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【本屋大賞翻訳小説部門第1位】
一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。
──魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。
2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作! 解説=松山巖
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単行本を持っているが、増補改訂版ということで文庫も購入。
飾り気の無い簡潔な文体は、単行本で読んだ時は驚いた。1文だけを取り出すと素っ気ない文章だが、同時に叙情的でもある。
改めて読んでみると、やっぱりシーラッハは短編作家だなぁ、と思う。長編も面白いが、短編はもっと面白い。
最初に読んだ時は『フェーナー氏』と『タナタ氏の茶盌』が好きだったのだが、再読してみると『チェロ』もいいなぁ。
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読むのを悩んでいたけど、読んで良かった。
『エチオピアの男』は噂通りいい話で、タイトルが『犯罪』なのに、心が温まった。
全体的には、切ない話が多いし、きっと犯罪のきっかけは、こういうものなのかも。更に切ない。
また、しばらくしたら読もう。
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ひとつひとつ、読み終わった後に、
なにか、心の奥底で、ひっかかっているというか、
うごめいているというか、ものによってはほっとしているというか。
それぞれの話によって、読後に残るものは違うんだけど
結末の、その後を想像して、感じてるのかしら。
なぜ、そのような事に至ったか。
それぞれに理由があって、それを理解できるか。
これらの裁判に、裁判員として参加することになったとすれば、非常に頭を悩ますことでしょう・・・
犯罪は犯罪だけど、理由が・・・
有罪だけど、理由が・・・
犯罪を犯してしまった人物にも理由があって、その理由をしると、場合によっては、被害者の方が・・・
ってのがありますもんね、フェーナー氏?
もやりまくる感情の中、最後の話は、もちろん犯罪を犯して、それはいけない事なんだけれども、彼が幸せになれたようで良かったと、思わずにはいられずに終了。
いやー
としか言えない。
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久しぶりに寝るのが惜しいくらいに没頭した傑作。文学としてだけでなく、非常に素晴らしいミステリー短編集である。ぜひ他の人にも読んでほしい。
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推理や真相が書かれているわけではありませんが、楽しめました。
個人的には「フェーナー氏」と「棘」が好きです。
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様々な事件に関わった人々の様々な背景と動機
そして、その様々な事情をのみこみ、依頼人を保護する弁護士
少しもやもやとした感覚と余韻を感じさせる。
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何処と無く『世にも奇妙な物語』を思わせる…“犯罪”をキーワードに、短い作品が11篇収められている、ドイツの作品集だ。夢中で素早く読了してしまった…
全般的に「然程厚くない文庫本」という具合で、そこに11篇の物語が収まっている。各篇も長いものでもない。1篇毎、気軽に読み進められるが、読む都度に「少し不思議で、他方で“在りそう”」な事件関係者達の物語に引き込まれる…
決して「敷居が高い?」ではない、気軽に愉しめる翻訳ミステリー…お奨めだ!!
