITナビゲーターの最重要分析対象だったが、2014年度版では、いきなり市場規模の縮小の話から入る。2013年度の9兆1500億円から2018年には9兆100億円に漸減すると予想されている(ただし、2013年度版よりも落ち込み予想は緩やかになっている)。このことは通信事業者に別の収益源や構造変化を起こさせる要因にもなっている。具体的には、ソフトバンクのSprintの買収、NTTの積極的海外進出、KDDIの国内ケーブル事業者への出資・子会社化による連携、と三者三様の戦略が取られている。
また、2013年秋から「光の道構想」の包括的検証に向けた準備が始まっている。「光の道」は、民主党政権において、時の原口総務大臣の掛け声で始まったものであるが、あの頃の騒動はまだ記憶にも新しいところでもある。あれから3年が経ち、政権交代も起きたが、それ以上にあの構想の前提となっていた業界構造が変わっていていることも影響が大きい。高速無線通信のLTEのエリア整備、スマートフォンの浸透、LINEなどのOTTプレイヤの台頭、固定と移動体との料金施策(KDDIのスマートバリュー等)、などがその変化として挙げられる。
包括的検証はどのようになされるのか想像がつかないが、この最近の変化を思うと、適切な投資リスクを取ることができない政府主導での計画経済はもはや合わないということなのかもしれない。
「固定ブロードバンド市場」は2012年度は2%の伸び率で、2016年度以降は減少するとの予測が出ている。ADSLからの移行需要はあるものの、光ファイバーもケーブルテレビも今後大幅な伸びは期待できない。その意味で固定とモバイルをさまざまな形で提供する「総合力」が重要になる、というのが指摘されていることだ。
個人向けネットワークサービスの伸び低下に伴い、これまで未開拓であった中小企業向け市場がそれを補うものとしてにわかに注目されている。SaaSやIaaSの浸透も中小企業向けの展開にポジティブに働いている。具体的な例としては、NTTの「オフィスまるごとサポート」がある。NTT回線に限定せずにソリューションサービスを提供していることが画期的である。2013年には日本マイクロソフト、デルと提携して、法人向けのバンドルサービスとして提供を開始している。
一方、KDDIも「KDDIまとめてオフィス」で対抗している。人材派遣会社のインテリジェンス社と組んで、KDDIまとめてオフィス社を別会社として設立していることが着目されている。
また回線サービスの伸びの鈍化に伴い、割引や速度だけでなく、上位サービスの競争もなってきている。固定、移動体の別のなく、その上で良質なサービスを提供することが必要とされている。本書では"家庭"のCIOとしての役割を通信事業者が任されないといけないのではと説いている。
「法人ネットワーク市場」も縮小傾向にある。専用線から広域イーサ、IP-VPNさらにはエントリーVPN、インターネットVPNへ移行しより安価な方向へ向かっている。
逆に「データセンター、SaaS/ASP市場」は大きく伸びると予測されている。その結果として、法人市場全体としては伸びることになるが、供給するプレイヤは多様化し、競争環境は大きく変化することになる。データセンターやSaaSを提供する特徴のない中小事業者はこれから淘汰されていくだろう。
また、SI市場は縮小が想定されており(企業は当然全体の支出はそうは増やせない)、業界の再編が進むと考えている。
また本書では「情報セキュリティ市場」を新しく取り上げている。その重要性や規模から、取り上げられるのがやや遅いのではないかという印象もある。BYODやパブリッククラウド利用が進むことを考えるとユーザー企業にとっては喫緊の課題だろう。BYOD導入のために必要なMDM(Mobile Device Management)やNAC(Network Access Control)、MAM(Mobile Application Management)などの新しいツールの概念があることも初めて知った。
