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元国交省河川局長が書く、既存のダムを活用せよ、というお話。
ダムというと環境破壊、無駄遣い、みたいなイメージがどうも付きまとうが、本書は新しいダムを作ろうという話ではない。
ダムの目的は治水と利水。この二つは相反する。治水のために満水にできない、50年前の法律によって、ダムの水はいつも少ない。だが気象予報の制度が増した現在なら、ダムに十分水を貯めておいて、より多くの発電が出来る、という話。
ダムの水が少ないのがそんな理由だとは知らなかった。
この視点で見れば、日本の山にはエネルギーがいっぱいである。単にダム万歳、という話ではなくて、エネルギーという切り口から歴史を語り、地域を語る。けっこうエキサイティングな話である。
エキサイティングでありながら、その気になればすぐに出来る話に思える。パラダイムシフトというか、目からウロコというか、あるものをうまく使おう、というのはいいよね。一方で、ダムの湖底に沈んだ故郷を思い続ける人の話も出てくる。とはいえ、もうそれは取り戻せないのだから、経緯を払いながら、うまく使うのがせめてもの…なんて思うのだ。
今度ダム見にいこう〜、と単純にダムファンになれそうな本、でもある。