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日残りて昏るるに未だ遠し―。家督をゆずり、離れに起臥する隠居の身となった三屋清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし、藩の執政府は紛糾の渦中にあったのである。老いゆく日々の命のかがやきを、いぶし銀にも似た見事な筆で描く傑作長篇小説。
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Kindleで購入した始めての小説でした
そして、始めての藤沢周平でもありました。
いやぁ、どっぷり藤沢ワールドにはまらせていただきました。
最初の2~3行を読んだだけで、江戸時代の雰囲気を十分に感じさせてくれる文体がステキです。
時代小説って使っている単語が古臭くて取っ付きにくいかな?と思っていたのですが全然そんなこと無いです。
江戸時代に使われていた単語や言い回しがすんなり入ってくるし、何よりその表現が小説全体のスパイスとして機能しています。
単純にいうと「盛り上げて」くれるんですよね。
こんなに文体に酔いしられる本は珍しいです。
読んでいて「気持ちがいい」
そしてそして、沢山の食事シーンが出てくるのですが、これがまたどれも美味しそう!
これを読んだ後に日本食を食べたら「あぁ、日本人で良かったなぁ」と感謝したくなります。
小説自体も、連作短編形式になっていて、各章で物語が完結しているので読みやすいです。
TVでも放映されてたらしいですね。
ビデオが出てたら観てみたいと思いました。
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昔NHKのドラマでやっていて、読んだ原作本。心理描写が、とても好きな作品。短編の集まりなので、読みやすいと思う。
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藤沢修平さんの作品の中で、再読したくなる本です。これで、3回目か。隠居したあとの、寂寥感と空白感というものが、とても実感できます。
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ブログに掲載しました。
http://boketen.seesaa.net/article/366446916.html
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97年3月以来の2回目。主人公の隠居老人・三屋清左衛門が実は50歳過ぎで自分と同じ歳ということが複雑な心境ではありますが、藤沢はやはり老境の枯れた心持ちを描くと天才的ですね。人生の残り日々を数えるというタイトルに込められた気持ちがよく伝わってきます。現役を離れ、目立たない、人が嫌がる仕事に生きる主人公の姿が企業人としても目指したいものだと思います。特に印象に残る場面は若い日々は出世を争い、むしろ禄では上回っていた金井奥乃助が没落して、主人公の前に不幸せな姿を現す章ですが、何とも辛い場面でもあります。しかしながら、藩内の後継者・家老をめぐる派閥闘争による明暗分けであり、派閥闘争というのは、現代の企業ではそこまで酷くないですよ、と藤沢に抗議したいような気がいたします。藤沢の本は登場する女性たち(嫁の里江ほか)が、ほぼ例外なくいずれも賢い理想的な日本女性であることがまた読みながらホッとさせてくれる魅力でもあります。
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義父からもらったシリーズ。
これは藩で用人まで勤めた主人公の隠居後の生活を描いたもの。
隠居という立場の自由さを武器にいろんな事件?を解決していくの。
私、この作者の何が一番好きって、きっと人物の描き方なんだろうなあ。秋以降、あれこれ読んできたけど、全然飽きない。好き。
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隠居した主人公を中心に語られる短編。15編を通して少しずつ明らかになる派閥抗争。
2回目でしたが楽しかった。
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1月26日は寒梅忌であったらしい(読友の松風さんのご教示)。誰が名付けたのか寒梅忌というのは、まことに藤沢周平にこそふさわしいと思う。人は命日を自分では選べないのだが。少しずれてしまったのだが、遅ればせながら寒梅忌にちなんで藤沢作品をと本書を選んだ。本編は著者の還暦前後に執筆されている。篇中の「梅咲くころ」の清左衛門などは、作家本人を思わせるようで、ふと読者の微笑みを誘うかのようだ。作品は15の短篇が集積した物語集で、いずれも捨て難い趣きを持つが、「白い顔」の完成度が最も高いようだ。