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この本の面白さは、その独特の文体にあります。
ハードボイルド風であり、犯罪実話ドキュメンタリーのようでもある派手さのない簡潔な文章で、一人あるいは複数の人間の人生と、彼らが罪を犯す様が淡々と描かれた短編集です。
そんな文体なのに、各話とも出だしの一行からぐぐぐっと心を引き込まれてしまい、一話一話はそれ自体が短いのも手伝って、一気に読まされてしまいます。
見るからに悪党でいけすかない輩も出てきますが、心優しく善良でごく普通の当たり前の人間が、ふとした些細な事柄によって人生が知らず知らずおかしな方向に進んでいき、気がつけば罪を犯してしまう。
作者は序文で、人の生涯を「薄氷の上で踊ること」に例え、氷が割れて冷たい水に落ちてしまうかどうかは、ひとえに幸運に恵まれているかどうかによる、すなわち紙一重だと述べています。
先に述べたとおり、一話一話はとても読みやすい短編ですが、全てを読み通すのに時間がかかったのは、この作者の言葉を一話読み終えるたびに思い返し、深く深く考えさせられたからです。
ちょうど映画やTVドラマを観終わった後に、静かにエンドタイトルを眺めている時のように、様々な思いが頭の中を駆け巡り自分自身の幸運に感謝したくなります。
第一話の途中で、この短編集は、一人の刑事弁護士が、自身が携わった事件とその被疑者について語っていることに気づかされます。とは言え、実際に法廷での裁判シーンが出てくるのは十一話のうちの四話しかありません。
やはり、タイトルどおり「犯罪」とそれを犯す人間に焦点を当てた、ある種異様な凄みというか迫力を持つ、見事な小説だと思いました。
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2012年本屋大賞1位だとのこと。
創元文庫でさらに翻訳物が…平積みという珍しい状況に
手に取ってみた。
短編集。
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好き嫌いが分かれそうな作品ですが、面白いのは間違いないと思います。十一の短編は、どれも物悲しさを感じます。個人的には『フェーナー氏』『エチオピアの男』あたりが印象的でした。
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犯罪はその経緯がその人となりが事件の根幹を成している。
序文にこうある。
「私は刑事訴訟手続きに関わる書類を書くのが仕事です。(略)そこで書いているのは人間です。人間の挫折、人間の罪、そして人間のすばらしさについて書いているのです。」
「私の話に出てくるのは、人殺しや麻薬密売人や銀行強盗や娼婦です。それぞれにそれぞれがたどってきた物語があります。」
この短編に登場する犯罪自体はありふれた単純なものばかりだ。新聞に載ったとしても数行で終わるような事件。しかし、そこにいたる経緯はそれぞれに物語がある。
・フェーナー氏
一生愛し続けると誓った妻を殺めた老医師の話。
・タナタ氏の茶盌
プラマイゼロにする話。
・チェロ
姉と弟、そして絶望の話。
・ハリネズミ
犯罪一家の落ちこぼれの話。
・幸運
愛ゆえの話。
・サマータイム
今日でおしまいにする話。
・正当防衛
プロの話。
・緑
羊の目玉をくりぬく少年の話。
・棘
棘を抜く少年をめぐる話。
・愛情
恋人を噛んだ話。
・エチオピアの男
絶望した男の話。
茶盌と棘が盲信的でいい。
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短編。隠れた名著と言う感じですね、面白かった。
悪魔は想像するほどに黒くない、という言葉もありますが、犯罪というのはとても入りくんでいます。殺人をとっても、単に凶悪な殺人犯なのか、可哀想な殺人犯と見るのかで世界が変わって見えます。
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文句のつけようのない5つ星の傑作。これは本当に面白い!
本作は11編の短編から成る作品集で、どれも弁護士である「私」を語り手にして「私」が手掛けた事件が綴られている。その文体は簡潔で無駄がなく、研ぎ澄まされた筆致は一見冷たい印象を受けるが、淡々とした語りから事件の深部が徐々に露わになり、犯罪者の輪郭が描かれていく。この展開がもう、読ませる読ませる。
私情を挟まず、客観的な視点の叙述が続くが、その中にも人間への信頼が垣間見える。その代表がラストの「エチオピアの男」でしょう。著者の深い洞察と優しい眼差しが読了後に深い余韻を残してくれる。訳によるところもあるのかもしれないけど、本作が処女作なのだから恐れ入るばかりだ。
翻訳モノでこれほど興奮したのは久しぶり。次作も読みたいと思える作家に出会えてとても嬉しい。
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ドイツ文学だから読みづらいかなと思って読み始めたら、なんのことはない、すぐに引き込まれた。1話づつ全部犯罪者の話だけど全部違うから面白い。根っからの悪人じゃなくても、いつ自分が犯罪者と呼ばれるようになるかは判らないだなって思った。私だってそう。善良な市民のつもりだけどな。淡々とした文章だけどその中に著者である弁護士さんの暖かな人間性とか垣間見れた。いや〜面白かった