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世界史の教科書での切り取られたルターでは、やっぱり浅かった。
ここには生きたルターがいる。
信仰にまっすぐ向き合ったルター。
その限界ですら、共感を持って読み終えた。
難解なところはない。
reformation は改革ではない、再形成が訳語として適切だと。
生きたドイツ語を作って使ったのが画期だったのだ。
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間口が広く取られているので読みやすく、歴史の大きな転換期というエキサイティングな題材もあって一気に読んだ。時代の変わり目の雰囲気も新書サイズながらそれなりに掴みやすい。
カミナリに打たれて教会に入ったってのは知らなかったな。
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帯には、「聖書を読み抜いた男」とある。聖書というテキストを徹底的に読み込むことで信仰の新たな姿への理解に達し、神学の哲学からの解放と、中世の教会一体に染まった西欧を新しい時代へのreformationに導いたルターの生涯を辿る。
聖職者が「支配者層」として民衆から遊離した神学・哲学の世界で閉鎖的に研磨していた中世のカトリック。しかし歴史は中世の終りを迎えるべく準備を進めていた。
中世から近代への展開点を、宗教改革の立役者の生涯という軸で眺めること、そしてルターの限界がナチスのユダヤ人迫害まで一つの糸でつながっていたことなど、ふつうの日本人としては縁遠い話なのだが、この本で知ることができる。視野がぐっと広がる想いである。
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【宗教改革とは、そのルターが、聖書のことばによってキリスト教を再形成した出来事であった】(文中より引用)
16世紀ヨーロッパにおける「宗教改革」を語る上で、決して欠かすことのできない人物であるマルティン・ルター。その半生を「ことば」というテーマで切り取りながら描いていく作品です。著者は、ルーテル神学校名誉教授を務める徳善義和。
マルティン・ルターの簡潔にしてわかりやすい伝記として評価できるだけでなく、現代を生きる我々にも通底するテーマである「ことば」を軸とすることにより、その半生が今日的意味を持って迫ってくる作品でした。難解な解説といった趣もなく、非常に手に取りやすい一冊だと思います。
目からウロコがたくさん☆5つ
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中高生向き歴史読み物のような文章で書かれたルターの伝記本。
読んでいるうちに宗教上の違いがなぜ大きな社会変動にまで結びつくのかという疑問を持ったので、宗教改革についてもっと歴史学的なアプローチを試みている本が読みたくなった。
収穫としては、宗教改革はアリストテレスからの離反を目指していたという点や、賛美歌は庶民でも歌えるように作られたものという事を知れたところか。
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全180ページのマルティン・ルターに関する小振りの評伝。ルターといえば、世界史の授業で、95か条の論題を教会の扉に貼りつけて、ローマ・カトリックに真っ向から喧嘩を売った人と思われているだろう。しかし、貼りつけた事に関しては、ルター自身は何ら言及しておらず、同時代の人々の目撃証言に当たるものもないとのことである。
神の「義」の再解釈
ルターの業績は、当時のキリスト教的統一世界において何が画期的だったのか? それは神の「義」を再解釈したことである。ルター以前は、神の「義」とは、「努力を怠る人間に対して、怒りをもって裁きを下すもの」として捉えられていたが、ルターは、神の「義」を「神からの『恵み』であって、イエス・キリストという『贈り物』として人間に与えられたもの」と解釈した。ルターによって、神は恐ろしい「裁きの神」から慈しみ深い「恵みの神」として再解釈されたと言える。
十字架の神学
ルターは「十字架のみが我々の神学である」と説いた。中世では、十字架とそこに磔にされたキリストの姿は、”忌むべき象徴”として捉えられていた。その像を180度逆転させて、むしろ無残に磔にされたキリストの姿こそ、神が人間に与えた「義」であり、人間の救いとは、キリストの受難と十字架の姿を、”神のあるがままの姿”として受け入れることで成就するとした。
聖書というテキストの再翻訳
ルターの大きな業績の一つとして、聖書をドイツ語に再翻訳したことも挙げられる。当時、聖書はラテン語に翻訳されていたが、民衆はラテン語を理解できず、単にローマ・カトリックから派遣された司祭の言葉を聴いているだけだった。ルターは民衆が日常で使っていたドイツ語に再翻訳したことで、聖書を大衆と共に「読む」行為が生また。それにより、ローマ・カトリックによる独占的な解釈が打ち破られ、民衆が各自で信仰と向き合うようになった。これが後の宗教改革へとつながったとする。宗教改革の元の語は、”Reformation(再構成)“である。本書では、Reformationにより、「キリスト教的統一世界であった西欧が、ルターの始めた運動をきっかけにして細分化し、キリスト教世界であることは変わらないものの、従来のあり方とは全く別の多様なキリスト教世界に再形成された」 (P.117) とまとめている。
他にも、ゲルマン世界においては、損害に対して等価の賠償を必要として、その賠償には代理を持って当てられるという慣行があった。これが「贖宥」の起源である話も面白い。ルターを通して、中世の歴史と当時の社会が熟練の筆致で書かれており、大変おすすめである。日本人には解りにくいルターの思想を初めて知るには最適な新書であろう。
評価 9点 / 10点
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ルターの教義や反ユダヤ主義?的な要素が、その後の全体主義につながった可能性があるかもしれないという関心事にもとづいて読んでみた。
が、あたりまえといえば、あたりまえだが、基本、神学系の人が書いていることもあって、基本、ルター側にたった評伝。
というわけで、あまりダークサイド?には立ち入らないが、それでも、ルターとユダヤの関係、そして、ナティスのルター利用の話しもページ数はすくないながら、記述がある。
なんと、ナティスは、ルターの作った讃美歌を行進曲的にアレンジして、民衆を鼓舞して、敵であるところのユダヤ人の戦いにむかわせたそうだ。おそろしいことだ。。。。
というのは、個人的なマイナーな関心事だが、本自体のテーマは、「ことば」。
なるほど、まさに「ことば」が世界を生み出すわけだ。そして、「宗教改革」であって、「革命」ではない。ゆっくりと民衆側から改革を進めていくプロセスは学ぶところ多し。
とはいえ、この宗教改革を起点、政治プロセスが起動して、ヨーロッパはしばし戦争がつづくことになるわけだが。。。。
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宗教改革を展開し、現在のプロテスタントに繋がるマルティン・ルター。非常に読みやすい文体で、スラスラと読めました。
この本で描かれているルターには、キリスト教に対する深い理解と、熱心な信仰、そして自身に向き合う誠実な態度がありました。それらのどれか一つが欠けても宗教改革に辿り着くことはなかったでしょう。