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悪しきものとされる新自由主義の立場から、現在の日本が抱える経済問題について、解き明かし、その道筋を示す。新自由主義は悪だという書籍が多く出版される中、この立場から解決策を導こうとするのは貴重であると思う。
理論的には明快でわかりやすかったが、注意すべきは理論は現実と必ずしも一致しないこと。新自由主義の立場であれ、違う立場であれ理論的にナンボきれいにまとまっていても、現実とことなっていては意味がない。その点で、どちらの考えに立脚した選択肢を取るかは論点ごとに異なると思うし、慎重な検討が必要であろう。
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「市場原理主義」という誤解を解きほぐしていくことで,新自由主義を擁護する本。公共事業・社会保障・教育・医療・労働など広範囲にわたって書かれているし,論旨は明快,よくまとまってもいる。著者の主張に賛同するか否かは別にして,読んでおく価値はある。
新自由主義といえども,経済を完全に市場に任せる趣旨ではない。市場の失敗や環境破壊の抑止・景気対策や所得再分配等,政府が果たすべき役割は認めている。ただ,有害無益な規制・障壁をなくしていくことを良しとする方向性は徹底している。高度経済成長期に定着してしまった,日本の社会主義的システムは,どんどん作り替えていかなくてはならない。
それを実践したのが小泉構造改革だったわけだが,これは格差社会を招いたとして大変評判が悪い。著者はそれが誤解であることをデータで説明し,改革が不徹底だったことがその後の日本経済の低空飛行につながったと結論づける。
総論としてはもっともな話と感じたが,各論では疑問な点も残った。弁護士増員問題や混合診療の是非など。それぞれのテーマで様々な議論がなされているはずだが,それをうまく取り込んだようには見えず,少々一方的な印象を受けた。
それにしても社会には様々なしがらみがある。小泉改革が誤解のうちに終わったいま,再び新自由主義が復活して改革を押し進めて行くことは,容易でないだろう。
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今ある政策やそれに関する情報に対する違った見方から行われる批判や考察が素晴らしい
国内視点だけでなく国外からの視点も踏まえている
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新自由主義の立場から日本経済の現状を分析し、その処方箋を提示している。処方箋も的確で納得できる。小泉改革、リーマンショック以降、新自由主義の旗色が悪いが、その多くが誤解に基づいている。新自由主義を全面に打ち出す政党すら無い現状が悲しい。
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タイトル通り、「新自由主義とは何か」を書いた本。
この主義の本質は世間で批判されるような「格差拡大の主犯」ではなく「市場を最大限に活用し、パレート最適(他人の効用を低めない限り、自らの効用や生産を高める余地が全くない状況)にする。その結果、社会の富を生み出す企業や個人を最大限に認め、その成果を不遇な人々に状況改善に充てることができる。」と主張する。
戦後や最近の政治経済はもちろん、日本の経済史、雇用問題、環境、保育、介護・医療など幅広く取り扱っている。コラムでは経済古典も扱う。
「上記の新自由主義の視点からどのような政策が提案できるか?」その点も新書の割に、具体的で深く掘り下げられていて非常に興味深かった。新自由主義という軸がしっかりしていてどの分野の政策案も論理が全くぶれてなかった。かなりスパッと明快。批判点も多くあるようだが、この明快さが本書のまた一つ魅力となっているのかもしれない。
失われた"20年"を30年にしないためには、市場をフル活用し、政府がそれを整えていく必要がある。
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提示されている政策の狙い・目的についての理解はしやすかったが、多くのものが日本の慣行を変えるものであり、その実現は容易ではないと感じた。
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新自由主義の考え方がよくわかる。合理的な考え方な人だけで、世の中が構成されていたら、うまくいくかもしれないが、なかなか割り切れないのが、世の常。そこが難しいところだな。
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この本の主張をひと言でいえば、「日本経済を救うのは新自由主義だ!」ということ。近ごろ完全に悪者扱いされている新自由主義の誤解を解き、本当の新自由主義による日本経済の再生を提言している。
