紙の本
本当に悪い皇帝たちであったのか?
2007/08/03 13:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書に収められているのは、初代ローマ皇帝アウグストゥス死後に現れた4人の皇帝、ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロとそれぞれの時代についての物語である。アウグストゥスの養子だったティベリウスはクラウディウス家、それ以外はアウグストゥスのユリウス家の血を引くそれゆえ、彼らの統治をユリウス・クラウディウス朝という。そして、4人の皇帝はこれまでのローマ史においては一様に評判が悪く、それが本書のタイトルにつながっている。
作者の塩野は、これら悪名高き皇帝たちに新たな光を当ててやることにより、ある者は英君として浮かび上がらせ、またある者には何らかの名誉回復を試みている。殊にティベリウスの再評価は、力強く説得力に富んだものとなっていて、彼がいまだ発展途上にあった帝政ローマの安定に大きな貢献をした皇帝であることが、よく理解できる記述になっている。晩年は一人孤島に住み、市民との接触を絶ったばかりでなく、遠くから元老院をあやつる一種の恐怖政治を行い、加えて国民の評価などいっさい気にしない性格ゆえに、生前から評判の悪かったこの皇帝の業績を正当に評価した点は、作者の大きな功績としてよいだろう。
またクラウディウス帝の、地味だがこつこつ仕事をする姿も、非常に好感がもてる。甥カリグラ帝の暗殺によって、それまで歴史家として陽の当たらない生活を送ってきた彼は、望みもしなかった皇帝の地位に半ば強制的に就かされるが、承諾した以上、まじめに職務をはたそうという義務感だけでそれを果たした。まったく威厳をもたず、ただただ仕事の虫のような性格が、部下や妻の放縦を許し、側近政治をはびこらせる原因となったのは否めないが、前帝の失策を補う立派な仕事をしたといえるだろう。
カリグラとネロはどうひいき目に見ても、悪帝と評価せざるを得ないが、彼らにも評価ないし同情すべき点はある。ネロは東の隣国パルティアとのあいだに平和協定を結び、その後の帝国東方の安定に貢献した。
幼年時代、前線の兵士たちから「ちっちゃなカリガ(兵士の靴)」と可愛がられてその愛称で呼ばれるようになったカリグラは、兵士からも市民からも熱狂的に迎えられて皇帝となった。彼は、そんな国民からの信頼と愛情を得ようと、市民の見せ物などのため国庫を浪費し、国家を混乱に陥れる。悪政をくりかえす彼を暗殺したのは、幼少時に彼を可愛がっていた軍人の一人で、護衛隊長のケレアだった。暗殺実行後の彼は、まるで世間に迷惑をかけた不肖の息子を成敗した父親のように、従容として死刑台に向かったとある。運命によって暴君となってしまった男と、彼を手にかけねばならなかった側近のともに哀しい最期であった。
共和政から帝政へ。一人の人間に権力が集中する政体への移行は、以前には見られなかった権力争いと人間の欲に起因する数多くの悲劇を生んだ。ローマ人のからりとした気質に晴れ晴れすることしばしばであった『ローマ人の物語』も、この巻以降は、陰鬱な気分の方が強くなる。それでもアウグストゥスの始めたパクス・ロマーナは着実に続いていった。本巻終わりに描かれるネロ帝の自滅までは...
