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自分も小中学生の頃、教室のヒエラルキーがあったことを思い出した。かわいいかかわいくないか、人気者かそうでないかで自然とグループがわかれ、なんとなく優劣がつけられる。多感な頃の繊細で微妙な心情を、これまでかというくらい丁寧に描いてる作品で、たまに読んでいて悲しく苦しくなるくらい。
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とめどなく流れ出る憎悪に怖気づき観察することで傷ついた自尊心を修復する。あるいは、憎悪を垂れ流すことで自分を守る。残酷な光が、白い世界で、全てを明るみにしてしまう。走っても走っても白い街は続く。出口はない。光の中ですべての醜さが晒される。自分が傷つかない程度の波紋の中で、それにうっとり見とれながら、光の世界で過ごし始める。これが残された道。
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クラスでは目立たない存在である小4の結佳。女の子同士の複雑な友達関係をやり過ごしながら、習字教室が一緒の伊吹陽太と仲良くなるが、次第に伊吹を「おもちゃ」にしたいという気持ちが強まり、ある日、結佳は伊吹にキスをする。恋愛とも支配ともつかない関係を続けながら彼らは中学生へと進級するが――野間文芸新人賞受賞、少女の「性」や「欲望」を描くことで評価の高い作家が描く、女の子が少女に変化する時間を切り取り丹念に描いた、静かな衝撃作。
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小学4年生という、ことに女子にとっては自分の躰のなかで起こる激動に心がついていかずにあたふたする年頃である。男子との精神年齢のギャップもいちばん目立つ頃ではないだろうか。そんな年頃の自意識過剰の結佳と、まだまだまったくのお子ちゃまの伊吹との歪んだ関わり、表皮だけでつきあう級友たち、クラス内カーストを必要以上に意識し、蔑まれながらもあらゆる人たちを見下すという複雑な精神構造。描かれることすべてに思い当たることがある人も少なくないことと思う。もちろん程度の差はあるが。それにしても伊吹がひとり――空気を読めないのか、一瞬にして全体の空気を読めすぎるのか――超越していてかっこよすぎる。舞台設定も見事だと思う一冊である。
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都市の開発計画が進む中、近所の普通の習字教室の中、毎年続々と子どもの数が増える学校の中、こんな・こんな・こんな世界が繰り広げられていたなんて・・・
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思春期のひりひりした痛みを通り越してズタボロに傷つく、主人公・結佳。村田さん、容赦ないっす……。
結佳が抱えているそれは、どこかしら自分にも心当たりがあるものばかりで、読んでいて辛かったです。他人とはちょっと違う自分になりたい感覚とか、外から観察して見下して自尊心を保つ姿とか……ごめんなさいもう許してという感じで。
クラスのヒエラルキーの描写は、あまりにもリアルでした。
終盤の、とある事件からの大きな転換で解き放たれていく結佳の姿の眩しさと、物語を通じて登場する「白」色の印象の変化が重なり、読み進める手が止まらなくなりました。
少女の心と身体の成長物語とという言葉では語りきれない凄みがある1冊。
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本屋さんで立ち読みした雑誌の中の『魔法のからだ』というお話で、村田さんに興味を持ちました。
学生の頃は、他のみんなからどう思われるかがすごく大事だったけど、自分の感覚を大切にして生きようとすることは、他人とまっすぐに繋がろうとすることは、とても美しいとおもいました。
読みおわってなんとなく、YUKIさんの『コミュニケーション』という曲を思い出しました。
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少女たちの世界は、どうしてこんなに閉塞的で、上下に厳しく、自己保存的で、多感で傷つきやすく、ナルシストで、性と恋に敏感で、夢見がちなものなのだろうか。作者も若い女性なので自分の少女時代の経験がもとになっているのだろうから、現代の少女たちの実態を示しているのだろう。私たちの時代とはあまりに違うように思えるが、それは私が男で無知なだけなのかも知れない。やはり女性は、基本的に男性とは違っているとも感じた。小説としては、青春モノとして面白く、少女たちの心理が繊細に書かれていると感じた。
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泣いた、何度も泣いた。
