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語り語られる物語。薄ら怖さと優しさが共存した小説だった。
今までのパズルじみたメタメタメタな構造(世界を何層にもわたって描くことでむしろ世界が閉じ、矮小化してしまう問題をはらんでいる。舞城は「娯楽産業」なんて言葉で語ったこともあった)からいったん離れ、新しい形式をとり、それが成功しているとも思う。
ここでは詳しく書く気はないけど序盤から語りが奇妙で不可解で、読み進めていくうちに一人称がどうやら各章の主人公にぴったりつきまとっている守護霊とかそんな感じの存在であることがわかってくる。形としては、二人称小説っぽい。語り手が、語り手を知覚できない主人公に対して延々と語りかけるようにして描写されていく。でも、それだけじゃなくて……。という話。
人称形態そのものを物語とじかに接続して書き上げた点では評価したいし実際かなり高度なことをやっていると思う。「主人公が語り手を知覚できない」点では3人称っぽくもあるし、これってすごく新しいことなんじゃないか?知らないけど少なくとも僕はほかにこんなの知らない。物語のエモーションとしても十分だった、特に2章のラストとか……けど。うーん。何だろう。僕は何か不満があるというよりはまだまだ期待してるのかもしれない。たぶん舞城がこの次に書く小説はきっとこれより面白くなってるような気もするし、楽しみにしてる。
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ギャー怖い怖いやめて怖い!!
「ヒー‼:(´◦ω◦`):」ってなりながら読んでました。
短いセンテンスで、素敵なこというのねー。
印象的な台詞がちらほら。
真っ暗闇は怖いけど、素敵な光もいっぱいで、初めての舞城王太郎作品がこれで良かった。
LOVE&ピース&HAPPY!(&MORE…)
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実に気味が悪い小説だ。
描かれている出来事や人物という直接的な不気味さは勿論のこと、それ以上に「得体の知れないもの」が蠢いている感がすごい。行間に、ページの隙間にその気配は漂い、漏れ出て、読み終えたときには肌が粟立つようだった。思わず辺りを見回して、壁を背に塞がなければ落ち着かなかった。
私が最も不気味に感じたのは、正体の知れない「穴」や「裸の男」よりも、掴み所のない3人の「語り手」達の方だ。
主人公たちには感覚されない世界で、主人公をずっと(物語の始まる以前から)見つめ続け、記録し続け、主人公と共に在るという「語り手」の存在。これがどうにも割り切れず、大きな引っ掛かりとして付きまとった。
読後に辺りを見回してしまったのは、「穴」や「裸の男」が怖くなったからではない。
それもあるけれど、それ以上に、この「語り手」達と同じように私のことを見つめて、私には聞こえない声で「あなた」、もしくは「君」、「あんた」と呼びかける誰かがいるような気がしてしまったからだ。得体の知れない何者かに見つめられているということ、これ以上に気味の悪いことはない。
とは言え、この「語り手」の立ち位置によってこの小説が特徴づけられていることは言うまでもない。
「私」と「あなた」だけで完結しない呼びかけ。
誰かに聞かれ、読まれることを想定した呼びかけ。
二人称小説で、こんなに広がりのある世界が作られるとは知らなかった。
「語る者」と「語られる者」と「読む者」のこの三角関係は、もはや発明の域なのではないだろうか。
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噂の2人称で語られる舞城の新作。語ってるのは誰?って疑問が残ります。そもそも「淵の王」ってなんぞ?ってとこですが。話はホラー仕立てで特に最後の話は読んでて嫌な感じがしました。人生ってタイミングだけど、そん時気が付かないこともたくさんあるよなぁとふと思い出したのでした。
で、誰が語ってるのこれ?
