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紙の本

デビュー作を彷彿とさせる悶々とした相姦恋愛物語

2013/12/26 01:13

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る

作者の本格長編官能小説デビュー作『義母の艶香』は義母と義息の双方に漂う悶々とした感情を描いた作品だったが、本作もまた同様の空気感を漂わせる内容だった。ただし、本作のメインヒロインは26歳の兄嫁である。余談だがタイトルは『ぼくのねえさん』と読む。

夫の長期不在時に居候することになった甥っ子(夫の実弟にあたる大学生)を主人公に据える定番的設定で兄嫁への溢れる想いが独白的に綴られていくが、前半は兄嫁や主人公に縁のある他の女性達との逢瀬が中心となる。これもまた定番的展開と言えよう。

第一章【真由子】
最初の情交は兄嫁の友人でもある近所の主婦(30歳)からである。主人公をチェリーボーイと勘違いし、将来のために筆おろししてあげると提案するのはやや安易にも感じたが、出会ってから割と早い段階で主人公のことを気に入った風の態度もとっているため、主婦が昼下がりの情事的に年下の青年を「摘み喰い」する感じは出ていたと思う。第二章や第三章後半への布石も打たれており、物語の序盤としてはまずまずではなかろうか。

第二章【未有希】
車の免許を取りに行くこととなった主人公が教習所で知り合った女教官(25歳)。この未有希との逢瀬により兄嫁への想いが募り過ぎた挙句に女性からすれば失礼千万なことまでしでかしてしまう主人公だが、免許を取得するまでの期間を恋人のように過ごすこと自体に後への意味を持たせている流れでもある。しかし、その出会いとアプローチはやや唐突にも感じた。

第三章【瑠香】
兄嫁の実妹(24歳)。物語の本線はここから本格的に始まると言ってよい。兄嫁と良く似た容姿ながら溌剌とした立ち居振る舞いが魅力の妹だが、ここでも兄嫁に重ねて見てしまい、悶絶度がさらに増してしまう主人公である。ただ、免許を取得したことから温泉旅行に出かける流れとなり、そこで軽い奪い合い的要素を盛り込みながら官能的なクライマックスへと至る前哨戦を挟み込んだ展開は良かった。豹変する兄嫁の始まりが見られる。

第四章【恵】
兄嫁が満を持して(?)官能的に登場するのは最終章である。実はここに至るまでに各章の所々で兄嫁の思わせ振りな態度が散りばめられており、主人公にも「もしや……まさか……」といった感覚は芽生えている。「あり得ねー」とも思っているために関係が遅々として進まなかった訳だが、これは兄嫁の心情描写が排されているからでもある。あくまでも主人公が目にした態度と台詞から察するところに醍醐味があるのだが、ともすれば見落としがちでもあるため、場合によっては読み返すことで気付きが増えるかもしれない。

主人公への想いが醸成される経緯が曖昧ではあるのだが、最後の最後で素直になった兄嫁の、普段の清楚な佇まいからは想像し難い淫らな美しさが全開となる第四章は、そのほとんどが官能描写であり、ここでの継続的ないやらし破壊力はなかなかのものである。

欲を言えば、最後に後日談的エピローグとして夫が帰ってきた後も関係が続いているような、つまり、昼間に主人公としっぽり戯れているような、そうでなくとも夫の出社を見送った後に主人公へ連絡を入れるような件をさらりとでも入れると兄嫁の妖艶さにさらなる磨きがかかったとも思ったが蛇足だろうか。

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