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「私」が外に出るときは、どんなに悪天候だったとしても必ず晴れる。ある日、耳の奥から声が聞こえてきた。声の主は、豆粒ほどの小さなおばあさんだった。おばあさんが、なぜ豆粒ほどに小さくなったのか―。訥々と語られる、貧しい炭焼き職人の一家の物語。夫殺しの罪を着せられた母が、幼い子どもたちのためにした選択とは…。哀しみと絶望の底にさす一筋の光をしなやかに描いた傑作「晴れ女の耳」。他、七つの怪談短篇集。
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表題作のほか、「イボの神様」 「ことほぎの家」 「赤べべ」 「先生の瞳」 「サトシおらんか」 「あやっぺのために」
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どこか懐かしく、そして哀しい物語たちである。出会ったとたんに魅入られてそっと手を差し出し、そのままあちらの世界へ連れていかれてしまいそうな、けれどそれが恐ろしいばかりではなく、寄り添っていたい想いに浸されるようでもあって、怪談でありながら、やさしい気持ちにもなる一冊である。
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「私」が外に出るときは、どんなに悪天候だったとしても必ず晴れる。ある日、耳の奥から豆粒ほどの小さなおばあさんの声が聞こえてきて…。表題作ほか、全7篇を収録した怪談短篇集。「Mei」掲載ほかを単行本化。
不思議な不思議なお話たち。
私は「イボの神様」が好き。
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不思議な読み心地のホラー短編集。方言による語り口が非常に穏やかで、ゆったりほんわかとした印象です。
でもその雰囲気に騙されてはいけません……物語そのものはけっこう怖くもあります。とりわけ登場する不思議な存在たちの過去の物語が恐ろしいやら悲しいやら。ああでも確かに昔はこういうことはありそうでしたよねえ。
お気に入りは「サトシおらんか」。間違いなくこれが一番怖かったなあ。
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7編の短編を集めた短編集。過酷な人生を生き抜く女たちの怪奇短編集とでもいえる作品。柳田國男の「遠野物語」の臭いがする。ひとむかし前の閉鎖社会であった田舎を舞台にした民話のような物語。
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7編の怖いお話短編集。
異世界の生き物や業によって人でないものになってしまったものたちが出てくる。
単純に怖がらせるお話と言うより生きるものの哀しみ切なさが迫ってくる描き方。
歌人ならでは文節やリズムと後味が悪くないラスト。心地よい本だった。
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著者の出自でもある和歌山県紀州の深い森を舞台に広がる怪談短編集。不条理な因習や非業の死。過酷な運命に翻弄されても、百歳を越えてなお生きる女たちがユーモラスな関西弁で語る、哀しくも不思議な美しい命の物語
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日本土着風の不思議話。イボの神様、ことほぎの家、赤べべ、晴れ女の耳、先生の瞳、サトシおらんか、あやっぺのために。
イメージは、そこはかとない郷愁の風景、貧しい田舎暮らし、繭の中の家族。
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歌人にして作家だそうだが,ルーツは紀伊?~「イボの神様」ペンだこだと思っていたのがイボで和歌山のお祖母ちゃんに相談してイボ付きの葉っぱで撫でて一心に願うと消えた。和歌山ではイノさんという女性に会い,山の奥でイボを一杯付けた少女に出会って,これが神様だと知り,そのイボがとれることを必死に願ってこする。「ことほぎの家」中高一貫女子校の寮に入っていた同級生を思い出した時に実家の母から昔の手紙が発掘された。遊びに来て欲しいと願われていたので連絡を取ると,和歌山の山奥で仏壇屋と民間療法を行っているという。昼間,その店を訪問すると,裸にされ,白い着物に赤い帯を締められ,跡継ぎになっていく。「赤ベベ」狸に騙されやすい大伯父。祖母の葬儀に成人式を終えた娘を伴って行くと,大伯父とその娘の節子の家に泊まることになり,酒を呑んだ翌朝。娘が神隠しに遭っていた。節子を問い詰めると,自分は元狸で,節子の振りをしているだけと…。狸退散の呪文を唱え,四つ辻に行く。「晴れ女の耳」外で用事のあるとき降られた例はない。それをつきあい始めた男性に言おうとすると頭痛がして,耳から豆粒大の老女が出てくる。経緯を聞くと,貧しい炭焼き職人の物語。「先生の瞳」謎の作家の担当になり,和歌山のしろはまにやってくると,老女作家は海から潜水服を着て現れ,一晩陸で過ごしたが,海の家に帰ってきて,自分は僧侶と海蛇の間に生まれたガイラボーシだと言う。目は母から貰ったモノだと,外して洗い始める。「サトシおらんか」和歌山の祖母の家に突然やって来た老女は,サトシおらんかーと叫んで自分の息子を捜している様子だ。みつけたサトシを家に連れて行くと,老女の悲しい物語を聞かされる。早くに母を失って,断れば良かったのを面倒に思って父と情を交わして娘を産んだが,それも7日で失って,鉈で父の頭を薪のように割り,ぶつ切りにして煮込んで食べたら,腹の中で父と娘が一緒になって,こっちへ来るなと言うので,140歳になってもまだ生きているという。「あやっぺのために」夫を15年前に失った老女は2歳の等身大の人形にあやっぺと名を付けて可愛がり,周囲から疎まれていることも承知している~歌人なのかぁ…。和歌山の昔話を下敷きにした怪談短篇集
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少し不気味な感じの短篇が7つ.表題作も良かったが,「先生の瞳」で海に住む玲耀子に原稿をもらいに行く話がファンタジックで何故か悲しい感じが不思議だった.どの話もつかめるようでつかめない,何か薄膜の中にあるものを触っているような雰囲気だ.
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和歌山県紀州の深い森を舞台にした短編集。
何れも日本に古来から伝わる言い伝えや昔話のような物語で、読んでいて少し背筋がヒヤリとなりながらも懐かしい気持ちになったり切なくなったり。
特に『イボの神様』は私も小さい頃似た体験をした気がする。
「イボ神様はどこでも聞いてはるからな。気ぃつけるんやで。信じへんかったら、効かへんからな」
少女が神様に必死で祈る姿が微笑ましい。
信じる者は救われる…はず。
そして表題作の晴れ女が実際身近にいたらとても助かるだろう。
私の耳がキヌさんの寝床に合うといいけれど…。
短編それぞれに「おばあさん」が出て来て物語の摩訶不思議な雰囲気を盛り上げていく。
作者の東さんのお父さんのご実家が和歌山にあり、幼い頃遊びに行っていたらしい。
東さんもお祖母さんからこんな昔話を聴いたのかもしれない。
幼かった頃、ふと感じた心細さを思い出させてくれた短編集だった。
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「イボの神様」「ことほぎの家」「赤べべ」「晴れ女の耳」 「先生の瞳」「サトシおらんか」「あやっぺのために」
これら7篇が収録された怪談短編集。
怪談と言ってもおどろおどろしい怖さではなく、昔話を彷彿させる様などこか懐かしさを感じる不思議な短編集です。
所々にユーモアも交えてあり怖い話が苦手な方でもさらっと読めると思います。
現代版日本昔話の様な印象で読んでいる間、不思議な空間に入り込んだ様な感覚になりました。