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原書名:ANCILLARY JUSTICE
ヒューゴー賞長編小説部門、ネビュラ賞長編小説部門、ローカス賞第一長篇部門、アーサー・C・クラーク賞、英国SF協会賞長篇部門、英国幻想文学大賞新人部門、キッチーズ賞新人部門、星雲賞海外長編部門、ボブ・モラーヌ賞翻訳長編部門
著者:アン・レッキー(Leckie, Ann, 1966-、アメリカ・オハイオ州、作家)
訳者:赤尾秀子(1955-、翻訳家)"
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「デビュー長編にしてヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞など『ニューロマンサー』を超える英米7冠、本格宇宙SFのニュー・スタンダード!!!」
惜しみない称賛が際立つ本書は、アン・レッキーの長篇「叛逆航路」です。前文に加え、アーサー・C・クラーク賞、英国SF協会賞、英国幻想文学大賞、キッチーズ賞を受賞。翻訳版では日本の星雲賞(海外部門)も受賞しているようです。良くも悪くも「数多くの賞を受賞した作品」というレッテルを背負ってしまった本書。往々にしてこういう作品は期待値が大きくふれすぎて、案外微妙な印象に終わることが多いのですが…
しかし、本書。なかなかどうしておもしろい。
原題は「ANCILLARY」。この単語は「協力者、召使」あるいは「付属品」の意味を持つようで、本書では「属躰」と訳されます。この言葉が本書のキーワードのひとつで、解説の言葉を借りると「宇宙戦艦のAIを、戦闘用に改造を施した人体に上書きダウンロードした生体兵器」を指しています。宇宙戦艦のAIは、戦艦を支配するだけでなく、多くの属躰を管理下におきます。多くの属躰から得られた情報をAIは認識し、属躰もまたそれを共有するのです。このようにAIは属躰から様々な情報を得ることが出来ますが、こういった「ひとつの出来事を様々な視点から切り取る描写」は、本書を特徴付けるところがあって、なかなか刺激的です。
属躰に加えて、本書の世界観も魅力のひとつです。強力な専制国家ラドチが宇宙を併呑する世界を舞台に描かれる独自で綿密な世界観。その力の入れようは、解説の後に「付録 アンシラリー用語解説」が収録されるほどです。
さて、宇宙戦艦のAIにありながら、ある事件を経て、たったひとり生き延びた属躰「ブレク」が本書の主人公。ブレクが紡ぐ過去の記憶と、進行する現在の出来事。ふたつの世界が結ぶとき、物語は大きな展開を迎えます。それまでのどちらかというと単調な(しかし、たしかな波乱を予期させる)展開もあってか、ここから食い入るように読み進めることができました。
ただ、独自の世界観がもたらす設定(例えば、ラドチは性別を意識しないため、すべて「彼女」と呼称する)に加え、最終的に誰が味方で誰が敵なのか、ぼやかして進行される展開には、結構混乱させられました。まあ、それも含めておもしろいのですが。
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p203まで。全世界9冠制覇ということで期待して読み始めたが興味が続かなかった。属躰という世界観が面白そうだったけど。
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邦題とカバーイラストから「銀河帝国の圧政に反旗を翻した宇宙軍の一艦隊。追っ手との壮絶な星間戦闘を繰り返しつつ、皇帝の居城を急襲するべく絶望的な旅路を征く……」みたいなのを勝手に想像していたらだいぶ違った。いや実はそんなに違わない?
少なくとも「宇宙戦艦が主役」というのはある意味その通りなのだけど。スペースオペラ的な派手な場面はあまりなく、主人公や登場人物たちの心情や動機を丹念に追う「情念のSF」という感じだった。
とはいえ世界観は執拗なくらい作り込まれていて、「属体(アンシラリー)」等々、耳慣れない造語が頻出する上、主人公の属する文化の設定上、一人称の本文では代名詞がすべて「彼女」で統一されている。そのため、なんと主要登場人物の性別すら読み手にはなかなか判断がつかない。
さらには時系列も錯綜するので、相当に読みにくい……はずなのだが、なぜか妙な中毒性があって、ほぼ一気読み。精緻な模型を舐めるように眺める快感があり、お酒でも片手に一行一行吟味して味わいたくなった。
三部作ということで、次作以降はまた雰囲気が変わってくるのかもしれないが、全て刊行済みのようなので楽しみに読みたい。
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面白いのですが、非常にわかりずらいです。
ちょっとやそっとの想像力と読解力では太刀打ちできません。本編を読む前に少なくとも巻末の用語解説を読むことをお勧めします。解説も先に読んだほうがよりお話を楽しめた思いました。
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前提の違いに戸惑うことは間違いない。しかし、その前提の違いを当然のこととして進む物語。ふしぎな感覚で読み進めることになる。話も面白いので読み進むことで慣れてくる。独特の感覚を前提とする面白さがあると思います。
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読みにくいことこの上なし。
文体に翻弄され、スジを追いかけるのがやっとだった。
背景の時間は千年単位の壮大なスケールだが本編はそのうち19年前から、現在に至るまでの話。
三人称が、彼女なので登場人物の性別がわかりにくい。性別を明示している場合もあるが、ほとんどは会話の内容などから推測しながら読み進める感じ。読み手の方で勝手に決めて読むのも面白いかも。
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読み応えのある本格SF。さすがに主な賞を総なめしているのも分かる。内容的には原題のアンシラリージャスティスのほうがぴったりくると思った。
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ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、英国SF協会賞、クラーク賞など、7冠獲った小説だというから読んでみた。
おもしろかった!
