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安土桃山時代の絵師・長谷川等伯を描いた小説。
直木賞を受賞したばかり。
読みやすく、ドラマチックで、面白いですよ!
長谷川信春(後の等伯)は、絵の才能を見込まれ、染物師の長谷川家に、11歳で養子に入った。
染物の修行をしつつ、日蓮宗の絵仏師として、認められていく。
実家は、能登の畠山氏に仕えた武家。
下克上が始まった時代で、畠山父子は家来に城を追われていた。
信春は長兄の奥村武之丞の依頼で、復権を目指す畠山のため、ある使いを引き受けることになるが‥
妻の静子は、ふっくりした顔の優しい女で、信春の仏画のモデルともなっていた。
息子の久蔵も生まれて、穏やかに暮らしながら、信春の胸には都に出て絵師として認められたいという願いもくすぶっていた。
思いがけない成り行きで妻子と家を出て、都へ向かおうとするが、折りしも信長の軍勢が周りを取り巻いていた。
信春はひとり、山越えして都へ向かうことに。
窮乏しつつも、絵仏師として有名な信春は、各地の寺で世話になることが出来る。
後に残った静子だが、寺で近所の子供達に手習いを教えて慕われていた。
信春は比叡山焼き討ちに遭遇、子を抱いている僧をとっさにかばって闘ったため、信長に追われる身となってしまう。
本法寺で日堯上人の尊像を依頼され、「後の修行者のため、修行がどこまで進み、何が足りなかったかわかるように描いてくれ」と言われる。
困難な仕事に全身全霊で打ち込み、この絵は評判になった。
畠山家の夕姫が京の三条西家に嫁いでいて、信春を本願寺に連れて行き、近衛前久に紹介してくれる。
藤原北家しか関白になれないという家系の頂点に立つ前久は、19歳で関白になった。13代将軍・足利義輝とはいとこ同士、公家には珍しく、共に武芸にも秀でていたという。
この前久という男、魅力的に描かれていて、面白いです。上杉謙信と行動を共にしたこともあった。15代将軍・義昭とは仲が悪く、信長とは会ってみたら気が合ったという。
信長より一つ年下だとか。
信長の行動が次第に常軌を逸してきたため、本能寺の変を画策したという可能性も。
戦乱の行方と信春の人生行路が交錯し、動乱に巻き込まれ振り回されつつも、懸命に生き延びていく。
芸術家としての物事の本質を見極めたいという志と葛藤、妻子への愛情、縁ある人への思いがありありと描かれ、引き込まれました。
狩野派との競争は後半ですね。
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直木賞受賞作品。戦国の世に生きた絵師のはなし。主人公信春が自分の心の内や世の流れに翻弄されながらも、絵師として極みに達して行く様が書かれている。信春の周りの人の慈悲深さにも心打たれる。下巻はさらなる極みへ達するのか、気になる。
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求道物語
五木寛之の『親鸞』のような感じ
戦国という激動の時代、真の姿を描くことに命をも顧みない気合に、まだ半分読んだだけだけれど、感動
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展開は早めで、その分さらさらと進める読みやすさがある。
波乱万丈、読んでいる方も釣られて深刻に…とは、あまりならずに読める。
のめり込みたい人には少し物足りないかもしれない。
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直木賞を受賞したことでちょっと気になっていた本だったのですが、母が先に読み終えて、とてもおもしろかったからぜひ読めと強力に勧めたため、読んでみました。まだ上巻を読み終えたところですが、たしかにこれは実に上質のエンターテイメント。新聞連載小説だっただけあって、小さな山場が各所に散りばめられていて、飽きるところがありません。文章も実に読みやすい。引き続き、下巻を読みます。
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安土桃山時代に活躍した絵師、長谷川等伯。その波乱と苦難に満ちた、しかし充実した人生を、迫力ある文体で描く小説です。
上下巻の大作ですが、森本キャスターも「一気に読んでしまった」というぐらい、等伯の人物像に引き込まれます。
等伯について語る安部龍太郎さんのウェブ限定インタビュー映像など、詳しくはこちらをご覧ください。
annex ~『直木賞作家が薦める本』 ~:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京