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高くて面白いのでもったいなくてちょっとずつ読んでる途中です。『悪名』高き皇帝はとても魅力的だ。でも、ユリウス・カエサルの足元にも及ばない。当時のローマ市民もそう思ったのかなあ。
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ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロ―帝政を構築したアウグストゥスの後に続いた四人の皇帝は、人々の痛罵を浴び、タキトゥスら古代の史家からも手厳しく批判された。しかしながら帝政は揺るがず、むしろその機能を高めていったのはなぜか。四皇帝の陰ばかりでなく光も、罪のみならず功も、余すところなく描いて新視点を示した意欲作。ローマ史を彩る悪女・傑女も続々登場。
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第7巻は紀元14年、第2代皇帝ティベリウスの即位から、紀元68年第5代皇帝ネロの自死まで。
「追従かそれを言われた人を不快にするのは、そのようなばかげたことを言われてイイ気になる程度の人と値踏みされた事が不快なのである」
「人事権を手中にしているのは権力を手中にしているのと同じだが、その施行となると簡単ではない。当事者に加えて周辺も納得させねばならない」
「外交は平和裡の解決ではない、軍事力を使って脅した後こそがもっとも有力な外交であると歴史が証明している。人間とは、理で目を覚ます場合は少ないのに、武力を突きつけられれば目を覚ますものだからだ」
「多神教の神は、一神教の神がそれを信ずる人々の生き方まで定めるのとは違って、人々を保護する役割しか持たない」
「情報収集の重要性とは絶対的な速度にはなく、他の誰よりも早くそれを得て、得た情報を基にしての判断を他の誰よりも早く下し、そしてそれによる指令を他の誰よりも早く発することにある」
「カリブ島の干菓子の端の崖の上に立てられたヴィラを南の海上から眺めたことのある人ならば、ロードス島中部のリンドスの崖の上に建つ神殿を思い出すのではないか・・・リンドスのアクロポリスの遺跡を訪ねたときは、小石が散乱する細く曲がりくねった田舎道をロバの背にゆられながら、やっとの想いで着いたものだった」
「人間は、常にニュースを求める。大事に関心を持つ必要がなければ、小事に関心を持ってしまう」
「カリグラ・・・すべてを所有する人にとっての最大の恐怖は、現に所有しているものを失うことである」
「ユダヤ教・・・一神教の神は非寛容な神にならざるをえない。多神教の世界で、弱者の立場で守り抜こうとすれば、神から選ばれた民族であるという選民思想が、唯一の拠りどころになる」
「常に弱者の立場にあり続けた民族は、被害者意識から自由になることが難しい・・・強者に対しては過敏に反応しがちである」
「テロ行為とは、文明が未熟であるから起きるのではない。権力が一人に集中しており、その一人を殺せば政治が変わると思えるから起きるのである」
「歴史に関心を持つということは、懐古趣味などではまったくない。人間性に関心を持つか否か、がそれを決める」
「歴史に関心を持つことは、自分を含めた個々の人間の独創力に全面的な信を置かないことでもあるからだ」
「理を解してそれを了承する人は、常に少数派である。多数派には、脅しのほうが効果的な場合が多い」
「皇妃メッサリーナの放縦は、虚栄欲と物欲と性欲という、考えてみれば実に女らしい欲望を満足させることに向かう」
「多くの人の人生は、喜劇と悲劇の繰り返しで成り立っている」
「誠心誠意やっていれば分かってもらえるのか?人間とは心底では、心地良くだまされたいと望んでいる存在ではないか」
「人間は問題がなければ不満を感じないというわけではない。枝葉末節なことであろうと問題を探し出しては、それを不満の種にするのは人間性の現実である」
「勝気な女が逆上すると、言葉は洪水のごとくにほとばしり出る」
「ネロには、問題の解決を迫られた場合��極端な解決方法しか思いつかないという性癖があった。本質的にはナイーブであったゆえ・・・」
「マキャベリ・・・悪事を働かなければならない場合は一気にやるべし。他民族侵略という悪行は短期に済ませ、戦後処理を充分にしたほうが、征服者にとっても被征服者にとっても好都合。歴史は侵略の歴史でもあり、人間の悪業の歴史でもある」
「戦争は、武器を使ってやる外交であり、外交は、武器を使わないでやる戦争である」
「新しい運動は、もっとも身近な人々からの反発をまず浴びるものである。エルサレムのユダヤ教会の敵意が、イエスの処刑の真因であった」
「ユダヤ教の選民思想・・・他民族への布教には不熱心」
「キリスト教・・・キリスト教の神の前には人間はみな平等、その神を信じない人は真の宗教に目覚めないかわいそうな人だから、その状態から救い出してやることこそがキリスト者の使命と信じている」
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長い歴史の中のどうでもよさそうなエピソードすらきっちり深い読み物に仕上げてしまう塩野七生に脱帽。ヨーロッパが形成されていく様を自分で見ているような驚きがある。