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舞城的純文学・ミステリの1つの到達点。これまでのどの作品よりも想像力を喚起させられる作品だった。結末がどうとか異論もあるかもしれないが、ストーリーにしか目を向けられないのは読者の貧しさだろう。
間違いなく傑作。
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久しぶりに読む舞城王太郎。相変わらず、作風がよくわからない。なので、考えずに感じて読むといった感じで読了。やっぱり、わからない。あらすじを読んでもわからない。装丁と作品のインパクトは大だった。
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一見普通の小説のように思えるのだけれど、ホラーかな。個々の主人公をなぜか他の視点から見ている何者か。一見なんでもない日常の中でふと覚える違和感。そして突如として出現する謎の存在。いったい何なんだろうこれは。
やや抽象的な部分も多くてはっきりと解明できるものじゃないのだけれど。独特な雰囲気で楽しめました。印象的な言葉が多く使われているのもツボです。
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すごかったー。久しぶりに一気読みしてしまった。
この会話の絶妙さよ。
一見二人称にも見えるような不可思議な文体は、最初とっつきにくさを覚えるかもしれないけれど、読み進むうちに、癖になるというか、なんというか、じわじわと語り手と主人公の暖かい距離感のある血の通った文体である。他者として主人公を見る視点という語り手は、それだけで面白い。
そして怖くも面白い。いままで読んだことのない物語である。○○のようなとか説明できない。
読みやすいので、ホラーが嫌いじゃなかったら読んでほしい。
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おそろしい・・・
ある特定の地域(福井、調布)を行き来する人物たち。
三者三様の末路を辿ることになるのだけれども、
対峙する相手はどれも同質のもの。こわい。
闘おうとするのも立派だけれども、逃げるのも大事。
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うん。舞城王太郎だ。
「どんな話だった?」って聞かれると説明に困る。
なんだろう。人の心の裏側に隠してある黒い穴がひっくりかえって表になったときに、そこに引きずり込まれてしまった人の話、とでも。
ホラーだけど、愛なんだ。
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毎度毎度、どう消化すべきか悩まされる舞城王太郎作品。舞城作品としては筋は追いやすい方だろう。それでもやっぱり、今回も悩まされた。とっくに読み終えて放置していたが、今頃駄文を書き連ねることにする。
長編と称しているが、実質的には3人の男女が語り部を務める中編集である。3人それぞれが、それぞれに「闇」と対峙する…と言えばいいのだろうか。ホラーの要素もあるし、ミステリーの要素もある。文章だけならアクが強いこともなく、普通だが…舞城節には違いない。
ダントツに怖いのは、最初の「中島さおり」の章だろう。途中はともかく、友人宅に駆け付けるラストシーンに戦慄する。だって、実際にありそうだろう、こういう事例…。「闇」とか何とかより、人間の方がよっぽど怖えぇぇぇ! この1編だけ膨らませたら、長編としての完成度が上がっただろう。しかし、そんな安直なことはしないのが舞城王太郎。
続く「堀江果歩」の章。テニス少女が漫画家を志し、テニス漫画を描く。王道スポーツ漫画とは一線を画すどころではない彼女の作品は、大人気を獲得。しかし、原稿の中に、描いた覚えがない人物が…。並行してホラー漫画に取り組み、最終話で明かされる真相はっ! …うーむ、舞城さん、これ漫画として出してくれませんか。
最後の「中村悟堂」の章。曰くつきの空家に敢えて住む悟堂。いやぁぁぁぁ何その猟奇的事件!!!!! どうしてその現場に住むんだ…。3編中では最もホラーっぽいが、最も筋がこんがらがった難物。悟堂が骨のある男なのはわかった…かな。
最初の章の圧倒的リアリティが、その後の章のインパクトを弱めた感があるが、全体的には、日常に潜む落とし穴を描いたと言えなくもない。こういうずっしり重くなりそうなネタを、舞城さんが書くとなぜかカラッとしているのは不思議だ。
などとわかった風なことを書いてみても、いつもしっくり来ないんだよなあ。わかったようでわかっていない迷える一読者を、舞城さんは鼻で笑うに違いない。
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私は光の道を進まねばならない。自分の中の自分内他人が囁く。自分なのに自分は制御できない遠くへと行ってしまう。どんどん離れていく。自分の力ではどうしようもないけど、だけど、結局は自分の足で立つしかない。無力と気力。その狭間で考え苦しみながら立ちはだかる現実の壁を乗り越えていく。ギュッと拳をにぎり応援していた。時折感じるヒヤリとした冷たさも非常に良かった。
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小さな白い光が闇の渦の中に一本すうっと光線を伸ばしている。
私たちはその光の道を進まなくてはならない。
でもあんたはもうほとんど無くなりかけていて、でもだからこそ、そもそも無い私にもあんたを触ることができる。
あんたを集める。僅かな欠片も残さずに。
そして全部抱きしめる。
まとめて抱え、私はあんたとともに光の道を行く。
出口へ。
(P.312)
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大変良かった。感想終わり。以下は駄文。
