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2015年刊行。著者は元東京大学大学院理学研究科広報担当特任教授。
壊血病、梅毒、マラリア。人間が克服しようとした、あるいは克服しようとして未だ達成できていない疾病に対抗する薬剤の発見・確立を叙述する。ペニシリンやビタミンCなどさほど新奇でないのも多い。
その中で、麻酔の確立が齎した益は計り知れないなあとの感。とはいえ、ここまで利用が進んでいる麻酔の機序が未だ判然としていない点は驚かされる。
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著者の本領発揮の作品。自分のフィールドの製薬については、ちらりと裏側をのぞかせるだけで、難しい話はほとんど出てこない。薬品の周辺のエピソードもしっかり載っていて読んで面白くためになる。
理系というか化学畑に進学を考えている中高生にはぜひ読んでおいてもらいたい作品。
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紹介されている薬の発見の歴史は、
大抵は知識として持っているものが多かったが、
どの薬もその時代の人物を中心に、
歴史を絡めてざっくりと紹介してあって読みやすい。
「もし」という部分はそれほど深くはないので、
その期待には応えていないけれども、
十分に楽しめました。
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ここ数年で、一番読み応えがった。
人類の最大の敵の1つである細菌に対して、
作られた人類の武器である薬。
それらのなかでも、歴史を変えたであろうという
薬剤をピックアップした本書。
漫画ワンピースでも紹介された壊血病へのビタミンC
人類初の抗菌薬、サルファ剤
奇跡のセレンディピティが起こした神の恩恵とも
いえるペニシリン
20世紀に出現した最悪のウイルスであるエイズの
治療薬を生み出した日本人、満谷裕明さん
人類文化史初期の治療では、動物の糞や血を薬にする事で
汚れによる悪魔を追い出すという発想の汚物薬から、
消毒という概念が理解できなかった中世医学。
今では、信じられないような治療を駆逐し、正しい薬効を
追求していった研究者達。
『解らない事の道筋を探すその過程を科学という』
この言葉が深く感じられる。
そして、特に印象に残ったのが、ペニシリン以降に多くの発見をされた、より優秀な抗生物質の数々。
一度、限界を超えることができたら、
雪崩のように進化していく『1マイル4分の壁』
この言葉は人類の進化にとって、とても本質をついた
言葉だと思われる。
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創薬の歴史について
あの時あの薬があの人に使えてたら歴史が変わってたという観点で書かれた本。
壊血病に対してのビタミンCや、細菌感染に対しての抗生物質など、人と病の戦いに圧巻。
先人の汗と努力で生かされてるんだな。
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製薬会社研究員による、歴史を変えた薬について紹介した本。人類の歴史に大きな影響を与えた薬をいくつか取り上げて説明している。興味深い内容であった。
「ほんの100年前には、日本人の平均寿命は現在の約半分に過ぎなかった。1921〜1925年の平均寿命は、男性42.06歳、女性43.20歳。新生児の6〜7人に1人は、3歳までに亡くなるという時代であった」p14
「天才の着想というものは、その後一般に普及して当たり前になってしまい、後世から見るとその凄さがわからなくなることが少なくない」p32
「キニーネを含む健康飲料も開発された。キナノキなど薬草を抽出した液に、炭酸を加えて飲みやすくしたトニックウォーターがそれだ」p50
「モルヒネは、ケシの未熟な果実から得られる。ケシの果実を未熟なうちに傷をつけると、白い乳液が滴り落ちてくる。これを集めて乾燥させたのがアヘンだ。モルヒネにアセチル基を結合させたものがヘロイン」p61,72
「16世紀に使われた医薬のうち、現代の目で見て真に有効といえるものは、アヘン以外にほとんど見当たらない」p63
