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これまで読んだ高野さん本とちょっと趣が違って、ジャーナリスティックというか、ノンフィクションぽいというか。中国、ビルマ、ワ州の政治の話とかは、そのあたりの情勢がまったくわかってないわたしにはちょっとわかりずらい部分もあったけれども、高野さんって、実は(実はってこともないが)ものすごく優秀なジャーナリストなんだと思い、尊敬と信頼をあらたにした感じ。今までは、ヘタレなとこもある無茶な冒険家、って感じだったんだけど、ちゃんとしたジャーナリストで、研究家で、と。とはいえ、実際にワ州の村で村人にまじってアヘン栽培をしたりっていうところは、やっぱりヘタレなとこもある冒険家って感じなんだけど。
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「辺境作家」改め、「ノンフィクション作家」として「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それをおもしろく書く」高野秀行の著書。
ゴールデン・トライアングルとして有名なアヘンの生産地ビルマはワ州で実際にケシの種まきからアヘン収穫まで体験してみようと試み、実際に世界的にも例のない7ヶ月という長期滞在期間での体験記。なんと終いにはにはアヘン中毒になってしまう。
今や政治情勢が変わり、二度と同じ体験はできないようだ。入国も難しいどころか、少なくとも表面上はケシも作っていないらしい。
読むだけでどこかノスタルジーを感じる現地の民族との生活や、ケシづくりについて楽しく書くだけでなく、一変社会派ライターのような、ワ軍幹部とのやり取りや分析も見せる。何よりもすごいと感じるのは行動力もそうだが、少数民族の言葉まで使いこなしてしまう言語能力。
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いつもの「破天荒な高野秀行」をイメージして読むと肩透かしを喰らうかも。いや、いつも通り破天荒だ。もちろん毎度の独特のウィットにも富んでいる。しかしながら、アヘンのゴールデン・トライアングルを鳥瞰ではなく当事者として体験するという発想、ビルマやアヘンの歴史的背景の記述など、他作品とは一線を画すジャーナリスティックな作品に仕上がっている。
「アヘン中毒」という刺激的な紹介が多いですが、麻薬栽培に携わる村人や軍幹部を「人間臭い人間」として著者目線で描く点を是非感じて欲しい。
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高野秀行のビルマ中国国境地帯、いわゆる黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)の中心地であるワ州への潜入記。妙にルポ調で、いつもにくらべて異様に政治的・歴史的背景について詳しく説明されていて、ちょっとうざい。筆者はこの作品についてあとがきで「心の支えになるような」「背骨となる」仕事だと、述べていて、非常に満足のいっている出来のようだが、高野秀行にこんなものは求めていないのだ。とはいえ、やはり高野秀行であり、その他のいわゆる旅行記的な部分は非常に読み応えがあって面白い。特にアヘン中毒になってしまうあたりはかなりリアリティがあって興味深かった。曰く、アヘンで身体がぼろぼろになるというのは嘘だが、アヘンは中毒性が強く、常用すると耐性ができてそのうち一日中吸っていなくては効果が現れなくなってしまうために、廃人のようになってしまうとのことである。やっぱり副作用があるのは精製や合成をされた人工ドラッグだけのようだ。また、明記されていないが、どうやら天然の未加工のアヘンはいわゆるダウン系に分類されるドラッグのようである。
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個人的には『ワセダ三畳~』のほうが好き!アヘン王国は非日常・ワセダ三畳のが日常に近いからか?ミャンマーやビルマにあまり興味がなくても『アヘン王国』と聞くと読みたいと思えるのは素敵。
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タイとラオス、ミャンマーの三国の境を接する地域は、ゴールデン・トライアングルと呼ばれ、麻薬の王といわれるアヘンをはじめ、非合法のモルヒネ、ヘロインの世界最大の生産地となっている。