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神君アウグストゥスの後に続いた、ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロの4皇帝時代の物語。ネロを最後にカエサルから続くユリウス・クラウディス朝は終焉する。
後の歴史家タキトゥスによって悪評ばかりが目立つこれらの皇帝を暖かい目で再評価した作品、と感じた。文中ではタキトゥスの悲観的な記載に対する苦言が散見される。
ティベリウスは立派で非常に共感できる部分が多いが、各皇帝とも個性的で、本人の意思とは裏腹に、それぞれの理由で元老院や人民の支持を失っており反面教師として学ぶに良い教材。
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ヨーロッパの歴史ができる様子を眺めているように本書に引き込まれる
歴史の事実が著者により、現代の出来事、人物に感じられるように描く著者に脱帽
神君アウグストゥスの後に続いた、ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロの4皇帝時代の物語。
ネロを最後にカエサルから続くユリウス・クラウディス朝は終焉する。
後の歴史家タキトゥスによって悪評ばかりが目立つこれらの皇帝を暖かい目で再評価した作品、と感じた。
文中ではタキトゥスの悲観的な記載に対する苦言が散見される。
ティベリウスは立派で非常に共感できる部分が多い
ネロが暴君ネロとして歴史上、有名な理由には納得がいかない
各皇帝とも個性的で、本人の意思とは裏腹に、それぞれの理由で元老院や人民の支持を失っており反面教師として学ぶに良い教材。
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カリグラとネロは知っていた。タイトル通りイメージがとても悪かったが、見直した。まあとんでもない部分はあるのだけど、それはただ若かったんだなって感じがする。20代であれほどの権力を手にしたら仕方がないかなと。しかも、「悪行」が実に限られた部分にとどまっていて、案外しっかりしたこともやっていたのに驚いた。
他人の評判を全然気にしないティベリウス、歴史に学ぶ地味なクラウディウス。ちょっと考えるとなんの魅力もなさそうな老人たちだけど、むしろこの人たちに惹かれた。確かに少し変わり者かもしれないが、地味に一つ一つ課題を解決していく姿は、なかなかかっこいい。逆に、面倒なことは逃げまくり、皇帝に課題も責任もすべて押しつける元老院が惨めで、でも案外現代も同じような姿をさらしている集団は多いのかもしれない。
2007/4/6
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意外(?)と面白かった。悪名と言われても、恥ずかしながらここで書かれている皇帝を私は知らなかった。。とは言うものの、皆個性的で、十分に楽しめる内容。
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悪名も高名も、ちょっとした勘違い、ちょっとした自己認識や時代認識の違いによってどちらにころぶか分からないものだとつくづく思う。殺されたり、自死せざるを得なかった皇帝たちも、どこかほほえましい部分もある。
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この第七巻の副題が「悪名高き皇帝たち」となっている。 よく聞かれるのは暴君ネロなどであるが、実際にどのようなものであったのだろうか。
まずはティベリウスであるが、最終的にはローマ市民には不評であった皇帝であるが、市民に人気はないが、政治の中身はアウグストゥスの意思をひたすら受け継いでいくというものであった。
カプリに隠遁して文書のみでの支持というのが不評の原因であるが、現代でもマスメディアに顔を出しているほうが人気があり、票が集まるもの同様である。
つづいてのカリグラはアウグストゥスの血のつながりだけで皇位についたようなもので、金銭感覚がなく、外交に関しても経験不足であった。
今でいうところの二世政治家といったところか。
元老院は即位直後にすべての権限を授与したことが問題であろう。 抑止力がなくなってしまった。
結局、カリグラはもっとも身近な近衛軍団大隊長に暗殺されるが、この暗殺を実行した者がカリグラ憎しというよりは、著者のいうところの「不肖の息子を殺す父親の気持ち」で、と私も考える。
そして四代目の皇帝クラウディウスの登場であるが、無理やり担がされた感のある彼だが、歴史を学び続けてきた彼ならではの政治は、ローマ帝国を盤石なものにしたのではないだろうか。
庶民からは敬意を払われることはあまりなかったようだが、カエサル、アウグストゥスの考えたローマ帝国を作ったのは彼ではなかったか。
残念なことにメッサリーナ、アグリッピーナという欲望のかたまりのような女を妻に迎えたこと、政治以外の疎すぎたことが彼の人気がなかった要因であろうが、私個人的には好きな皇帝である。
そしてこの巻最後に登場するのが暴君で名の知れたネロ。
母・アグリッピーナの欲望のために16歳にして皇帝にさせられた、という感じの彼である。
いくら古代といえども16歳では遊びたい盛りであったろう。
それに軍事・政治経験もなし。
側近として優秀な人材がいたにしろ、あの広大なローマ帝国の皇帝をやるにはすべてにおいて幼すぎたのではないか?
