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2015/09/29 22:20
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投稿者:みかん - この投稿者のレビュー一覧を見る
タブレットに専用のアプリを入れたりしないといけませんでしたが
読むことができました。思っていたより読みやすかったのと
意外と電子書籍のほうが軽い気分で読めました。
肝心の内容は、著者の語り口がわかりやすく、話に引き込まれました。
「脳はざっくりコンピュータ」という説明にナルホド。
そして衝撃的だったのが「最初に無意識による情動で“買いたい”と思い、その次に意識が修正をかけて、購買行動に至る」という部分で、つまり、無意識に買うものを決めてから、これに決めた理由はこうだから、と後付けしているということかも。と、いうことは、無意識に買う気にさせる広告とは、という部分でした。広告って、奥が深いですねー。
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お世話になっているコピーライターの小霜和也氏の、ヒトの本能に関する本。
マーケティングよりコピーライティングよりロジカルシンキングよりプレゼンスキルより消費者より生活者よりクライアントよりもまず何よりも先に、”人”が分かってないということに気づかされます。いやもっと言うと人ではなく”ヒト”かな?書籍中でヒトと人を書き分けられているのに途中で気づいて、そこからはさらに立体的に読めました。
テーマとしての「人の本能」を、広告業界用語やマーケティング用語をほとんど使わずに分かりやすく書いてあることに他の広告系のビジネス書にはない気持ちよさを覚えつつも、広告以前のヒトの話をしているんだから当然か、と途中で思ったり。
小手先論や目の前の業務に振り回されて、普遍的なことをたくさん見落としていたことに気づける一冊。広告関係以外の全ての方にオススメです、だってテーマがヒトだからね。
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効く広告、モノが売れる広告を作るにはどうしたらいいのか?
人間の消費行動を独自の視点で捉え直して実践している著者のロジックには説得力がある。
生物学的な見地からの人間の欲求に関する考察に共感。
賞のためではなく、いい広告をつくりたくなった。
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「感情」は言語にならないレベルでの命令
生存のために過去延々と積み重ねられてきた心のメカニズムによって、私たちは否でも応でも、いまを支配されている
「見たこともないもの」に出会ったら「ぎょっ」とする
その「ぎょっ」となる感情は、それを記憶しておけ、という本能の命令
=インパクトの原理
動物は自分と同じ属性の人がやっていることは真似しなければならないという命令を無意識に受け取る。仲間を模倣することで、天敵から逃れ、餌にありつき、効率よく生きるための学習ができるから
=共感の正体
ウケる広告と売れる広告
理性という、人間の心の半分にしかスポットライトを当てていない広告
言ったことは理解されるだろう
見せたものは覚えてくれるだろう
インパクトがあれば動いてくれるだろう
人間の脳は、常にラクをしたがる
体全体の20%のカロリーを消費する脳
ゲシュタルト群化原理 脳は無い情報を勝手に補完する
広告の「ストーリー」とは、商品を効率よく認知してもらうための情報フォーメーション
選択的注視 カクテルパーティ効果
広告の多くで、商品名や商品情報そのものが「選択的無視」をされている
人は「自分に関わりのあるもの」に注意を向ける
選択的注視をさせる方法
① 登場人物たちの意識が常に商品に向いていること
ヒトには、他者の自我を感じ取る能力がある cf. ミラーニューロン
②プロダクトヒーロー
商品自体をそのストーリーの主役にする
③どんでん返しで、それまでの情報を一掃するぐらいのサプライズを伴って、商品を登場させるようなストーリーにする
商品がなければストーリーが成立しないこと
それがCMが成立しているかどうかの基準
情報フォーメーションができているか?
