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ジャスティンは緊張のあまり、逃げ出したくなった。これまで誰かを誘惑したことなんて一度もない。だが、今目の前にいる銀行の担当者マーカスを誘惑できなかったら、父親が遺した多額の借金のせいで、家まで失ってしまう。女の魅力を生かせば、彼からは融資を引き出せるという噂だ。ほんとうは私の体を差し出すつもりはないことを悟られないようにしなくてはならないけれど…(『炎と燃えた夏』)。
それは誰の目にも理想的な結婚に見えた。ザックはどんな女性も虜にしてしまうような男性で、しかも大企業の経営者。ヴィクトリアも上流家庭の生まれで、このうえなく美しい二十歳の輝ける花嫁だった。ふたりは愛し合って結ばれたと、ヴィクトリアは信じていた。初夜の明けた朝、ザックが愛人のもとに駆けつけたと知るまでは(『美しき夢破れ』)。
「炎と燃えた夏」
父親の借金のために銀行に融資を申し込むヒロイン、その銀行の頭取がヒーロー。
融資申し込みの前にヒロインに一目惚れしていたヒーローがなんだかんだと理由をつけながらヒロインに惹かれていくのをやめられない葛藤が見物。いい加減いい歳なのにあまり幸いでなかった生い立ちや失敗した結婚で疑心暗鬼になりながらも、わがままなのに天真爛漫で純真なヒロインにメロメロに。もう少しヒロイン側に葛藤があっても良かったかも。いがいとあっさり。
「美しき夢破れ」
いくら歳の差があるからといえ、新婚初夜に別の女性のところにいって説明もないのはヒロインが誤解するのも仕方がないかも。でもヒロインもすぐに逃げてしまう幼さなので、ヒーローばかりを責められない。
むしろそんなヒロインが好きで堪らないヒーローはなんというか凄い。ヒロインの生い立ちに同情はできるけど、さすがに二十歳も過ぎているんだしもう少し大人になっても。ヒーローは大人の余裕で怒ってばかりいないで欲しかった。