紙の本
若さゆえ
2012/09/27 18:20
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投稿者:yukiti - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者自身が書いているように、若さゆえのよく言えば勢い、悪く言えば粗さが見える作品。
年を経て今の著者ならどう書くのか読んでみたい。
この著者の本を読むとイタリアに行きたくなる。
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『ローマ人の物語』で古代ローマを描き切った塩野七生さんのデビュー作、
後書に1969年とありますからもう40年以上も昔の一冊ですが、決して古臭さはありません。
"デビュー作にはすべてがつまっている"とはよく言ったもので、
史料に溺れることなく、人の営みとそこから出てくる"歴史"を魅力的に描き出しています。
- 女を書くことは、結果として歴史の真実に迫ることになる。
イザベッラ・デステ:夢もなく、怖れもなく
ルクレツィア・ボルジア:皇帝か、無か
カテリーナ・スフォルツァ:イタリアの女傑
カテリーナ・コルネール:まずはヴェネツィア人、その次にキリスト信者
本作は15世紀から16世紀にかけてのルネサンスを生きた、4人の女性を題材としています。
彼女たちを描くことで、周辺で歴史の"主役"となった男たちも、自然と描き出されています。
面白いのは、垣間見える性格も成したことも全く違うにも関わらず、どこか共通点を感じる点でしょうか。
この辺りは『ハーバード白熱日本史教室』でも見出せて、非常に興味深い視点です。
- 女は男の被害者とはかぎっていない、と思っている
男性だから、女性だから、との区別(言い訳)に依存することなく、
あくまで一個の人としての在り様をみつめている、そこは塩野さんらしいといえばらしい。
人は愚かでもあり強かでもあり、そして運命の前には無力でもある。
それでも営みは続いていて、それがまた愛おしくてしょうがない、なんて。
ご本人は冒頭で「若書き」なんて諧謔を込めていますが、
こうも仰っています、"若さゆえの未熟にも、良いところはある"と。
ん、ローマ人を再読したくなりました、特に10巻を。
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空港で買ったけど、飛行機乗ってるときに小説を読んでると、搭乗券やらもろもろの紙をなくさないことを知った。
4人の女性―マントヴァ侯爵夫人イザベッラ・デステ、教皇アレクサンデル6世の娘ルクレツィア・ボルジア、イーモラ及びフォルリの女領主カテリーナ・スフォルツァ、キプロス女王カテリーナ・コルネール―を通してイタリア・ルネサンスの政治の芸術(アルテ)を描く。
その中で抗った女・流された女・戦った女・利用された女。
塩野七生の書き方は、歴史書とも小説ともエッセイともつかないものだけれど、今回読んでみて思ったのは、研究者が自分のおもしろいと思ってることを親しい人に楽しさのあまりしゃべってるのに近いかもしれない、ということ。
だから、本人が一番おもしろいネタだと思ってることに関して書かれていることが一番おもしろい。
こういう書き方って、『空海の風景』とか「余談だが…」とかいうときの司馬遼太郎に似ている。
正直、ルクレツィア・ボルジアとカテリーナ・コルネールについては、その周り(ボルジア家/ヴェネッツィア共和国)のほうが氏が好きなので、彼女らについてはほとんど蔑ろといっていいくらいな書き方だった。
やっぱり圧巻はカテリーナ・スフォルツァで、美しく残忍、そして賢く大胆、という彼女を余すところなく読まされ、そこだけはページを繰る手が止まらなかった。
最初に出版されたのが1969年というなんとも近現代の画期の中であって、学習院大を出た後イタリアで遊学(!)していた29歳の彼女にとって、女は小さくおろかな存在らしい。ルネサンスという男の政治が芸術的に花開いていた時期の女たち、というのは基本的に賞賛したり自分を重ね合わせたり肩入れするようなものではないらしく、ここまで詳細に書く割に案外冷めた目で見ているのがうかがえるのがなんともまた塩野流で、肩透かしをくらいながらも、やっぱりおもしろいのです。
地図や系図が豊富なのも、非常にうれしい。
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ルネサンス期の女性4人の人生が描かれている。イタリアの中世、小国公国が群雄割拠する中、政略結婚のコマとして使われながらも、一国の当主や女王となり、男性相手に渡り合ってきた女性の話。ある意味、女は強いなぁと思ったり。男はズルイなぁと思ったり。
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塩野七生さんの本はよく読むが、原点とも言える作品だ。前書で、若書きと自らの作品を揶揄されているが、なかなか素晴らしい作品だ。四人の女性を通じてルネサンス期のイタリアを描く。それぞれの人物がよく描かれており、歴史に翻弄される哀しい運命が切々と書かれている。これらの物語は、さらに進化して、後の作品に結実すると考えると感慨深い。
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塩野七生の処女作。