コピーに中に、商品への意識が含まれている
cf. あと百年これでいく。 マーケティングが作れないもの
脳は行動と感情の不一致をそのままにしておくことができない
cf. 吊り橋効果
そのつじつま合わせをカロリーセーブで緻密な計算なしにやってしまう
A→B→Cという思考をいちいちしているよりも、A→Cとショートカットする方が低カロリーで済むと思ってしまう
脳は、何でも短絡的につなげようとする習性がある
cf. 居酒屋の生ビールのポスター
広告表現に利用すべきモチーフは、できるだけ人間に身近なものがいい
顔のアップ、ペット、食べ物、恋人同士のけんか.............土星
レイアウトは左側にビジュアル、右側にコピーや商品名
ヒトは、欠けているものが気になる
→どこかに少しだけ違和感を残す
言葉についても脳はカロリーセーブしながらざっくりとした解釈をしようとする
cf. うんこくさくないダイヤモンド
感覚は理屈に勝つ
広告には、なるべく肯定語を使用する
女性向けなら情報はできるだけ多く見せる
選択的注視、表���、模倣、全てターゲットが広告商品を「自分ごと」と感じてもらうために活用すべきもの
ブランディングとは条件付け cf.パブロフの犬
ヒトは何かを見るときに、それをただの「物体」ではなく「表象」として見てしまうことがある
表象=自分との関わり合いを含んだビジュアル
群衆の写真があったとして、その中の一人がこちらを見ていたり、こちらにピストルを向けていると、その人を真っ先に見てしまう
カロリーセーブのために、脳は自分の周りに存在する情報を取捨選択する
CMの最後のブランドロゴ
金麦、ペプシネックス
脳がカロリーセーブするもう一つの方法「カテゴライズ」
ブランドロゴを見た時になんらかの関連性が感じられてくる、そこまでの状態に到達するためにはそれなりの時間と接触回数が必要で、表現戦略を変えてしまうのは、それをリセットしているに等しい
記憶とはヒトの意思で自由にできるものではない
記憶に残すか残さないかは「感情」が決める
ヒューマン・ユニバーサルズ(ポール・エクマン)
幸福感、驚き、恐れ、悲しみ、怒り、嫌悪
この6つをどれか強く感じたとき、ヒトはその原因となるものを記憶する
広告表現はなんらかの「感情」を伴わなければならない
ベネトン 恐れ、悲しみ、怒り、嫌悪
広告が存在を許されているのは観る者をいい気持ちにしてくれるから→「幸福感」と「驚き」
幸福感 3B
幸福は人生が突然好転した時に我々が体験する「感情」のこと(デスモンド・モリス「裸のサル」)
自分の人生が「好転」しそうだと感じられるもの
幸福感を作る要素
競争要素 アスリートのCM
達成要素 何かを達成したときの喜びを共有する 乾電池のロボットCM
協力要素 ホワイトバンド
リズム要素 声やリズムは言語の前に存在していた
快楽要素 おいしいという感情は、安全だ、これさえ食べていれば明日も死ぬことはないという生存本能につながる 心地よい、うれしいもそう
知識要素 ヒトは好奇心によって過酷な環境を生き抜いてきた
驚き
商品自体に新奇性があれば一番いい
ない場合は、例外的な表現を見せてあげればいい
意外性と笑いは関係がある
なーんだ猫じゃん
安全だという認識と伝達
例外的な表現、意外性のある表現が記憶されるときは、副産物として笑いを伴いやすい
笑いとは、意外なものに遭遇し、それが安全だと分かったとき、安全だということを他者へ伝えるために湧き上がる、警戒解除メッセージ
誰かが笑うと、他の人も笑い出す
ヒトは物事を「特徴」で記憶に定着させる
ヒトは物事を特徴で認識し、その特徴を肥大化させることで記憶に定着させる
特徴=フック
ソフトバンクの白い犬、
購買のこと
人が商品を「買う」動機の9割は、その人の「意思」によるものではない
行動してから決めている
最初に無意識による情動で「買いたい」と思い、その次に意識が修正をかけて、購買行動に至る
広告の役割
無意識の情動に訴えかけ「買いたい」ドーパミンを分泌させるもの
「買わない方がいい」という意識の拒否権を押さえ込むもの
人は感覚で買い、理屈で納得する(ジョセフ・シュガーマン)
ブランド戦略に置き換えると、生活者の意識にじゅうぶん刷り込まれているトップブランドは、さらに無意識への刷り込みを続ければよし。刷り込みが十分でない弱いブランドは、意識の拒否権を発動させるための、差別化のポイントを理性的に訴求していくべし
