投稿元:
レビューを見る
大学は理系に進みましたが、高校時代は歴史も地理も大好きでした。特に、高校時代に地歴図という副教材があって、地理と歴史は繋がりがあるのだな、という漠然と感じていました。
そんな私にとって、まさにこの本は、千載一遇の出会いでした。災害により大量の仲間が瞬時に亡くなってしまうことを何度も経験してきた日本人だからこそ持つ気質というのは、地形や気候がかなり影響していることがよくわかりました。
その観点からすると、良いとは思えませんが、大量虐殺の歴史を持つ国にも、地形や気候から考察できるような気持になりました。この本を読むことをで、今までとは少し違う目線で物事を見ることができるようなった気分です。この本に出会えて幸運でした。
以下は気になったポイントです。
・西欧ではすべての出発点は「人」、だからこそ万物を支配する存在として、人間を想定できた。しかし日本人にはそのような感覚はない。地震や津波があると、人も動物もともに流され、人間だけが特別な存在と主張するなど考えられない(p14)
・人間以外の生き物を大切にしている一例として、動物の去勢をしない点がある。動物を「もの」として考えられなかった(p17)
・変わらないから変わらないことを大切にする西欧文化とは逆に、我が国では、変わってしまうから、変わることを喜ぶ文化が育った。建物の耐え替えもしかり(p18)
・我々の死は、普段は恵みをもたらせてくれる自然のきまぐれで死んでいったので、恨む相手がいない、欧州では恨みを残して死んでいったと考える(p21)
・本来の聖書には書かれているが、省略されている場面として、殺戮がある(p23)
・日本の自然災害死者数は、関東大震災が1位(10.5万人、1923)、明応地震(1498)、鎌倉大地震(1293)、明治三陸地震津波(1896)と続き、東日本大震災(21565人、2011)がある(p35)
・1959-1995年まで大きな災害がなかったが、この36年間に、奇跡の経済成長をしているのは、大災害の空白期と重なる(p36、49)
・阪神大震災の震源近くでも、868年に地震が起きている(p39)
・鴨長明が方丈記で語っている自身が感じた不思議とは、1)安元1177の京の大火、2)治承1180の強烈つむじ風、3)福原遷都1180による京の荒み方、4)養和1181の飢饉(p42)
・史上最悪の飢饉とは、1230-32(寛喜・貞永)で、御成敗式目制定の契機となった、所領問題ではなく大飢饉の発生が原因、江戸の三大飢饉(享保:1732-33、天明:1783-84、天保:1833-39)(p51)
・飢饉を含む自然災害が頻発したので、鎌倉仏教という新しい仏教思想が民衆に浸透した、法然・親鸞・一遍・栄西・道元・日蓮(p53)
・吉宗は農村人口の減少が年貢収入を減らしていると気づき、初めての人口調査が1721年に実施され、総人口が2606万人と記録された(p55)
・篤姫が将軍家定の正室となった安政期前後は、政治的に騒然としているが、自然災害も集中期であった(p58)
・下野、東北各藩では、人口が吉宗期と比較して大幅に減少、一方長州では人口が増えていた(p60)
・日本の国土面積の70%が山岳地帯で平野が少ないのも問題だが、山岳地帯に風化した岩がとどめ置かれている点がさらに難儀である(p70)
・以前の関東平野は、多くの河川が自由自在に流れていて、洪水があるたびに流路を替えながら各地域を水浸しにしていた、関東には小高いところだけ人が住んでいた、大阪平野も同様(p73、74)
・我が国では数千ものダム、堰、ため池などの貯水設備を、大和朝廷以来整備してきたが、数字的には、300億トンの水である。これは、中国の三峡ダム、アメリカのフーバーダム1つ分(p80)
・中国や欧州で城壁が建設されてきたのは、そればなかったら多くの人間が愛する者の死に直面しなければならないという惨劇を経験してきたから(p99)
・ホワイト氏が彼の著作で紹介している日本の虐殺は、島原の乱のみ(1637-38)で、2万人の男性信者、1.7万人の女性子供、生き残ったのは105人(p102)
・大量虐殺ベスト20にあるのは、1:第二次世界大戦(1939-45、6600万人)、2:チンギスハン(1206-27、4000万人)、3:毛沢東(1949-76、4000万人)、19:西ローマ帝国滅亡(395-455、700万人)、中国内戦(1927-37,45-49、700万人)(p103)
・西洋文明の根幹にあるのは、「人命を賭してでも実現しなければならない正義がある」だが、日本人は、「殺人を犯してまで実現すべき正義など一つもない」である(p106)
・西洋文明で、市民とは、責任を果たすことを約束したことで安全な城壁内に住む権利を得た人、を指す(p111)
・江戸時代における全国の村の数は、元禄10年(1697)で、6万3276、天保5(1834)で、6万3562であった。現在は1800程度(1720)なので、単純に1つの市町村に、35程度の江戸時代の村が含まれている(p118)
