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刑事裁判の補充裁判員に選ばれた主人公が、幼い娘を殺害した被告の裁判に参加することで、自分と被告人を重ね合わせていく物語です。幼い子を持つ女性にとってどのような発言が暴力的に聞こえたり、また蔑みの言葉として捉えてしまうものなのかが印象に残りました。自己を他人または家族に否定されるような発言は、普通の精神状態であっても気になることですが、育児で疲れ切った状態で聞かされるとどうか。深く考えるきっかけになりそうな一冊でした。
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中盤くらいまでは読んでも読んでも進まない感じがしていたのに、後半から頁をめくる手が止まらなかった。
じわじわと真綿で首を絞められるような息苦しさ。
これはホラー小説なのか…と思うほどの心理的恐怖。
裁判員になった里沙子が精神的に追い詰められてわが子を浴槽で手を放し死亡させてしまった被告、水穂に自分を投影させてしまったように、私も小説の中の里沙子になって、あーちゃんに苛立ったり、旦那の言葉に傷ついたり恐怖を覚えたり、追体験したかのようだった。
読み終えた時はぐったり疲れたよ。
でも、すごくよくわかる。
里沙子は裁判員を経験したことによって、今まで気づかなかったことに気づいてしまった。
だんなと義母の関係、悪気なないひと言に潜む刃、いやほんとはうすうす感じていたはず。
旦那は無自覚なだけに、多分一生そうであろうと予想はつく。
あんな曇りのない太陽みたいな男性とおもって結婚したのに。
あー、里沙子は離婚するのだろうか。
そこには言及しないで終わっているけど、でも里沙子の性格からいって、気づいてしまったことを気づかない振りをして生活できないんじゃないだろうか。
それとも、ラスト近く”あーちゃんが手が離れたら再就職したい”といったことに反対せず、”いいんじゃない”と答えてくれたことを明るい兆しとみるべきか…。
いやー、でも著者はたしか子どもはいないはず。なのに
こんなにもリアルにまるで経験したかのように(だだをこねる様子とか、ママ友と交わされる会話等)描ける筆力はさすがである。
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生後八ヶ月の赤ちゃんをお風呂におとして殺害した母親、水穂の裁判に裁判員として関わることになった里沙子。
裁判が進むにつれ、水穂と自分を重ね合わせ、自分の子供の文香が同じ頃どうだったか、そして裁判が始まってからの夫の態度に疑念を抱くようになる。
里沙子は妊娠とともに会社を辞めて専業主婦でほぼ家にいるか児童館へ子供をつれていくかという生活をしている。
本人いわくしばらくは考えることを放棄していた。
裁判に関わるようになって、里沙子は水穂のこともふくめて自分自身についても考えるようになる。
自分が母親として正しい振る舞いをしているか
妻として嫁として娘として…。
疑心暗鬼になってしまう里沙子だけど、裁判員裁判が始まったものの、やっぱり裁判は身近なものではないし、突然そんな中に巻き込まれたら混乱するのも仕方ないのかなと思う。
水穂が本当はどんな人物か結局わからずじまいだったけど、そんなものかもしれない。
最後、里沙子はいろんなものを吹っ切れたような気がしてよかったなと思う。
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久々の徹夜本でした。
もうここまでにしよう、と思っても手が止まりませんでした。
3歳になる子供を預け、子供を虐待死させてしまった母親の裁判員に選ばれ裁判へと行く女性。
駄々を捏ねる子供の書き方が物凄くリアルで、
自分の娘と私自身の事を思い出しイライラとした気持ちになりました。
子供って基本イライラするんです。
やって欲しくない事いっぱいするし、小さな体のどこから出すんだってくらい大きな声出すし
言い出したらキリがないくらい。
引っ叩いてやりたい事なんて毎日です。
実際に手を上げてしまった事もあります。
きっと誰もが紙一重なのだと思う。
1日の終わりにリセット出来なかった感情が
次の日に繰り越されて、
その気持ちが溢れた時に何か重大なことを起こしてしまう。
始終胸が詰まる思いで読んでいました。
夫婦間での微妙なズレや子育中の周りからのちょっとしたカチンとくる言葉、
良くここまでうまく書けたなと敬服しました。
【追記】
日々イライラし葛藤しながらも、きっとどうにか子供と笑える道を私は見つけていくと思います。
毎日の疲れが吹っ飛んでしまう様な、嬉しい気持ちになれる事も知っているから。
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刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、彼女の境遇にみずからを重ねていく。
裁判員裁判の傍聴を10数回していますが、傍聴席で聞いているだけでも、辛い裁判があります。
特にこの話のように、誰にでも起こるかもしれないと状況が想像しやすいケースです。
主人公の気持ちが、どんどん辛くなっていく様が、緻密に描き出されていて、傍聴席にいる様な気持ちになりました。
人は、他の人からその存在を認められ、理解され、同意や共感をされながら生きていることを、改めて認識しました。
これが身近な人へ対する思いやりかなぁ。
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裁判員制度で補充に選ばれた里沙子。
事件を通して自分自身をも見つめなおすことに。
小さい子供がいる女性という共通項があれば相当な影響を受けてしまうだろう。裁判で話題になっている人の話なのか自分のことだったのか混乱するのもうなずける。
自分が希望するでもないのに、心がざわつくような事件とかかわらなくてはいけなくなったら、それは心おだやかでいられるわけはないわな。
他人とのかかわり合いは、自分の心の持ちようで随分と受け止め方が変わってしまうのね。
ということは、普段から、心おだやかに過ごすに限るということ!?