cf. カップヌードル=いい感じ 他のヌードル=こっちの方が低カロリー
あなたが買うから私も買う
動物の多くは、他の個体を模倣しながら生きている。なぜなら、真似をすることで、生きる知恵を学んだり、天敵から逃げたり、獲物を追ったりできるから
OLに売りたい商品があるのなら、広告にはOLを登場させればいい
タレントは模倣という情動を一瞬で喚起してくれる
cf. No.1表記 ヒトは矛盾を嫌う本能がある
ヒトは他人の動作を見ると、自分がその動作をしているような感覚になる cf. ミラーニューロン
商品の疑似体験をしてもらう
CM中では使用者の表情がとても大事
表情は、自分に嘘をつけなくするためにある(心理学者 スティーブ・ピンカー)
自分の発言や気持ちが真実であることを保証するものとして表情が生まれてきた。言語やジェスチャーのサポートツール
商品から新しい刺激を感じる広告が真にいい広告
自分から積極的に関与する回数が多いと好意度が上がる(カスケード効果)
ただ目玉を動かすくらいのことでもいい
決まり事がくっついているほうが、やってみたくなる
神秘的な「信じるポイント」を持っているもの
ヒトは常に何かを信じる反動として、何かを否定する
言葉のこと
レトリックとは様々な意味をひとつにまとめて伝える技法
レトリックとは.zipファイルのこと
レトリックとは、脳の負担を減らすための手法
コピーライティングとは、必要とされる伝達要素をレトリックによって圧縮する技法である
レトリックは話者と聞き手の共同作業である
レトリックは理解度の負荷が上がると意味が伝わりにくくなる
cf.キミはボクの太陽だ vs. キミはボクにとってイスカンダルの太陽だ
理解に多少の手間があるものがいい
cf.おいしい生活 オシリだって洗って欲しい 何も足さない。何も引かない
広告コピーは80%の完成度がいい 言葉だけで100%になってしまっては、選択的注視がコピーにしか働かない
受け手との共同作業で90%、商品がくっついて100%になるのがいい
話者と聞き手の共通認識=文脈
コピーとはターゲットの生活環境、時代環境と合わせて意味を作るもの
そうだ、京都、行こう。 →いろんな文脈で捉えることができる
人を惹き付けるストーリーとは「苦労話」
コピーの大きな役割は、企業と生活者の「仲間意識」を生み出すことである
広告とは「自分はズルじゃない」アピールしながらターゲットを動かすもの
意識とは「無意識のラベル貼り」。言葉とは、そのラベル
cf. 台風で傾いたアンテナを直そうとした。ところが、屋根に上がってみ��と予想以上におっかない。「こわい」と感じた。後で、あそこは「こわい」からもう上がらないことにしようと思った。しかし、本当は逆で「こわい」から上がらないのではなく、無意識が「危険だから上がるな」と命じている。そのことに後から「こわい」という言葉のラベルを貼っているだけ
広告コピーライティングとは、この作業を生活者のために代行する行為
接点 ターゲットの無意識のラベル化、言葉化
感覚的限界
ヒトの脳は遺伝子を残す目的以外のために作られていないので、身の回りのこと以外、つまり抽象的なことを考えるには何か別の具体物に置き換える必要がある=メタファー
メタファーを着せ替える作業=切り口探し マーケティング 戦争→恋愛
ターゲットの生活環境や時代環境といった共通認識に基づき、レトリックで「圧縮」し、受け手と共同作業できるカタチに。ビジュアルが伴うなら、それと合わさって意味をなすように。選択的注視によって広告表現だけに執着されないよう、商品と組み合わさってひとつのメッセージになるように
ビジュアルは約束しないもの、言葉は約束するもの
言葉は未来への約束、現状をコピー化してしまうと、その企業はそこから一歩も進めなくなる
マーケティングのこと
現代に求められているのは、モノではなく、モノによる自己実現
ターゲットインサイトは動き回る
人間の心には、バリエーションを持とうとする動きがある
ターゲットインサイトは分化する
生物の究極の目的は、遺伝子を残すこと(リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」)
