投稿元:
レビューを見る
新自由主義的な考え方の解説書。
日本の問題を網羅的に扱っているため、表面的な仕上がりであることは否めない。
投稿元:
レビューを見る
国際基督教大学客員教授(労働経済学・日本経済論)の八代尚宏(1946-)による新自由主義の経済・政治観の紹介。著者は、安倍・福田内閣で経済財政諮問会議の議員を務めていた。
【構成】
第1章 新自由主義の思想とは何か
1 基本的な考え方
2 市場と政府の役割分担
第2章 資本主義の終焉?
1 サブプラム・ローン問題の本質
2 効率的な金融市場規制とは
第3章 市場主義は日本の伝統
1 平清盛から「天下の台所」まで
2 1940年体制から1970年体制
3 分裂国家日本
第4章 小泉改革で格差は拡大したか
1 所得格差拡大の真相
2 規制緩和への誤解
第5章 小泉改革は「行きすぎ」だったか
1 郵政民営化の明暗
2 進まなかった地方分権化
3 構造改革特区
4 財政再建はなぜ成功しなかったのか
第6章 社会保障改革
1 年金制度は何のためにあるか
2 質の高い医療を
第7章 労働市場改革
1 雇用格差を縮小する方法
2 新卒一括採用、定年制という悪習
3 女性が活きるために
第8章 新産業の可能性
1 コメを輸出産業に
2 医療・介護・保育をサービス産業へ
3 都市の再開発とコンパクト・シティ
終章 震災復興とTPP
小泉政権末期から、そしてリーマン・ショック後の急激な景況悪化から、「小泉改革」についての批判の声は高まった。市場原理主義、マネタリズムを新自由主義を同一視していた人も中にはいたのだろう。ここ数年はケインズに改めて関心が集まっていたように感じる。
しかし、本書の著者は明朗に「新自由主義」を肯定する。本書で展開されている主張は、まさに小泉政権期に展開されてきた構造改革の根拠となってきたロジックである。また、民主党に政権が移った現在でも、経団連を中心とした財界が主張する内容そのものである。
そういった意味で、本書の主張に目新しさは無い。
評者もどちらかと言えば新自由主義の主張を肯定する立場にあるが、現在の日本が抱えている問題の解決策は、本書のようにこれまでの主張を繰り返すことではないと考えている。
中長期的な効率化・生産性向上を目指すあまり、短期的に切り捨てられる人たちの感情に対して、その誤解をていねいに解いて、政策への理解を求めるところにあるのではないだろうか。自民党は、それを行う意思と能力に欠けたが故に政権を追われたのだから。
投稿元:
レビューを見る
「小泉構造改革の行き過ぎが、所得格差の拡大をもたらした」という批判があるが、真の問題点は、小泉構造改革が中途半端で、不十分・不徹底だったこと。方向性は間違っていない。
投稿元:
レビューを見る
・2011年に制定されたアメリカの医療保険制度は民間の医療保険への加入を義務付ける制度。
・弱者の切り捨てではなく、その社会復帰を促す福祉制度の効率化
・本来の政府の役割は非効率な事業者を守るのではなく、その円滑な退出のための手段を講じ、市場経済を円滑に機能させること
・「効率的な規制」を目指すことが新自由主義ノットイコールレッセフェール
・役員報酬公開よりも長期保有を義務付けられた株式の支払の方がインセンティブが働く。
・世帯ベースで見た賃金格差は家族の多様化によるところも大きい
・派遣規制→失業者が増えて社会全体で所得格差が広がる可能性がある。
・スウェーデンはセーフティーネットの充実もしているが、企業の保護はいっさい行わない市場主義国家。
・郵便局のような不採算部門を金融機関が補てんするような仕組みは民間では禁じられている。
・地方交付税は地方の税収が上がれば減らされる。頑張ろうというインセンティブにならない。
