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最初の三編『ショグゴス』『首なし』『兆』がすごくよかったです。
『ショグゴス』寓話的で皮肉の効いたSF短編。南極に現れた謎の海百合型生物と不定形生物。二種の偏った依存関係を否定しながらロボットの人類への奉仕を当たり前とする人類の矛盾。人類側指揮官の倫理感により話が予想外の方向に向かっていくのがすごく面白い。クトゥルフかじってればさらに楽しい。
『首なし』あごから上を失っても生きている男。その世話をしながら愛を注ぐ女性の狂気に美しさすら感じる。
『兆』自殺したはずのクラスメートに付きまとわれる女子中学生。自殺の理由を探るうちに深みにはまっていくフリーライター。日常から異界へと足を踏み外していく怖さを丹念に描く正統派ホラー。複雑な構成が上手いし何より怖い。
『朱雀の池』は、何かのアンソロジーで既読。どうなるんだろうと展開に惹きつけられるものはあるが唐突で後味は悪い。『密やかな趣味』は、目の付け所は面白いけれどグロさ全開で悪趣味すぎてちょっと。『試作品三号』は、SFバトルもの。軽いノリで楽しい。『百舌鳥魔先生のアトリエ』は、これも悪趣味なんですけれど、主人公の驚きと気持ちの変化に同調できる丁寧さがある。当たり前が壊れていく怖さ。
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ホラー。短編集。
ホラーというのは共通だが、SF、オカルト、妖怪、ミステリ、サスペンスなど、多様なジャンルの要素があり、飽きない。
「ショグゴス」のSF要素が非常に好き。
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作者のグロテスクな作風はそのままにSF、ミステリー、オカルト、バトルものなど様々なジャンルが取り揃えられた短編集でした。
表題作である百舌鳥魔先生のアトリエが一番好きで、隣接する生と死を描くためのグロが生かされてた感じがしました。
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久しぶりの小林泰三。
オワ〜〜そうそう、これが小林泰三…という感じの短編集でした。
とてつもなくグロい。そして雰囲気が暗い。
クトゥルフ神話が好きなので「ショグゴス」は題名からニヤリとしながら読んでいたのですが、結末が「そうきたか…!」となる面白い発想だったので、個人的にはこれが一番すきです。
「朱雀の池」はただただ切なくなりました…そんな…
いちいち細かいところまで丁寧にグロいんだよな…でも、小林泰三だ〜と安心できるのでサラッと流しながら読んでいます。
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「ショグゴス」:クトルゥフもの。あんまり対比がうまくいってないかなぁ。
「首なし」:他の作品でもそうなんだけど、女性がアグレッシブすぎる。
「兆」:意味わからん。全部女性記者の妄想ないしは狂気の産物なんだろうか。
「朱雀の池」:京都というテーマありきのお話。脈絡がなさ過ぎてどうにもこうにも。
「ひそやかな趣味」:見事に騙されました。それにしてもグロいわぁ。
「試作品三号」:ホラーかと問われれば首を傾げるけれど、設定は一番好み。
「百舌鳥魔先生のアトリエ」:勢いがありすぎてギャグに思えるんだよなぁ。
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グロい!グロい!そして気持ちのいい裏切り!!
7編中4編が既読。
既読の中では「試作品三号」が好み。
初読の「兆」に一番グッときた。
どの短編のホラー的なグロさよりこの中で描かれてるイジメの描写が一番胸糞悪い。
ほんとにどの話も意外な結末が待ち構えていて満足です。
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初出1998(平成10)年から2014(平成26)年辺りの作品を収めた短編集。
この作家の本は3冊目だったろうか。グロ趣味が何となく面白いと思っている。
今回は、「インターネット時代の文学」という感じが凄くした。もはや言葉の芸としての文学は、この文学には存在しない。言葉なき文学、とも言える。言葉があるのではなく、幾らかの記号が漂っており、吾々がインターネットを漂うのと同じように、この小説ストリーム上を辿る主体は、言葉ではなくむき出しの記号を求めて漂っている。このとき自己自身はむき出しの<欲望>でしかなくなっている。この作家の場合は「グロテスクなもの」への倒錯的な欲望だけが、存在者を存在させている唯一のものである。その欲望は何やらロジックを発生させることで、そのロジックによってようやく時間を動きき出させる。
人物も光景もほとんど描写されず、人物同士の会話だけでひたすら進む。そしてやっとグロテスクな場面が登場すると、急にそこだけ描写的になる。
このようなむき出しの欲望の主体と、記号だけが散在しそれらのあいだを「何となく」移動してゆくような、ほの暗い世界の底での体験。この在り方は、「ヱヴァンゲリヲン」の世界とも共通しているように感じる。ここは、日本文化が衰退し根源化して到達した、サブカルチャーのなかでしか実現しなかった作品世界なのであろう。
「ヱヴァンゲリヲン」と同様に、このような主体の存在は、私にはひたすら「気持ち悪い」。だが、もはや単なる欲望でしかあり得なくなった哀れな人間の行く末は、気にはなる。
本書を読みながら、そんなギリギリの境地を見るような思いに浸った。
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妻が習い事を始めた。近所の前衛芸術家に弟子入りしたというのだ。
翌日、理解を示さない私の前に出された夕飯は数切れの刺身だった。ペットの熱帯魚の水槽の中では骨と内臓が剥き出しになった姿で魚が泳いでいる・・・
小林泰三氏の短編集。年代がバラバラでかつ描き下ろしが二点。ホラーあり、バイオレンスあり、SFあり、書き口もかなり違う。