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二階堂奥歯の推薦図書と思えば容易に想像はつくのだけれど、エッチなシーンも全然感じない、何とも気持ち悪く後味の悪いハードな作品だった。ワニ可愛いのに可哀想。ユミちゃんも可哀想。後味は悪いんだけど、嫌いじゃない。でも、もう一度読むことはないかもな…。
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岡崎京子にはまるきっかけになった一冊。これが描かれた時代が80年代だなんて。バブルな時代にワニを飼いながら、自分の欲望に素直に生きる快楽主義者のユミちゃん。いつの時代に読み返してもユミちゃんが嫌いになれない
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今まで読んだ岡崎京子作品では一番読みやすかった。
ユミちゃんもその周りの人たちも、関わりたくないけどどうしようもなく魅力的。
正に愛と資本主義の物語。
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岡崎京子さん好きー。
「幸せなんて、当然じゃない」
そういってのける主人公が格好いい。
「女の子ってどーしてこーゆーフリルのついたぼーりょくを振るうんだろう」
激しく同感。
結構前のお話なのに、身につまされるようで。
愛と資本主義のお話らしい。
彼女の見た資本主義と、今の資本主義は一緒かな?
かわいーもののために、オンナノコは働く?
今は、生きるために働くオンナノコが結構多い気がするな。
かわいーもの、キレーなもので自分を固めたってさ、
ほしーもんは、もっと強欲に、執着して、ブン取らなきゃ、手に入んない。
そのウラまでもう明るみにされて、
それでもキレーに着飾んなきゃ、話になんない。
生きづらいのって。
キレーごとじゃ、生きらんないくらい、窒息しそうな今に、もがきながら生きてる。
消費されながら、私たちは生きてる。
年齢を、労働力を、小さなゴシップを。
そこに「愛」なんてもの、いるんだろうか、なんて嘯きながら。
愛なんて、いらない。
欲しいのは、ともに前を見て生きてくれるパートナーだ。
そう思う私は、どうやら、愛というものは「依存」ありきだと、考えてるんだろうね。
もっと力強く、たくましく、私は生きるわ。
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はじめて岡崎さんの漫画を読んだ。主人公は風俗嬢だし、家でワニ買ってるしってゆうしっちゃかめっちゃかな話なんだけど、使ってる言葉たちすべてが深くて、うーんと唸ってしまった。
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長年愛読してきたオリジナル版
http://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4838701071
のページが経年劣化で剥落したので
https://twitter.com/fukagawanatsumi/status/785903790700367873
新装版を購入(2015年第3刷)。
旧版のカバーイラストは口絵に採用されていた。
あとがきは旧版のままで追加・変更なし。
個人的にずっと気になっていた「セリフが絵と逆」と思われる
フキダシの中身(p.98「めざましかけてぇ」←→「お洋服選んでぇー」)
も修正されていなかったけど、まあいいか(笑)。
今の若者の感覚からは結構ズレていると思うけど、
稼ぎまくって使いまくれ、みたいな時代があったわけで、
当時の東京の若いOLの欲望と消費の物語。
しかし、ヒロインは、ある出来事がきっかけで
お金で買える幸福に飽きてしまうのだけど、
その暮らしから脱却するにも取りあえず先立つものが必要だ、
って話になってくるところがシビア。
ともかくも、あれこれいろいろ欲しかったら
それらが充分買えるだけバキバキ働かねばならず、
バキバキ働くのが嫌だったら
少ししかお金がなくても成り立つ生活を模索しなければならないのです。
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そんなにお金が欲しければ カラダ売ればいいのに
みんな ワガママなくせにガマン強いんだな 王子様なんか
待っちゃって
あたしは 欲しいものは欲しくて欲しくていてもたってもいられなくなっちゃう
というユミちゃん
ジャングルに連れていってもらうのを待ってたワニは
カバンになって
最上の幸福がやってくるのを待つ気持ちでハルヲくんを待っている ユミちゃんは ハルヲくんが死んだのをまだ知らない
まずは 爪をピカピカにしようと思う漫画でした
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こういう風に住みたいっていう感情がすごくよく分かる。日々を構成する音楽とか映画とか部屋のにおいとか夜の帰り道とかそういうもの全部が自分の思い通りだったら幸せなのにって考える。
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1980~1990年代に活躍したといわれる漫画家、岡崎京子さん。漫画を普段読まないのでその存在を知らなかったが、近年「ヘルタースケルター」という作品が沢尻エリカ出演で映画化されたようで、名前がまた知られるようになったという。
絵は全く古くなくかわいらしいが、登場人物の髪型に時代を感じる。時代背景はバブルだろうか。裕福な家庭に育った主人公だが、ペットのワニを養うために、OLの他に売春もして稼ぐ。継母も主人公の恋人を買っている。嫉妬に狂う継母は…。
主人公に感情移入はできないものの、とても現実的でしっかりとした女性にエールを送りたくなる。幸せになってほしかった。が、なんともむなしく切ない。
作者の岡崎京子さんは、1996年に交通事故で生死をさまよう大けがをされて、それ以降制作活動からは遠ざかっているそうだ。とても気の毒で、少しでも回復していただきたいと思う。