3話とも出てくる語り手、は、「守護霊」とか解釈している人もいるけど、そんなんじゃないなあとは思う。語り手が誰、とか、あの穴は結局何なんだ、みたいなのは作者は特に答えを用意していていなくて、読み手が最後に考えて、もしくは感じ取ってくれ、そういう類のレイヤーの高い何かである、というのが一番すっきりとする考え方だと僕は思う。
少し前の舞城はもっと純文学っぽい指向性があった(と身内よりの指摘)と思うし、それはそうだなとも思う(語り手誰だ問題みたいな一種の「投げっぱなし」はその名残か)が、今作は大分ポップに振れていて、こういう感じの方が読みやすい。
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『さおりちゃんは東京の大学を受ける。受かる。東京の調布市に住む。同じく東京の日本橋に住み始めた三奈想くんとも付き合い続けてるし、二度目のセックスもする。三度目も、四度目も。』
『インターフォンを押す。
りんのーん。』
『私こいつ嫌い。人当たり良さそうにしてるだけで話通じないタイプだこれ。』
『あなたとここで別れるのが悔しい。
あなたを含んでいるという理由で、私はこの世界が好きだった。
あなたのことが好きだったのだ。
それを、そもそも無理だったとしても、伝えることができずにこうやって無くなっていくのが悔しい。
だってどんな愛情だって、伝えられないこと以上の不幸ってないでしょう?』
「あはははは!そんなこと気にしなくていいんじゃない?本読んで本当に何も残らないなんてことないんじゃないかな?あと、お話読むことって、ストーリー憶えることじゃないから。歴史の教科書じゃないんだし。読んだときどんなことを感じて考えたかじゃない?大事なの。そのときの気持ちはまた読み直せば復活するかもしんないし、果歩ちん成長してまた違う読み方ができるかもよ?」
「まあいろいろ試してみれば?人生で一番避けるべきは無駄を嫌うことだよ」
「楽しんだもの勝ち、気にしたもん負けだよ」
「怖いことは考えないでね。私、怖いことを考えることそのものが、何か悪い影響持ってる気がするんだ」
「時間ってどうなっているんだと思う?過去と今と未来って、俺らにとっては流れるものだけど、実際に、俺らがどっかに留まっていて、そこを時間が通過してるのかな?それとも過去も未来もなくて時間の経過は一冊の本みたいに全て書かれて全部一緒に存在してて、何かが開いているページ、あるいはその何かが読んでいる文字、そういうのが今ってこともあるのかな?」
「…嘘が苦手なんだ。ごめん。俺は君を食べるし、食べたし、今も食べてるよ。グルニエは暗い」
『俺は君を食べるし、食べたし、今も食べてるよ』
『だってあんたチンチン主義でキンタマの世話しかしないクズ裸ん坊野郎だったもんね。最初何してるかわかんなかったけど、でもあんたの馬鹿さをずっと伝わってたよ。いやーもう実際さ、あんたずっと股間を触っているか触ってもらってるか触ってもらう相手探してるかだったもんね。』
「ふふ。あのね、小さい虫の死骸をさ、それとは別の虫に食べさせて、そいつを殺して、また別の虫に食べさせて、また殺して、また別の虫に食べさせて、そいつもまた殺して、また別の、今度は動物に食べさせて、その動物殺して別の動物に食べさせて、みたいなことを、私のこと念じながら続けて、その死体をうちに置いてたみたい。呪いが思うように効いてないうちは回収してまた別の動物に食べさせて殺して、またうちに運んできて、って感じでさ。死体のマトリョーシカみたいなもんだね」
「誰でもいいけどたまたま私、ってことじゃなくて、誰でもよくなくて私じゃなくて駄目で私を選んで欲しいの。そしてそのときの好きは私のこと以外を含まない好きなの。これは概念じゃないよ。実際��に、実践的に、私のことを好きであってほしいの。分かる?私の言ってること」
「あのさ、私じゃなきゃ駄目ってことは、二者択一で選ぶってことじゃなくて、選択肢すらない状況だからね?」
「でもさ、これが私の悟堂への好きなんだよ。悟堂しかそもそもいないんだもん」
「…そうか」
「そうだよ?」
「…ありがとう」
「あのねえ、好きだって言ってありがとうって答えて欲しい人はいないと思うけど」
「うん」
「うんじゃないし」
「はは。分かった」
「で?」
「え?…ちょっと時間欲しいんだけど、駄目かな」
「駄目じゃないよ。残念だけど、駄目じゃない」
「残念かな」
「ここで今だと思うよ、悟堂」
「うん」
「時間が欲しいならあげるよ悟堂。しょうがないもん。あんたしかいないってのはそういうことだから」
『のりたまふりかけ様
日本古来からご飯のお供はのりたまふりかけだって、ずっと僕は主張してきた。
そして君もそれに賛同していた。
でも人間だから、違うものを食べたいっても普通の欲求に耐えきれなかった。僕は。
駄目な奴だ。
そして駄目な男だ。僕は。
でも僕は今、本当の自分に返る。
僕は君も大好きだったアツアツご飯。
今は炊きたてだ。ジャーから香る美味しそうな匂いが君に届きますように。
アツアツご飯 杯』
「あいつ、…湯川も言ったんだ。ここで、今だって」
「大事なことは、何でも、ここで今だよ」
『あんたは言う。ここで、今だ。』
「ずっと探してたんだ。待ってたんだ。湯川、愛してるよ。ずっとお前だったんだ。お前しかいなかったんだ。ごめん。遅くなって。助けてやれなくて。上手く伝えられなくて、優しくできなくて、本当にごめん。ありがとう、俺のこと好きになってくれて。ありがとう。嬉しいよ、またこうして会えて。でもこんな奴のために、恨みや憎しみを持っちゃいけないよ。俺に任せろ。お前の気持ち、俺が一緒に担うから、ここは俺に任せとけよ」
「気にしなくていいよ。人生に起こる不思議とか謎の一つ。どうでもいいんだ。余計な追求するなってのが、不思議とか謎が送るメッセージだよ」
『私はあんたを好きになったことが心底嬉しい。
ああハッピーだ。これが幸せだ。これだ。今、ここだ。』