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どんな人にでも、ふとした時に悪魔がささやくことがある。悪魔の誘惑に負ければ、自殺したり、犯罪を犯したりする。
これは、自他を守るために、「悪魔のささやき」に抵抗する手段を身につけるための指南書である。
――と言っても宗教の本ではありません。分類としては精神医学の範疇です。
昨今続発している、理解し難いほど幼稚で稚拙な動機の凶悪犯罪が起きる要因について知りたい、という方にお薦めします。
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「個」を育てることで悪霊を退散させる。個人の内面を発達させるために読書が必要不可欠。主義主張はともかくオウムや戦前戦後の日本人の民主主義への早変わりについてなど具体例がわかりやすくてよろしい。
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この情報の海の中で、自分が欲しい情報だけでなく必要な情報をも捉えるアンテナとバランス感覚を持ち、自分で考え判断していく力がないと悪魔の思う壺ということでしょうか。
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再読本。
改めて以下の点を考えさせられた。
人間、ここで著者が言う「悪魔に囁かれた」という瞬間は存在する。
自分だけは大丈夫という自信を持ちすぎない。その歯止めは決して自分たちが思っているようなスチールのようなものではない、波打ち際の砂の城のように脆いものなのだ。
大事なことは、自分で物事を考え、自分の好きな道を見つけ、個人として生きていくことをないがしろにしないこと。
そのためには、広い視点をもつこと。自分とまわりさえよければ良いという考えをやめること。
著者の分野より宗教の部分の話もあるが、改めて大切なことは自分だ、ということを再認識した。
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人間は本人すら後になって自分は何故こんな行動を?という行動をとってしまう。
まるで悪魔にささやかれるように。
というようなことを精神科医でキリスト教徒といった著者の視点から書かれている。
個人的には、オウム事件の有名大学を主席で卒業した人々が何故あんな稚拙な思想に動かされたのか?に対して退屈を理由に挙げている点
フロイトの「タナトス」の概念により攻撃性を説明されている点は面白く読めた。
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犯罪・自殺など人が悪い方向へ行ってしまうのを後押しする悪魔のささやきの原因や対処法について述べた本
筆者が精神科医として犯罪者に実際に会った話を交えたり、歴史・宗教を絡めて話を進めたりと筆者の多様かつ深い知識で理解が深まりました。
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「人を殺してはいけないということを学校では習わなかった」的な言葉が印象的な事件の記述とか自分の生まれる前の事件のことも知ることができてよかった。
この本で考えたことが大学1年の時のレポートで大活躍してくれたような。
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「意識と無意識のはざまでふわふわとした状態の時、人は悪魔にささやかれる。」これは一つの比喩だけど、この本を読んでる最中に非常に近い感覚を持った。
実際に行動に移すことは無かったけれど、恐らくその瞬間に、歯止めになるような人やことが無かったら自分も悪魔のささやきに過ちへと導かれていったかもしれないと今ではゾッとしてる。
個人的には首をかしげるような主張も多かったけど、人間というものが持つ様々な面を観察されていると思った。善悪二元論なんて簡単な話なんか無いやね。
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高1か高2のときに、新書レポートの本として読んだものを再読。
読んだ本の内容をはっきり覚えていられない者ながらも、この本はためになった本としてうっすら覚えていました。
おそらく、当時の私はなんとなく法学部志望だったこともあり犯罪心理学に興味があったこともありこの本を手に取ったんだと思います。
本書は、タイトルにある通り「悪魔のささやき」についての事例やその予防策などについての見解が述べられています。
ただ、それのみならず、現代社会における問題を考えさせる要素を含んでいると思います。
社会の刑務所化、という考え方が印象的。
読みやすい文体で難解な用語もなく読み進めることができました。
最後の章では、「悪魔のささやき」に負けないようにするにはどうすればいいのかについて述べられています。
読んでみて感じたのは、「悪魔のささやき」から自分を守るため…というより、いち社会人として生活していくために必要な要素ではないか、ということです。
予備校の博識な日本史の某講師も言っていたけど、日本人はあまりにも宗教に関して無知だという意見には反論の余地がありません。
事実、私はキリスト教とかイスラム教とか仏教、神道でさえも浅い知識しかないです。
今までたどってきた歴史等を踏まえると、日本人がそのようになるのも仕方ないような気もしますが…
夏目漱石も書いていたように、外国から文化を受け入れ「上滑りの文明開化」(ですよね?自信ない…)を遂げた国だから自国に文化として根付いていない…?