セキュリティの重要性は年々上がっているが、ユーザーはその費用を落とそうとする傾向がある。本来あるべきのニーズと実際のニーズのずれが発生している状況のように思われる。その中で、Microsoftの"MicrosoftのSecurity as a Business Enabler"という考え方は正しい方向だと思う。
■ 第4章 プラットフォーム市場
プラットフォーム市場は、「BtoC EC市場」、「スマートペイメント市場」、「インターネット広告市場」、「デジタルサイネージ市場」に分類される。2013年度版では「O2O市場」というカテゴリーがあったが、独立して分析できるものとみなされないと判断をしたのか、EC市場の中で分析がなされている。一方、NRIとして、O2Oでのマーケティングモデルとして「ARASL」(Attension(認知)、Reach(誘客)、Action(購入・利用)、Share(共有)、Loyal(再利用))を提唱している。AIDMAやAISASほど流行るかどうかは分からないが。
「BtoC EC市場」は新しいステージに行くようにも思われる。Yahoo!が手数料無料に踏み切ったこともじわじわと効いてくるのではないだろうか。
「スマートペイメント市場」は、今後本書がスコープとする2018年度までの5年間で最も大きな伸びが期待できる市場のひとつである。店舗ではICカード、ネットではクレジットカードという済み分けができているが、このバランスが崩れるようなことはあるのだろうか。
「インターネット広告市場」は、今後はスマートフォン向けが伸びて、PC向けはほとんど伸びないというのが予測である。ここでもスマートフォン浸透の影響が大きいことが見て取れる。
プラットフォーム市場の中で、SNSへの言及はほとんどないのは違和感がある。
■ 第5章 コンテンツ配信市場
コンテンツ配信市場は、「ゲーム市場」、「電子書籍・雑誌・新聞市場」、「音楽配信市場」 、「動画配信市場」、「放送市場」に分類される。この市場もスマートフォンの影響を強く受けている。
「ゲーム市場」では、スマートフォン上でのゲームの性能が向上することにより、専用ゲーム機離れが懸念されている。2013年度はPS4やXBox Oneの発売で市場は拡大したが、一時的なものと予測されている。一方、ソーシャルゲームでは、GREEが海外展開に失敗しているのに対して、DeNAは比較的好調を維持していることから明暗が分かれた形になっているという。
「電子書籍市場」では、この5年間で2.9倍の5000億円の市場になることが想定されている。2012年から2013年にかけてAppleやGoogleが電子書籍販売に乗り出し、Kindleや楽天から電子書籍専用端末が導入された。
「音楽配信市場」では、フィーチャーフォン向けの市場が急速にしぼんでいくのに対して、スマートフォン向けが順調に伸びるものと予測されている。
「動画配信市場」では、放送局もコンテンツを出すようになってきており、
また、スマートフォンだけではなく、テレビでも動画配信サービスを利用することが多くなることが予測される。NTTドコモのdビデオやKDDIのビデオパス、ソフトバンクのUULAなど通信事業者が動画配信サービスを提供している。その中でもドコモとソフトバンクと組んでいるエイベックスの売上が、計画通り来年度1000万まで伸びると、関西圏の準キー局と同程度の売上になるという。そうなると、独自コンテンツ制作などにも投資できるようになり、この市場にも直接的な影響をもってくるのではないかと想定されている。Netflixが市場を牽引する米国とは様相が異なっているが、今後発展する市場と目されていることは確かだ。
「放送市場」は、過去のITナビゲーターではもっと多くのページが割かれていた分野だ。多チャンネルの加入��帯は2018年度までに100万世帯減少して、1100万世帯にまでなるという。特に衛星放送の減少が大きく5年で15%減が予測値となっている。IP放送は2012年度で純減になったが、2018年度までには若干増えて120万世帯になるという。いずれにせよ現状の延長では大きな伸びが期待できない。そのため、各社STBの高機能化を図っていることが紹介されている(NTTぷららやJCNスマートテレビなど)。
-----
