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善悪の問題において極限的な状況下であって、最も道徳的な態度を求められる医師が自分の中の善悪に曖昧な態度を取り続ける姿を描いた作品。神のいない日本人の恐ろしさが書かれている。一読してそのメッセージを明確に受け取れていない自分もまた日本人なんだと気づかされて言いようのない嫌悪感に包まれた。
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太平洋戦争末期、九州帝大医学部で起きた実話
を元にしたあまりにも有名な作品なのですが、
この機会に、今読んで良かったと思いました。
医学的な実験というお題目の元に、軍人でなく、
医者が捕虜を殺す、生体解剖と呼ばれる行為。
解説によれば、時代を経ることで、この行為を
絶対悪とする意識が薄れてきているといいます。
これまで幾度も頭に浮かんではうやむやのまま
消えていくということを繰り返していた疑念を
はっきりと突きつけられたように感じました。
今、どうしようもなく、気分が悪くなるわけを。
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自分的夏の課題図書2011二冊目。
ちょっと、重すぎて気分悪い。
解説読んでやっと、あーなるほどな、と納得。
ただし今もなお、廃れずに読み続けられている理由はとてもよくわかるような気がします。
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生きたままの人間を解剖する、しかも実際にあった話ということで、映画SAWのようなグロテスクなものをイメージして読みはじめた。しかし、実際は物語は眈々と進み、それが逆に作りものではないリアルな死を感じさせた。また、夏川草介さんの解説が実に秀逸。『キリスト教のような絶対的神を持たない日本人は、良心の価値基準が曖昧』という内容で、大いに納得すると共に衝撃だった。
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心をえぐられたような読後感。日本人の良心は何に基づくのか、社会や他人からの非難が無ければ罪悪感は無くなってしまうのか、、、
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思っていたよりも読みやすい文体、重い内容。
名作と言われる所以がある。医療的な表現は素人にはわからないけれども書き込まれていると思う。
気づきたくなかった自分のエゴイズムをつきつけられた。戸田の「だが醜悪だと思うことと苦しむこととは別の問題だ。」など。
普段、蛇足と思っている解説だが本作の夏川草介さんの良心の喪失についての解説は考えらされた。図星だったからだ。
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良心ってなんなのさ、というテーマで手にとった1冊
学生時代に授業で映画を見た記憶があって、あらすじは覚えていたんだけど、
映画のほうがもっと衝撃的だった気が。
こちらは淡々と進みます。
個人的には戸田の自問自戒にとても共感。
結論には同意できませんが。
問うことを忘れないようにしたい。
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史実をもとにしているし内容は重かったが、問いかけは心にぐさりとくるものがある。我々日本人は時として周囲に流されがちだがそれは明確な善悪の区順がないからだと思った。そのことをわかりやすく「神を持つ外国人」と「神を持たない日本人」の対比によってあらわしているあたりはさすがだと思う。夏草草介の解説もよかった。
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「神を持たない日本人の良心」
これがこの本の一つのテーマにあることは間違いない。
神を持つ外国人とは違い、神を持たない日本人は「自分の内なる良心」の下で行動する。
それゆえ、自己の内面において良心との葛藤が繰り広げられる。
醜悪だと思うことしても、それに苦しまない自分には良心がないと自分を攻める人間は果たして良心が無いといえるのか。
神を持たない日本人、いわば、善悪の判断基準を個々の内部に抱える日本人の心模様が見事に描かれている作品だと思う。
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気持ちよく読める作品ではないかもしれないけど
人間臭い汚い部分にも共感しながら読める作品。
文学的に掘り下げて考察するのも面白そう。
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太平洋戦争末期、九州の病院で米軍捕虜に対し行われた生体実験。
後に関わった人物が裁かれるが、当時・過去を振り返ることで「罪の受け止め方」を問う。
人間としての良心の呵責、社会的な罰への嫌悪、私はどちらが強いだろうかと考えさせられた。
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主人公である医者の勝呂はある生体実験に誘われた。その実験は人間の解剖実験だった。勝呂はその誘いを断れずとうとうその実験に参加してしまった。真面目で親切な勝呂に良心 はなかったのだろうか…
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戦時中、九州帝国大学医学部にて実際に行われた米兵への生体解剖実験を題材にした本書。しかし、内容としてはそこは重要でなく、描かれているのは「良心」についての物語(なので、事件についてはかなりの部分でフィクションとのこと)。
戦争で死ぬもの、病気で死ぬものを絶えず目にする生活のなかで、勝呂はそれでも自分の患者をなんとか死なせまいとしていた。世の中をうまく嘘と誇張で渡ってきた同期生の戸田には、みんな死んでいく時代、なにをしたって無駄だと笑われてもそれは変わらなかった。
ある日勝呂と戸田は呼び出しを受け、米兵捕虜の生体解剖に参加するよう申し入れられる。どうせ殺される捕虜なのだから、医学の発展のために生体解剖をされるのはむしろ生かすことだと考える戸田とは違い、勝呂はそんなことをして良いものなのか最後まで思い悩む。
絶対的な善悪を司る"神"がいない日本人にとって、良心とはなにかを問うていると解説には書かれていたが、私は日本人は八百万の神によって、常に自分以外の神の眼がある状態で良心を保っているのではないかと思う。
しかし、"神の不在"の描かれ方という意味で、本作はとても理解しやすく描かれている。
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聞いたことはあったが読んだことはなかった作品。
生体解剖を通じ,解説にあるように,基準としての神をもたない日本人の,良心とはなにか,考えさせられる作品。
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戦時中の病院での人々の精神が様々視点から書かれていた。
人の心の暗い部分が、その時代の影の中で更に増幅されていたのでは。
その深く重く暗い心の描き方に感服です。。。