紙の本
悩める日本の企業人へ
2015/11/22 06:03
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投稿者:紀伊国屋梵天丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大きな反響を呼んだ「リーン・スタートアップ」の既存企業向け解説・実践本という位置づけである。事実、著者達が行なうリーンスタートアップに関わる研修ビジネスが基礎となっている。実例インタビューが参考に成る読み物部分となるが、逆に翻訳本の宿命もありボリューム的に読み辛くしている面もある。「第7章 実験・実証の具体的な方法」、「第8章 リーン・アカウンティングの活用法」がポイントとなる章になると思う。また、最後「まとめ」に於いて、リーン・スタートアップを利用した既存組織でのイノベーション手法に対する反論に対する反論が示されている。反論に対する反論は通常コンパクトに本来の主張を示すことになるのでこれは重宝する。兎に角、ターゲットである組織人・企業人にとって、示唆に富む書だが、勿論、読後の話しとして「書を捨てよ、”市場”に出よ」の一冊である。
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いわゆる一つの手引書。この書籍を読んで、探していた答えが見つかる率は、この書籍を取った時にどのぐらい自身がその課題で悩んでいるかによって変動しそう。ちなみに僕の見つかった率は20%程度。ぼちぼちかな(書籍の評価ではなく自身の現状そもそも評価w)
まずはリーンスタートアップそのものを読むことをお勧めしたい。
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リーンスタートアップは大企業にも適用できるとしている。博報堂が編成したクォンタムが監修・解説している。
・新しい環境を支配する5つの原則
1 市場の変化は予測不可能である
2 小さなチームが大きな価値を創る
3 新しい市場は勝者が独り占めする
4 スピードが唯一の競争力である
5 成功には多くの失敗がつきものである
・ネットワーク効果(経済用語でいうところの需要面の規模の経済)
「メトカーフの法則」によれば、通信網の価値は利用者数の二乗に比例する
・スーパースター効果
エンターテインメント、スポーツ、政治、テクノロジー、小売業など、いずれの分野であれ、定評あるリーダーは実力以上の報酬を受け取るものだ。この現象によって、既存の業界で一番有名な企業が、顧客ばかりでなく、資金、人材など必要なリソースを磁石のように吸い寄せる。…
インターネットが作り上げたスーパースター市場では、新興のニッチ市場で主導権を握る握るチャンスがあるのだ。
・革新的な製品やサービスをゼロから開発するつもりなら、本当にモノになるものをみつけるまで、無数のアイデアを試したあげく、期待に裏切られることを覚悟しなければならない。
・大企業はなぜ、スタートアップほど効果的にイノベーションを実行できないのか
大企業は、すでに成功した商品のカテゴリーを拡大することは上手です。クレイトン・クリステンセンは、自社の得意分野を混乱させるよりは守ることを選ぶ、大企業のイノベーションのジレンマについて書いています。企業は自社が作った商品から最大の投資利益を得ようとするものであり、まったく新しい商品で業界をかき乱そうとはしません。…問題となるのは、組織の構築の仕方であり、インセンティブであり、企業文化です。
つまりは、リーン・スタートアップ方式を活用し、実験し、社外に持ち出し、顧客からのフィードバックを得て、この一連の流れを何度も積極的に繰り返す能力です。しかし、これは大企業の仕事の仕方ではありません。大企業がこれまで企画サイクルを回して予算を獲得し、縄張り意識の強い同僚に根回ししてきたやり方とは異なるのです。多くの企業はリーン・スタートアップ的なやり方を、ビジネスの進め方の要ではなく、多分に趣味的な活動だとみなします。これらは、破壊的イノベーションに対する巨大な構造的かつ文化的な障害です。
・クアルコム、事業部門の反応
毎年、事業部は提案の集中砲火を浴びました。提案者の中には、既存の事業がうまくいっている事業部に、自分の提案をとにかく実行してほしいと頼み込む者もいました。そして、反感を買うようになったのです。「ちょっと待て!なんだ、このアイデアは!研究開発をバカにしているのか?」社内政治の問題もありました。ビジネスモデルを急に切り替えるのは難しく、部外者が提案したアイデアを受け入れるのもまた、難しいことなのです。
・テーマではなく哲学を持て
テーマを指針にすると、イノベーションを成功させるために必須の「原動力」について十分に考えなく��る。…テーマにした分野や技術が世のトレンドになるにつれて群衆心理に陥り、「イケるのではないか」と誤解する。一方、哲学は関心のある事業分野を包括的に定義するものの、業界、テクノロジー、プラットフォームといったくくり方はしない。哲学は、成功につながりそうな市場のダイナミクスを定義する。
・どうすれば”堅固な哲学”を持てるのか
必要なのは経験です。中身が空っぽな人間に哲学は作れません。…他人の著作を読んで、その内容を吟味し、自分の場合に当てはめてみることが大切です。
・関心を示してくれた顧客から獲得するものは?
