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フランス現代思想の主要な思想家たちをとりあげてわかりやすく解説している本です。
ヘーゲルで頂点を極めた近代思想は、主体・言葉・真理が一致するはずだという発想に根ざしていました。こうした主体中心主義、あるいはロゴス中心主義への異議申し立てが、現代思想の主要モティーフとなっています。現代思想の源流となったニーチェとフロイトは、自我の外部にある生や無意識の領域について語り、ソシュールは言語が恣意的な体系であることを明らかにしました。他方、フッサール、ハイデガー、サルトルらは、ヘーゲルの絶対精神に代表されるような普遍的な意味をもつ近代的主体に代えて、「実存」に基づく哲学を構築しました。
現代フランスの思想家たちは、こうした思想家たちの仕事を引き継ぎながら、主体中心主義やロゴス中心主義を全面的に批判し、そこからたえず逃れていくことをめざしました。デリダの「脱構築」、ドゥルーズ=ガタリの「ノマド」にはそうした戦略が認められ、バルトやボードリヤールも現代の消費社会にたえまない記号の差異化の戯れを見いだそうとしていると著者は解説しています。
ただし、こうした現代思想の戦略には、際限のない相対主義に陥ってしまうという問題が避けがたくつきまとうことになります。著者は、単に主体の「外部」が存在することを認めるだけでは、いまだ「他者」との倫理的な関係を築くことではないと指摘し、「内部」と「外部」とのあるべき関係について、自己の内なる不透明なものを認めつつ、それと鷹揚に付き合っていくような「倫理」がめざされなければならないと主張します。
なにを解説しても全共闘体験やサルトル体験を起点に語り出されるのが、いかにもこの著者らしいという気がします。
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ナチズムは、ある意味で歴史と実存に対応する神話なわけです。それをでたらめの神話だと言うのは簡単ですが、民族の神話、アーリア人の歴史的宿命という言葉によって、人間の生きることの意味と歴史を結びつけようとしたわけですね。(p.162)
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現代思想における流れを簡潔に説明している。
本書で解説されて気になった哲学者や思想家について更に調べてみようと思う。