「医師は免許を取ったら、内科、耳鼻科、皮膚科など何の科を名乗ってもよいが、麻酔科だけは厚生労働省の資格審査に別途合格する必要がある」p84
「アメリカ人は驚くほどのアスピリン好きで、年間1万6000トン、世界で生産される1/3を消費している。全国民が年間100錠ほどのアスピリンを飲んでいる計算になるから、にわかには信じがたい数字だ」p149
「薬というものは同じ成分であっても、細かな技術によって、効き方に違いが出る。これは現在のジェネリック医薬などでも、同じ問題となる」p155
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今の書き方だとこんななんだなあ。この内容の本を50年後に書いたらどんなになるんだろう。50年前だとどんなだろう。などと思いながら読んだ。タイトル通りだし。アニリンの荒っぽさを思い出しながら。
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普段から多々お世話になっている様々な薬。今の日本で生きていると、そのありがたみを感じにくかったりもしますが、この本を読むと薬のありがたみがよく分かります。
例えば麻酔。考えてみれば当たり前ですが、麻酔のない時代は、患者を押さえつけて外科手術やってたんですよね。それだけで麻酔薬開発に関わった、すべての先人に足を向けて眠れません…
きっと麻酔がなければ、僕は親知らずを抜くことはできなかったでしょうから。
そのほかにも、ビタミンCや消毒薬、アスピリンなど、今ではおなじみの薬の歴史や、開発秘話、科学的な考察が書かれています。
内容はいずれもあっさりしているので、読み応えは少し物足りないところもあります。
しかし化学式などもわかりやすく解説してくれているのは、文系にはありがたい限りです。
一番印象的だったのは、エイズ治療薬の話かな。日本人が開発したというのも初めて知ったのですが、そのエピソードも本当によくできているというか、素晴らしいというか。
映画・ドラマ関係者は、今すぐこの話を映像化できるように掛け合ってもいいんじゃないか、と思いました。
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非常に読みやすくまとまった本でした。
感染症と疼痛をメインに人類に薬が与えてきた影響を、臨場感を持って感じ取ることが出来ました。
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人類の歴史を変えた医薬品を時代背景を踏まえて解説した本。
内容は主に医薬品の歴史の紹介であり、化学的な部分もわかりやすく説明されているため、誰にでも読みやすい本であると思います。
ウイルスは標的となるタンパク質が少なく、変異が早いため、薬を作りにくいことから、本書では「人類の最後の敵」と紹介されており、現在の状況から痛感させられました。
人類の歴史は感染症との戦いであるというのを考えさせられる本でした。
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[墨田区図書館]
思っていたよりも、豆知識本みたいな作りで面白かった。化学薬学面では話だけでなく化合物の構造図を載せていたり、歴史面ではちょっとした小噺的に著名人のエピソードを絡めていたりと、エッセイのように軽く楽しく読める。
でも個人的には「物語」の方がいいのと、「知識本」とすると、メモを取って理解したくなるのでやはり今回のように外的要因がないと読まないかな。断片知識と短期記憶しか持てない私には、理解した気になれるので、話題の年表とか地図とかも欲しかったかも。
ただ、エイズ治療薬のところなどは多少その時代を経験しているので身近に感じたし、そこで歴代の感染症としてSARSやMERSなどが出てくると、今回のコロナの件もここに新章追加されたら読んでみたいと思えた。
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国内でエイズ関連の患者・死者が出たときに個人情報やガセネタが報道されていた、当時はプライバシー保護の概念が薄かった、というような記載があったけれど、21世紀のコロナ禍でも大して変わっておらずとても残念