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作者の絵が上手い下手で賛否両論分かれがちだが、このある意味で現代を風刺する、底抜けに明るく愚かで痛ましくもおかしい話に、ゆるゆると脱力した線はよく合っている。
欲しいものは欲しい、手に入れる為なら体を売ることも辞さない。昼はOLとして商社で働き夜はホテトル嬢としてカラダを売る主人公は、自宅で飼うワニに愛情を注ぐ。
ワニは肥大する物欲のメタファーであると同時に、けっして満たされない渇望を象徴している。
後半でワニのモノローグが挿入されるのだが、ワニもまたふるさとへの郷愁に駆られ、常にここではないどこかを求め続けている。
ワニのように貪欲な主人公を取り囲む家庭環境は複雑だ。反りの合わない継母と天衣無縫な義妹、母は嫌いだが妹は好き。そこへ母親のヒモが現れ、妹も加わった奇妙な共同生活がはじまるのだが……
特に印象的なのはラスト近く、OL仲間とカフェでお昼をしていた主人公の言葉。
欲しいものはなんとしても手に入れなきゃ気が済まない彼女は、ある意味では足るを知り、自分の身の程をわきまえた友人へ凄まじい怒りと反感を抱く。
彼女が本当に欲しかったものは何か。幸せといってしまえば短絡だ。居場所といってしまえば安っぽい。
彼女が本当に欲しかったのは、言葉にできない何か、よるべない自分が依れるリアリティだ。
ヒモと義妹が共同制作した寄せ集めの切り貼りが、「小説」として立派な賞をとってしまうように、彼女たちのアイデンティティはすかすかだ。
世間の評価なんててんであてにならない、外側さえ辻褄が合ってれば一人の人間として認められてしまうもどかしさ。
明るく笑えるシーンもたくさんあるのだが、そのくせ乾いた諦観が漂っている。
誰も彼もが誰かを妬み何かを欲しがり決して満たされることがない、今の世の中では誰もが虚無を食べるワニだ。
結局彼女は何も手に入れられなかった。
やっと手に入れたと思ったしあわせは夢と消え、だが空港で薔薇色の未来を夢見る彼女はそれを知らない。
ここで切るのは非常に憎い演出。
未完成のまま放り出された小説のように、リアリティのないリアルを生きる彼女もまた、白昼夢のような現実のただ中に放り出された。
実の母の言葉を忘れられないまま大人になった彼女は、心のどこかで「永遠」も「王子様」も信じていたのかもしれない。
そんなモノどこにもないのにどこかにあるかもと期待して、それが報われず渇望に変化しなお探し続け欲しがり続けて、どこまでも転がり落ちていく。
ワニは肉食だ。
ピンクの薔薇では腹はふくれない。
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1/12 再読
あとがきより「すべての仕事は売春である」ってゴダールが言ってたんだって…… “「普通に」こわれてしまった女のこ“が主人公。目先の欲求に正直で明日のことなんて深く考えていない、OLをする傍ら体を売ってペットのワニに餌を買い与えている。義母の”男メカケ“をやっている小説家志望の大学生の青年と関係を深めるが、幸せを掴みかけた主人公は突然……。主人公は何も考えていないみたいだけど、乾いた諦観が終始漂っている。デザイン的なタッチの絵で、明るいのだけれど独特の雰囲気がある。何にもない日々に耐えられないから、ワニが家にいるという事実に一種の安心を覚えるのは分からないでもないと思ったり。
“あ 始まりそう あの発作
どうしてあたしはここにいるの? とか
どうしてここに立っているの? とか
考えだしたら止まらない”
何となく、樋口一葉の「にごりえ」のお力を思い出した。彼女も性を売っていて明るく振る舞っているが、こっちはもっと悲愴感がある。
“行かれる物なら此まゝに唐天竺の果までも行つて仕舞たい、あゝ嫌だ嫌だ嫌だ、何うしたなら人の聲も聞えない物の音もしない、靜かな、靜かな、自分の心も何もぼうつとして物思ひのない處へ行かれるであらう、つまらぬ、くだらぬ、面白くない、情ない悲しい心細い中に、何時まで私は止められて居るのかしら”
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一読ではこの作品が、「漫画も文学になる時代が来た」と言われる所以をつかめなかったが、深く掘り下げようとすると、愛と資本主義をテーマに、時代の風刺画のような作品なのかな、と理解した。
30年も前の作品だけど、読み応えがあり、ギャグ漫画や恋愛漫画ばかり読んできた自分には、未知領域の開拓で面白かった。
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ワニを飼う、たったそれだけのことに主人公がどうしてこんなにも命を燃やしたのか。
複雑な事情、理不尽な環境、そういったジレンマに対峙するとき。
自分をすり減らして魂を削ってそれに向き合ってしまう人と、見ないふりをするのが上手な人に分かれるのだと思う。
この主人公は、後者だし、いつも他人のせいにしない。
だからこそ、あえて鈍くしておいた感性を、唯一取り戻せる方法が「ワニ」だったのだ。生きている実感を、可視化するための存在だったのだ。
自分の機嫌を自分でとることができない人は、こういう人間のことをヒリヒリするほど妬ましく羨ましく思ってしまうのだな。(義母)
彼女は、正しい生き方ではないにしろ、美しい生き方をしていた。
岡崎京子の作品はいつでもバッドエンドだけど、結果よりもその過程が人生の「らしさ」なんだろう。
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バブルの頃?の欲望があふれる消費社会の空気をスタイリッシュに描いている、と思う(生まれる前だから憶測)。ユミちゃんの――消費でなく――愛の対象は残酷な結果になってしまうのは切ない。そういう意味ではユミちゃんは消費社会の円環から出られない存在だった。
ハルヲくんの切り貼り小説というのは自己言及的でおもしろかった。
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資本主義の中で生きる人々の幸福ってあまりにも歪で、残酷だってことを改めて客観視できた。
ユミちゃんの「自身の欲望にとことん素直」であることの純粋さ・恐ろしさに面食らってしまった。
「全ての仕事は売春であり、愛である」の真意は分からないけれど、もしそれが自分の命を切り売りするような愛だとしたらあまりにも悲しいと思ってしまう。