とりわけ、ミャンマー北部に位置するワ州は、反政府ゲリラが支配しているため、政府の権限は全く及ばない辺境地域であり、平地に乏しく農作物が育ちにくく、換金作物はおろか自給自足も成り立たない。
そんなワ州は、「絶対悪」であるケシ栽培、アヘン生産による取引が合法的に認められている、まさに「善悪の彼岸」であり、高野氏はそこで暮らす住民と一緒に、ケシの種まきから収穫まで約7か月をかけて麻薬生産に従事する。
ワ州ムイレ村の住民たちとの悲喜交々の人間模様や経済事情、軍部へのアヘン=合法モルヒネ・プロジェクトの草案提出、そして自らアヘン中毒になりながらの決死のルポタージュは、いつもながら、ここまでやるかと、笑わされ、驚かされる。
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ゆるく気楽に書いているが、ビルマ政府から半ば独立自治を行っているワ州に潜入し、実際にアヘンの種まきから収穫まで、はてはアヘン中毒になるまでの七ヶ月を綴ったノンフィクション。誰にも出来なかった現代の冒険を愉快に書きつつ、問題点について鋭く切り込むのも興味深かった。
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麻薬で黄金の三角地帯と呼ばれる地で半年ほど生活した滞在記である。そこは、中国国境に近くビルマ少数民族であるワ族の数十人の村で、ラジオも入らず、筆者をアメリカとかではなく白人国から来たと思うほど世界から隔絶したところである。でも、礼を知り、祖先を敬い、シャイな彼らには、本で読む昔の日本人かと思うほどの親近感を感じる。文明はないが独自の文化を育み、極悪人ではなく素朴な村人が住んでいることを現地の生活に根ざして紹介した筆者の功績は大きいと思う。今後、アヘンを取り巻くパワーポリティクスの影響が彼らにも及ぶだろうが、それが不幸にならないことを願う。この本を読めば、この本の写真を見れば、誰もが同じ感想を抱くだろう。
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高野氏のミャンマー作品を読むのは3つめ。知れば知るほどよくわからないミャンマー。これって本当に国家なの!?ってかそもそも国家ってなに?自分がミャンマーの国民だなんて全く思ってない彼らも、世界からみたらミャンマー人。不思議がいっぱいのワ州とミャンマー。いやビルマと呼ぶべきか。ニュースを見たってわからないことがいっぱい。実際に行ったらもっと驚くんだろうけど正直行きたくはない。なので、高野さんがこうして本を書いて情報発信してくれることに深く感謝。
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誰も行かないであろう土地に行くという発想が面白い。
あとがきを読んで時代は常に変化しているのだと感じた。
そういう意味でも価値のある取材であったと思う。
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ミャンマーのワ州に潜入して実際にアヘンを作ってしまうというルポ。
すごいとしか言いようがない。
やってる事は不法入国だったりアヘン栽培だったりするのに
高野さんのユーモラスで読みやすい文体のおかげで深刻になりすぎず
とても面白く、分かりやすい。
高野さんがアヘン中毒になるくだりは「こうやってはまっていく」感じが
出ていてとても興味深かった。
渾身のルポで非常に面白い。
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1995年に、ミャンマー北部でアヘンをとるためのケシの生産が主産業の村で七ヶ月過ごした筆者のルポルタージュ。
日本では、麻薬としてアヘンの生産も使用も禁止されている。そのために、『アヘンを生産する村』というと、秘密厳守で人々が強制労働しているような蟹工船まがいのイメージが浮かぶかもしれない。だが、このルポを読めば、そのイメージはことごとく裏切られる。そこは一見すると、貧困の中にはあるものの、それなりに穏やかな農村である。
このルポを読むと、自分の常識の外にある世界が分かりやすく伝教えられる。また、なぜ村人がアヘンを作るのか(アヘン生産が当時の貴重な現金収入を得る手段であり、彼等にとって換金作物である点ではタバコやカカオと違いはないだろう)、軍と密接に関わるアヘン生産にまで想いを馳せれば、貧困や社会について改めて考えるきっかけとなりうる。