まとめとして、改めてスマートフォンの影響の大きさが認識できた。今後もその方向は変わらないだろう。
色々な技術要素が互いに影響を与えているため、このように全体俯瞰をすることは非常に重要であろうと思う。また、色々な具体的気づき(920MHz帯の解禁や3年経過後の「光の道構想」の包括的見直しの開始など)を得ることができた。
表紙が初めて黒基調になったのは、何か意図があるのだろうか。電子書籍化もされているが、Kindle White Paperでは図表が読み取れないことが多いので、これだけは紙の本で購入している。こういう本なので、電子書籍版ならではの特典が付けられていればよいのだが。
-----
-----
■ ITナビゲーター2009年度版との比較
2013年度を予測したITナビゲーター2009年度版(2008年12月刊行)が手元にある。その中からいくつか予測と現実について主なポイントを挙げてみる。やはりこのITの世界において予測することは難しい。
× 携帯電話端末市場
もっとも大きく外れた予測は、スマートフォンに対する過小評価だろう。2014年度版における様々な分野の記述内容を見てもそう思う。いち早くこの波に乗ることができたものが、この5年間の勝者になったと言えるだろう。象徴的なのは2009年度版P.309の次の記載だ。この本が出版された2008年度にはすでにiPhone 3Gが発売されている。
「iPhoneが一時的なブームなのか本物の需要なのかは、数字だけでは判断しにくい状況ではある。今後、継続的に全世界ハイエンド市場約2億台のうちのシェア10%以上を占めるようになれば、本物の需要といえるだろう。」
同じ本では、ノキアが規模の経済でローエンド市場において他社を寄せ付けないとしている。
「ノキアの牙城を崩すことは非常に難しいだろう」―― そのノキアは今はない。
ちなみに2013年度の全世界の携帯電話出荷台数予測は10億3,000万台。実際には、18億台に上る。モバイルシフトは予測されていたが、専門家の予測を大きく超えるものであった。
× モバイルキャリア市場
2009年度版ではARPU下落により全体市場が減少していたこともあり、市場規模予測をベストケース6兆3,278億円、ワーストケース5兆6,710億円と予測していた。加入者数は予測が1億1,497万。実際は、6兆5,389億円で1億4,004万加入となっている。スマートフォンシフトの予測見誤りとともに、事業者も頑張ったということであろうか。
○ ブロードバンドインターネット市場
2009年度版の予測3,368万世帯に対して、実績が3,243万世帯となっている。特に過半を占める光ファイバー加入世帯は予測2,174万世帯に対して、2,281万世帯となり正確な予測。ADSLの減少速度が想定よりも速く、ケーブルインターネットも予測よりも多くなっているが、全体として正確な予測であったと評価できる。この5年間、想定外のことがこの市場では起きなかったということだろうか。
○ 法人ネットワーク市場・データセンター市場
法人ネットワーク市場の予測が約1兆円市場が8,415億円まで縮小するという予測に対して、実際が7,908億円。一方、データセンター市場は仮にSaaS/ASPまで含まれているとすると、1兆円弱規模の市場が、1兆3,500億円に拡大するという予測に対し、1兆3,418億円とほとんど外していない。2009年度版では細かい内訳の予想があるが、2014年度版では省かれている。予測に対するニーズや関心のポイントが徐々に低下していることの証しなのかもしれない。
○ BtoC EC市場
5兆円規模の市場が11.7兆円に拡大するという予測に対して、11.5兆円という驚くほど正確な予測。こうなるとこの分野の個々の予測も信用したくなる。電子マネーに関するこの当時の分析もおおむね正しい。
○ インターネット広告市場
8,413億円の予測が、実際には7,124億円となっている。そのうちモバイル向けが24%を占めるとしていたが、実際には23%であった。成長市場の予測として、かなり正確であったと言える。スマートフォンの浸透の影響を受けるのかと想定していたが、モバイル広告の市場はフィーチャーフォンの頃の想定と結果としては変わっていないのかもしれない。逆にスマートフォンへの広告表示はまだ進化の余地があるということなのかもしれない。