それに、筆者はしっかりとした自分の確立も挙げていました。
これもいわゆる“われわれ”意識(すみません、誰の文にあったか忘れてしまいました;)から近代的な個の確立にシフトすることができていないのでは?
…なんて、心理学的な話以外にも様々なことを考えさせられる本でした。
(私が勝手に広げていった気もするけど)
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とても読みやすい本。医学的見地までとても読みやすい本。
読んでいても感じる事だが大変な読書家である作者の、その知識を集めて書かれた本書は一読の価値があると思う。
幻聴の話は目から鱗。言われてみればそうだと、初めて意識しました。
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罪を悪魔のささやきという、曖昧なものに転嫁してしまいそうな危惧もあるが、人間の弱さ、罪深さを表現しているとも言える。
情報が溢れていながら、自分の好きなものしか見ない、感心を持たないという、社会の刑務所化が他者への感心や理解を持たない人を増やしているということには、納得。
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悪魔のささやきとは、人間の弱さや醜さを引きずり出し、悪い方向へと突き動かすもののこと。犯罪や自殺へと誘う、目には見えない力。自分だけは大丈夫などということはありえない。
分かりやすくとても面白かった。軍国主義、学園闘争、多くの死刑囚との面談。著者が体験した出来事はどれも生々しく、人間の脆さが浮かびあがってくる。悪魔にささやかれても靡かない、流されない「自分」をしっかり作らねばならないと感じた。
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■日本人
A.日本人は、その時々の風潮に流されやすい。その背景の1 つに、和を重んじる国民性がある。この気質は、良く言えば「協調性がある」、悪く言えば「自分がない」。人とうまくやることを第一に考える社会では、個人の主張を控える。それゆえに私たちは、自分の頭で考えるのが苦手な国民になった。
B.派手に人が殺されるアクション映画を楽しむなど、人間の心の中には、悪魔的なものが確固として存在する。犯罪というのは、そういった普通の人間が持つ欲望の実現といえる。
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ちょっとしたきっかけで邪悪な考え方が頭に浮かぶ。ちょっとしたはずみでその考え方を行動にうつしてしまう。そして不運が重なってその行動がとんでもない結果を生み出してしまう。こうしたプロセスは程度の差はあれ、誰でも関わったことがあるのではないだろうか。考えだけで終わることもあり、行動してしまったがなんとか深刻な結果だけは免れたこともあったり。犯罪者や自傷行為者はこうしたプロセスの延長線上にあり、知性を持ってしまった人間であれば常にそうした危険にさらされているのである。著者の加賀さんは拘置所で医務技官を努めた後、文学的な執筆活動を続けている。本書は人間を狂気に走らせるきっかけになる、いわゆる「魔が差す」と称される心理現象を歴史的なできごと、民主主義や情報操作などと絡めて説明し、現代人とくに日本人に強力な警鐘を鳴らす。戦争、2.26事件、学園闘争、建設物の耐震強度や野菜の産地偽装など豊富な事例を取り上げて、個々人の心の中に巣食う「悪魔」の存在を浮き彫りにしていく論述は圧巻。こうした考察が文学などに「悪魔」という存在を降臨させるのだと思う。
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実際に犯罪を犯したり、自殺未遂した人の話をじかに聞いて書かれているので、なかなか興味深く、面白かったです。
作者の人物像なども垣間見られ、加賀乙彦さんの本を、もっと読んでみたくなった。
オウム真理教事件において、松本被告に接見し、訴訟能力はなく治療すべきであるとの診断を下したのが、当たり前のことだけど、すごいなと思いました。