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夫婦にまつわる短編集。読み始めは角川ホラー文庫なのにホラーっぽさがないと思っていたが『いじめたくなる女』は完璧にホラーだなと思った。『愛されすぎた夫』も怖い。大石作品なのにこの作品だけ、毛色が違う。大石圭の公式サイトにも書いてある。しかし、この2作品は背筋がゾクっとする。『妻への疑念』『他人の妻、他人の夫』は別の意味や視点で女の怖さというのを表している。全作品を通して言える事は結婚というのは恐ろしい。結婚というのは紙きれ1枚で他人同士が『夫婦』という縛りになり、紙切れ1枚で離婚も出来る。結婚は怖い。
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いろいろな夫婦を題材にした短編集。
っても大石圭なので、一筋縄ではいきませんが。
ともあれ、夫婦は互いを映す鏡っていうが、どの夫婦もその相手じゃなかったらもうちょっと違った人生だったかもと思うのである。いや、そのパートナーであったとしても、そこにあるぬかるみに足をつっこみさえしなければ「物語」にはならないかもしれないが、平穏な幸せが続いていたのだろう。
そういうこともひっくつるめて、<相性>というのだろう。
つか、ひっくるめられてしまう<相性>が、ものすごく恐ろしい。
「愛されすぎた夫」が一番やばいと思った。
いわば、共依存の夫婦の話なのだが、それを第三者をして語っている主人公もまた共依存の罠に落ちいているのに全く気付いていない。
そして、一番の共依存の妻は、夫をスポイルし続ける。でも、それは愛じゃないよね。
この妻も、語り手の主人公も、結局は自分を、というか自分だけを愛しているのだ。家族に虐げられている自分を悲劇のヒロインであるかのように愛でている。
語り手は、自分より強力な共依存の妻の存在をきっかけにもしかしたらそこから脱することが出来てのかもしれない。
が、歪んだ自己愛は、解決を求めない。
そう。誰もそこからの脱出を望まず、ただ愚痴を言っているだけという状況がたまらなく、醜悪でつらかった。
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夫婦をテーマにした短編集。ホラーとしてはあまりどぎつくない印象だけれど、この嫌さはけっこうじわじわとくるものがあるなあ。誰にでもこういった狂気が隠されているのかもしれない、と思えば恐ろしい話。
お気に入りは「いじめたくなる女」。痛々しくってとにかく嫌さは一番の一作。だけどラストの衝撃の展開にはなんだかすっきり。