結局は、母、妻を殺し、有名なキリスト教へ罪をかぶせての虐殺と悪いイメージばかりであるが、彼ならではの奇抜な発想は、今までの皇帝にはなく、現代のわれわれには好感のもてる部分も多かったように思う。
しかし、古代ローマでは皇帝は市民の「安全」と「食」を維持するものと考えられていたわけで、皇帝の座を他者に譲って・・・というわけにはいかなかったか。
しかしネロ=暴君というイメージは多少変わった。
若気の至りという感じさえある。
ここまで来るとローマ帝国のイメージもずいぶんと変わってきた。
寡頭政と君主制。 やはりどちらがいいのかは難しい問題であることは変わりはないが。
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(2016.06.26読了)(2009.07.05購入)(2002.12.10・刷)
本を読み始めると眠くなって、同じページを何度も読むことになるので、なかなかページが進まず苦戦してしまいました。1時間かかって、10頁とかいう感じでした。
半分過ぎたあたりから、1時間に30頁ぐらいのペースになり何とか読み切りました。
大き目の版で、ページも500頁もあると、ずいぶん読みごたえがあります。
この巻は、「悪名高き皇帝たち」ということで、アウグストゥスに続く四人の皇帝について記しています。
ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロの四人です。アウグストゥスからの世襲の形で、皇帝になっています。
世襲とはいっても、都合よく実子というわけにはいかず、ティベリウスは、アウグストゥスの妻の連れ子です。アウグストゥスの娘ユリアと結婚させています。娘婿の形になっています。在位23年弱です。55歳で即位し、亡くなったときは77歳です。
カリグラは、アウグストゥスの曾孫です。在位4年弱です。24歳で即位し、28歳で殺害されました。
クラウディウスは、ティベリウスの弟であるドゥルーススの子供です。ティベリウスの甥ということになります。在位14年弱です。50歳で即位し、63歳で毒殺されたということです。
ネロは、カリグラの妹小アグリッピーナの子供です。小アグリッピーナは、クラウディウスの四人目の妻になり、連れ子のネロをクラウディウスの養子にしています。在位14年弱です。16歳で即位し、30歳で亡くなっています。国家の敵となり自死した。
【目次】
第一部 ティベリウス
(在位、紀元一四年九月十七日-三七年三月十六日)
カプリ島/皇帝即位/軍団蜂起/ゲルマニクス ほか
第二部 カリグラ―本名ガイウス・カエサル
(在位、紀元三七年三月十八日-四一年一月二十四日)
若き新皇帝/生立ち/治世のスタート/大病 ほか
第三部 クラウディウス
(在位、紀元四一年一月二十四日-五四年十月十三日)
予期せぬ皇位/歴史家皇帝/治世のスタート/信頼の回復 ほか
第四部 ネロ
(在位、紀元五四年十月十三日-六八年六月九日)
ティーンエイジャーの皇帝/強国パルティア/コルブロ起用/母への反抗 ほか
(付記)なぜ、自らもローマ人であるタキツゥスやスヴェトニウスは、ローマ皇帝たちを悪く書いたのか
年表
参考文献
●復元(13頁)
私(塩野七生)には、遺跡を見ても頭の中で復元する癖がある。建造物を復元すれば、そこに生きていた人間たちも〝復元〟してしまう。私の空想のなかでの彼らは、今でも生きて呼吸している。
●皇帝(18頁)
ローマの皇帝は天から降りてきたのではなく、人々の承認を受けてはじめて存在理由を獲得できる地位なのであった。
・元老院の第一人者の称号
・ローマ全軍最高指揮権
・護民官特権
・ローマ国家を守るために必要なすべての権力
●九月(32頁)
ある日の元老院会議で、七月がユリウス、八月がアウグストゥスと名づけられているのに倣って、九月をティベリウスとしようと提案した議員がいた。ティベリウスは自席から、矢のような一句を放ってそ��をつぶした。