「新自由主義は決して自由放任主義のことではない」「小泉改革は『やりすぎ』だったのではなく『中途半端』だった」「派遣法の規制緩和は、本来労働者のためのものだった」等今までの固定観念をひっくり返す主張が次々に飛び出してくる。そして、その主張には論理的な裏づけがされている。著者の言うことを鵜呑みにするわけにはいかないけれど、この本を読んだことで、新自由主義に対する僕の見方が大きく変わった。
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オールクリア。唯一の疑問点は非正規雇用者数、特に派遣社員数の増加に関するくだり。データ上はかなり増えてる様に見受けられるが、筆者曰く非正規雇用者数全体が増えており、それに比べれば大した増加ではなく問題視する必要はないとの事。要検証。
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新自由主義は、市場原理主義と同じものであると誤解されることが多い。
このような誤解が実際には異なることと、イメージ先行で新自由主義を毛嫌いすることがないように、日本でも織田信長の時代や大阪商人の時代から新自由主義が行われていたことを指摘しつつ、政府の役割等がどの程度必要なのかなどをわかりやすく書いている。
具体的には、歴史に見る新自由主義、サブプライムローン問題、格差が広がったどうか、小泉改革は行き過ぎだったのか、社会保障、労働市場、新産業、TPPと復興、のそれぞれの課題についての分析と新自由主義の点からの解決策を書いている
議論の文化があまりない日本では、二項対立、イメージ論からの議論になることが多いが、どのような主義・主張であるかと差異を聞き、そのうえで対話をすることが大切であると思う。その意味でも、著者の主張は聞く価値があると思う。
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八代尚宏著「新自由主義の復権」中公新書(2012)
*問題なのは市場競争の行き過ぎなのではなく、それと対になるべき、政府による生活の安全網の構築が不十分であったこと。企業が従業員とその家族の生活を守り、その企業を国から守る。そんな企業依存型の福祉社会が高い経済成長期の終焉とともに弱体化している。また、企業に守られない層が拡大したにも関わらず、過去の制度がそのまま意地されている事が格差拡大の真の要因となっている。
*経済学の思想史をひもとくとアダムスミスに代表される、市場を尊重する古典的自由主義は、ケインズが唱えが不況期には政府が積極的なマクロ経済政策を行うべきという思想によって、いったん否定された。しかし、そのケインズ政策も1970年代のインフレと失業の併存という状況で、政府に肥大化をもたらしたと批判された。その批判の主体となったのが本書の中心的なテーマである「新しい自由主義」の思想だ。この経済学の主流の考え方の思想家としては、ハイエク、フリードマン、ベッカーなどがあげられる。
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読了。これほど分かりやすい一冊は久しぶり。資本主義・市場主義を様々な具体例から解説していく。おせっかいですが、一読する事をお勧めします!
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新自由主義は市場原理主義に基づく『弱者の切り捨て』ではなく、福祉制度の効率化も大きなテーマとしている。
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民主党政権下の2011年に書かれた本ですので、やや古くなっておりますが、政権交代後にまた復活してきたタクシー規制など社会主義的政策はどう評価しているのでしょうか。
先に「日本経済論・入門」を読んだのですが、記述が何箇所かで重複して同じことを書いております。
著者の主張はわかりましたので、あとは別な方の本を読んでいこうと思います。
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新自由主義という定義は曖昧な部分もあるが、政府による規制を最小化し民間による自由競争を重んじる考え方。
この本が刊行された2011年当時、「新自由主義が市場競争を煽って格差を拡大させた」とか「リーマンショックを引き起こした元凶」とか新自由主義が叩かれた。
著者はその論調に異議を唱える。新自由主義自体が問題ではなく政府のセーフティ・ネットの構築が不十分だったことを指摘する。新自由主義が失敗した=市場任せではいけないだろうという論調を牽制する。
門外漢の私見だが、新自由主義=政府&民間のハイブリッドで世の中をよりよくしようとするものだと理解する。ただし一個人としては政府も民間も頼りにできず、かといって目の前で生じている日常に精神的余裕もなく日々を送っている。