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第一次世界大戦で九死に一生を得た男たちの物語。
第一次世界大戦後、上流階級に入り込んだ中尉と偽名で生き延びて社会の底辺を生きる二人組の対比から、その二人組の性格の違いの対比という二重構造的な構成や、国家的行事に絡む詐欺事件をそれぞれが起こすという対比の三重構造的な展開が見事です。
ラストは追うものと追われるもののサスペンス的展開になっていてドキドキしますし、エピローグで主要人物たちのその後が説明されていてそれなりにハッピーエンドでホッともしました。
エピローグのルイーズの記述に意味深な説明があるのですが、続編?があるなら読みたいと思います。
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長身ハンサムなだけのクズな上官だったブラデルの運の良さもここまで。落下の人生になり、マイヤールとエデゥアールの詐欺は国家を巻き込む事件に発展。エデゥアールの姉の強さとしたたかさ。エデゥアールの父親の愛情。ラストは切ない。この切なさは、その女、アレックスを読んだ時にも感じた切なさだ。
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帯に皆川博子さん推薦とあったので手に取った。
ハヤカワ・ミステリ文庫ですが、ミステリというより文芸(ざっくり)といった印象です。
彼らがどういった因果関係を形成するのか、手は放すのかどうか、そのあたりが特に気になったので一気読み。不条理さは引きずらないが、もの悲しい…。
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(15.12.26)
戦争末期。野心をもった上官プラデルに命を奪われそうになったマイヤール。偶然にもその命を寸前で救うも、直後に自らの顔下半分を失ったエドゥアール。
戦後も続くマイヤールとエドゥアールの悲惨な生活。
エドゥアールの父は莫大な富をもつペリクール氏。死んだと聞いて初めて息子への愛に気づく。さらに娘のマドレーヌは、プラデルの妻ともなる。
複雑に絡まる人間関係。富と名誉。欲と憎しみ。戦争の影が潜む暗い作品。ある意味では、若干の温かみが残るものの、人間の暗い部分が描き続けられている。
ただでさえ、切ないクリスマスだったっていうのに…こんな時期に読むんじゃなかったな…
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なんというかすごい。すごいエネルギーである。
特にマドレーヌの存在が、何とも言えない。主要登場人物は男性ばかりなのに「女ってたくましい」って思わせる女性しかいない。
ただ、なんというか大きな波に翻弄されたまま結末を迎えてしまったなぁという気がしないでもない。第2次大戦という大きな波にとって人なんてゴミみたいなものだということなんだろうか。
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129・130/10000
「天国でまた会おう」上下
ピエール・ルメートル
平岡敦 訳
早川書房
「その女アレックス」の作者、ピエール・ルメートルの作品です。単行本と同時に文庫も発売!粋ですねぇ~✨
今までの作品が、がっちりミステリーだったので、今回もそうなのかなと思ってたら、全く趣の違う作品です。
第一次世界大戦。ヨーロッパ戦線では、休戦の噂に、兵たちは戦意を失っていた。そんな中、下された突撃命令。混乱の中、上官プラデルの悪事に気づいた主人公アルベールは、事実の隠蔽のため、戦死を装った生き埋めにされてしまう!そんなアルベールを救ったのがエドゥアール。しかし、この出来事が、三人の運命を大きく変えていく…
大きな時代の流れの中で、のし上がろうとする者、自分を守ろうとする者、運命をせせら嘲う者、様々な思惑が絡み合って、どうしようもないところまで行ってしまう恐ろしさが、余すことなく描かれている。
中学生の頃、背伸びして読んだものの、細かいところは忘れちゃった「チボー家の人々」がなぜか痛烈に甦ってならなかった。
これは、すごい作品です。
ルメートル、すごい作家です。
可愛い顔したこのおじちゃまから、絶対目を離さないぞ❗(σ≧▽≦)σとここに誓いマス。
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ルメートル氏の作品がなぜ日本でウケるか(もちろん日本だけではないのだが…)分析してみる。それは勧善懲悪に加えて日本人の大好きな人情溢れる時代劇的要素が存分に盛り込まれているからであろう。それを証拠にハッピーエンドではないにもかかわらずアレックスもアルベールも見事な大岡裁きで救われたではないか…それがなんとも言えぬ爽やかな読後感をもたらすのである。
そして上巻で「ミステリーではない!」と言ったことも撤回。
目まぐるしい展開の結末は一見唐突であっけないものなのだが実は登場人物ひとり一人の行動すべてが緻密な伏線となっておりそれがエピローグでかっちりと繋がる様は上質なミステリーそのもの。
やはり「tres bien!」と賞賛せざるを得ない
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厭世的な思いで日々を送る二人の若者が画策した計画は、戦争で疲弊した人々をさらに傷つける「事件」へと発展する。様々な登場人物が見せるすべての俗なる行動が人間の持つ醜悪な部分の具体例として提示されている。
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傑作では?