「『第一人者』が十人を越えたときはどうするのか」
●近衛軍団(56頁)
ローマ帝国は、帝国の本国であるイタリア半島に軍団を置いていなかった。近衛軍団の任務の主なるものは、本国の秩序維持であったのだ。
●メンテナンス(63頁)
新規の工事は減りはしても、不断のメンテナンスを必要とする建物や水道や街道はすさまじい数と量であった。ローマのエンジニアは、「石は味方で水は敵」と言っている。
●街道と法律(120頁)
この二事(街道と法律)に共通しているのは、必要に応じて〝メンテナンス〟をほどこさないと機能の低下は避けられないという、人間世界の現実であった。法律面での〝メンテナンス〟とは、現状に即して改めることである。
●三代目の皇帝(183頁)
ティベリウスの後を継いで三代目の皇帝になる可能性をもつ者は三人いた。年齢順にすれば、四十五歳のクラウディウス、二十四歳のカリグラ、そして、ティベリウスには直孫にあたる十六歳のゲメルスである。
●盤石にした(184頁)
ローマ帝国は、タキトゥスのような共和制シンパがどう批判しようと、カエサルが企画し、アウグストゥスが構築し、ティベリウスが盤石にしたという事実では間違いない。
●カリグラの「施政方針演説」(191頁)
・本国外追放者の帰国を許す
・情報提供要員制度を全廃する
・1%の売上税を廃止する
●ゲメルスの殺害(203頁)
全快した最高権力者(カリグラ)がまず最初にやったことは、養子にしていたゲメルスを殺させたことであった。
●娯楽(205頁)
カリグラによって解禁された娯楽は、剣闘士試合と戦車競走の二つに代表される。いずれも、庶民が熱狂する競技であった。
●四度の結婚(210頁)
カリグラは、二十一歳から二十七歳までの六年間に四人の女と結婚している。一人には死なれ、二人は離婚し、二十八歳で迎えることになる死をともにしたのは、四人目の妻のカエソニアだった。
●財政破綻(216頁)
カリグラが即位してから三年も過ぎないうちに、皇帝の私有財産はもちろんのこと、国家の財政の破綻までが明らかになった。
皇室一家の家具調度類や宝飾品から使用人の奴隷までを、競売に出すことにしたのである。(217頁)
●クラウディウスの政治(279頁)
・「国家反逆罪法」を理由にしての処罰は廃止する
・1%の売上税を復活する
●クラウディウスの秘書官システム(301頁)
クラウディウス家の奴隷や解放奴隷の中の優秀な者たちで、官邸につめる秘書官組織が形成されたのであった。
・「書簡係」-内閣の官房長官のようなもの
・「会計係」-大蔵省、財政全般を一手に引き受ける
・「文書係」-帝国各地から皇帝に送られてくる請願や陳情の受付係
・「筆記係」-皇帝への請願や陳情への、皇帝からの回答の文書作成
・「書庫係」-皇帝の許に集まってくる書類を整理し、参照できるようにしておく
・「お勉強係」-皇帝の名で出される布告の文面の作成
●皇妃メッサリーナ(307頁)
夫に皇帝の地位がめぐってきた紀元四十一年、五十歳のクラウディウスはカリグラのように、それによって舞い上がるようなことはなかったが、十六歳であったメッサリーナは舞い上がってしまっ��のである。
●欲望の満足(308頁)
皇妃メッサリーナの放縦は、虚栄欲と物欲と性欲という、実に女らしい欲望を満足させることに向かう。
虚栄心のほうは、夫の凱旋式の行列に参加することで発揮された。
物欲は、姦通罪と国家反逆罪を活用して、他人の資産を入手することで満たした。
●二重結婚(328頁)
元元老院議員のシリウスとメッサリーナ(23歳)は結婚した。
メッサリーナは近衛軍団により殺害された。
●四人目の妻(345頁)
六十歳のクラウディウスは、兄のゲルマにクスの娘(姪)である小アグリッピーナ、三十四歳を四人目の妻として迎えた。小アグリッピーナは、カリグラの妹で、未亡人だった。