最後まで、主人公の性別が分からなかった。女性・・・・でいいの?でもなんか、たくましいし、オーン(=女性だよね?)を慕っていたていうし、なんとくなく男性のようなイメージもある。擬体使いというつながりで、私の脳内イメージは素子少佐だったんだが、それでよいのか・・・?
そして、セイヴァーデンがむちゃくちゃ萌える。なんなのこのダメ男。序盤は「なんだこの糞は?!」と思っていたが、途中から主人公に向けて出る矢印がまぶしくて、くっそ萌えた。(矢印が
セイヴァーデン→→→→→→→||||越えられない壁||||ブレク→オーン
こんな風に出ていて、その報われないっぷりにまた萌えた)
しかし、なぜセイヴァーデンが1000年後に現れたかの伏線は、投げっぱなしで回収されなかった。
続編があるから、そっちで回収するのかな?
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こんな未来なのに専制国家&皇帝って、人類ってどうなの?はさておき、面白かった。主人公はアンシラリー(属躰)。アンシラリーは、捕虜を生体兵器に改造して人格を宇宙戦艦のAIで上書いちゃうんだよ!おぞまし過ぎるでしょ〜。たった一体生き残ったアンシラリーによる皇帝への復讐譚。でも皇帝が多すぎて収拾つかないw。
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はぐれAIの物語
邦題『叛逆航路』とはえらく昭和の香りのするタイトルだが、原題は〈Ancillary(隷属する)Justice (正義)〉と、随分と意味深。
物語は「ラドチ」という専制国家が広く銀河を支配している時代で、中世ヨーロッパの様な閉塞感漂うスペースオペラファンタジー???
主人公のAIはなぜ身分を隠し「ヒト」として辺境の星を彷徨ってるのか……
相棒?のセイヴァーデンの存在が、物語のちょとしたスパイスとなっている。
後半になって、やっと民族、習慣、宗教、社会情勢などの世界観?に慣れてくる。
たしかに面白い。三部作、さあどうするか……。
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正統SFで、世界観がしっかりしていて、引き込まれた。Ancillaryという概念が面白い。個体差がある多視点の同一人格AIって、クローンで意思共有するより有事に強そう。感情共有、監視ができて、操作できないのか?とか、AIと人との境目はどこか?とか疑問も色々あるけど、個人内の葛藤が大きなスケールになったときに、というのが面白かった。
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古本屋でみつけて読み始めたらとまらなくなって、シリーズ3部作を一気に読んだ。
主人公ブレクは巨大戦艦”トーレンの正義”のAI(人工知能)で、何千体もある”属躰”のひとつ。
物語は宇宙の僻地、極寒の雪原に全裸の人間が倒れているのをブレクが発見するところからはじまる。死んでいるかと思われた”彼女”は、かすかに息をしていた。そしてブレクは気づく。彼女はかつて私を操艦していていた、副官のセイヴァーデンであることを…
この作品、設定がややめんどくさい。
まず、登場人物に性別がない(実際はあるんだろうけど、性別の概念がないので代名詞は全て”彼女”)
さらにわかりにくいのが、主人公が戦艦のAI(人工知能)だということ。主人公のブレクは何千体といる(いた)AIの属躰のひとりであり、生き残っているラストの1体。属躰というのは植民した星の住人の体だけ借りて、脳はAIに換えられた体のこと。だからブレクも体はもとは、どこかの占領された星の住民。AIはいくらでも自分のコピーをつくれるので、”属躰”は何千体も存在する。しかも様々な地域や時代に存在した属躰の記憶と戦艦の記憶が、ブレクの視点として語られるので、それがどこなのか、過去なのか現在なのかすらわかりにくい。
ブレクは物語のはじめから何かの武器を探している。その武器を探しているうちに辺境の地にまで流れ着き、セイヴァーデンを発見するのだが、なんでそんなことをしているのかがだいぶ後になるまでわからない。後々、それは皇帝を殺すことのできる唯一の武器だとわかる(つまりブレクは皇帝を殺そうとしている)
以上の3点を押さえておくと、わかりにくさも解消され物語に没入できる。
戦艦同士のバトルとかはなので、地味な印象も受ける。しかしブレクが皇帝アナーンダを追い詰めるまでのシリアスな描写の連続は、スパイ映画のような緊迫感がある。静かに、でも着実にターゲットとの距離を縮めていく。
若干ネタばれ気味にはなるけど、かつて皇帝に命ぜられたある重大事件のことでブレクは怒っており、そのため皇帝への復讐を果たそうとしているのだが、皇帝もまた複雑な設定で、ブレク同様、たくさん存在している。どの皇帝が本物?というのもおかしくて、全部ほんもの。絶対君主が分裂してあっちこっちで勝手な指令を出すので、ストーリーがまた複雑になっていく。その縦横無尽に張られた蜘蛛の巣の網目をかいくぐって、ターゲットを追い詰めるその展開は、日本人好みの仇討ち劇だ。
ラストは宇宙空間での派手なアクションが。
うお~、すげぇ、映像化してほしい。
娯楽作品の様々な要素が詰め込まれた作品で、数々の賞を受賞したことも頷ける快作だ。
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たくさん賞をとった作品ということで読んでみました。AI視点の語りなんですが、人の代名詞が全員”彼女”となっていて、最初女性をイメージしていたら男だったりで混乱。性別の区別をしない世界という設定はなかなか入りにくいですね。?
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なんとも骨太なSF作品。難解な設定、難解な会話、難解なストーリー展開など、途中リタイアしそうになるも、なんだか不思議な魅力というか、先が気になってしまい、じりじりと気を取り直して読み進めていくと、いつの間にか読まずにいられなくなると言いますか。これ、映画にしたら、確実に超駄作になる可能性大でしょうが、小説だからこそ成り立つ世界観の醍醐味を味わえる作品と思います。