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読めば読むほど人間不信になっていって、自分は別に裁判で裁かれてもいないし、主人公も別にただの裁判員制度の補助なのにまるで自分がさも裁かれているような焦りと不安がどんどん大きくなっていって非常に心理的にしんどかった。
誰が本当のことをいっているかも分からないし、
あまりに一日一日の描写がリアルで、イヤイヤ期の子供を自分が今育てているかのような大変さが身に染みて迫ってくる。
そこに裁判での焦りと不安が重なって読んでいてもーーしんどい。こりゃこりゃーしんどい参りますわ~となった。
文章だけでここまで心理的に追い込むことが出来る表現力は本当に凄いとしか言いようがないと思う。
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こっ・・・わ~~!!!
ま、心の内へ内へと、ずんずん引き込まれていく感じが角田さんらしいけど。
子供もいないのに、こんな小説をかけてしまう角田さんが一番コワいかも・・・w
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とてもクドイ感じがした
角田さんの作品は独特な「淡々とした」感がつまらなさを出してしまう気がする。
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角田作品で一番感情移入した。
読み進めるのがしんどかった。
してはいけないとわかっていても追いつめられてしまっているとしてしまう弱さは誰でもあるし、
感情移入したことで水穂、主人公だけでなく自分がそうしているところが容易に想像できて本当に怖かった。
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子供を虐待死させた事件の裁判員に選ばれた里沙子は、犯行に至った経緯を考えていく中、自分自身の状況を重ねてどんどん深みにはまっていく。
被告人の心情を考えるあまり主人公の感情も揺れ動く。そしてそれを読んでいる私自身の感情も。さすがの表現力だと思った。
子育て経験のある人なら、だれもが共感する部分があったとは思う。しかし、実際には、この主人公ほど負の感情へ入り込んでしまうこともないと思う。
この本を、多くの人に読んでほしいと思う。
赤ちゃんを持つ若い母親には、私はこの被告ともこの主人公とは違う。こんな風に周りの人たちは、悪意ばかりを持っていない。と、思ってほしい。そして、子育ては大変なことより楽しい幸せなことのほうがずっと多いことをわかって欲しい。
若い父親には、子育てで大変な思いをしている自分の妻に、不用意な言葉をかけないようにしなくてはと感じてほしい。
私は適齢期の二人の息子を持つ母だ。息子たちが結婚したら、まさに、主人公から見れば夫の母の立場となるわけだが、お嫁さんにどう接したらいいのか、よく考えないといけないと思った。
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幼児虐待のニュースが頻繁に新聞をにぎわす現代に、タイムリーな題材で、作家角田光代の凄さを如何なく発揮した傑作。
裁判員になった主人公が、被告人とシンクロしてしまう裁判員裁判が舞台。
ある書評に、「読むのがつらい小説である。つまらないからではない。むしろ面白い。しばしば逃れたいと思うものの結末が気になる。」と、記されているように、読み手を捉えて離さない、凄まじいまでの磁力がある。
それは、主人公と同じような立場の女性ばかりでなく、立場を異にする男性にとっても・・・
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2015/2/8
乳児虐待死事件の裁判員になってしまった専業主婦。
被告人も主人公も、あまりにも身近で恐ろしくて叫びそうになった。
専業主婦の社会との断絶で恐ろしいのは、思考が狭まってしまうところにある。
身内に貶められ、たまたま外で出会った人に軽んじられたら、自分はダメだと思い込んでしまう。誰も正してくれる人なんていないもの。
「きみ、おかしいんじゃないの?」「ふつうのひとはできるのに」
わたしは、ふつうのお母さん出来てる?
立場の違う人からみたらどう見えるのかすごく気になる。瑞穂はどう見える?
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裁判員裁判の補充裁判員になった主人公が、8ヶ月の乳児を虐待死させた母親に自分をリンクさせていく。
リアルすぎて、私も、被告人にも主人公にもリンクしちゃって、重くて重くて、毎日少しずつしかページが進まなかった…
忘れてたけど、私にもあった日々…
どうして泣いているのか、どうしていつまでも泣き止まないのかと子供と2人きりで途方に暮れた真夜中の私。もう忘れてた。でも確かにあった。
協力的な言葉に見せかけて、本当は何が言いたいのか、と勘ぐる旦那や姑との関係。
多分最初の子育てには誰にでもあった、そして子供の成長と共に、辛かった部分だけ忘れていった、そんな感情をありありと思い出させた角田さん、凄すぎる。
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子供を虐待死させた女性の裁判員裁判の
補欠裁判員となった主人公・里沙子。
自分も2歳の娘を抱える里沙子は
裁判で明かされる女性の姿を自分と重ねてしまう。
…というような話なのですが
読んでて息苦しさを感じてしまったのは
まさに自分もその気持ちがわかると
主人公に重ねてしまったからで。
子育ての話しかり、夫との会話しかり。
あるあるすぎて泣けてきそうになったくらいです。
特に夫とのすれ違い部分が
どういう意味で言ったんだろうと考えてしまうというのが
リアルすぎて、怖かった。
いろんな意味で、
これ読んで、どう思う?と周りに聞いてみたい気分になる。
それくらい、私は気持ちが揺さぶられた。