ターゲットインサイトというものは、狩猟採集時代のヒトの本能と、現代の理性との接触点に浮かび上がってくる
コミュニケーションのこと
生命とは自己増殖するデジタル情報メディア
コミュニケーション活動とは遺伝子を残す活動の相似形である
言語は遺伝子の相似形
言語によって、ヒトは2種類の遺伝子を持つ生物となった
文化遺伝子(ミーム)
仕事か家庭かという悩みは文化的遺伝子を残すか本来遺伝子を残すかとイコール
商品力はそこにくっついた文化遺伝子の力で決まる
文化遺伝子の条件 忠実度・多産性・長寿
広告とは製品に文化遺伝子をくっつけて商品にするメソッド
ヒトはその感覚的限界のために、物事を何かに置き換えて思考する
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現役のコピーライター・クリエイティブディレクターの方が書いた本
広告業界で仕事をしている私ですが
事務仕事なので専門分野はわかりません
でも、この本は素人でも分かりやすくかいてあります
厚さの割には、文字数も少ないしかなり読みやすいです
気になったフレーズ p274
「私たちは、たとえば空気など、
それなしで人間が生きていけないようなものを、
地上に豊富にあるがゆえに
価値のないものと錯覚してしまっているんですね。」
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情報クリエイティブの重要度が
ますます増す時代にあっても、
やっぱり一流の広告屋さんの話は
圧倒的に面白い。
特に「オトナグリコ」のリアル磯野家の広告を冷静に見ている視点は共感。
話題になればいいってもんじゃない、
というのは、よくわかる。
自分がクライアントなら
広告の本質をちゃんとわかった
このような人と一緒に仕事がしたいと
思うだろうなあ。
最近は抽象的なクリエイティブ理論より
行動経済学や認知心理学が
広告の現場方の人間には
役立つと思うが、この本も
そのあたりに関心がある人には
すっと頭に入っていく内容なんじゃないかな。
ただ、短期でモノを買う気にさせる
広告の役割については
限界が見え始めているいまの時代において、影響力はあまり大きくない...気がする。そのぶんだけ差し引いて星4つ。
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広告が人の心を捉える様を論理的に説明した一冊。作者はプレイステーションなど有名な広告クリエイティブに携わった方。自らの経験をここまできちんとした形で整理して説明できるのすごいことだと思う。オススメ。
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【読書メモ】
●僕が思うに、人間が行動する動機のほとんどが、この一見不合理な、遺伝子が発する、わかりやすく言えば本能の命令によっています。・・・ヒトが意識し、記憶し、行動する土台となっている無意識、本能の部分を詳しく紐解いていき、効率的で楽しい広告コミュニケーション作りに寄与していくのがこの本の目的です。
●いままで、大手広告代理店や様々なクリエイター、マーケッターが広告について様々な理論や意見を唱えてきましたが、僕はどれを聞いたり読んだりしても、「半分」ぐらいしか正しいと思えませんでした。なぜならば、どれもすべて、理性という人間の心の半分にしかスポットライトを当てていないからです。
●人間は、情報を個別のものではなく他のものと組み合わせながら、その意味を解釈するのです。
●情報というものは、それを単体で見たり聞いたりするよりも、前後にサポートしている情報があるほうが強く(そのもの自体の情報は少なくても)認知・記憶できるのです。
●脳は、無い情報を勝手に補完する
●広告の「ストーリー」とは、商品を効率よく認知してもらうための情報フォーメーションである
●広告の多くで、商品名や商品そのものが「選択的無視」されている・・・気を引くための面白い要素を足してしまったがゆえに肝心のものを覚えてもらえない。
●商品に視聴者の「選択的注視」をさせるためにはどうすればいいでしょうか?方法はいくつかあると思いますが、とりわけて大事なことのひとつは、登場人物たちの意識が常に商品に向いていることだと思います。