端的にわかりやすくまとまっていたので読みやすかった
分子構造はイラストじゃなくて構造式の方がよかったなーと個人的には思う
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有名な薬が誕生した経緯を時代背景とともに紹介した本。「歴史のifを筆者と一緒に愉しんでいただきたい」と書かれているが、とくに「ifの物語り」は書かれていない。筆者が正確な記述に徹していることが感じられる点が大変気に入った。感染治療薬と鎮痛剤にフォーカスされている。
心に残ったフレーズ:
1.汚物薬の時代。病気は悪魔が体内に侵入したためにおこると考えらえていたため、悪魔が嫌う悪臭を放つ汚物が有効と考えられていた。
2.不老不死の薬。移ろいゆく動植物でなく、永遠に変わらない姿を保つ鉱物の力を取り入れる、と考えられていた。
3.薬効の判定の難しさ。医薬の効能の有無の議論は統計学が進展してからのこと。
4.大航海時代の壊血病とビタミンC。
5.マラリアとキニーネ。
6.人類がもっとも古くから使用してきた薬は鎮痛剤、アヘン、10%のモルヒネ、アセチル基付加でヘロイン。
7.麻酔薬の作用機序はいまだ不明。
8.感染症治療薬のサルファ剤。
9.抗生物質ペニシリンの発見、アレクサンダー・フレミング。
10.鎮痛剤・アスピリン。ヤナギの木からサリシンが分離、鎮痛剤として使われるが、激しい胃痛を引き起こした。アセチル基を付加したアセチルサリチル酸、アスピリンが誕生。
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薬品開発の歴史は、医学の歴史であることはもちろんだが、化学の歴史でもあるんだなあ。
マラリアの薬キニーネも、鎮痛剤アスピリンも、もとは自然界に存在する(キニーネはキナノキ、アスピリンはヤナギの樹皮に含まれる)ものだが、それを化学的に合成できて初めて、大量に生産できるようになるのだ。
この本は最初が滅法面白くて、ちゃんとした薬の歴史は浅く、ハーブ(薬草)なんかかなりマシな方で、(水銀を薬として使ったり、瀉血などの無意味どころか害になる治療をしたりというのは知っていたが)動物の血や糞尿、腐った肉なんてものを薬として使っていたと書いてあり、ゾッとする。病気は体に悪魔が入ることだから、追い出すために、悪魔が嫌がる汚物を体にいれたんだと。
一番驚いたのは、「統計」という概念がなかったので、効いたかどうかをきちんと把握していなかったってとこ。
壊血病とビタミンC、モルヒネの鎮痛効果と依存性、麻酔薬、消毒など今では一般人でも当たり前に知っていることも昔は知られておらず、古人が身をもって実験台になってくれてようやくわかったんだなあ、と感慨深い。
ビタミンCを過剰に評価した天才化学者ポーリングのエピソードは、ノーベル物理学賞を受賞しながら心霊研究に没頭したジョセフソン、錬金術に25年も費やしたニュートンらのエピソードと合わせて「ノーベル賞科学者だから、教授や博士だからといって、無条件にその言葉をありがたがるべきではないことは、我々も肝に銘じておくべきだろう」(P40)って、ホントそうね。よく広告に○○博士推奨みたいなのあるけど、ニュートンクラスの超天才でさえおかしなことにこだわりだして変なことを言い出すんだから、その辺の先生なんかは推して知るべし。(もちろん金目もあり。明晰な頭脳持ち主コナン・ドイルが晩年妖精や降霊術にハマったことも思い出す。)
エイズ治療薬を熊本大学の満家裕明博士が4つも開発したことなんか、日本人なのに全く知らなかった。もっと知られていいと思う。
薬の歴史は化学の歴史でもあるが、人間の愚かさと賢さと努力の歴史でもあった。
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人類の歴史とともに語られる薬の誕生秘話が全10話。歴史好きな方、医療従事者の双方におすすめできる。
医薬品というものの存在が、いかに大きく生命の助けになってきたか。その背景にはどんな苦悩があったのか。そこまでしっかりと解説されている。
ストーリー性を帯びたことで、暗記に頼らず薬の歴史を学ぶことができる良書。
なぜこの薬が生まれたのか、という疑問が湧いて悶えていた人にはぜひ読んでみて欲しい。まるですっきりと雲が晴れるような心地よさを感じられると思う。