●母殺し((412頁)
二十歳になったネロは、邪魔になった母のアグリッピーナを殺させた。
●ネロ祭(414頁)
紀元六十年に、最初のネロ祭が実施された。ギリシアの「オリンピア競技会」の移植である。
●外交(448頁)
戦争は、武器を使ってやる外交であり、外交は、武器を使わないでやる戦争である。
☆関連図書(既読)
「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
「ネロ」秀村欣二著、中公新書、1967.10.25
「ローマの歴史」I.モンタネッリ著、中公文庫、1979.01.10
「古代ローマ帝国の謎」阪本浩著、光文社文庫、1987.10.20
「ローマ散策」河島英昭著、岩波新書、2000.11.20
☆塩野七生さんの本(既読)
「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
「ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ」塩野七生著、新潮社、1997.07.07
「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
(2016年7月3日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロ―帝政を構築したアウグストゥスの後に続いた四人の皇帝は、人々の痛罵を浴び、タキトゥスら古代の史家からも手厳しく批判された。しかしながら帝政は揺るがず、むしろその機能を高めていったのはなぜか。四皇帝の陰ばかりでなく光も、罪のみならず功も、余すところなく描いて新視点を示した意欲作。ローマ史を彩る悪女・傑女も続々登場。
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・ティベリウス →カリグラ →クラウディウス →ネロ。
・カリグラ、ネロとダメ皇帝が登場。でも暗愚な皇帝が続けて即位しない(間に歴史家皇帝クラウディウスが即位)ところが、ローマの幸運なところ。
・個人的には、統治はキチンと行うものの、コミュ力不足(人間嫌いで後半はローマ外の別荘から指示だけ出してた)で民衆や元老院に嫌われていたティベリウスに感情移入。
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『クォ・ヴァディス』および、藤本ひとみのマリナシリーズ『愛してローマ夜想曲』を読んでいたので、皇帝ネロは極悪非道な悪人のイメージが強かったが、思ったよりもまともな人だったのかとわかり、ほっとする。後世のイメージがこれだけ悪いのは少し気の毒。妻のポッペアについても、「史上言われるような悪女ではない」とのこと。クラウディウス帝の皇妃メッサリーナの方がよほど素行が酷かった様子。
ティベリウス帝とクラウディウス帝の性格の違いがとても面白い。ティベリウス帝は、元老院に嫌気がさして隠遁政治をしたが、政治は投げなかったどころかきちんと行った。一生働かなくてはいけないのだから、隠遁したって政治をちゃんとやってもらえればそれでいいじゃないかと私などは思うけれど、そういうわけにはいかないのが世間か。
クラウディウス帝。身なりがだらしがなく、学者肌で、一人では生きていけなくて、妻にいいように支配されてしまうところになんだかサラリーマンの悲哀のようなものを感じる。頑張っているのに報われない愛すべき人だったのかも…。
皇帝の人となりをこのように描いてもらえると、ローマ皇帝に親近感を覚える。(この巻以降は、世界史で名前がほとんど出てこない皇帝の治世が続くので、楽しく読むことができるか?)また、ユダヤ教の特殊性についてかなりページが割かれており、ユダヤ教の勉強にもなる。