●GoogleやYahoo!JAPANの検索ワードランキングを見ると、半分ぐらいが前日のTV番組で取り上げられたものであり、TVから発信された情報はウェブでも話題になる可能性が高いことがわかります。
●商品がなければストーリーが成立しないこと。それがCMが成立しているかどうかの基準だと僕は考えます。逆に言えば、商品情報なしでもストーリーが成立しているようなら、そのCMは商品を認知させる力が弱いと言えます。
●コピーの中に、商品への意識が含まれているわけです。こうすることで、送り手の意識が向かっているほうへ受けての意識も向かうんです。
●商品こそが広告の主役であり、コピーも、ビジュアルも、すべてのクリエイティブ要素を担ぎ上げるために存在するのです。
●人間には、なんでも短絡的につなげようとする習性がある。もしあなたが広告主だとして、自分の商品になんらかのイメージを付与したいなら、そのイメージを強く持っているものを隣に並べれば、単純ですが効果が期待できます。
●広告の注目度を高めるために押さえておきたいヒトの認知の習性について。モチーフはできるだけ人間に「身近なもの」がいい。ずばり人間そのものが、一番強い。
●広告をレイアウトする時は、左側にビジュアル、右側にコピーや商品名、というルールにしておくと、美しい印象と共にメッセージも伝わりやすくなります。
●ヒトには、「欠けているもの」が気になるという性質もあります。だから僕は、広告を作る際に、どこかに少しだけ違和感を残すようにします。
●広告コピーはなるべく素直なものがいいと思っています。それはなるべく「肯定語」を使用する、ということです。・・・コピーに限らず、表現全体という視点でも、ひねりすぎると脳はついていけなくなります。
●女性向けなら情報はできるだけ多く見せるのがよいと思います。特にダイレクトレスポンス広告の基本は、ターゲットのベネフィットがどかーんとわかりやすく目にとまる、ということだと思いますが、目をつかんだ後は情報量で勝負。
●ターゲットを当事者としてがしっと商品につなげないといけません。「なんだか、この商品、わたし向きなんじゃない?」「俺に向かって話してるのか?」と。
●飲み慣れ、うまいと信じているロゴは、味覚にまで影響を与えるということです。違う言い方をすると、ロゴは、ターゲットとの「関連性」を貯める容器と言えましょう。
●記憶とはヒトの意思で自由にできるものではないということです。記憶に残すか残さないかは「感情」が決めるのです。なので、広告表現はなんらかの「感情」を伴わなければいけないということになります。
●広告は、「記憶してしまっているが思い出したくもないもの」ではなく、「記憶していて思い出すといい気持になれるもの」を目指さなければいけません。広告が存在を許されているのは観る者をいい気持ちにしてくれるからです。そのことを忘れるべきではないと思っています。
●広告で視聴者を「驚かせる」にはどうすればいいでしょうか。例外的な表現を見せてあげればいいのです。
●ヒトは物事を特徴で認識し、その特徴を肥大化させることで記憶に定着させるわけです。広告表現も同じです。なんらかの「特徴」がないと覚えてもらえません。この表現上の特徴のことを広告業界では「フック」と呼びます。
●広告と店頭は同じ1本のクリエイティブでつなぐ
●ダイレクトレスポンス広告はそこがそのまま「店頭」である。あなたにとってこんなにいいことがあるんだよ、ということをできるだけ直截的に伝えるのがいいと思います。そして、他の商品と比べた時の、売れてる感、品質の優位性、おトク感、さらに「いまだけ」感。
●ダイレクトレスポンス広告をやるのだとしても、それが広告であるからには、できるだけ観る人をいい気分にさせてあげるようにするべきでしょう。
●僕は、ヒトの本質をねじ曲げることは何物にもできないと思っています。何物にも人間の根っこをねじ曲げる力などありません。当然ながら広告やブランディング活動にも。加速したり、流れに乗ったり、広げたりができるだけです。いくら無意識に作用すると言っても、嫌いなものをいつのまにか好きになるような魔術や秘薬ではないのです。人は楽しい、気持ちい���体験をすると、それを記憶に残し、またやりたくなります。ブランディングとは、そういう心の動きを後押しするものであると僕は考えています。
