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大学の卒業式からの帰り道、着慣れない袴でもうへとへとだったけど、どうしてもこの日読みたかったから本屋で購入。気合を入れて、帰りの電車でつり革に捕まりながら読んだ。教養が足りなくて、せっかくのユーモア表現はほとんど理解できない。それでも、誰かの役に立ちたいし、じぶんの幸せにはちゃんと気づきたいなって思った。わたしの心からすきなひとたちが、すきな作家だから、信頼してます。
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面白かった! カート・ヴォネガットの大学での講演集。
最初はちょっとわかりづらいな…と感じたのだけど、だんだん何を言わんとしているかがわかってきて、そうするとものすごく面白くてのめり込んでしまい、電車にカバンを忘れて下車……
という悲しい事件まで発生したいわくつきの本。
いろいろなことが語られているけど(別の大学で同じことが語られる)、日常のささやかなことを愛して生きるということに尽きるのかなと思った。
カートのある叔父は、男は戦争に行ってこそ一人前という考えだったが、ある叔父は人生がうまくいっているとき――木陰でレモネードを飲んでいるようなとき――、「これで駄目ならどうしろって?」と言うような人だった。
カートは、卒業生たちにもそう口に出して思い出すようにしよう、と語りかける。
これ以上幸せなことってある?(ないよね?)ってことだよねきっと。
音楽についてのくだりも面白かったな。これ(↓)。
わたしはシュトラウスとモーツァルトや何やかやが好きだ。だが、素晴らしく貴重な賜物について語るのを忘れるわけにはいかない。アフリカ系アメリカ人は奴隷の境遇に置かれていた頃から全世界にそれをもたらしてくれていた。ブルースのことだ。現在の全てのポップミュージック、ジャズ、スウィング、ビバップ、エルビス・プレスリー、ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、ロックンロール、ヒップホップなどなどがブルースに由来するのだ。
わたしがいつどこで、ブルースが世界への贈り物だと気づいたと思う? わたしがこれまで聞いた中で最良のリズムアンドブルース・バンドは、フィンランドからの男三人、女の子一人のバンドで、ポーランドのクラクフで演奏していた。
素晴らしい書き手の一人、アルバート・マレーは、色んなものと同様にジャズの歴史の専門家でもあって、この国に奴隷制があった頃――わたしたちが決して償いきれない暴虐だが――奴隷の持ち主の自殺率は、奴隷たち自身の自殺率よりも高かったと教えてくれた。アル・マレーはこれを、奴隷たちは、白人の主人たちは知らない、抑鬱とつきあう方法を持っていたからだと考えていると教えてくれた。ブルースがあったんだ。
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カート・ヴォネガットの講演を収録した本。
人生に悩める読み手が今必要としている言葉を見事に発することのできる歌声の持ち主だった。
だからこそスローターハウスは、いや全著作はアメリカの若者のバイブルとなった。
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彼は「芸術家の社会的機能は、人々が以前にも増して人生を好きになるようにすることだ」と書いている。たとえばと訊かれて、「ビートルズがやったことだね」と答えた。
ミルクよりクリームが高価なわけを知っているかね? 聴衆:いいえ。 牛はちっちゃいボトルにまたがるのが嫌だからさ。
本を読むことをやめてはいけない。本はいいものだ──ちょうどいい感じの重さがある。指先でやさしくページをめくるときのためらい。わたしたちの脳の大部分は手が触れているものが自分にとっていいものなのか悪いものなのかを見定めるのに使われている。どんなちっちゃな脳でも、本はいいものだとわかるんだ。
彼は他にもおそらく正しいことを語った。ブルースは抑鬱を家から掃き出してくれるんじゃなく、部屋の隅に追いやってくれる。
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綺麗事でもなく、卑下するでもなくまともな先人の声という感じだろうか、適度な期待を含む激励のようなもの。卒業式に行われた講演らしい内容といえる。これからの人にも、なにか区切りを向かえる人にも響く内容だと思う。
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副題どおりカート・ヴォネガットの卒業式講演集。ユーモアがあったり優しさにあふれていたりで、読んでいて優しい気持ちになる。コミュニティの大切さと日常への感謝をよく説いていたのは、はじめて知った。また読み返す。
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アメリカの文化なりキリスト教についての知識なりがないため、ニュアンスがわからないところもありつつ、糸井重里氏の「目と心にしみる」と解説の円城塔氏の「声」の概念は読んで腑に落ちる感じがした。
読む人によって心に残るところは違うだろうが、自分は「私も生まれたばかりだ」という考え方、「これで駄目なら、どうしろって」と物事がうまくいっている時に声に出してみること、の2つ。
後者は英語のニュアンスを完全には理解できてないが、日本語でこれはこういうことだと書くのも違う気がする。
ヴォネガットの「声」によってなんとなくわかる気がしていればいいのだと思う。
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ヴォネガットの大学卒業生にむけた講演集。
そこまで面白い内容ではありませんが、有名作家が卒業式に来て、これからの人生への励ましの言葉を述べてくれたら、やっぱり印象深いでしょうね。そんな場面でシニカルなことばかり言っておられないので、ヴォネガットの言葉も、基本、前向きで暖かいです。
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#英語 タイトルは If This Isn't Nice, What Is?: Advice to the Young, The graduation speeches 日本語訳者は円城塔。
「これで駄目なら、どうしろって?」はヴォネガットの叔父のエピソードから。 なんでもない一日の愛おしさを知るものこそ、豊かな人なのだと思った。
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カートヴォネガットのタイタンの妖女が好きで、彼が学生にどんな言葉を語ったのか知りたくて読みました。彼らしい、皮肉のこもった例えやジョーク。でも、愛と親しみと知性が彼にはある。
いくつかの演説で繰り返し投げかけるのは、自分の世界を広げて、未来の可能性を感じ、生きる指針を与えてくれた先生はいるか(個人的意訳です)?ということ。手を上げさせて、その先生の名前と、何を教わったかを伝えるように話す。それがいかに貴重な体験なのかを教えてくれる。
それから叔父さんの話で、何でもない日に木陰でレモネードを飲みながら、これでダメならどうしろと?と言う。それは、何気ない幸せを感じ取ることの大切さを表している。普通の日々に感謝する。ガンジーの映画を見た後だから、余計にこの言葉が刺さる。そう、特別なことがなくたって、普通の毎日があることが幸せなんだ。