・喧嘩両成敗の考え方とは、どちらに非があるかを探ろうとせず、理非はともかくとして「争っていること」がいけないという精神、だから双方が成敗される(p124)
・明治6年(1873)の地租の導入により、それまでの年貢(耕作権・使用権が保証された時代)から、地租(所有権が認められる)という革命的な変更が行われた(p127)
・日本では政治が変わっても社会があまり変わらないことや、権力が混乱しても社会が混乱しないことは、日本において「権力」が脇役であることを物語っている(p134)
・官僚制(中国・イスラム)が集権的であるのに対して、封建制(欧州・日本)は、分権的、土地をめぐって主従関係が結ばれ横に広がるような、やくざの組織に近い。地理的・地形的条件や外的条件から、強力な権力のみが全土を支配できたか否かによる(p153、155)
・日本語において、人称表現が豊かなのは、君がいるという二人の関係の中においてのみ、自分があるということの証明。あなたが居るからわたしは居る、あなたとの関係の中にのみ存在していると考えるのが日本人(p164)
・人間関係成立に特化して日本語といいうものは磨かれてきたことがわかると、和歌によって微妙にゆれる相手を思う気持ち���上手に表現する能力がなければ、人間関係(男女関係)はまず成立しなかった(p164)
・グローバル時代には、現代の我々は、より正確に情報伝達できる言葉遣いや、論理構成の正しい文章表現を心掛けるべき、なのに正反対の方向に向かっている(p168)
・大転換となった1995年にあったこと、地震とサリン事件以外に、1)暮らしが悪くなると思う人が上回った、2)生産年齢ピーク年、3)デフレ経済突入、4)財政危機宣言、5)金融機関破たん、6)大阪府・東京都知事選挙、7)円急騰、8)アメリカによる年次改革要望書、9)規制破壊、10)短期雇用者の導入、11)地方分権推進法(p208)
・昭和20年9月1日、同盟通信社が24時間業務停止命令、9月18日、朝日新聞は48時間の停止命令(p217)
・4月28日の意味(占領終了し、主権を回復した日)を考えるべき(p221)
・われわれが取り戻すべきは、他国民が決してまねできない、集団力の発揮、である(p228)
2015年8月16日作成
投稿元:
レビューを見る
今後も間違いなく地震や台風がくる日本で、国土強靭化、どうなってるんですかね?
増税ばっかりしてないで、補正予算どんどん組んでほしいです。
投稿元:
レビューを見る
小学校の学級文庫あたりに置いておきたい感じ。ちょっと違うんじゃないの?と思うところもあるけれど、日本人としてのアイデンティティを考えるきっかけにはなるかも?
投稿元:
レビューを見る
地理学・地政学的に日本が世界の国とあまりにも
違っていて特殊であり、その中でも、その中だからこそ
繁栄を勝ち取れたという論調。ちょっと違うのでは
ないかと思う部分が大きく。そういう見方をすれば
そうなのかと思う部分もあります。
また、日本の歴史・文化をないがしろにしグローバリズム
に警鐘を鳴らしているのですが、その部分について
書いてあることは総じて賛同できる内容なのですが。
日本の特殊性や、中国や西洋との違い、日本人の規定
などの論調からそういうことを言うと、おかしくなる
というか、安部さんやその取り巻きの人や
反知性主義的な考えかたの人、極論すると
ヘイトスピーチをする人たちが出てくる元凶になる
と思います。
なので、こういう論調の本や著者は個人的には
あまり好きになれないし、非常に危険なのではないかと思います。
投稿元:
レビューを見る
オススメされて読んでみた一冊。なるほどなるほど、日本人の土地柄の特性と共有されている価値観、そこに無理に欧米に合わせたゆえに生じているひずみがわかりやすくまとまっていて、もっと自分たちがチームとして力を出していくために必要なヒントが書かれていた気がしました。違いが明確な比較対象があると、自分たちのことがよく見えてくるっていうのはありますね。「公」と「共」の違いについても納得できる部分があって、これからの自分の動き方も少し変わってきそうです。
投稿元:
レビューを見る
国土の特徴から紐解く日本人論。
昨今の日本人礼賛ではなく、短所についてもしっかりと書かれている。
内容の割りに平易な文体で読みやすい。
投稿元:
レビューを見る
日本人がいかに他国と違うかと「国土」という観点から分かりやすく書いている。
ただグローバル化の波が確実に来ている中、そんな日本人がどの道に進むすべきかをもっと知りたい。
集団でこそ力を発揮する日本人が競争力を失っている今、日本に誇りを持ち、日本流を保ち活かす方向で本当によいのか。
脈々と刻まれている日本人の特殊なDNAから変われないとしたとき、生き残れるのか。
投稿元:
レビューを見る
日本人の特徴を国土という観点からまとめた興味深い一冊。他国との国土の違いや歴史を参照し、現実味を感じられるように著者の考えがまとめられている。
