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世界文学の最重要人物である作家・ドストエフスキーの作品はその難解さから敬遠される傾向が最も多い 作品でもあります。そんなドストエフスキー作品や背景を分かりやすくまとめたのが本書であると思います。
本書はドストエフスキーが人生の後半に著した『五大長編』を中心に、詳細な解説を加えたものです。今まで読んだことがあるものもあれば、まだ読んでいないものもあったわけですが、筆者の詳細な研究には本当に頭が下がる思いでページをめくっておりました。巻末に掲載されている筆者の経歴を読んでみると、北海道大学の大学院を卒業し、高校図書局在職中にドストエフスキーの作品と出会い、以後情熱を持って、その作品世界を研究しているのだそうです。
これを読み終えた後に、僕は筆者の主催するHPにも行った事がありますが、筆者の卒業論文(『カラマーゾフの兄弟』がテーマ)などがアップされており、とても面白かったです。ドストエフスキーの作品の読破を阻害する要因として、
・物語がとてつもなく長い。
・登場人物の名前が良くわからない。
・舞台になっている19世紀のロシアの社会や風俗になじみがない。
・ルーブルやコペイカというロシアの通過が現在の価格に換算するのが体験
他にも様々ものが想定されますが、それらにも詳細な解説や、『五大長編』に至っては登場人物の相関図までが掲載されており、読んでいる途中で迷った際にはこの箇所を紐解くと、疑問が一瞬に氷解します。
さらに、作品内に頻出する『決闘』やロシア正教の『イコン』ロシアの料理である『ロシア風カツレツ』などの風俗や文化の解説。そしてドストエフスキーの生涯や、彼の編み出した小説手法にも言及されていて、とても面白かったです。僕も今後はドストエフスキー作品を読んでいて困った際は本書を読んで、理解に務めたいと思っております。