投稿元:
レビューを見る
97年に刊行された単行本の文庫化……と考えると、やっぱり『ペガサスの挽歌』や『皆川博子コレクション』のお陰だろうか。いずれにしても、古い作品の入手が容易になるのは有り難い限り。
内容は時代物の幻想短編で、『心中薄雪桜』『十六夜鏡』が良かった。特に『心中薄雪桜』のラストシーンは圧巻。
投稿元:
レビューを見る
江戸時代を舞台にした幻想的な短編集。恋に縛られ身を滅ぼす男女の心の機微が、幽玄かつ繊細な筆致で描かれる。読んでいるうちに、夢と幻の境目が曖昧になっていくような不思議な感覚が味わえる。特に前半収録の何篇かは、語り口調が泉鏡花っぽいなと思った。
投稿元:
レビューを見る
人間の醜く生臭くも狂気的な恋情が、残り香のするほど雅やかな幻想小説にばけてしまう皆川さんの筆致。タイトルといい挿絵といい更に雰囲気を盛り上げて、お見事です。今まで読んだ皆川さんの作品では、西洋を舞台にしたものや近代物が多かったので、短編ながらもこのように研ぎ澄まされ完成された時代物の引き出しを見て、その多才さに脱帽であります。
投稿元:
レビューを見る
タイトルからして美しい言葉が並ぶ。合わせて挿絵の妖しい美しさ。
本篇を彩る言葉がまた贅を尽くした絢爛さだ・・・人物や風景、行事、召し物などの江戸模様がまた良い。
今宵はどの篇で甘美な絶望の夢をみようか・・・蛍舞い飛ぶ沢か、菊の香漂う薄もやの早朝か・・・
投稿元:
レビューを見る
タイトル通り、妖しくも切ない、江戸時代だからこそのどうにもならない諦めにも似た絶望、闇のある様々な男女の恋の話。心中薄雪桜、螢沢、十六夜鏡、春禽譜、妖恋、夕紅葉、濡れ千鳥。幻想的な雰囲気。
投稿元:
レビューを見る
文章が丁寧なので、こちらも丁寧に(いい意味で)読まされ読了まで意外と時間がかかった。
あとがきの解説近藤史恵さんの文章がしっくりくる、短編集。
投稿元:
レビューを見る
ファンタジーだなぁと思ったら、解説で幻想小説とあって納得。
1話1話の重みが軽いんだけれど、よくよく読むと、がっつりと重い。そして酷い。
それなのにきれいなのか文体のせいなのか、書き手の心根ゆえなのか。
投稿元:
レビューを見る
江戸を舞台にした妖しく切ない短編集。
現実と幻の境界が曖昧な感じで幻想的。
時代背景故にすれ違ったり成就しなかったり…物悲しい空気が漂う。
投稿元:
レビューを見る
1作約30頁という短篇でありながら、読者を世界観に浸らせさらに主人公の狂気的な恋情を恐怖や絶望だけでなく切なさと幸福に変える文章に感服。
江戸なのに江戸ではない、江戸でないようで江戸の出来事。曖昧さ加減が絶妙で、そのなかで揺れ動く恋もまた絶妙で、この人にしか書けない文章だなと思った。
挿絵がまたきれいで、作品の雰囲気にとてもあっている。
濡れ千鳥が一番好き。
投稿元:
レビューを見る
江戸時代を背景とした短編集。
どのお話も、タイトルが艶めかしくも美しい。
この時代だからこその切なさが胸に迫る。
これを今の時代の言葉で言うならば、
大人のファンタジーか。
投稿元:
レビューを見る
美・情・狂
文章や人物の表に現れる美しさ
その底や背後にある情念
そして怪談的幻想的ともいえるが
一線を踏み越えてしまった狂気の世界
それに甘く妖しく浸る。
現代から描くお江戸を舞台に大人の怪談とも。
投稿元:
レビューを見る
再読でも、ここに描かれる甘やかで残酷な世界にうっとりします。
どこから狂っていたのだろう、でもきっと最初から狂っていたのだと思います。
「心中薄雪桜」と「夕紅葉」が好きですが、「妖恋」の一文「おまえ、どうして、そう、化け物と人をわけるのだろう。どっちもたいして変わりはありゃあしないのだよ」にははっとします。
「夕紅葉」の、紅葉ケ原はどこ、に、ここじゃないか、とこころの中から声がするのもぞっとしました。そうか、あの時囚われたのだ、と。
絶望的な世界なら、彼方側に行ってしまった方が楽なのか…狂気を抱えて生きるのか。。
カバーの折り返しにも載っている、近藤史恵さんの解説もとても好きです。