今までで一番うまくいったのは、もらった製品をそのまま持っているか、それともギフトカードを受け取るか、顧客に選択してもらうという方法です。
・3つの成長エンジン
「バイラル」とは、紹介のことだ。
「スティッキー」とは、製品にどっぷりはまりこみたい気持ちを喚起することだ。このビジネスの収益は、顧客の生活の質を向上させるような高額な商品、宝飾品、アクセサリー、パッケージ商品などを売ることにかかっている。
「ペイド」とは、広告その他の顧客獲得チャネルに投資して収入を得ることだ。
・インキュベーションを通じて、世の中を一変させるような製品を作り出すことは、大企業の体質に合わない。インキュベーションには、創造力、柔軟性、コラボレーション、スピードが必要だ。企業は創成期にライバルを倒した後は、既存の事業を守り育てようとするものだが、その間にインキュベーションに必要な資質は失われてしまう。我々が研修を担当した大企業の社員たちは、自分の所属部門の枠組みを超えるような発想ができず、苦労していた。自主的に行動するのには、もっと苦労していた。大企業の社員たちは、最終損益にほとんど影響を及ぼさない些細な問題は解決しようと努力するが、そうした問題に顧客が関心を抱くことはない。大企業の社員たちには、業界を再定義しようなどという発想はない。…
もし、繁栄し続けたいと願うならば、大企業は既存の事業部門の垣根を越えてコンセプトを考え、開発し、製品を売る能力を育てなければならない。ビジネス環境は猛烈なスピードで変化して高度に相互がつながり合い、競争は激化している。成熟した企業がさらに成長を遂げるには、必然的にきわめて不確実な領域に進まざるをえない。不確実性が高まるほどに、学習から得られる成果も高まり、投資から得られる利益も高まる。
・買収
社内インキュベーションするかどうかはさておき、買収は、リーン・スタートアップで企業を生まれ変わらせるための、もう一つの重要な手段である。
・イノベーション哲学
誰でもアイデアは持っていますが、違いは実行するかどうかです。…つまり違いとは「他人に先を越された」です。リーン・スタートアップ・マシーンのアプローチの好ましい点は、実行することでイノベーションを目指す姿勢です。理論を立てて、実行に何年もかかるビジネス計画を策定する方法とは大違いです。
・投資の利点
買収が不可能な、あるいは、今はまだ買収できない会社への投資は、大企業の3つのイノベーション戦略の中で最も��易であり、おそらく最初に狙う選択肢でもあるだろう。その一方で、3つの戦略の中で収益アップの可能性は最も低い。
・まとめ
社員に起業家精神が欠けていることを嘆く経営者や、社内起業に対する支援が乏しいことに憤る社員の声に耳を傾けた結果、イノベーション部門は組織本体から切り離すのが最善という結論に達した。我々はまた、大企業が全精力をつぎ込んでも、少しずつ利益を伸ばすのが精いっぱいなのに対して、小さくてスリムな組織が業界の常識を書き換えるのを見てきた。大企業のブランド力、流通網、資金力は尊敬に値するが、プロダクト・マーケット・フィットを達成するような画期的ビジネスアイデアに欠けているという点では評価できない。