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用人の身から隠居することになった三屋清左衛門の連作集。晩年の作品の特徴である明るさが、この作品でもにじみ出ていて、主人公清左衛門のコミカルとも言える日常が活き活きと描かれています。
当時の隠居は52歳なのかぁ。最初は寂寥感が・・・なんていっているけれど藩の陰謀など次々に事件に巻き込まれ結構忙しい日々。いい年なのに、人を見抜けず厄介な状況になったりと、おちゃめな感すらある清左衛門。
作者も57,8歳くらいの時の作品と思いますが、実体験らしきものも反映されているのではないでしょうか。なかなかその年でしか描けない、しみじみとした作品です。
はぁ、早く隠居したい。
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隠居して公務の忙しさから逃れた反面寂寥感も持った主人公、釣りや剣術、学問に力を入れる一方で、旧知と関わる中で、藩の抗争に巻き込まれる。
全編に登場するのは清左衛門と息子の嫁の里江、奉行の佐伯熊太。また、十五話それぞれに主だった人物が登場する。醜女にはおうめ、高札場には安富源太夫、零落には金井奥之助、白い顔には波津と多美、梅雨ぐもりでは末娘の奈津と杉村要助、川の音には野塩村のおみよ、平八の汗には旧友の大塚平八、梅咲くころには江戸屋敷の女中松江と安西佐太夫、ならず者には涌井のおかみであるみさ、草いきれには小沼惣兵衛と吉井彦四郎、霧の夜には成瀬喜兵衛、夢には小木慶三郎、立ち会い人には中根弥三郎と納谷甚之丞、闇の談合には用人の船越喜四郎、石見守信弘、朝田派の家老朝田弓之助、早春の光には遠藤派の家老遠藤治郎助。
藩の派閥抗争の解決に力を貸したり、旧知のその後の人生を知って自己のこれまでとこれからを彷彿したり、充実した隠居暮らしが描かれる。
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どうもこの作家のリズムと当方が合っていない気がする。
この作家の本領は本作のような凡人の佇まいの描写にあるのではと思う。言うまでもない上手い文章は決して歴史的事件、つまりはエンタテインメント的・スペクタル的要素を要する題材とは必ずしも融合しないかと。また、異物感を読者に投げかける訳ではなく、既視感を覚えさせ思いを巡らせる作風というのがここ最近何冊か読んだ上での当方の理解。
その意味で本作はこの作家の魅力を十分に堪能できよう。それでも今ひとつ読んでいて乗れないのだから致し方ないですわ。
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日残りて昏るるに未だ遠しー。家督をゆずり、離れに起臥する隠居の身となった三屋清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし、藩の執政府は紛糾の渦中にあったのである。老いゆく日々の命のかがやきを、いぶし銀にも似た見事な筆で描く傑作長篇小説!。(1992年刊)
・醜女
・高札場
・零落
・白い顔
・梅雨ぐもり
・川の音
・平八の汗
・梅咲くころ
・ならず者
・草いきれ
・露の夜
・夢
・立会い人
・闇の談合
・早春の光
用人を辞め、家督を譲り隠居の身となった、三屋清左衛門。隠居生活に戸惑いながらも、生きがいをみつけ暮らしていく日々を描いた時代小説である。
仕事でそこそこの成功を収め、後継ぎにも恵まれた清左衛門は、隠居の身とはいえ、いろいろと頼りにされる様は、ある種、サラリーマンの定年後の理想像ともいえる。「涌井」といういきつけの店で、料理を喰らい酒を飲むシーンが多いが、読んでいるとしばし俗世間を忘れることが出来て心地よい。
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藩の上級職を勤めた人物の隠居後の色々な出来事を纏めた短編。
隠居前の人脈等を活用して、多くの事件を解決していくのは爽快。老いを客観視し、最期の時まで懸命に生きる。共感する点多し。
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藤沢周平初読み作品。 袂を分かった旧友との再会を通じ、若き頃の苦い過ちを振り返る『夢』『零落』が特に心に響いた。 隠居の生き様。老いの立場の受け入れ方など、 「不惑」を超えた先の人生においても尚、背負い続ける〝重し〟がある事に気付かされる。