そりゃアレックスやイレーヌを読んだら否が応でも期待しますよね。でもいい意味で裏切られます。
青年2人が時代に翻弄される。但し片方が芸術家はだしの破天荒な人物であった為、フランスを揺るがす一大詐欺事件に発展していく。
それに絡む悪徳上司と、それぞれに絡む女達がまたいい。マドレーヌもポリーヌもルイーズもみんないい。小説なんて「美人であった。」と書けば誰でも美人になるのに、マドレーヌは敢えて不美人であった。ポリーヌは可愛らしかった、でも婚約者を戦争で失った25歳。ルイーズに到っては12歳だ。三者三様の設定が上手い。
最後にプラデルを見捨てるマドレーヌの男前な事!最後にあっさり詐欺に加担するポリーヌの潔さったら!そしてひたすら献身的なルイーズ!
三者三様の男の運命と、その男達に絡んだ女達の三者三様の運命。読ませますね〜、手に汗握りますね〜。エドゥアールは死んでしまいますが、一応ハッピーエンドでしょうか。そう、アレックスの様に、なんとなく落ち着かない、少し捻ったハッピーエンドです。
最後の最後にメルランのその後まで描かれる。
これがまたいい余韻を残してます。
この作者は凄いですよ。早く全部翻訳して欲しいです。
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想像を裏切る展開。暗く、エグく、悲しい展開も乾いたユーモアにする筆力。こんな小説もあるのか。訳文も良い。
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基本的に復讐譚でありつつ、どこかカラッとした明るさがあるところは、アーチャーの「100万ドルを取り返せ」を彷彿とさせる。
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ルメートルの作品だがミステリーではないし(ミステリーっぽいところはあるが)、正直展開にとまどい何がいいたかったのかわかりづらいところがある。
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ピエール・ルメートル3作目。
前2作と比べてミステリーではなくドキュメントのような。
初めは前作より出てくるキャラクター要素が弱く読みにくくてなかなか進まなかったが(相関図がややこしい)、次第に関係が分かってくると登場人物に感情移入してしまうくらいはまる。アルベール、エドゥアール、プラデルの3人の運命はいかに。
映像作品でも観てみたい作品。
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売れっ子のピエール・ルメートルの版権を獲得した早川書房は、その快挙に欣喜雀躍したに違いない。ハードカバーと文庫との同時出版となったのもその表れだろう。
しかし、実のところルメートルの作品は、あの怪作『その女アレックス』の登場後、即座に、過去に翻訳出版されていたにも拘わらずその時点では全く注目を集めなかったルメートルのデビュー作『死のドレスを花婿に』、そして少し後にカミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズとしては第一作に当たる『悲しみのイレーヌ』も出版されるというルメートル旋風が、翻訳小説界に巻き起こることになる。
『その女アレックス』が世界に席巻するルメートルのブームの発端となったにせよ、今、読む機会を与えられた過去の作品はすべて圧倒されるストーリーテリングを感じさせられる筆力に満ちたものであることは間違いない。
そうした翻訳ブームの中で実は地味ながらも『その女アレックス』の二年後の作品として改めて瞠目されるべき作品が、実は本作なのである。早川書房としてはとても鮮度のよい作品に眼をつけたというところなのだ。しかもこの作品、フランス最高のゴングール賞受賞作。いわば日本でいえば直木賞ならぬ純文学系の頂点である芥川賞に比肩する大きな賞なのである。ピエール・ルメートルは、実は直木賞も芥川賞も行ける作家であったということである。
しかし本書に向かい合ってみて、過去作品の見せる大どんでん返しやトリック、ツイストなどのミステリー的要素はないものの、その表現手法に接してみると、いかにもルメートル世界ではあるのだ。全然違う作品なのかな、と思いきや、その語り口、題材としての目の付けどころ、登場人物が陥る異常心理、意外な宿命とその結末といった小説的面白さは、日本の芥川賞にはまず見られることのない大衆娯楽小説としての楽しさが満載なのである。
フランスのおおらかさというようなものを感じさせる受賞であり、それに応える壇上のルメートルの妙技はやはり相変わらず見ものである。ミステリーではなく、むしろ冒険小説のジャンルに切り込んだルメートルの作品は、どことなくジャプリゾの『長い日曜日』を思い起こさせる。
戦争の残酷と、戦争を食い物にする戦争犯罪者。そしてそれらをある時は真摯に、ある時はイロニック(皮肉)に料理する名シェフのような文章(包丁)と味付けの冴え。日本の純文学では考えられないフランス純文学大賞の面白さ、という切り口だけでも改めて楽しみたいエンターテインメント・クライム・スリラーであり、壮大な復讐劇としてのビルディングス・ロマンとも言える大作をご賞味あれ。
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あれ?今、自分はシドニィ・シェルダンを読んでいるんだっけか?いや、違う。「その女アレックス」で一躍名を挙げたピエール・ルメートルを読んでいるはずだ。というくらい、期待したものとは違う。それでもよし、という場合もあるが。