●ヒトが「出し入れ」で快楽を得ているとすると、ネット社会はまさに情報の出し入れ。ツイッターが流行るのはいまの「情報」そのものよりもいま出し入れする「快楽」を得たい、ということではないでしょうか。
●最初に無意識による情動で「買いたい」と思い、その次に意識が修正をかけて、購買行動に至る
●模倣の原則はそのまま広告に適用できます。OLに売りたい商品があるなら、広告にはOLを登場させればよいのです。
●ところで「No.1」を利用するなら、こういうやり方もあります。人は、情報を判断する際、どうしても外部の基準に影響を受けてしまいます(「威光効果」と言います)。CMの冒頭に「No.1」を見せておいてから、この商品はこんなに性能がよくて…、とやると、その性能のよさを格段に信用してもらいやすくなるはずです。
●僕は物語や会話、情報の見せ方だけでなく、CM中では使用者の表情がとても大事と思っています。
●「商品から新しい刺激を感じる」広告が真にいい広告
●自分から積極的に関与する回数が多いと好意度が上がるのです(実験者は「カスケード効果」と呼んでいます)。
●商品についても、神秘的な「信じるポイント」を持っているものは執着を生み出します。
●広告表現を開発するクリエイターにとって、僕が最重要と思っていること。それは、商品を信じることです。
●記憶というのは、無意識が勝手に編集してるんです。アイディアも、無意識が記憶の中からいろんな情報を引っ張り上げ、組み合わせた結果が意識に上がってくるものです。だから広告表現を考える時は、一度考えて、数日忘れましょう。それから再開すると、ポッといいアイディアが出たりします。その間、無意識が編集作業を続けていてくれたわけです。
●レトリックとは.zipファイルのこと。レトリックとは様々な意味をひとつにまとめて伝える技法である。コピーライティングとは、必要とされる伝達要素をレトリックによって圧縮する技法である。
●レトリックは話者と聞き手の共同作業である。レトリックは理解度の負荷が上がると意味が伝わりにくくなる。では逆に、すぐ理解できるものがいいかというと、そうでもありません。言葉も「多少の手間」をかけて理解してもらうのがいいのです。
●広告コピーは80%の完成度がいいのです。受け手との共同作業で90%、商品がくっついて100%になるのがいい、ということ。
●コピーの意味も、前後の文脈で変化しますが、広告の場合、この文脈とは、受けての生活環境、時代環境と言い換えるべきでしょう。コピーとはターゲットの生活環境、時代環境と合わせて意味を作るものということです。
●ヒトは、誰かを動かしたい時、自分だけがトクをしたいんじゃない、決して俺はズルじゃないんだ、という含みを入れながら会話します。これは広告でも同じで、広告とは「自分はずるじゃない」アピールをしながらターゲットを動かすものなのです。
●広告コピーライティングとは、この��業を生活者のために代行する行為です。まだ生活者の無意識に潜んでいるものを言葉化してあげることで、「そうそう、そう思ってたのよ」「そうそう、それがきになってたんだよね」と共鳴してもらうんです。こうなると、送り手に対して興味と仲間意識を感じてもらえます。
●花子さんが何を求めているのかを的確に探り(これはマーケティングの役割でもあります)、太郎君の別の長所を探ることで、2つの共通点を見つけなければいけません。これを、「接点」と呼びます。この「接点」でコミュニケーションするのは、コピーライティングに限らず、マーケティングを含めた広告戦略の基本です。商品とターゲットの接点が見つからなければ、いくら上手にレトリックを駆使したコピーを書いてもそれは無力。そして、その接点を見つけるためには、ターゲットの無意識を発掘しなければならないのです。その作業のことを、業界的には「切り口探し」などと呼んだりします。
●広告コピーの書き方をまとめてみます。まず、商品とターゲットの「接点」を探す。「メタファーの着せ替え」などによって、商品だけでなくターゲットである生活者の無意識をも多角的に探っていき、その共通点を言葉化しなければいけません。ターゲットの無意識のラベル化、言葉化をするわけです。そして、ターゲットの生活環境や時代環境と言った共通認識に基づき、レトリックで「圧縮」し、受け手と共同作業できるカタチにしましょう。ビジュアルが伴うなら、それと合わさって意味をなすように。選択的注力によって広告表現だけに執着されないよう、商品と組み合わさってひとつのメッセージとなるようにしましょう。