今の彼女のスタイルである、"説明をしつくしながらもくどくない"ところはなく、先へ先へと走っていくような作風が駆け出しの頃の彼女の情熱を感じて楽しい。
ルネサンスを生きた四人の女性にスポットを当て、ルネサンスとは何か考えさせてくれた。
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塩野七生さんの処女作。
イタリアの女性は強い。政治力と云うものがどういうものなのか、また、イタリアのルネサンス期の情勢とはいかなるものか、分かりやすく展開されていく。歴史上の出来事を、まるで物語のように書き上げているので読みやすい。
彼方からも此方からも、はたまた身内からも攻められ、その立ち回り方は「女性だからなし得た」ことのように思われた。政略結婚が横行する中で、彼女らはそれを逆手に、強かに且つ、美しく生きていく。
「家を守る」と言うことの、本当の意味を教えられた気がした。
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今まで文庫で出た中で唯一読んでいない塩野さんの作品。
確かに文章は若い。けれども、その後に海の都の物語とかマキャベリとかを書くことになるのがよくわかる。
女性を描けば必然的にその時代に生きた男性を描くことになるというのが印象に残った。
ただ、カテリーナ・コルネールの話は、もはや女性の話というよりヴェネツィアの話という印象(この時からすでに海の都の構想はできつつあったのでは、と思わせる)。
女性の話として読むよりも、本当にその女性の周りの時代の話というところかな。彼女らしい作品だと思いました。
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ローマ人の物語で有名な塩野七生先生の処女作。
ルネッサンスに生きた四人の女性の物語です。
単純な歴史本ではなく、一つの小説としても読める作品となっています。
特に面白いのがカテリーナの物語。
歴史的な真贋はともかく、強烈な個性を持つ人物の物語は惹かれるものがあります。
反対にカテリーナ以外の物語は少々地味に見えてしまいますが。
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三人の女性のうち、自分は誰に近いか、などということを考えながら読むのも楽しい。私は誰のタイプか?それは内緒^^;
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マントヴァ公爵夫人イザベッラ・デステ、チェーザレ・ボルジアの妹ルクレツィア、フォルリの女傑カテリーナ・スフォルツァ、キプロス女王カテリーナ・コルネールの4人を題材にルネサンス期のイタリアを描き出す。また関連作が読みたくなってきました。
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群雄割拠のルネサンス時代を生きた女たちについての物語です。一般的な歴史書には出てこない女性達の生き様を生き生きと表現しています。強い女性が好きな人にはおすすめの一冊です。
九州大学
ニックネーム:稲生平八郎
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七生ちゃんによるルネサンス時代の歴史的女性のナイスチョイス。政治力の高い人とか、女傑とかが出てくるんだろうなーと思ったら、「なんでこんな役立たずを?」という女性も。男の時代でも、女ってただの被害者じゃないよねー。
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ルネサンス期のイタリアに生きた4人の貴婦人を描く。
小説といえば小説なんだろうけど、史実をなぞり塩野解釈でそれぞれの女性を魅力的に、そして現代人にも身近に理解できるよう描いた解説書とも言える。
そう、よくも悪くも解説書に読めてしまうんだよなぁ。
ローマ人の物語が「やっぱり史実って小説よりも奥深くて面白くて勉強になる」と思えたのに比べて、本書は小説的な面白みに欠けるように思った。俺自身の基礎素養の貧弱さと「ローマ人の物語」に比べて圧倒的にボリュームが足りないのが原因だとは思うが、初期作品でもあるし、筆がこなれていないこともあるのかも知れない。これから塩野作品を読み勧めていくことで、俺の基礎素養は多分あがるだろうし、塩野さんの筆もこっちは間違いなくこなれていくのだから、これからが楽しみだということ。
最後に登場するカテリーナ・コルネールが印象に残った。ただ情勢に流されていくだけの言ってしまえば毒にも薬にもならない女王が。気がつけばキプロスという国を滅ぼしているのだから・・・。楊貴妃を傾国の美女と言うがカテリーナは贅沢もなければ男をもアド和すこともないのに、ヴェネチアという国が黒幕であったとしても、ある意味すげえ女性である。
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男にも種類があるように、女にも種類があるのだなと思う。
権力を持たせると強さを発揮したり、そうでなかったり。
いつの時代も女には種類があるのだな。
今の世の中に照らし合わせると面白いかも。
塩野七生さんの小説はまさに歴史をどう今に反映させるかを考えさせられる。