また、アヘンを実際に吸ってみて、気持ち良さを知って見事にアヘン中毒となってしまった様を詳細に書くなど、何よりエッセイとして読んでいて面白い。好奇心のままにどこまでもいく筆者の文は軽快で、読めば日頃の鬱蒼とした物思いが晴れたような清々しさを味わえる。
大変面白い内容だが、17年前のルポなので、現地の生産状況やアヘンを取り巻く世相がこの話と現在では大幅に違うことには注意が必要。
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探検家とは こういう人のことを言うのだろう。
語学能力の吸収力がすごい。
それに、なんでも体験しようとするのが 著者のよさだ。
アヘンを取材して アヘン中毒者にまでなってしまうところが
真骨頂 というべきか。
(そこまでするか・・・というか。そこまでしたかったというべきか。
「ミイラ取りがミイラになる」という格言の実践者。
アヘンをとる花は ケシの花。
このアヘン王国潜入記は
1995年10月から1996年5月までの
ビルマのワ州に 著者が滞在した ルポルタージュ である。
アヘンについて 現場で 実際に自分で作ってみて 考える
現場主義に徹していることが 大切なことなんですね。
高野秀行氏の潜入した ムイレ村の生活をみていると
なにか 沖縄 を思い出した。
オトコはのんびりとして タバコを吸い 泡盛を飲み 三線をひいている。
女子たちが 畑仕事に精を出す・・。
作業の方法は 共同体的で 沖縄で言えば『ゆい』のようなあり方である。
17軒の家で 夫のいない家が多い。8軒が女子が戸主
戦争によるものが3人 病死によるものが3人。
9人の男子戸主のうち 7人が戦争経験者。
現在も5人が兵役についている。
平穏な村に 戦争の傷が かなり深くきざまれている・・・。
沖縄における 戦争の傷も深い・・・。
戦争によって心が癒されないヒトもいる。
農業自体は 高野秀行氏は焼き畑農業といっているが
2期作をしているようなので、焼き畑農業といえるのかな。
ケシは秋に種まきをして 春に収穫する。
土は 固くて十分に 耕されていないようだし
堆肥が入れられているわけでもない。
家には 豚が飼われていて 複合的である・・。
豚の糞を 畑に入れるということをしていないのだろうか?
『男が死ねば家が絶え 女が死ねば畑が絶える』というのが
貧しい農村の姿を現している。
ワ軍が ケシの収穫の20%をとるとしているが、
実際は 軍の幹部の個人的な裁量で 半分くらい収奪する。
ワ軍は 不安定なところに アヘンの収入によって・・・
支えられている。幹部は それを背景に個人的な富を蓄積する。
しかし、あまりえらぶっていなくて
一般とヒトのような身なりをしている。
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ミャンマーに潜入して、アヘンを栽培してみました&中毒になりかけました本。天性の引きの良さや語学力等著者の凄さを挙げたらキリがないが、一番凄いのはやはり文章力だと思う。
おちゃらけた内容が多いのだが、どの本も共通して、読者を遠ざけるであろう紛争等の重い歴史の話が所々に入ってくる。だがこの人はそれをすんなりと読者に植え付けて行く。あくまでも軽くふわふわっとだ、だが決して表層的な話ではなく、深い本質まで抉っていく。実際にその土地を訪れ、実体験しているからこそ、巧く話を挿入出来るところもあるのかもしれないが、この能力は凄い。
完全に高野さんにはまっている自分がいる。。
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著者の代表作。中国に接する山奥にある、ビルマのワ州の滞在記。当時この元人食い人種である少数民族のゲリラが支配する場所は、阿片の世界的産地であるゴールデン・トライアングルの一角だった。西側の人間が入ったことのない「国」で著者は七ヶ月生活した。これまで読んだ著者の本にしては笑いが少なめだ。未開の人々との生活の泣き笑いや阿片の種まきから収穫までを経験する著者の行動力に驚く。ついには阿片中毒にもなってしまう。阿片の効果の描写がある。話に聞いたことはあるがこれは日本では流行らないだろうと変な納得をした。