覚えてもないような思い出が
走馬灯のように身体を掻き毟る
痒い 怖い 寂しい
あの頃は全然楽しくなかった
すごく美しい恋愛映画を観て泣いた
魔法使いになるための努力だってした
思い出したくない、と思ってしまった
思い出せるものなんて何もないのに
大切な一冊に出逢えた歓びを抱きしめた一冊
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ラジオ番組で、著者の村田沙耶香さんが「嫌な人のことも、この人って人間らしいなって思って愛しく感じる」といった内容の話をされていたのが印象的で、この方の小説を読んでみたいと思っていた。
そして今回村田さんの著書の中で初めて読んだのがこの小説。スクールカーストの下層でもがく女の子のお話。
主人公の視点から一方的に善悪が描かれるのではなくカーストの上位の人も、下位の人もそれぞれがそれぞれの立場で悩み苦しんでいる様を的確に丁寧に書き表している。その視点こそが村田さんの人間に対して感じている「愛しさ」なのだと思う。
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開発が進む街と主人公自身の成長を
重ね合わせた物語。
やや生臭さが漂うものの、うまいなぁと思います。
小学生のときは出来事を描き、感情を表現する
ことばがぼんやりとしたものだったけど
中学生になるとしっかりしたものになっているところとか。
主人公が好きになる男の子がやや理想的で
ラストが少女漫画のようなところを差っ引いても
良い小説です。学校の息苦しさを思い出しました。
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著者の年齢で、
教室にそこはかとなく流れていた空気を
ここまで克明に覚えているということに
まず驚く。
だが、教室内の格付け、差別感、
それにとどまらず終盤は思わぬ方向に転じる。
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うーん。なんか怖かった
僕は伊吹だったんだろうな
伊吹から結佳に変わっていったのかもしれない
結佳は強い
どうして世界に触れることが出来たんだろう
世界に触れることはとてもとても怖いのに
伊吹と結佳はこれからも続いて行くのかな?
伊吹はキチンとしたいいやつだから続いて行くのかもしれないな
続いていくなら結佳の一人よがりではなくて、きっと二人で話しあって進んでいけるだろうな
結佳が素直になれて、ラストの方は泣きそうになった
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「価値観の奴隷」
解説で西加奈子さんが言っていた言葉
この言葉が本作を表すのにすごくしっくりきた。
初めての恋
性の目覚め
気付いたら始まっていたクラスという小さい社会のヒエラルキー
読み進めると
主人公の結佳の思考が重たくて
どんどん気持ち悪くなった。
卑屈で、
見下して、
自分のことが大嫌い
気持ちが分かることとかもあって
すごく今しんどい。
結佳は救われたんだろうか。
これからどう変わっていくのか…
わからない
バットエンドかもしれない。
私も中学時代が一番嫌いだった。
どこのグループに属してたっけなぁ。
自分に相応しくないのにグループで、ボスに嫌われないように話を合わせたりしてたっけなぁ。
あのころの自分が1番弱かった。
あんまり思い出したくない。
そういう痛いところをグリグリ突かれた感じ。
クラスのグループの、上の人も下の人も見方によっては色々で、誰が正しいのか、なんてなくて、今の私のまわりでもそうなのかもなーと漠然と思った。
自分に正直になろう、と少し前向きになれた。
すごく繊細で
描写が細かくて
美しくて
確かに西さんに通ずるものがあるな
と思ったけれど、
西さんと違って『あたたかさ』は全くない
と思った
リアルさに酔った。
次は西さんに癒されよう、、、
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クラスの描写は、女子的あるある。
結佳と伊吹のもどかしい感じが、好き。
時折、胸がしめつけられる感じがしたのは、なんでだろう?
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2017年3月14日読了。「コンビニ人間」「殺人出産」を読んで、特殊な世界観を持つ面白い作家さんだなーと認識していたけど、この本を読んで、良い意味で認識が覆された。鋭い観察眼、美しく力強い表現。クラス内ヒエラルキーや成長期の自己嫌悪をよく描いている以上に、何といっても性的興味から「おもちゃ」にした男子への膨らんでいく欲望とそこに潜む恋慕の情がせつない。10代だけじゃなくて、大人になってもこんな気持ちで人を好きになることはあるだろうなぁと共感した。川上未映子の「ヘヴン」を思い出した。