・特別会計の切り崩し=埋蔵金
Totalの量を増やさなければならない。
・国債の保有は安定資産としてであって愛国心からではない。引き上げは一気に起こる可能性がある。
・農家の生産性向上ではなく、零細農家の保護に走った政府
・農業以外の収入をメインにしている農家を補助。減反は専業農家を苦しめている。
・必要な医療費のすべてではなく、何が必要な医療費かの議論がなされていない。
・
・
投稿元:
レビューを見る
不特定多数の利益を調整できる市場を最大限に活用するための、政府の役割を重視する、とする新自由主義の思想を解説し「誤解を解く」というのがこの本の目指すところとのこと。論理的に筋の通った文章はわかりやすく、根拠の乏しい言説に囚われていたことがよくわかる。すべてに納得できるわけではないけれども、9割以上は膝を打つ内容でした。
投稿元:
レビューを見る
真の自由主義とは何か、今日本に何が足りていないのかを実わかりやすく解説した良書。やはり日本は問題の核となる部分を特定し、それを解決するための最も有益な方法を見出す能力が圧倒的に足りないと思った。応急処置的な施策を行うのではなく、日本の真に進むべき道を明確にした上で、その軸に沿った対応が出来るようにしなければならない。他国や地方都市のGCPが必ずしも日本に適応されるわけでは無い。状況を的確に判断することを忘れてはならないと痛感した。
投稿元:
レビューを見る
この本は新自由主義の考え方に基づいて、現在日本が抱える様々な問題や小泉内閣の様々な規制緩和などについて論じている。
社会保障の考え方など、なるほどと思う意見もあり面白いと思った。ただ社会保障や労働問題などそれこそ本1冊書けるテーマに対して少数のページしか割いていない。そのためわかりにくい説明や本当に筆者の言っている意見で大丈夫なのかと疑問に残るところもあった。
この本を読むにあたっては、著者の意見を参考にしながらも自分自身で日本が抱える問題にどう対処していけばいいのか、自分自身で考えながら読んでいく姿勢が特に求められると思った。
投稿元:
レビューを見る
とても分かりやすく新自由主義とはどういったものかを解説してくれている本だった。
「過去の成功体験が現在の衰退を招く」という作中にでてきた言葉がとても印象的で、著者の主張もここに繋がっていくものだと理解した。
しかし、作者も最後に「必要なのは政治の改革」と締めているように、経済思想の本というよりは政治思想に近い本だったという印象があった。
ただ、具体的な提言も多く、私のような初心者にも読みやすく、おすすめしたい1冊であった。
投稿元:
レビューを見る
なぜ小泉改革を擁護しているのかと思って、著者の経歴を見れば安部・福田内閣の経済財政諮問会議に出てた人だった。新自由主義を主張し、最後はTPPを推進を唱えているが、いくつか異議を唱えたい。
1.新自由主義の考え方に基づいたシステムにすれば、日本の経済は回復するという考えだが、たとえば労働市場で需給のバランスの不一致を簡単に調整することが可能だろうか?そして可能だとしても、職が転々としていく生活を望む人が多くいるだろうか?
2.公共サービスを既得権益としているが、日本のように人口密度が都市と地方で大きく異なる国で、均一な郵便事業や社会福祉サービスが提供できるのは、これを行政がしているからだともいえる。
もし、たとえば福祉サービスについても、都市部の方が高付加価値のサービスが提供でき競争も激しければ、介護福祉士はより高額の給料の期待できる都市部へ集中するだろう。
3.農地についても、コンパクトシティの概念は賛成だが、地方の過疎地の住民を移住や土地の買収は容易だろうか?