●ビジュアルやサウンドにはできない、コピーならではの機能とはなんでしょうか?それは、未来への約束だと思います。広告コピーの真骨頂は、やはり生活者に対して未来への約束をすることだろうと僕は考えています。そこでの約束と、それを実現するサイクルがブランドを太らせていくのです。
●企業スローガンもコピーのひとつですが、CIコンサル会社の中には、現状をどう言い当てるかという思考でスローガン開発をする人たちもいます。これは間違いです。現状をコピー化してしまうと、その企業はそこから一歩も進めなくなります。1年先、数年先を見据えた上で、未来に目指すべきところを言語化しないといけません。企業やブランドの前進力は、あそこに行くんだ、というコンセンサスを持つことで生まれるのですから。
●ターゲットインサイトは分化するということです。ヒトは「同一化と個性化」を行ったり来たりすることになります。流行を追いかけたい一方で、自分の個性を追求したい。あるターゲットを見る時、いま、その属性の人たちの志向はこうなんだ、と決め手かかるのは非常に危険です。
●ターゲットインサイトというものは、狩猟採集時代のヒトの本能と、現在の理性との接触点に浮かび上がってくる。
●僕はマーケティング的発想からは斬新なものはなかなか生まれてこないし、それゆえに大ヒット商品も生まれにくいと思っています。ただターゲットに「合わせる」「すり寄る」マーケティングはたいして価値がないと思っているわけです。経済を牽引するブランド、たと��ばいまのGoogle、昔で言えばソニーのウォークマンなど、世の中のパラダイムを変え、みんなの生活価値を変え、普及を成し遂げるものは、マーケットイン発想からは出て来ていませんよね。広告表現、コミュニケーション施策も、調査べったりでは力を得られません。かつて、企業は商品文化のリーダーでした。そのリーダーシップを生活者からもう一度取り戻す気概が必要だと思います。
●ヒトは本能的にコピーがしたい
●「仕事か家庭か」という悩みは「文化遺伝子を残すか本来遺伝子を残すか」とイコール
●広告とは製品に文化遺伝子をくっつけて商品にするメッソドだと思います。重要なのはコミュニケーションという手段で製品に価値の付加をすることです。マーケティングというものの神髄も、生活者の心を読み解きながら、製品に新しい価値を付加することです。そこを見失ってしまうと、ただの御用聞き、ご機嫌伺いに堕してしまいます。
●大切なのは「ウレル」と「ウケル」のバランスです。そのために、ヒトの本能を知っておくのは欠かせないということです。
●最近、いろんな人が「広告は効かなくなった」と言いますが、その主な理由として挙げられるのが、生活者がTVを観なくなった、新聞を読まなくなった、という、接触メディアの分散化です。・・・それ以前の問題として、広告の効きが悪くなってきたのは、広告業界が「頭が良くなりすぎたから」ではないかと思っているのです。あまりに本能や、そこから生まれてくる直感を軽視してしまっていないかと。
●若い世代は、経験がない分、自由な発想で新しい可能性を発見できる。若い広告クリエイターの一番の役割は、古い世代がまだ知らない、彼らの経験値が働かない新しい可能性をぶつけていくことだと思います。若い世代が好奇心で新しい手口を探り出し、古い世代が経験に基づく直感力で判断する、それが人の本能を生かすやり方だと思います。そういう関係ができているチームは強い。
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元博報堂の有名(?)クリエーターの著作
クリエーターはただ面白いCMを作って、製品が売れるかどうかは我関せず・・って偏見が勝手にあったんですが、それは覆されました。
クライアントの製品やサービスが売れるにはどのような広告にすればいいのかを、アートの面だけではなく、科学的な面からも説明しています。
特に、人間の脳による認識についても多く言及されており、大変興味深かった。
ただ、わざとかは知らないですが、ちょくちょく蛇足や分かりづらい説明が入って少し読みづらいところも。
それを差し引けば良著だと思います。
