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待ちに待った長岡マキ子の新刊!……なのだけれど、私が求めていた長岡マキ子はこれじゃない。凄惨な殺人事件で父と使用人を亡くし後ろ盾がなくなった華族令嬢が、犯人探しのため探偵の真似事をする話。文章は引っかかることなく、ライトノベルと一般文芸の間にあるような、レーベルの方向性にあったライトミステリーだが、長岡マキ子の持ち味が失われている。「中の下!」でも「オタク荘」でも女の子に影響されて前向きに努力する主人公に好感をもったのに、本作の主人公は年頃の娘であり、華族という食うに困らない恵まれた立場でありながら、婚約をのらりくらりとかわし、異性と二人暮らしをし、探偵という遊びごとを続けようとする。華族令嬢なら華族令嬢らしく身の丈にあった幸せを探した方がいいと思うよ。
1巻でストーリーが完結していない点もマイナス。「死仮面の男」の正体とは、「デスマスク・ルール」とは何か、薔子の父は何の儀式をしようとしていたのか、謎が謎のまま残され1冊が終わってしまった。続編ありきの結末だとしてもすっきりしない。カルト・ミステリーというか、ミステリー風カルト小説という方が正しいのでは。
少年少女の一生懸命さと女の子の等身大の可愛らしさを描くライトノベル作家に戻って欲しいな。つまらなくはないけれど、光るところがなくて続きも是非読みたいと思えなかった。