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靖彦という普通のサラリーマンの何気ない一日から始まる失踪の場面から謎の世界に一挙に惹き込まれ、息をのむ展開の連続。出だしはどこにでもある風景で秀逸。妻と義弟の二人が靖彦の影を追って大晦日の唐招提寺へ!そして四国・足摺岬の事件との関係。目くるめく展開、逆転と二人を中心とした心理戦が緊張感を持って進んでいく。しかし、結論は「あれ?結局は?」という竜頭蛇尾の感が免れない。途中から「私」が入れ替わった感があるのも、唐突感がある。女性とは怖いものというのが強烈な印象。
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これが真相か?とつかみかけた途端、蝶のようにひらりと逃げてしまう。そんな印象です。厚いページ数を感じさせないくらい、時間を忘れて読了しました。面白かった-。
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40点
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五時七十一分の言葉が示すものとは?
ある日東京で普通のサラリーマンが突然失踪する。その直前に遠く高知では火災現場から身元不明の死体が発見され事件を予告した葉書には五時七十一分という奇妙な時間が。
サラリーマンの妻と弟は彼の失踪と高知の事件を結び付けて調べて行くが……
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ざっくりと言えば物語の推進力が不足している小説でした。奇妙な時刻自体は比較的魅力的な謎だと感じますが如何せん小説の大半が弟と妻の、兄の失踪で変化した二人の関係性のやり取りばかり。
事件の調査が恐ろしく遅く、極端に言えば、義姉と弟が不倫しようがどうでもいいと言うスタンスで見てしまうと延々と非生産的なやり取りを読まされる小説になっています。
高知へ行き、あるいは奈良へ行き新しい事実が判明したと思ったら、その事実から義姉との関係に対しての内面描写や義姉とのやり取りが続き、結局その事実から事件の真相を精査することなく次の調査で新たな事実がわかる、そんな繰り返しという印象です。
この判明した事実というのも確たるものは非常に少なく、受け取りようによってはどうとでも取れるものが多い。
Aという出来事の真相がa1,a2,a3の3通り、Bという出来事の真相がb1,b2,b3の、Cがまた3通りのような形で語られ、
通常の本格推理であれば確固たる事実に一致する組み合わせが一つに決まりそれが真相であるという論法を見ますが、この小説の場合語り部の主観でAの真相はa2だからBはb1だ、とそう言う形で進み、次の証言が得られればそれまでの主観が揺らいでa1-b3の組み合わせだ、とこれはあくまでも僕のイメージですが、事件に対する真相へ進んでいないと受け取れました。
450ページを超えた当たりでようやく事件が纏まりだしますがそれまでがとにかく冗長で、加えて最後のオチも今一つ納得できないのも評価を押し下げてしまいました。
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グチャグチャ、ドロドロ、悶々の連城ワールド。
生真面目な夫の突然の失踪、しかも夫は女と共に逃避行したらしく、さらにその女は放火殺人を犯したらしく…という冒頭はものずごく引き込まれて面白そうと思ったのに。
その後は何が何やら。
放火殺人自体あったのかなかったのか、夫と女との逃避行自体あったのかなかったのか、夫はそもそも行方をくらませたのかそう見せかけただけなのか、夫の横領事件も何なのか。
謎の『五時七十一分』の意味はなかなか面白かったけど、それがうまく発展していかないのも何だかなぁ。
何より妻と義弟との関係がグチャグチャしてて興味を惹かれないし、この義弟も失踪した兄同様悶々としていてスッキリしない。
結局何が何だか、煙に巻かれたような、これはこれで連城文学としてOKなのか。
とにかくミステリーとして読むと呆気にとられる。
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粘着質な文体。息苦しい。
メンヘラ夫と妄想義弟に挟まれた純子が一番の犠牲者という気が。
息子を溺愛する母親なら、遺体はもっと大事にするんじゃないかな、いくら息子の願いがあったとしても。
唐招提寺に行きたくなった。
やっぱり植物や風景描写は美しい。
靖彦、直行、萩原と女の愛し方を知らない男ばかり。