× 多チャンネル放送市場
自分が現在関わっている市場だが、こちらは下振れに予想が外れた。2011年7月のアナログ停波を挟んで難しい予測ではあったが、1,500万世帯という予測に対して、実際には1,200万世帯。当時の1,100万世帯からほとんど伸びていない。VODの浸透は米国ほどではないが、スマートフォンの浸透により時間の使い方が多様化したことが要因でもあるだろう。内訳を見ると、ケーブルテレビも外しているが、衛星放送の加入世帯数を大きく外している。
× デジタルカメラ・デジタルビデオカメラ市場
デジタルカメラ市場がスマートフォンの影響を最も大きく受けた市場ではないだろうか。2009年度版での予測が成長中の市場で1億7750万台のところ、2011年度をピークとして、実際には前年度大幅割れの8740万台と予測の半分以下になっている。
デジタルビデオカメラも同じく、予測が2858万台であるのに対し、実際には1340万台とこちらも予測の半数以下となった。
△ 車載情報端末
総数は、予測537万台に対して590万台で大きく外していないが、PNDが95.7万台で成長中という予測に対して、実際には75万台で減少傾向である。スマートフォンの影響はPND市場に直接影響し、より純正品に向かう流れとなっていることがわかる。
× NGN
2009年度の頃は、「NGN」が業界ではバズワードであった。自分もNGNが付く書籍の作成に少しであるが参加させてもらった。今は、NGNという言葉はほとんど聞かれない。「NGNによって何が変わるのか」というコラムを見るとまだマシな予測であったように思う。情報通信の進展を、通信事業者のみがコントロールするということが終わったということがわかった5年間だったということなのかもしれない。
× OpenID
OpenIDに期待を寄せているが、思ったほど使われていない。それよりもFacebookやTwitterの認証情報を利用することが多くなって���る。ただし、IDについては引き続きNRIも注目をしていて、ビッグデータの問題や番号制度の変更を契機として市場の拡大を予想している。
× タブレット
タブレットに関する言及はまだない。iPadが発表されるのは2010年の1月のことである。
× 薄型テレビ
アナログ停波に向けて需要増は想定をしていたが、日本勢の凋落についてはまったく想定できず。シャープの堺工場も肯定的に記載されている。だからこそ、各電機メーカーがここまでの痛手を負ったのだが。
△ スマートテレビ
スマートテレビという言葉はまだなく「NGTV」というワードで語られている。レコメンドやメタデータ活用が進むとされているが、まだまだの状況。
やはりスマートフォンの爆発的普及がこの5年間の支配的動因であったことは間違いないように思う。
一方、この間に起きたリーマンショックを引き金とする不景気や、その後のアベノミクスによる急速な円高から円安への移行の影響が見られないことだ。ITという変化の多い産業でありながら、あらためてインフラ事業の安定性を見た感じがする。
2014/01/13 19:52
投稿元:
デバイス(機器・端末)、プラットフォーム(EC、ペイメント、広告)、コンテンツ(ゲーム、音楽、動画、放送、電子書籍・雑誌・新聞)がネットワーク(有線・無線回線、データセンター、クラウド)と融合することでの社会におけるICTの将来を展望。
3Dプリンタ、各種センサーを利用したウェアラブルから、モバイル、クラウド、ビッグデータを連携させたM2M(IoT,IoE)、そしてロボットなどが有望との印象。
2014/03/30 10:13
投稿元:
デバイス市場、ネットワーク市場、プラットフォーム市場、コンテンツ配信市場。
情報セキュリティはツール2000億、サービス2000億な感じから、五年くらいで双方3000億くらいに。ネットワーク市場は技術革新・形態の変化は起こるけど大きくは伸びない。
3 件中 1 件~ 3 件を表示 |