4.TPPについては、製造業についてはアメリカは1980年代からの貿易摩擦で日本の自動車に高い関税をかけ、工場をアメリカ国内に立て現地雇用をするようにさせてきた。農業については、TPPにオーストラリアやカナダが参入してきた場合、輸出で競争できないと考えられる。
私は個人的には、新自由主義は情報の非対称性を低減して、あたかも「神の見えざる手」で瞬時に市場の調整がされるように語っているが、市場の調整が頻繁に行われることは、不安定性を意味するし、そのような調整のコストや実現性については何も議論されていない。私はそのような新自由主義の不確実性のバッファとして行政サービスや公共サービスを位置づけるべきだと思う。
投稿元:
レビューを見る
「日本の伝統を壊した」「格差を拡大させた」「強者の理論」との批判にさらされ、小泉政権以後最も嫌われている経済思想といっても過言ではない新自由主義(neoliberalism)であるが、その主義の本来意図するものは「市場原理主義に基づく『弱者の切り捨て』」でもなければ単なる「自由放任」でもなく、「一定の枠組みの下で、個人や企業が利益を追究する仕組みを活用する方が、社会的に望ましい結果をもたらす」、そのような「不特定多数の人々の利益を最もよく調整できる市場を最大限に活用するための、政府の役割を重視する」思想であることを日本経済史、サブプライムローン問題の事例などを引き合いに力説した。それを踏まえて具体的な政策立案にまで言及している点が評価できる。
投稿元:
レビューを見る
新自由主義は市場原理主義ではなく、市場を有効に活用していく手段である。そのためには、政府の適切な政策や規制緩和が必要であり、それは震災からの復興や今後の日本経済の成長にも繋がる物である。
投稿元:
レビューを見る
日本経済の様々な問題点について新自由主義の立場からの処方箋が書かれたもの。規制緩和などのメリットがかかれているが、そのようなことをしても日本の問題は片付かないないだろう。日本の停滞は金融政策が起因するもので、本書と書かれていることは金融政策を行い、デフレから脱却したあとにその効果を表すだろう。
投稿元:
レビューを見る
リーマンショックでトラウマ化した「新自由主義」的な思想・政策についての世間的な誤解を解いて、改めてその有効性を再提起する内容であり、これと異なる政策を採って行き詰っている現政権下における政策的な議論に一石を投じる内容だと思う。
投稿元:
レビューを見る
悪しきものとされる新自由主義の立場から、現在の日本が抱える経済問題について、解き明かし、その道筋を示す。新自由主義は悪だという書籍が多く出版される中、この立場から解決策を導こうとするのは貴重であると思う。
理論的には明快でわかりやすかったが、注意すべきは理論は現実と必ずしも一致しないこと。新自由主義の立場であれ、違う立場であれ理論的にナンボきれいにまとまっていても、現実とことなっていては意味がない。その点で、どちらの考えに立脚した選択肢を取るかは論点ごとに異なると思うし、慎重な検討が必要であろう。
投稿元:
レビューを見る
「市場原理主義」という誤解を解きほぐしていくことで,新自由主義を擁護する本。公共事業・社会保障・教育・医療・労働など広範囲にわたって書かれているし,論旨は明快,よくまとまってもいる。著者の主張に賛同するか否かは別にして,読んでおく価値はある。
新自由主義といえども,経済を完全に市場に任せる趣旨ではない。市場の失敗や環境破壊の抑止・景気対策や所得再分配等,政府が果たすべき役割は認めている。ただ,有害無益な規制・障壁をなくしていくことを良しとする方向性は徹底している。高度経済成長期に定着してしまった,日本の社会主義的システムは,どんどん作り替えていかなくてはならない。
それを実践したのが小泉構造改革だったわけだが,これは格差社会を招いたとして大変評判が悪い。著者はそれが誤解であることをデータで説明し,改革が不徹底だったことがその後の日本経済の低空飛行につながったと結論づける。
総論としてはもっともな話と感じたが,各論では疑問な点も残った。弁護士増員問題や混合診療の是非など。それぞれのテーマで様々な議論がなされているはずだが,それをうまく取り込んだようには見えず,少々一方的な印象を受けた。
それにしても社会には様々なしがらみがある。小泉改革が誤解のうちに終わったいま,再び新自由主義が復活して改革を押し進めて行くことは,容易でないだろう。