国際貢献をしたいと考える者にとって、自国を知り他国との違いを理解することが第一歩と言われる中で、読むべき一冊と思う。また、日本国内で土木に携わる者にとっても、国土との共生を考える契機となる。
投稿元:
レビューを見る
日本という国の地理的、歴史的な特徴から述べられた日本人論。説得力のある日本人論であるが、読めば読むほどいまの危機的状況からの脱出の難しさを痛感する。個人評価システムにしてもグローバル化にしても、全く見当外れな導入のおかげで、いまの疲弊した日本社会が存在していることがよくわかる。
投稿元:
レビューを見る
この本を読もうと思った動機は、輸入されるビジネスのお手本が日本企業にことごとくはまらないのは、日本企業が少なくとも輸出元のアメリカとは本質的に異なっているからという仮説を検証したいということ。
本書から理解したことは欧米(というか欧州)では「公」が発見され、日本では「共」が発見されたということ、参考までに中国では「権力」が発見されている。権力の発見には、強い権力による強制的な統制が必要な広範な地域が必要。日本はせいぜい数百人規模の集落がそんざいできるような土地しかなかったので強い権力は必要なかった。逆に顔見知りの数百人がうまくやっていくには、何となく全員が受け入れられる曖昧な答えの導出システムだったり、論理よりも感情を伝えることに特化した言語が必要だった。これが「共」であり日本語である。一方のヨーロッパでは、とにかく戦争が多かった。城壁の中で暮らさざるを得ない。ここでも、城壁内の人々がうまくやっていくシステムが必要だが、そもそも城壁の中に住むことは敵から身を守れる権利であり、その対価としての義務が発生する。具体的には城の防衛や戦争を優位に進めるための各種活動への参加である。これら活動は個々人の生活に優先する。なぜなら、戦争に負けたり城壁が破られたら元も子もないからである。こうして「公」が発見されたという。結構面白い考察。
で、結局、自分自身が日本について何か分かったかというと、感覚的には分かったが、体系的な整理には至っていない。ただ、日本企業が共をつらぬくなら、アメリカ発のビジネスルールやメソッドは適合しない。日本に適合するようにモディファイしないといけない。
投稿元:
レビューを見る
日本人といっても全体としての論議だから説得力が弱い部分も感じるが、大陸から文化は入ってくるけれども人が大勢押し寄せてくることはない距離が離れており、山がちで平野が少なく、自然災害が多いといった国土の特徴が、日本人の気質をつくってきたというのは、その通りだろう。
マシュー・ホワイト「殺戮の世界史」では、日本での虐殺は、島原の乱が記載されているのみで、2万人の男性信者と1万7000人の女性と子供が殺された。
小さな平野が分散している日本では、強大な権力は生まれなかったため、仲間内の徹底した話し合いによって地域をまとめた。顔見知り仲間での緊張を高めないことが優先されたため、厳密なルール化とその厳守ではなく、三方一両損的なあいまいな解決がなされた。ヨーロッパや中国では城郭都市による「公」が発見されて市民が生まれたのに対して、日本では「共」が発見されて個を打ち消し、一体となって溶け合う状態を理想とした。
投稿元:
レビューを見る
人間と土地のつながりについて調べるため、日本人と土地はどのようなつながり方をしているのか、の論を学ぶため、購読。
・日本は、度重なる災害などにより、「流れていく」歴史を持つ、一方、ヨーロッパは、「積み重なる歴史」
・日本は天為の国、ヨーロッパは人為の国。
・国土に働きかけて、国土から恵をいただく
・日本は国土を脊梁山脈が分断しているため、日本海側と太平洋側を結ぶことが困難。
・日本は、争うこと自体を悪しきものとし、話し合いを経て「共」にあるということを尊ぶ文化。一方のヨーロッパは、革命を経て権利を獲得した市民が、個々人の利益に優先する「公」のもとにルールを守る文化。
―以上は、どちらが良いでも悪いでもない、文化の違い。
だが、以下は日本のデメリットだ。
・明治維新後、「公」を経ずに土地所有権を国民に開放した結果、世界にも稀有な「個人の絶対的土地所有権」が認められてしまった。
・日本の組織、社会の最大の弱みをひとつだけ上げろと言われれば、私は「言葉」だと思う。日本の企業の同質性が弱みに転じているが、それは一つには、同質な組織体では「言葉の力」が理解できなくなるからではないか。
投稿元:
レビューを見る
ヨーロッパや中国が人為による紛争戦史観を持つのに対し、自然災害死史観を持つ日本。良し悪し、進んでいる/遅れているではなく、単純に、異なっていると捉えるべき。1995年以降、この認識間違いを一貫して続けてきたため、自信と誇りを失っている。
日本人に合わない個人主義や成果主義や評価方法とはいえ、これだけメジャーになってしまうと、戻すことへの反発がすごいだろうし。まず、世界に対して、欧米と違う日本流を理解してもらうことからかな。