http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2013/02/post143381.html
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直木賞受賞作品ということで本屋に山積みにしてある。時代劇に近く、しかも上巻では信長の本能寺の変までを関連させている。時代劇としてそのうちテレビに出るであろ。絵画の描写はどれほどかは不明であるが。
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すごく面白かった!!七尾駅前の等伯像や「とうはくん」を日常的に観てる影響か、長谷川等伯って小さい人のようなイメージを持ってたんだけど、この小説の等伯は大きくって暴れん坊。武家出身だし、松林図屏風の筆遣いの勢いは武者っぽいものがあるから、そうなのかもしれないね、と思いつつ読了。信長から家康まで、激動の時代の荒波をなんとかくぐりぬけ、一つの困難が次の絵に生きる、というような感じに描かれてます。絵をみて感じたことを同時代の出来事とつなぎあわせて書いたことがよくわかる小説で、読み終わってすぐに等伯の画集を眺めました。等伯の絵を観る体験をより豊かにしてくれる物語。これを読んではじめて、古い絵はその時代の著名人も眺めてるかもしれないわけで、もしかしたら秀吉や家康も松林図屏風をみてあれこれ感じたのかもしれない…絵は時代を超えて人をつなぐんだなあ…としみじみしました。
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戦国時代の絵師の人生。狩野派とかよく「なんでも探偵団」で出てくるけど、この時代だったようですね。江戸時代にかけて絵師ってほんとに人生かけて絵を描いてたんですね。
前に呼んだ「千鳥舞う」も良かったねぇ!
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等伯の前半生。比叡山焼き討ちに遭遇し、織田家からの目を避ける生活を余儀無くされる。鬱屈の中に様々な出会いがあり、絵描きとして成長する。なかなか等伯と言う人間に共感できず、面白いと感じなかった。
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長谷川等伯の素晴らしい絵にこのような背景があったのかと、作品自体の面白さももちろんのこと、芸術の探求者としての哲学的な要素も読んでいて楽しめます。更なる下巻が楽しみです。
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2013/05/03-05/10
緊急入院で読み始めることができず、枕元にあった本書。七転八倒している私の夢枕に出てきたのは、虎が前足をしっかり踏まえて100人乗りの大型バスを引っ張る姿。後日、「等伯の虎」であることが判明。安部龍太郎の作家魂と気迫が伝わってくる。
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一度等伯の生の絵を見たことがあります。
あの力強くも静寂な世界は等伯の体格もあったんですね。
名前を残す天才たちは、感覚的に描くことを知っているのだと思っていました。
しかし、この本の中の等伯は、いたって普通の感覚を持っています。
人並みに自分の才能に苦悩していて、それを乗り越えてより良い絵師になろうとしている。
等伯の人柄には特に惹かれることはないのですが、試行錯誤を繰り返し、自分の弱さを乗り越えていく姿に励まされました。
私も趣味で絵を描きますが、等伯のように謙虚に学び、腕を磨いていきたいと思います。
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能登半島、七尾の絵仏師であった長谷川信治.時代は戦国.信長の比叡山焼き討ちなどに遭遇しながらも.京に上って徐々にその才能を認められて行く.日本史の大きな流れを角度を変えて眺めているような描写のしかたが読むものを飽きさせない.
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物語としては面白い。
畠山や信長や法華宗の歴史事実とからめて、
翻弄されていく等伯の人生は壮絶。
これまでの等伯像とかけ離れるのではなく、
新たな面を補完してくれるイメージで読みやすい。
ただ、短文で改行を多用しているのがあまり好きではない。
地の文で現在のことを挿入してくるのもあんまりだな。
中には、関心することもあるけれど、別に今知らなくて良いし、
話の流れが切れるので、物語への集中を解かれてしまう。
自分が調べたことをひけらかしたいだけでは?とか思ってしまうな。
今の段階では、本当は3なんだけど、下巻への期待を込めて4で。