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理性に頼り過ぎるな。そもそもの人間の本能を忘れちゃいませんか?というメッセージ。なるほど、確かに。広告人にはなかなか見られない視点であり、広告に携わる人は一読の価値あり。
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学際的な内容で、新鮮で爽快です〜!クリエイティブというあやふやなものを論理的に処理しようとすることへのこだわり、姿勢には、とても正直な方で好感を持ちました。
ただ理論や根拠となる事実に、そうかなぁと疑問に思う所はけっこうあります。広告の本としては、変わり種です。
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比較的、理解しやすい広告の本。少なくとも、前に書評に挙げた『伝える本』よりは、遥かに分かりやすく腑に落ちる部分も多くあった。「だからどんな風に広告を作ればいい」という、ノウハウ的な中身がそんなになかったのも、むしろ個人的には好感度高い。ちゃんと自分で考えろってことね。
ただ、ちょっとした小細工が随所にあって、それは個人的にマイナス。例えば、2章のまとめをする時、1章のまとめで書き残したことを「思い出した」と言って追記してみたり、さらにこの章のまとめの最後の部分で「ちょっと忘れたので、後で思い出します」なんてしてみたり。
講演をそのまま文字に起こして本にしたならまだしも、そういう小ネタで続く章への興味を引っ張るとか、本を読み続けてもらう動機づけにしようとか、そういう狡すっからい真似はしてほしくなかった。そんなことしなくても、関心を持っている読者はしっかり集中力を切らさずに読みます。
その点で、なんかナメられてる気がしたので☆は1つ減らしました。
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どういうコピーがいいのか、
なぜコピーが必要なのか、
そのコピーを得意に説得するための方法は何か、
を、勉強するために読む本。
僕は社会心理学的な広告よりも、文学的なほうが好きだけど。
・商品への意識が込められたコピーを。
「あと百年、これでいく。」
「すべてのゲームは、ここに集まる。」
・表現自体が、新発売であるかどうか。
・笑いとは、意外なものに遭遇し、それが安全だと思ったときにおこる。
・フックのあるCM。
・人は、情報の出し入れで快感を覚える。
●商品から新しい刺激を感じるのが、真にいい広告。
ex)ハイボール、ユニクロ
・決まり事をつくったほうが、やってみたくなる。
ex)コロナに、ライムをいれるとか。
・コピーライティングとは、zipである。
(必要情報を、圧縮する。)
・言葉は、約束するもの。
(現状を言葉にしないスローガン)
・広告とは、製品に文化遺伝子をくっつけて商品にする方法。
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2年前の本だからちょっと古いかな?と思ったけどそんなことなかった。
広告で利用できる感情は幸福感と驚きです。ってところがすてき。
恐れ、嫌悪、怒り、悲しみを使ってはいけないって。かっこいー。
文体も読みやすくて、おちゃめなところもあって親近感持ちます。
理想論やん。てなるかもしれないけど、私は読んで元気でました。
2013.1.31
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副タイトルの
「ヒトの本能から広告を読み解くと」が
内容を網羅している。
理性では説明がつかないことがいっぱいなのは事実だから、
この「ヒトの本能」については知っておいたほうが、いい。
広告の仕事ではなくても、役に立つ知識だと思う。
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広告のノウハウ本はたくさんある。
だけど、この本は広告の本ではあるけれど、どちらかと言えばニンゲンの本。
世の中ダメな広告ばかり。
それは人間の無意識の領域まで届くような広告がないから。
人は意識に働きかけるだけじゃ動かない。
広告の醍醐味は人を動かせること。
この本を読んで、広告がもっと好きになった。